ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

24年ドラフト予想☆楽天~主力の高齢化で世代交代の備えは必至!レギュラーと控えの差は埋まるか

 一言で言えば良くやっている。今季、内部昇格で12球団最年少の今江敏晃監督が就任したが、2年連続のBクラスに加え、クローザーの松井裕樹パドレス)が移籍するなど前途は多難だった。

 新監督であれば多少の補強があってよいと思うが、ドラフト以外では日本ハムからポンセと山田遥楓(佐賀工高~14年西⑤)、広島からターリーが加入しただけで、シーズン中も補強はなく、支配下人数に5名も枠を空けた65名で1年乗り切った。

 そのよう状況のなか、則本昂大三重中京大~12年②)をクローザーへ転向させ、攻撃陣では小郷裕哉(立正大~18年⑦)を全試合で一番に起用するなど、今江監督の肝の据わった起用は率直に感心するばかりで、現状、貯金1でロッテとCS出場争いをするなど結果も残している。

【9/24現在のチーム成績…65勝64敗3分/4位】

            24年/4位    23年/4位    22年/4位

 防御率(失点数)…3.79⑥(539⑥) 3.52⑥(556⑥) 3.47⑥(522④)

 打 率(得点数)….244④(474④) .244③(513②) .243③(533②)

 守備率(失策数)….988②( 59②)     .985⑤( 82④)  .991①( 49①)

 本塁打数/盗塁数…  71④/86③     104②/102①    101③/97②

 先発陣は、田中将大駒大苫小牧高~06年①)に岸孝之東北学院大~06西/希望枠)、則本とビッグネームが並ぶも高齢化が懸念されるなか、早川や内、ルーキーの古謝がカバーし、通算4勝の藤井が10勝を上げるなど若手・中堅の台頭が目立った。

 リリーフは則本がリーグ最多の31セーブを上げ、酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)はリーグ2位の27ホールド、鈴木翔天(冨士大~18年⑧)は28試合連続無失点など結果を残し、藤平尚真(横浜高~16年①)はリリーフで才能が開花した。残念ながら防御率は3年連続リーグワーストだが、来季に向け期待の膨らむシーズンになった。

【投手 ※は規定投球回数 ○の数字は順位】

 ☆先発…※③早川隆久(159回1/3)岸 孝之(128回)藤井 聖(113回)

     内 星龍(110回2/3)古謝 樹(71回1/3)

 ☆ リリーフ…則本昂大(52試合)酒居知史・渡辺翔太(46試合)鈴木翔天(45試合)

     宋 家豪・藤平尚真(41試合)弓削隼人(34試合)

 打線は1番・小郷と2番の村林一輝(大塚高~15年⑦)がチャンスメークし、3番の辰己涼介(立命大~18年①)がリーグ2位の打率を残し、4番の浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年③)へ繋ぐ形ができた。下位にはチャンスに強い鈴木大地東洋大~11年ロ③)が控え、小深田を含め規定打席達成者6名はリーグ最多だ。

 楽天の打撃の数字を見ると大胆かつ堅実で、チーム打率や出塁率長打率も高くない。ただ、盗塁は企画数と成功率がリーグ2位、犠打の成功率はリーグ断トツの.922で、そのため併殺はリーグ最小、加えて得点圏打率はリーグ1位と、とにかくランナーを進塁させ、チャンスを確実に活かす野球は特筆できる。

 守備面では、小深田と村林の二遊間と中堅の辰己のセンターラインは強固で、守備率はリーグ2位と攻守にレギュラーが力を発揮したシーズンになった。

【野手 ※は規定打数 ○の数字は順位(試合数/打席数)】

 ☆捕 手…太田 光(255/217)石原 彪(165/139)

 ☆内野手…※⑧鈴木大地(437/385)※⑯浅村栄斗(516/439)

     ※⑱村林一輝(537/487)※㉑小深田大翔(485/417)フランコ(238/224)

     阿部寿樹(246/221)渡邊佳明(137/122)     

 ☆外野手…※②辰己涼介(552/498)※⑫小郷裕哉(595/520)島内宏明(154/131)

        中島大輔(107/102)      

●主力の高齢化による世代交代の遅れやレギュラーと控えの差など課題が山積

 チームは主力の高齢化や年齢バランスの悪さに偏りなど多くの課題を抱えている。過去5年のドラフトは偏りが激しく、20年は支配下指名6名中、投手を5名指名したと思えば、21年は高校生外野手を上位で2名指名、22年はオール大学生・社会人指名でうち投手が5名、そして昨年は育成路線で高校生5名を指名するも、右投手3名、右打ちの内野手2名とここでも偏りが目立つ。

