ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

24年~現役ドラフトの振り返り

 12/9に3度目の現役ドラフトが開催された。今年は初めて広島が2名指名し、導入後初めて捕手の移籍もあった。大方、予想通りの人選だったと言えるが、上茶谷や矢崎など実績十分の主力級や、吉田や伊藤のように2年目の若手の移籍もあり、回を重ねるごとにチームの意図が伝わる機会になった。

セ・リーグ

 巨 人 …田中 瑛斗(日本ハム・投手/柳ケ浦高~17年③)

 阪 神 …畠  世周(巨 人・投手/近大~16年②)

 DeNA…浜地 真澄(阪 神・投手/福岡大大濠高~16年④)

 広 島 …山足 達也(オリックス内野手/ホンダ鈴鹿~17年⑧)

      鈴木 健矢(日本ハム・投手/JX-ENEOS~19年④)

 ヤクルト…矢崎 拓也(広 島・投手/慶大~16年①)

 中 日 …伊藤 茉央(楽 天・投手/東農大オホーツク~22年④)

パ・リーグ

 ソフトバンク …上茶谷大河(DeNA・投手/東洋大~18年①)

 日本ハム…吉田 賢吾(ソフトバンク・捕手/桐蔭横浜大~22年⑥)

 ロッテ …石垣 雅海(中 日・内野手/酒田南高~16年③)

 楽 天 …柴田 大地(ヤクルト・投手/日本通運~21年③)

 オリックス…本田 圭佑(西 武・投手/東北学院大~15年⑥)

 西 武  …平沢 大河(ロッテ・内野手/仙台育英高~15年①)

 今年も昨年に続き、投手が9名を占め、畠と鈴木以外はリリーバーの移籍が多かった。先発の大竹耕太郎(阪神)や野手の細川成也(中日)、水谷瞬(日本ハム)が現役ドラフトの成功例で挙げられているが、ビッグネームの移籍はあったものの、全体的にスケール感ではやや物足りない形になった。

 ドラフト1位指名選手は昨年に続き3名で、上茶谷(DeNA→ソフトバンク)と矢崎(広島→ヤクルト)、平沢(ロッテ→西武)の3選手になり、ロッテは2年連続でドラフト1位の移籍になった。

 最年長は31歳の本田圭で、最年少は2年連続ソフトバンクで吉田の23歳で、伊藤と同じく在籍2年の移籍になった。反面、在籍年数では平沢と本田圭の9年が最長だった。指名された選手全員が初の移籍になった。

 このほか、日本ハムは3年連続で最年少選手の指名になり、現役ドラフトでは将来性重視の若手指名が一貫されており、ポジション別では阪神とDeNA、広島、ソフトバンクは投手、ロッテは野手の指名が3年連続になった。

 

◆巨人(○)OUT/畠 世周→IN/田中瑛斗(日本ハム

 ロッテ入りが決まった石川柊太の獲得を目指したように、FA移籍が濃厚な菅野智之の穴埋めが優先課題のなか通算19勝の31歳の畠を放出し、25歳の田中瑛を獲得した。田中瑛は今季は一軍では3試合登板で結果を残せなかったが、ファームでは46回で43個の三振を奪った右の本格派で、先発・リリーフともにこなせる。戸郷翔征や大勢など、主力投手に若手が多く、起用法はこれからだがブレイクの期待が高まる。

阪神(◎)OUT/浜地真澄→IN/畠 世周(巨人)

 ここ2年は結果が今一つだったが、浜地の移籍には正直驚いた。ただ、今季は才木浩人のブレイクや高橋遥人の復帰はあったが先発がやや手薄で、青柳晃洋のMLB移籍もあるなか、実績もある畠の獲得はプラスになる。畠は今季ファームで防御率1点台の成績を残しており、力のあるボールが持ち味だが、これまでは制球を気にして窮屈な投球になる癖があり、広い甲子園ではその持ち味が存分に活かせると思う。

◆DeNA(△)OUT/上茶谷大河→IN/浜地真澄(阪神

 29歳の上茶谷と放出し、26歳の浜地を獲得できたのだから将来的にはプラスになる要素は大きい。上茶谷は昨年からリリーフへ本格転向したが、今季は46試合→18試合と登板数を減らしており、リーグ優勝するには投手力強化が不可欠なチームにおいて浜地への期待の高さが窺える。ただ、今一つの評価をしたのが、浜地と同じ26歳は今オフに阪神より獲得した岩田将貴を含め8名おり、もう少し年齢構成等を考慮しても良かった。

◆広島(○)OUT/矢崎拓也→IN/山足達也(オリックス)/鈴木健矢(日本ハム

 昨季54試合で24セーブを上げた矢崎は、登板過多(54試合)が影響したか、今季は26試合登板に留まったが、経験を擁する役割だけにこれから円熟味が増すと思っていたので放出には驚いた。一方、獲得した山足は内野はどこでも守れるユーティリティで、オリックスでは守備固めや代走がメインだったが、元々勝負強い打撃が売りで、ファームでは3割を打っており打撃が課題のチームのなかレギュラーを狙いたい。山足以上に期待がかかるのが鈴木で、パ・リーグからセ・リーグに移籍した同じサブマリンの高橋礼や中川颯を見ると、FA移籍した九里亜蓮の穴埋めを期待できる。

