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どのチームが「人」を育て強くなるのか

24年~セ・リーグの退団選手とオフの補強ポイント

 9/30に始まった戦力外通告は、育成選手も含む120名(うち引退は20名)を数え、外国人選手も12名(退団2名含む)が自由契約になった。戦力外通告日本シリーズ終了後翌日(DeNAとソフトバンクは5日後)までで、今日明日で期間も終了し、日本シリーズ終了翌日からはFAも始まり、いよいよストーブリーグが始まる。

 今年のドラフトでは、本指名69名、育成を含めて123名が指名されており、指名人数とほぼ同数の選手が戦力外になっている。昨年新しいユニフォームの袖を通したのは24名(うち育成13名)で、育成から8名が支配下になっており、各球団の補強ポイント選手を挙げたい。

 選手の現況は11/2時点のもので、選手名の横の年数は指名年度で、〇の数字は指名順位。※の選手は育成契約選手。太線は育成契約を打診されている選手、下線は引退選手です。

セ・リーグ戦力外の注目選手】

①高橋優貴(巨人・投手)28歳

 21年にチーム最多の11勝を上げたが、今年は一軍での登板はなく、二軍でも2試合の出場に留まった。球威は健在で制球力が課題だが、長所を活かすならパ・リーグ向きで、左腕不足のロッテやオリックスは投手育成に長けているだけに復活が期待できる。

②加治屋蓮(阪神・投手)33歳

 23年は51試合に登板し、チームの日本一を支えた。今季は僅か13試合登板も、ファームでは29試合を投げて防御率0.68の好成績を残している。阪神では出番が限られたが、ヤクルトや中日、楽天など経験豊富なベテラン右腕を欲しがるチームが多いと思う。

③岩田将貴(阪神・投手)27歳

 変則サイドハンド左腕で、一軍登板がないまま戦力外になったが、ファームで昨年44試合登板で防御率4.55が、今年は46試合登板で防御率2.11と成長が見られる。実績はないがDeNAやヤクルト、楽天など左のワンポイントリリーフは貴重な存在だ。

④遠藤 成(阪神内野手)24歳

 今季も一軍出場はなかったが、戦力外に驚いた選手の一人。今年はファームで最高出塁率をマークし、リーグ2位の盗塁数は立派な数字だ。攻撃力が課題の西武や中日もお薦めだが、左打ちの内野手と機動力が不足しているオリックスがマッチすると思う。

⑤石川達也(DeNA・投手)27歳

 貴重なリリーフ左腕として昨年は28試合に投げ防御率1.97、今季は15試合で防御率1.93は立派な数字だ。本人もまさかの戦力外通告だったようで、育成契約を固辞して他球団移籍を目指す。左投手不足のロッテやオリックス、西武などチャンスは多い。

大田泰示(DeNA・外野手)35歳

 今季出番はなかったが、チャンスに強い打撃と守備力は健在だ。代打起用ではなく、4回打席に立って結果を残す選手なだけに、外野強化が課題の阪神オリックス、西武はフィットすると思うが、個人的には地元の広島のユニフォーム姿を見てみたい。

⑦楠本泰史(DeNA・外野手)30歳

 今年は同じ左打ちの度会隆輝が入団し、梶原昂希の台頭もあり今年は18試合(31打席)の出場に留まった。ただ、昨年まで通算打率.299のシュアな打撃は健在で、既に阪神が獲得調査に乗り出しているが、青木と山崎が引退したヤクルトも狙い目だと思う。

⑧岡田明丈(広島・投手)32歳

 通算24勝(17敗)を上げリーグ3連覇に貢献した右腕も、19年を最後に一軍のマウンドに戻ることはなかった。イップスのような症状で制球力が課題だが、指にかかったときの真っ直ぐの威力は健在で、もう一度あの勇姿をマウンドで見せて欲しい。

⑨嘉弥真新也(ヤクルト・投手)35歳

 通算463試合に登板した左キラーも、移籍したヤクルトでは9試合登板に留まり、2年連続の戦力外となった。投球スタイルから球場の広いパ・リーグ向きで、ワンポイントリリーフの欲しいロッテや楽天、西武、セ・リーグなら中日もフィットしそうだ。

⑩三好大倫(中日・外野手)28歳

 守備代走要員から今季はオープン戦から好調を維持し、開幕スタメンを勝ち取るも結果を残せず二軍に降格ののちの戦力外になった。守備と走塁は一軍クラスなだけに、巨人やヤクルト、西武など外野の層を厚くしたいチームで才能を開花させて欲しい。