 ただ、投手では早川や荘司、古謝、今季は藤平がブレイクし、野手では辰己と小深田と1位指名した選手が結果を残し、Aクラス入りを争う原動力になっている。一方、下位指名選手の活躍が目立つのも特徴と言え、投手では内に鈴木翔、瀧中瞭太(ホンダ鈴鹿~19年⑥)がおり、野手では小郷に渡邊佳明(明大~18年⑥)、村林一輝(大塚高~15年⑦)、石原彪(京都翔英高~16年⑧)やルーキーの中島大輔(青学大~23年⑥)等が活躍している。

 13年の初優勝から11年が経過し、FAで大物選手を獲得したが優勝には届かず、今となっては高齢化と主力と控えの差だけが残った感じで、決して高校生選手の育成に長けたチームではないが、チーム編成や強化策を見直す時季に来ていると思う。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 19年③…小深田大翔(大阪ガス/①・内野手

 20年④…早川隆久(早大/①・投手)藤井 聖(JX-ENEOS/③・投手)

     内 星龍(履正社高/⑥・投手)

 21年③…なし

 22年④…荘司康誠(立大/①・投手)渡辺翔太(九産大/③・投手)

 23年④…古謝 樹(桐蔭横浜大/①・投手)

  ↓↓

楽天の補強ポイント】 

 投 手…将来の先発候補、即戦力のリリーバー

 捕 手…高校生と大学生

 内野手…将来の中軸候補、左打ちの高校生または大学生

 外野手…高校生と大卒社会人(右打ちならベスト)

 一番の課題はやはり喫緊に迫っている主力の高齢化による世代交代で、岸が41歳、田中将は37歳、鈴木大と阿部寿樹(ホンダ~15年中⑤)、岡島豪郎(白鷗大~11年④)が36歳、浅村や島内宏明(明大~11年⑥)も35歳になり、小深田や辰己、小郷も20代後半で、世代交代の波が次々と押し寄せてくる。

 また、年齢構成の見直しも必要で、特に捕手は19~23歳が不在で、19~22歳の野手(左打ち)も内外野で不足している。外野手は右打者も不足しており、全体的なバランスの悪さの是正を進めたい。

☆投手~将来の先発候補、即戦力のリリーバー

 今季の収穫は先発投手陣の整備が進んだことで、早川と藤井が2桁勝利を上げ、内が6勝、古謝も5勝を上げ、荘司がケガから戻れば計算できる布陣になる。ファームの若手の伸び悩みは不安材料だが、岸や田中将のベテランが控えているのは心強い。

 リリーフは来季の則本の起用法に注目で、個人的には先発のほうが良いと思うが、酒居に宋家豪、鈴木翔、藤平、渡辺翔に登板が集中しており層は厚いとは言えない、

 投手の上位候補では、丸夢斗(関大)篠木健太郎(法大)の名前が挙がり、ともに完成度の高い先発候補。またエース候補として、今朝丸裕喜(報徳学園高)小川哲平(作新学院高)藤田琉生(東海大相模高)がリストアップされている。

 また、夏の甲子園で準優勝に導いた坂井遼(関東一高や、2年生時から注目されたいた清水大暉(前橋商高の上位指名も不思議ではない。さらに村上泰斗(神戸弘陵高)川勝空人(生光学園高)狩生聖真(佐伯鶴城高)は最速150キロを超える本格派右腕で、冨原翔(神辺旭高)は173センチの小柄ながら、坂井や村上と同様に高校から投手を始め球速が150キロに迫っている。

 このほか、打者の評価も高い柴田獅子(福岡大大濠高)津嘉山憲志郎(神戸国際大高)、ナイジェリア人の父を持つ沼井怜穏(横浜隼人高)は身体能力が高い。父が元中日の洗平比呂(八戸学院光星高)と兄が阪神在籍中の茨木佑太(帝京長岡高)もポテンシャルでは引けを取らない。関景介(太田西山高)は入学してから球速が30キロ以上伸び、菊池ハルン(千葉学芸高)増地咲之介(海星高)は2メートルの大型右腕。

 大学生では真っ直ぐに力のある寺西成騎(日体大岩崎峻典(東洋大、小柄ながら奪三振率の高い左腕の宮原駿介(東海大静岡)が候補に挙がっている。

☆捕手~高校生または大卒社会人

 今季は太田光(大商大~18年②)が86試合、石原が61試合でマスクを被ったが、支配下人数が5名(育成は2名)しかおらず、安田悠馬(愛知大~21年②)は来季野手起用が濃厚で補強が急務だ。

