エースの今永昇太(カブス)がMLBへ移籍し、昨季10勝のバウアーも退団するなど、下馬評は決して高くなかった。シーズンも浮き沈みが激しく、7月末には9連敗を喫するなどしたが、何とか5割をキープしながら優勝戦線に留まり、最後は広島を振り切り3年連続のAクラスを確保できた。
Aクラスの原動力は、リーグナンバーワンの打線と外国人選手の活躍で、昨季22試合の出場だったオースティンが首位打者を獲得し、牧と宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)、佐野恵太(明大~16年⑨)の中軸4人で、本塁打70本、打点261を稼いだ。
新外国人のジャクソンは規定投球回数をクリアし8勝、ケイも6勝を上げ今永とバウアーの穴を埋めた。リリーフでは、ウィックは16ホールド、ウェンデルケンも17ホールドを上げ、外国人選手の活躍なくしてAクラス入りは無かった。
【24年度チーム成績…71勝69敗3分/3位】
24年/3位 23年/3位 22年/2位
防御率(失点数)…3.07⑤(503⑤) 3.16③(496②) 3.48③(534③)
打 率(得点数)….256①(522①) .247②(520④) .251②(497④)
守備率(失策数)….983⑥( 96⑥) .987②( 69②) .988①( 64①)
本塁打数/盗塁数… 101②/69① 105③/33⑥ 117③/49⑤
チーム防御率はリーグ5位ながら、改善は進んでいる。特にリリーフ陣の頑張りが目立ち、今季は森原康平(新日鉄住金広島~16年⑤)がクローザーを務め、リーグ3位の29セーブを上げた。坂本裕哉(立命大~19年②)に中川虎大(箕島高~17年育①)、徳山壮磨(早大~21年②)もキャリアハイの成績を残し、飛躍のシーズンになった。
先発は今永に代わるエースの東克樹(立命大~17年①)が13勝を上げたが、主戦の大貫晋一(新日鉄住金鹿島~18年③)や濵口遥大(神奈川大~16年①)が不振で、本当にジャクソンとケイがいなかればどうなっていただろうと思う。
【投手 ※は規定投球回数 ○の数字は順位】
☆先発…※⑥東 克樹(183回)※⑫ジャクソン(143回)ケイ(136回2/3)
大貫晋一(88回1/3)
☆ リリーフ…森原康平(58試合)坂本裕哉(48試合)ウィック(43試合)
山崎康晃(38試合)伊勢大夢(37試合)中川虎大(31試合)
徳山壮磨・中川 颯(29試合)ウェンデルケン・佐々木千隼(28試合)
今季は3球団競合した度会が入団し、開幕からド派手な活躍でファンを湧かせた。また、5月には筒香嘉智(横浜高~09年①)が5年振りにMLBから復帰し打線がさらに厚みを増した。
リーグナンバーワンの打線は、チーム打率と長打率、OPSがリーグ1位で、盗塁や犠打成功率も高い。出塁率が高く且つ手堅く送ることもでき、機動力も使え長打力も備わっているバランスの良い打線になっている。
今季は梶原昂希(神奈川大~21年⑥)が一番打者に定着し、チーム最多の16盗塁で機動力を活かし、中軸のオースティンから牧、宮崎、佐野から、桑原将志(福知山成美高~11年④)に山本祐大(BC滋賀~17年⑨)の下位に続く打線は、相手投手から気の抜けない布陣になった。
【野手 ※は規定打数 ○の数字は順位(試合数/打席数)】
☆捕 手…山本祐大(108/403)戸柱恭孝(46/97)伊藤 光(39/94)
☆内野手…※①オースティン(106/445)※③牧 秀悟(133/561)
※⑨宮崎敏郎(125/469)京田陽太(101/236)森 敬斗(71/200)
林 琢真(63/114)
☆外野手…※⑮佐野恵太(139/566)梶原昂希(91/351)桑原将志(106/321)
度会隆輝(75/272)蝦名達夫(76/253)筒香嘉智(57/168)
関根大気(79/142)
●即戦力投手から高校生、野手の指名にシフトしチーム変革の意思が伝わる
直近5年のドラフトは評価できる。1位で森敬斗(桐蔭学園高~19年①)に小園健太(市和歌山高~21年①)、松尾汐恩(大阪桐蔭高~22年②)の高校生を指名し、さらに昨年の度会を含め野手3名を指名している。
