ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

24年ドラフト予想☆中日~来季は投手力強化が急務!19~22歳も不足し不安要素が多い

 今季もここ数年の課題が解消されることはなく、得点数は20年から5年連続でリーグワースト、ビジターゲームでの弱さも相変わらずで、ホームゲームは2つ貯金も、ビジターは借金18の内弁慶ぶりで、満を持して就任した立浪和義監督が退任を発表し、3年連続の最下位も現実味を帯びてきた。

 一方でフロントの責任も大きく、昨年のチーム編成から首を傾げた。巨人から中田翔大阪桐蔭高~07年日①)と中島宏之(伊丹北高~00年西⑤)、阪神から山本泰寛(慶大~15年巨⑤)と板山祐太郎(亜大~15年神⑥)を獲得したが、今一つ意図が分からなかった。山本と板山は守備型の選手で、42歳の中島には何を期待したのか…。長打力を期待された中田も35歳、MLB通算40本の新外国人ディカーソンも34歳で全盛期は過ぎており、2人合わせても本塁打7本は立浪監督も頭が痛かっただろう。

【9/22現在のチーム成績…56勝72敗8分/5位】

            24年/5位    23年/6位    22年/6位

 防御率(失点数)…3.03④(463④) 3.08②(498③) 3.28②(495②)

 打 率(得点数)….243④(360⑥) .234⑥(390⑥) .247④(414⑥)

 守備率(失策数)….988②( 65④)     .986④( 79④) .988②( 66②)

 本塁打数/盗塁数…  65⑤/37⑤       71⑥/36⑤     62⑥/66③

 打線をカバーしてきた投手陣も今年は成績が下降気味で、高橋宏がリーグ防御率1位の好成績を残し、小笠原慎之介東海大相模高~15年①)は打線の援護に恵まれず5勝止まりだが、防御率は2点台を維持している。ただ、この2人に続く投手がおらず、先発防御率3.33はリーグ5位で先発のやり繰りに苦労している。

 一方でリリーフ陣は奮闘し、マルティネスがリーグ最多の41セーブを上げ、松山晋也八戸学院大~22年育①)がリーグ2位、清水達也(花咲徳栄高~17年④)がリーグ3位のホールド数を上げ層は厚くなっている。

【投手 ※は規定投球回数 ○の数字は順位】

 ☆先発…※⑪小笠原慎之介(141回1/3)※①高橋宏斗(140回2/3)

     松葉貴大(93回1/3)涌井秀章(79回)メヒア(75回2/3)

 ☆ リリーフ…マルティネス・清水達也(57試合)松山晋也(55試合)斎藤鋼記(52試合)

     藤嶋健人(46試合)橋本侑樹(44試合)勝野昌慶(37試合)

 打線に至っては、正直、最後まで立浪監督が目指す野球が分からなかった。数字を見ると、出塁率は広島に次いで低い.293、犠打成功率はリーグワーストで、盗塁成功率は阪神に次いで低く、盗塁企画数はリーグワーストと一つ先の塁に進める攻撃が身についておらず、さらに得点圏打率はリーグワーストでは得点数は上がらない。

 打てないのであれば四球を選び出塁率を上げる。広い球場で長打が出難いのであれば犠打や盗塁を活用してランナーを進めるなど、数字を見れば見るほど、立浪監督が目指した野球は何だたっのだろうと思う。また、今季規定打席に達したのも細川成也(明秀日立高~16年⑤)と岡林だけで若手の育成もままならなかった。

【野手 ※は規定打数 ○の数字は順位(試合数/打席数)】

 ☆捕 手…木下拓哉(73/199)宇佐見真吾(55/146)加藤匠馬(81/128)

 ☆内野手村松開人(102/389)カリステ(110/383)福永裕基(104/372)

        田中幹也(107/330)石川昂弥(75/248)中田 翔(62/225)

        高橋周平(60/190)山本泰寛(78/178)           

 ☆外野手…※⑤細川成也(136/573)※⑳岡林勇希(116/429)板山祐太郎(60/185)

        大島洋平(75/125)上林誠知(46/102)ディカーソン(32/102)      

●かつてのドラフト巧者も、偏ったドラフトで是正には時間を要する

 チームの低迷はドラフトも大きな要因で、特に立浪監督の3年間は即戦力中心で偏りが目立つ。21年はブライト健太(上武大~21年①)等、右打ちの大学生を3名指名、22年は大学生と社会人、独立リーグから二遊間を守れるいずれも俊足巧打タイプの内野手を4名獲得し、昨年も津田啓史(三菱重工イースト~23年②)と辻本倫太郎(仙台大~23年③)と二遊間の選手を獲得した。