 

読売ジャイアンツ(56名+5名)

 4年振りのセ・リーグ連覇も日本シリーズ出場を逃したチームは、4選手が戦力外になり、6選手に育成契約を打診し、立岡と梶谷が引退を表明した。戦力外では直江や高橋は他球団で見てみたい選手で、ベテランリリーフの鈴木もチャンスはあると思う。

 一方、昨年50試合登板の菊地は勤続疲労からか今季は出番がなく、松井や中田と同様に再度支配下復活を目指す。また、21年入団の左投手3選手が育成契約になった。その育成選手では8名が戦力外になり、うち20年入団組が6名と現実は厳しい。

【投手】

 菅野智之のMLB移籍の可能性もあるなか、ドラフトで即戦力投手の獲得が進まず、現役ドラフトへの期待たFA参戦、大型トレードも現実味を帯びてきた。また、高梨がFA移籍するようなことがあれば、ワンポイント左腕も必要になってくる。

【野手】

 岡本和真のMLB移籍、大城卓三のFA移籍の可能性が高く、投手同様に今年は大型補強の可能性が出てきた。岡本に代わる4番候補でビシエド、立岡等が抜けた外野手は楠本泰史(DeNA)や甲斐生海(ソフトバンク)など打力のある選手が欲しい。

 投 手…鈴木康平(17年/オ②)直江大輔(18年/③)石田隼都(21年/④)

       高橋優貴(18年/①)代木大和(21年/⑥)山田龍聖(21年/②)

       松井 颯(22年/育①)菊地大稀(21年/育⑥)

     ※笠島尚樹(20年/育③)※川嵜陽仁(21年/育⑨)

     ※小沼健太(20年/ロ育②)※山崎友輔(20年/育⑩)

 捕 手…※前田研輝(20年/育⑤)※萩原 哲(20年/⑦)

 内野手…菊田拡和(19年/③)中田歩夢(22年/育④)※加藤 廉(20年/育②)

     ※岡本大翔(20年/育①)

 外野手…梶谷隆幸(06年/横③)立岡宗一郎(08年/ソ②)

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①石塚裕惺(花咲徳栄高・内野手)#23 ④石田充冴(北星学園大高・投手)#60

 ②浦田俊輔(九産大内野手)#32   ⑤宮原駿介(東海大静岡・投手)#57

 ③荒巻 悠(上武大・内野手)#54

阪神タイガース(60名+5名)

 チーム初の連覇を逃した今オフは、秋山が引退を決め、5選手が戦力外、昨年の日本シリーズで活躍したノイジー、陽気な性格で人気者のミエセスもチームを去る。

 一方でリリーフで経験豊富な加治屋、一軍未出場ながらファームで好成績を残している岩田や遠藤も他チームから声がかかるか可能性は十分にある。片山も今季はファームで90試合でマスクを被り打率も3割を超え十分に余力を残しており、今年のドラフトは捕手指名(支配下)が5名しかおらず需要は高い。

【投手】

 ドラフトでは即戦力の伊原と木下を獲得し、年齢構成や左右のバランスも悪くなく補強の優先度は高くない。この間、投手の育成で成果が出ているだけに育成で若手の直江大輔(巨人)や小林樹斗(広島)、北浦竜次(日本ハム)等を獲得しても良いと思う。

【野手】

 野手は課題が多く、大山悠輔と坂本誠志郎にFA移籍の可能性があるなかドラフトでの補強は十分ではなく、大山が移籍するのであればビシエド(中日)獲得が現実味を帯びてくるる。外野手の補強も必要で楠本泰史(DeNa)の獲得調査は理解できる。

 投 手…秋山拓巳(09年/④)加治屋蓮(13年/ソ①)岩田将貴(20年/育①)

 捕 手…片山雄哉(18年/育①)

 内野手…遠藤 成(19年/④)

 外野手…高濱祐仁(14年/日⑦)

 外国人…ノイジー(外野手)ミエセス(外野手)

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①伊原陵人(NTT西日本・投手)#21 ④町田隼乙(BC埼玉・捕手)#45

 ②今朝丸裕喜(報徳学園高・投手)#18 ⑤佐野太陽(日本海L富山・内野手)#54

 ③木下里都(KMGホールディングス・投手)#43

★横浜D℮NAベイスターズ(60名+6名)