それ以前は判を押したように即戦力投手1位指名が通例で、19年に森を指名するまでは6年連続で大学生・社会人指名になり、野手1位指名は7年振り、高卒選手は8年振りで、高卒野手は筒香以来10年振りだった。さらに森も松尾も単独1位指名で、チームを強化する姿勢を窺い知ることができる。
ただ、残念ながら結果が伴っておらず、松尾はまだしも森は伸び悩み、小園は3年目の今年ようやく一軍登板(1試合)を果たしたが物足りない。また、直近5年の支配下指名30名中6名が既に退団し、うち高校生が4名とこの辺りの評価は難しい。
一方、特筆できるのは下位指名野手の活躍で、12年の宮崎から始まり、16年の佐野、17年の山本、21年の梶原は全員がその年のチーム一番最後の指名で、今ひとつドラフトがパッとしないなかでも、ここ10年で6回のAクラス入りを果たせている要因と言える。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
19年②…伊勢大夢(明大/③・投手)
20年④…牧 秀悟(中大/②・内野手)
21年⑥…なし
22年②…なし
23年③…度会隆輝(ENEOS/①・外野手)石田裕太郎(中大/⑤・投手)
↓↓
【DeNAの補強ポイント】
投 手…即戦力の先発と将来のエース候補
捕 手…必要なし
内野手…高校生(右打者ならベスト)
外野手…強いて言えば高校生・大学生の左打者
今年の課題は明白で投手陣の強化になり、特に先発で計算できる投手が欲しい。また、小園が伸び悩んでいる現状を考えれば将来のエース候補も必要になる。一方、野手では宮崎と筒香、オースティンが35歳を超え、主力の世代交代がそこまで来ている。
☆投手~即戦力の先発と将来のエース候補
来季の先発も東を中心に大貫や濵口、石田健大(法大~14年②)など経験のある投手の復帰が待たれる。若手では吉野光樹(トヨタ自動車~22年②)や石田裕が先発で結果を残し、ファームでは育成の庄司陽斗(青森大~23年育③)や2年目の森下瑠大(京都国際高~22年④)が好成績を残しており、期待値は高いが着実に先発候補を抑えておきたい。
リリーフは森原と山崎康晃(亜大~14年①)がクローザー候補で、伊勢や今季ブレイクした坂本に中川虎、イップスを克服した徳山壮磨(早大~21年②)が控え、入江大生(明大~20年①)や三嶋一輝(法大~12年②)が戻れば層は厚くなる。
1位指名が確実視されているのが金丸夢斗(関大)で、今永や東のように1年目からローテーションの中心になれる。中村優斗(愛工大)と篠木健太郎(法大)も上位候補に挙がり、最速159キロの中村はリリーフの適性もあり、篠木は完投能力が高く、金丸を外した際の1位指名が濃厚だ。
このほかの即戦力投手では、竹田祐(三菱重工ウエスト)はゲームメークに長け完投能力も高く、笠井建吾(三菱自動車岡崎)は最速153キロの真っ直ぐの本格派。変化球の精度が高い吉田聖弥(西濃運輸)は、高卒4年目で伸びしろもあり、安里海(BC神奈川)は奪三振率が高くBCリーグの最多勝を獲得した。
高校生では、今朝丸裕喜(報徳学園高)と高尾響(広陵高)が上位候補に挙がり、名門校で1年からエースの高尾の獲得意思を明言している。この2人で同じタイプで、清水大暉(前橋商高)と菊池ハルン(千葉学芸高)も長身右腕で、菊地は身長2メートルを超える。高野結羽(聖光学院高)は高尾と同じくゲームメーク能力が高い。
このほか、池田悠真(紋別高)に山口廉王(仙台育英高)、昆野太晴(白鷗大足利高)、村上泰斗(神戸弘陵高)、井上剣也(鹿児島実高)は中央では無名だが最速150キロ超の本格派右腕で、柴田獅子(福岡大大濠高)は打者としての評価も高い。
関景介(太田西山高)に西川歩(山村学園高)、寺田光(磐田東高)、岩瀬将(誉高)も140キロ後半を投げ、制球力もあり総合力が高く、左腕の山内悠生(北見柏陽高)は高校入学時に投手を始めた選手で伸びしろがある。