 また、支配下指名した19名のうち、高校生は僅かに5名で、立浪監督自身が高校出身で入団しただけに、即戦力の短期的な補強ではなく、育成を主眼においた長期的な見地に立ったドラフトに期待しただけに残念だった。

 特に昨年は最下位からの巻き返しの気持ちは理解できるが、高校生の指名は最も少ない1名に終わった。しかし1位の草加勝(亜大~23年①)は入団後にトミージョン手術を受け、津田と加藤竜馬(東邦ガス~23年⑥)は一軍未出場、辻本は一軍出場12試合、土生翔太(BC茨城~23年⑤)も7試合登板と結果は散々だった。

 今年の投打の柱である高橋宏と小笠原、細川も岡林も高卒で、以前は根尾昂(大阪桐蔭高~18年①)や石川昂弥(東邦高~19年①)、高橋宏とスケール感のあるドラフトを展開しただけに余計に残念だった。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 19年⑤…岡林勇希(菰野高/⑤・外野手)

 20年③…高橋宏斗(中京大中京高/①・投手)

 21年⑤…なし

 22年⑥…村松開人(明大/②・内野手)福永裕基(日本新薬/⑦・内野手

 23年⑥…なし

  ↓↓

【中日の補強ポイント】 

 投 手…将来のエース候補、即戦力の先発

 捕 手…高校生または大卒社会人

 内野手…高校生の中軸候補

 外野手…高校生と大学生(右打ちならベスト)

 即戦力と内野手に偏ったこの間のドラフトは尾を引きそうだ。19~22歳に投手では松木平優太(精華高~20年育③)と福田幸之介(履正社高~23年④)、野手は捕手の味谷大誠(花咲徳栄高~21年④)と山浅龍之介(聖光学院高~22年④)の計4名しかおらず、捕手以外のすべてのポジションで不足している。ちなみにこの年代4名は12球団最小で、最多は日本ハムの11名なので、同じ年に就任して何かと評価される新庄監督との差がこういったところにもある。

 今季のドラフトは課題が多いなか優先順位は投手になることが予想される。2~3年で是正できるレベルではなく、長期的な視野に立つ必要があると思う。監督選任が難航しているようだが、現状では課題が多すぎまさに火中の栗だ。

☆投手~将来のエース候補、即戦力の先発

 来季以降を見据えると攻撃陣よりも投手陣への危機感の方が強い。今オフは小笠原のMLB移籍の可能性が高く、マルティネスも契約最終年で移籍の可能性がある。さらに来季は柳裕也(明大~16年①)がFAになり、高橋宏もMLBからの注目度が高い。

 加えて長年チームを支えた大野雄大(佛教大~10年①)は来季37歳、松葉貴大(大商大~12年オ①)も36歳、涌井秀章(横浜高~04年西①)は40歳になり、一気に投手陣の顔ぶれが変わる可能性が高く、松木平や草加、仲地礼亜(沖縄大~22年①)等の台頭がないと厳しい。

 一方でリリーフは清水に松山、藤嶋健人(東邦高~16年⑤)、勝野昌慶(三菱重工名古屋~18年③)、左腕の斎藤鋼記(北照高~14年オ⑤)に橋本侑樹(大商大~19年②)と20歳代の脂の乗り切った選手が多く心配はない。

 1位候補は丸夢斗(関大)中村優斗(愛工大)で、ともに先発ローテーションに入る力はあり、小笠原の移籍に備えるならば、左腕の金丸が有力だ。一方で、将来のエース候補で今朝丸裕喜(報徳学園高)清水大暉(前橋商高、左腕の藤田琉生(東海大相模高)も上位候補で、長期的なチーム作りを目標に高校生に移行して良いと思う。 

 甲子園でも活躍した高尾響(広陵高)はゲームメークに長け、球速だけなら田中綾真(旭川実高)昆野太晴(白鷗大足利高)村上泰斗(神戸弘陵高)小船翼(知徳高)狩生聖真(佐伯鶴城高)井上剣也(鹿児島実高)は150キロを超える。

 このほか、沼井怜穏(横浜隼人高)塩貝迅平(京都翔英高)、地元の内山京介(豊橋中央高)は真っ直ぐに力があり、金田龍之介(中津東高)は無名の公立高から現れた逸材だ。また、柴田獅子(福岡大大濠高)は高校通算19本塁打新井瑛太(滝川高)も野手としても評価されている。