 上位候補で名前が挙がるのが箱山遥人(健大高崎高)で、強肩強打の正捕手候補のサプライズ1位指名があっても不思議ではない。箱山を外した際は、大卒社会人2年目の石伊雄太(日本生命野口泰司(NTT東日本)、打撃の良い椎木卿五(横浜高)にシフトして良いと思う。

内野手~将来の中軸候補、左打ちの高校生または大学生

 内野は一塁の鈴木大、二塁・小深田、三塁・浅村、遊撃・村林のレギュラーが固定され、いずれも規定打席をクリアしている。小深田と村林の二遊間は2~3年は問題なさそうだが、鈴木大と浅村の後継は急ぐ必要がある。

 ただ、レギュラー以外でも阿部や茂木栄五郎(早大~15年③)が控え、主力が強固なだけに若手が入り込む余地は少ない、一塁も守れる安田、黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)や入江大樹(仙台育英高~20年⑤)、育成の永田颯太郎(台湾体育運動大~22年育④)等に期待したい。

 1位候補で宗山塁(明大)は当然リストアップされており、小深田は三塁と外野、村林も二・三塁を守れ、宗山の1位指名の可能性も高い。ただ、それ以上に魅力なのが石塚裕惺(花咲徳栄高)で、走攻守揃ったプレースタイルに高校通算26本塁打の打力は大学生と比較しても遜色なく、高校時代の浅村を彷彿とさせる。

 また、19~26歳で左打者が黒川しかおらず、広角に長打が打てる柳館憲吾(国学院大)やパワーのある荒巻悠(上武大)が候補に挙がる。強肩で守備に定評のある岸本佑也(奈良産大高)も村林と同じタイプで評価が高い。

☆外野手~高校生と大卒社会人(右打ちならベスト)

 外野手は辰己と小郷がレギュラーだが、次に続くのがベテランの岡島やルーキーの中島で、今季不振だった島内の復活が待たれるが守備が不安で層は厚くない。若手台頭の気配もなく、阿部や渡邊佳、伊藤裕季也(立正大~19年D②)の内野のユーティリティが守っているのが現状だ。

 支配下で2名しかいない右打ちで絞ると、西川史礁(青学大渡部聖弥(大商大)が上位候補位に挙がる。ともに右のスラッガーで西川は中軸候補、渡部は強肩俊足で辰己と小郷がいる外野が鉄壁になる。残念ながら高校生で候補は見当たらなかったが、社会人では中尾勇介(東京ガスも俊足且つパワーも兼ね備え、増田将馬(くふうハヤテ)はファームでも実績のあるスピードスターだ。

 このほか、いずれも左打ちのスラッガーモイセエフ・ニキータ(豊川高)吉納翼(早大の評価が高く、小柄だがスピードのある飯森太慈(明大)も候補に挙がる。

●課題が多いなか、今年は野手の1位指名が濃厚!16年以来の高卒投手1位もある

 とにかく各ポジションに課題があり、投手なら即戦力の先発やリリーフ候補、捕手の数的確保、内外野の世代交代に、右打ち・左打ちのバランスなど挙げればキリがなく、是正するには時間を要する。

 1位候補で宗山塁(明大)西川史礁(青学大渡部聖弥(大商大)が濃厚だと思うが、今年は捕手の候補が少なく、箱山遥人(健大高崎高)のサプライズ1位指名の可能性もある。投手では大卒1位の選手が着実に成長しており、そろそろ今朝丸裕喜(報徳学園高)藤田琉生(東海大相模高)のエース候補にシフトしても良いと思う。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)             (Bパターン)

 1位~西川史礁(青学大・外野手)       箱山遥人(健大高崎高・捕手)      

 2位~小川哲平(作新学院高・投手)      篠木健太郎(法大・投手)

 3位~坂井 遼(関東一高・投手)       沼井怜穏(横浜隼人高・投手)

 4位~岩崎峻典(東洋大・投手)        岸本佑也(奈良産大高・内野手

 5位~荒巻 悠(上武大・内野手)       宮原駿介(東海大静岡・投手)

 6位~野口泰司(NTT東日本・捕手)     中尾勇介(東京ガス・外野手)        

 おススメは中村優斗(愛工大)で、報道を見る限り楽天はリストアップしていないようだが、最速159キロに真っ直ぐに変化球の精度の高さ、制球力もある本格派右腕で、先発・リリーフどちらも適性があり、獲得できれば則本の起用法も変わると思う。