地元の逸材では、150キロ左腕の藤田琉生(東海大相模高)は、昨秋から急成長を遂げ世代ナンバーワン左腕と評されるまでに成長し、沼井怜穏(横浜隼人高)もスリークオーター気味のフォームから150キロを投げる。
☆捕手~必要なし
暫くは伊藤光(明徳義塾高~07年オ③)と戸柱恭孝(NTT西日本~15年④)併用だったが、今季は山本が正捕手を務めた。その山本は打撃が課題だったが、今季は打率.291で飛躍し、年齢も27歳と暫くは安泰だ。ファームでは打率3割の松尾も控え、敢えて補強の必要はない。一方で東妻純平(智弁和歌山高~19年④)は外野手としての出番も増やしており来季も構想を鑑みると指名しても良いと思う。
松尾や東妻の打撃を活かすのであれば、石伊雄太(日本生命)は強肩が売りの即戦力で、将来性を期待するのであれば椎木卿五(横浜高)は逆方向にも長打を放つ打てる捕手の候補になる。
☆内野手~高校生(右打者ならベスト)
今季も遊撃以外のレギュラーは安泰だった。ソト(ロッテ)が移籍した一塁にオースティンが入り、二塁の牧、三塁の宮崎は万全だった。課題の遊撃はルーキーの石上泰輝(東洋大~23年④)が開幕スタメンを勝ち取ったが、森敬が最多67試合に出場し、堅守の京田陽太(日大~16年中②)と俊足の林琢真(駒大~22年③)の併用になった。
牧を中心に22~26歳に選手が集中しており、補強を急ぐ必要はないが、来季37歳のシーズンを迎える宮崎の後継や大和、西浦直亨が退団して不足している右打者の補強は必要だ。
上位候補で遊撃手の宗山塁(明大)が挙がるが、22年の林、昨年の石上と2年連続で左打ちの大学生遊撃手を獲得しており、森敬と合わせ同じタイプだけに優先順位は高くない。
リストアップされているなかでは、高校通算64本のスラッガーの宇野真仁朗(早実高)と強肩の岸本佑也(奈良大付高)はチームに不足している右打ちで補強ポイントに合う。このほか、森駿太(桐光学園高)と石見颯真(愛工大名電高)、寺井広大(神村学園伊賀高)の左打ちのスラッガーも候補に挙がり、石見と寺井は外野も守れる。面白いのが庄子雄大(神奈川大)で、一塁到達4秒を切る俊足の一芸があり外野も守れる。
☆外野手~強いて言えば高校生・大学生の右打者
昨年は度会を獲得し、筒香も加わった外野は万全で、大田泰示や楠本泰史を戦力外になるほど層は厚くなった。唯一の懸念材料は佐野の去就だが、梶原や度会、蝦名の若手の成長も著しく補強の優先度は高くない。
そのなかでモイセエフ・ニキータ(豊川高)と吉納翼(早大)の高校・大学のスラッガーが候補に挙がり、筒香以外に長距離砲が不在で獲得はプラスになる。また、50メートル4秒を切る俊足の山口隼輝(BC神奈川)は機動力強化に繋がる。
●今年は即戦力の先発投手が最優先!投手・野手ともに地元候補が多い
今年は投手力強化が優先課題で、1位候補は金丸夢斗(関大)が有力で、言い換えれば金丸を獲得できれば成功ドラフトと言える。ただ、競合は必至で状況を見て十八番の単独指名で中村優斗(愛工大)を狙うのもアリだと思う。
投手で言えば、左投手が不足している訳ではなく、年齢構成も悪くない。野手も右打者が不足している以外は、主力のベテランに若手が着実に成長しており、ポジション的もウィークポイントはレギュラー不在の遊撃手だけで、不自由なドラフトを強いられることもなく、昨年とは逆に投手中心の指名になることが予想される。
【指名シミュレーション】
(Aパターン) (Bパターン)
1位~金丸夢斗(関大・投手) 中村優斗(愛工大・投手)
3位~竹田 祐(三菱重工ウエスト・投手) 沼井怜穏(横浜隼人高・投手)
4位~石見颯真(愛工大名電高・内野手) 山内悠生(北見柏陽高・投手)
5位~椎木卿五(横浜高・捕手) 寺井広大(神村学園伊賀高・内野手)
6位~井上剣也(鹿児島実高・投手) 森 駿太(桐光学園高・内野手)
おススメは、大卒3年目の竹田祐(三菱重工ウエスト)で、ドラフト解禁の昨年は不振で、大学時代から2度目の悔しい指名漏れを味わったが、今季は復活を遂げた。変化球を自在に操るイニングイーターで完投能力も高く、チームにフィットすると思う。