◆ヤクルト(◎)OUT/柴田大地→IN/矢崎拓也(広島)

 即戦力を期待されながら在籍3年で通算2試合登板の柴田の代わりに、経験も実績も十分な矢崎を獲得できたのだから大成功と言える。先発投手で2桁勝利どころか、規定投球回数を超えた投手も不在なチームのなか、リリーフへの負担は大きく矢崎の加入は間違いなく底上げになる。また、矢崎自身も東京出身(慶大)で、東京6大学で慣れ親しんだ神宮で再スタートを切れるのもモチベーションが上がると思う。

◆中日(○)OUT/石垣雅海→IN/伊藤茉央(楽天

 来季は先発の小笠原慎之介、リリーフのマルティネスを欠くことが予想され、投手力強化が課題のなか、2年目の若い伊藤を獲得できたのは大きい。サイドハンドの伊藤は一軍での実績は乏しいが、今季はファームで41試合で防御率2.84の好成績を残しており、チームにはいないタイプなだけにチャンスは増えると思う。将来の主軸を期待され続けた石垣は、残念ながら結果は残せなかったが新天地でも覚醒を期待したい。

ソフトバンク(○)OUT/吉田賢吾→IN/上茶谷大河(DeNA)

 正捕手の甲斐拓哉の去就が決まらないなか、2年目の吉田が放出されたのは驚いたが、捕手としてはスローイングに難があり、ファームでは主に一塁で出場しており、打撃面では3割を打つなど成長しているが、一塁には山川穂高中村晃がおり今回の判断 に至ったと思う。獲得した上茶谷はリリーフ起用が濃厚だが、先発で和田毅(引退)と石川柊太(FA移籍)を欠くなか、先発の経験もあり先発起用もあり得る。

日本ハム(△)OUT/田中瑛斗/鈴木健矢→IN/吉田賢吾(ソフトバンク

 今回、最も人気のあるチームが日本ハムだと聞いて納得した。田中瑛も鈴木もファームでは結果を残しているが一軍定着とはならず、特に鈴木は層の厚い先発での出番が限られていただけに新天地でのブレイクが期待できる。一方、吉田の加入は、同じく捕手から内野へ転向して花が開いた郡司裕也や、今季ブレイクした水谷瞬同様の活躍が期待できるが、捕手の層も厚く、右打者も渋滞気味で起用法が今一つイメージできない。

◇ロッテ(△)OUT/平沢大河→IN/石垣雅海(ロッテ)

 予想通りと言えばそれまでだが、スター候補だった平沢が放出された。確かに今季は一軍出場がなく、打撃を活かして外野にもチャレンジしているが、同じ左打ちで巧打者が多いチーム事情を考えれば納得できる。佐々木朗希の移籍で投手を獲得すると思ったが、蓋を開ければ石垣の指名で驚いた。今年のドラフトで西川史礁を含む即戦力野手3名を指名しているなか、更なる攻撃力アップを目指すチームの意図を感じた。

楽天(✕)OUT/伊藤茉央→IN/柴田大地(ヤクルト)

 申し訳ないが、本当に編成が上手くないと思う。ルーキーイヤーに25試合に登板した24歳の伊藤に2年で見切りをつけ、獲得したのがプロ3年で通算2試合登板で27歳の柴田の意図が分からない。どのような流れか分からないが、手力強化なら実績のある上茶谷や矢崎、同じ若手なら田中瑛もいる。野手なら支配下の捕手が少ない状況のなか吉田、左打者は足りているが地元の平沢などの獲得にチャンスがなかったのか疑問だ。

オリックス(△)OUT/山足達也→IN/本田圭佑(西武)

 一言で言えば、地味な現役ドラフトになった。山足は控えとしてチームを下支えする役割を担っていただけに、このような選手の放出は戦力以上に痛い。一方で獲得したのが通算138試合登板の本田圭で、ともに31歳のベテラン同士の移籍になった。本田圭は今季苦戦するチームで、31試合で10HPを上げ復活の兆しがあっただけに、速球派の多いオリックスのなかで、実績十分の貴重な軟投派の本田圭はアクセントになる。

◇西武(○)OUT/本田圭佑→IN/平沢大河(ロッテ)

 増田達至が引退し、平良海馬のリリーフ起用でひと悶着あるなど、打線のほかにもリリーフ強化も課題のなか本田圭を放出したのはいささか勿体ない気がするが、平沢を獲得できたので成功と言える。平沢は打率こそ低いが出塁率が高く、三振よりも四球の方が多く選球眼に優れている。打撃が課題のチームのなかで、内外野守れる強みがあり、ロッテでは結果を急いでいた感があったので、本人にも良いチャンスになると思う。

 

 今年で3年目を迎えたが、なかなか指名人数は増えず、もっと活性化しても良いと思う。支配下以外でも育成選手の現役ドラフトなど二段階での実施や、オリックスの福良GMがコメントしていたように、7月のシーズン途中での開催は是非見てみたい。トレード期限ギリギリの現役ドラフトは、ペナントレースを左右するようなことになり楽しみが増えると思う。