 ドラフトでチーム打率リーグナンバーワンの打線は、主力の楠本にベテランの大和や大田、西浦が戦力外になり西浦は引退を決め、古巣ヤクルトのコーチに就任する。育成では昨年のファームの盗塁王で、今季は3割を打った村川も念願の支配下になれずチームを去る。また、石川は育成契約を不服とし、自由契約選手で他球団の移籍を目指す。

 昨年は野手、今季は投手中心のドラフトでチーム編成のバラツキを解消した。一方、今季は外国人選手の活躍がチームの躍進を支えただけに、オフの交渉がカギになる。

【投手】

 課題の投手力強化で竹田や篠木の即戦力を獲得し、ジャクソンやケイが残留すれば総人数も37名と十分で補強の必要はなさそうだ。ただ左投手が不足気味で、今ドラフトでも全員が右投手で、桜井周斗(楽天)の古巣復帰は検討する余地はある。

【野手】

 野手は佐野恵太のFA移籍に有無でチーム編成が大きく変わる。一方で、各ポジションで年齢構成の空白が気になるが、ピッタリはまる選手はおらず、不足気味の右打者で江越大賀(日本ハム)や、代打の切り札で中島宏之(中日)の獲得は面白いと思う。

【戦力外選手】

 投 手…三浦銀二(21年/④)石川達也(20年/育①)高田琢登(20年/⑥)

 捕 手…なし

 内野手…大和(05年/神④)西浦直亨(13年/ヤ②)※小深田大地(20年/④)

 外野手…大田泰示(08年/巨①)楠本泰史(17年/⑧)※村川 凪(21年/育①)

 外国人…※モロン(投手)※マルティネス(投手)

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①竹田 祐(三菱重工ウエスト・投手)#12 ④若松尚輝(四国IL高知・投手)#46

 ②篠木健太郎(法大・投手)#30    ⑤田内真翔(おかやま山陽高・内野手)#56

 ③加藤響(四国IL徳島・内野手)#0   ⑥坂口翔楓(国学院大・投手)#39

広島東洋カープ(61名+6名)

 エースとしてチームを支えた野村が引退、復活を目指した岡田も2年連続の戦力外になり、現役ドラフトで獲得した戸根と内間が揃ってチームを去ることになる。野手では助っ人外国人が2人合わせて1本塁打の期待外れでが退団した。

 最優先課題は野手の強化で、チームスタッフとの親交が厚い大山悠輔(阪神)や地元出身の佐野恵太(DeNA)にFA移籍の可能性があり、今季、筒香嘉智(DeNA)獲得に参戦したように、宣言するのであれば全力で獲りにいきたい。

【投手】

 リーグ髄一の投手陣を誇るが、主力の大瀬良と九里は来季35歳になり、先発・リリーフで計算できる選手が欲しく、FA宣言の可能性のある西野勇士(ロッテ)はともに実績がある。また、加治屋蓮(阪神)や石川達也(DeNA)も戦力の上積みになる。

【野手】

 先述したように中軸候補の獲得が最優先で、大山や佐野のほかにもビシエド(中日)など候補は多い。また、内野の28~32歳が不在のなか福田光輝(日本ハム)が年齢構成でハマり、個人的には江越大賀(日本ハム)もチームにフィットすると思う。

 投 手…野村祐輔(11年/①)戸根千明(14年/巨②)小林樹斗(20年/④)

       岡田明丈(15年/①)内間拓馬(20/楽④)※坂田 怜(21年/育④)

       ※新家 颯(21年/育①)※藤井黎來(17年/育②)

 捕 手…なし

 内野手…曽根海成(13年/ソ育③)※前川誠太(21年/育②)

 外野手…なし

 外国人…ハッチ(投手)レイノルズ(内野手)シャイナー(内野手

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】
 ①佐々木泰(青学大内野手)#5     ④渡辺悠斗(冨士大・内野手)#49

 ②佐藤柳之介(冨士大・投手)#23   ⑤菊地ハルン(千葉学芸高・投手)#67

 ③岡本 駿(甲南大・投手)#53   

東京ヤクルトスワローズ(59名+5名)

 驚いたのは昨年のドラフト1位の西舘に育成契約打診で、余程術後の調子が良くないのか、それとも支配下枠を空けたいのか、いずれにしても好意的には受け取れない。このほか、嘉弥真は2年連続、尾仲は3度目の戦力外通告になった。