 左腕では父親も中日でプレーした洗平比呂(八戸学院光星高)やU-18で評価を上げた高橋幸佑(北照高)は制球力に課題があるが将来性は十分で、冨士大和(大宮東高)奪三振率が高い。

☆捕手~高校生または大卒社会人

 今季は木下拓哉トヨタ自動車~15年③)と宇佐見真吾(城西大~15年巨④)、加藤匠馬(青学大~14年⑤)のベテランを併用した。木下のFA移籍の去就は気になるが、ファームには20歳の山浅と24歳の石橋康太(関東一高~18年④)も控えており補強を急ぐ必要はない。

 ただ、将来の正捕手候補で 箱山遥人(健大高崎高)がリストアップされており、強肩強打の箱山の上位指名はインパクトがあると思う。

内野手~高校生の中軸候補

 内野はレギュラー不在のなか、今季は一塁・石川、二塁・田中、三塁・福永、遊撃は村松が最も多く守り、福永以外全員が25歳以下で将来性もある。さらに守備力に定評のある辻本に龍空(近江高~20年③)、打撃が魅力の津田、俊足の樋口正修(BC埼玉~22年育③)の若手に、ベテランの中田や高橋周平(東海大甲府高~11年①)も控えタレントは多い。

 1位候補で宗山塁(明大)の名前が挙がるが、今まで以上に遊撃候補を増やすことは、単にトレード要員を増やす以外の意味を感じない。むしろ、石塚裕惺(花咲徳栄高)宇野真仁朗(早実高)の将来の中軸候補や、打撃に定評のある今坂幸暉(大院大高)岸本佑也(奈良産大高)など、走攻守揃った三拍子タイプではなく、何か一つのセールスポイントを持った選手を指名して欲しい。

 大学生も同様で、俊足で小技が得意の浦田俊輔(九産大や右のスラッガー佐々木泰(青学大は一芸で補強ポイントに合致する。

☆外野手~高校生と大学生(右打ちならベスト)

 外野手は細川と岡林がレギュラーで、身体能力の高いブライトや長打力が魅力の鵜飼航丞(駒大~21年②)、走力と守備力に長けた三好大倫(JFE西日本~20年⑥)や濱将乃介(NOL福井~22年⑤)がおり慌てる必要はない。ただ、年齢構成が悪く、19~22歳が不在で、加えて左打者が多くバランスが悪い。

 1位候補で名前が挙がる西川史礁(青学大は、中軸を担える即戦力で攻撃陣強化の面でも補強ポイントに合致する。渡部聖弥(大商大)も長打力に加え、俊足強肩で三塁を守れるのも心強い。また、ファームの盗塁王増田将馬(くふうハヤテ)も一芸で狙って良いと思う。

 高校生はいずれも左打ちのモイセエフ・ニキータ(豊川高)ラマル・ギービン・ラタナヤケ(大阪桐蔭高)正林輝大(神村学園高)がリストアップされており、左の長距離砲が川越誠司(北海学園大~15年西②)しかいない状況を考えると補強ポイントに合う。

●上位は即戦力投手か野手か?将来に向け投手力強化が求められる

 今年は1位候補が12人揃わないと言われ、1位指名は重複する可能性が高く、投手なら金丸夢人(関大)中村優斗(愛工大)、野手は西川史礁(青学大で予想してみた。また、2位以降は各チームとの駆け引きになり、左腕や捕手、外野手候補が少なく順位が上がり可能性が高く、反面、高卒内野手は下がるかもしれない。

 今年は投手中心に、期待を込めて高校生を多めに予想した。過去10年でAクラスは一度のみで、ここはオリックスのようにチーム再建に本格的に着手する時季で育成に舵を取って良いと思う。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)             (Bパターン)

 1位~金丸夢斗(関大・投手)        西川史礁(青学大・外野手)      

 2位~モイセエフ・ニキータ(豊川高・外野手)      村上泰斗(神戸弘陵高・投手)

 3位~洗平比呂(八戸学院光星高・投手)   寺西成騎(日体大・投手)

 4位~岸本佑也(奈良産大高・内野手)    高橋幸佑(北照高・投手)

 5位~小船 翼(知徳高・投手)       浦田俊輔(九産大内野手

 6位~笠井建吾(三菱自動車岡崎・投手)   新井瑛太(滝川高・投手/外野手)        

 おススメの選手は今年も候補の多い地元のモイセエフ・ニキータ(豊川高・外野手)で、今春のセンバツでは低反発バットを苦にせず本塁打を放ちミート力も増した。地元枠ではなく、将来の中軸候補として期待値が高い。