 投手も心配だが、同じくらい心配なのが外野手で、青木の山崎が引退し、塩見泰隆もケガが多く質量ともに不足している。昨年、戦力外の3選手を獲得し、捕手不足で期中に中川拓真を急遽補強するなど、今オフもチーム編成に一波乱ありそうな気配だ。

【投手】

 中村と荘司の即戦力を獲得でき、育成の廣澤と下川も実力者で支配下は早いかもしれない。ただ、中村以外はいずれもリリーフタイプで、先発不足は否めず石川柊太(ソフトバンク)や西野勇士(ロッテ)がFA宣言すれば全力で獲りに行きたい。

【野手】

 リーグ髄一の打線を誇るが、外野手強化は必須で、今オフは大田泰示に楠本泰史(DeNA)、菅野剛士(ロッテ)など経験のある選手に加え、三好大倫(中日)に甲斐生海(ソフトバンク)の若手も豊富で育成契約も視野に入れながら補強を検討したい。

【戦力外選手】

 投 手…西舘昂汰(23年/①)嘉弥真新也(11年/ソ⑤)尾仲祐哉(16年/D⑥)

      ※近藤弘樹 (17年/楽①)※ 嘉手刈浩太(20年/⑥)

      ※沼田翔平(18年/巨育①)※下慎之介(20年/育①)      

 捕 手…西田明央(10年/③)※フェリペ(17年/オ育④)

 内野手…三ツ俣大樹(10年/オ②)

 外野手…青木宣親(03年/④)山崎晃大朗(15年/⑤)

 外国人…ヤフーレ(投手)サイスニード(投手)エスパーダ(投手)

       ※フェリペ(捕手)

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①中村優斗(愛工大・投手)#11    ④田中陽翔(健大高崎高・内野手)#66

 ②モイセエフ・ニキータ(豊川高・外野手)#31  ⑤矢野泰二郎(四国IL愛媛・捕手)#52

 ③荘司宏太(セガサミー・投手)#30  

中日ドラゴンズ(58名+6名)

 今年は会心のドラフトのなか、田島と砂田、加藤翔が引退を決め、再起をかけた中島も15打席無安打のまま1年でチームを去った。また、20年は育成含め6名の高校生投手を指名し、高橋宏斗や松木平優太が活躍する反面、残りの4選手が全員戦力外通告を受け、改めてプロの厳しさを感じる結果になった。

 驚いたのは加藤竜の野手転向で、育成選手として再び支配下を目指す。26歳での野手転向は異例とも言えるが、糸井嘉男(元日本ハム)の例もあり今後に注目したい。 

【投手】

 正直、小笠原とマルティネスが抜けると穴は大きく、即戦力の金丸と吉田に期待するのも酷で、主力選手の高齢化も進むなか、計算できる選手が欲しい。高橋優貴(巨人)や石川達也(DeNA)、嘉弥真新也(ヤクルト)の左腕は狙い目だと思う。

【野手】

 野手は課題が山積するなか、年齢構成で左打ちの内野手と右打ちの外野手が不足している。内野手は遠藤成(阪神)や福田光輝(日本ハム)、外野手では大田泰示(DeNA)に江越大賀(日本ハム)など候補が限られ、井上新監督の編成に注目したい。

 投 手…田島慎二(11年/③)石森大誠(21年/③)砂田毅樹(13年/D育①)

       福島章太(20年/④)上田洸太朗(20年/育②)加藤竜馬(23年/⑥)

     ※竹内龍臣(20年⑥)※加藤 翼(20年/⑤)※垣越建伸(18年/⑤)

 捕 手…なし

 内野手中島宏之(00年/西⑤)

 外野手…三好大倫(20年/⑥)加藤翔平(12年/ロ④)

 外国人…フェリス(投手)ビシエド内野手)ディカーソン(外野手)

     ※アルバレス(投手)

【ドラフト指名選手 ※予想背番号】

 ①金丸夢斗(関大・投手)#21     ④石伊雄太(日本生命・捕手)#30

 ②吉田聖弥(西濃運輸・投手)#26     ⑤高橋幸佑(北照高・投手)#47

 ③森 駿太(桐光学園高・内野手)#40 ⑥有馬恵叶(聖カタリナ高・投手)#52