ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年戦力展望☆ソフトバンク~大型補強で優勝候補の筆頭!世代交代も進み、常勝軍団再構築を目指す

 藤本博史監督を迎え、開幕8連勝と絶好のスタートを切った。しかし、シーズン早々に栗原陵矢(春江工高~14年②)が左ひざのケガでシーズン絶望、クローザーの森唯斗三菱自動車倉敷~13年②)も不振で二軍落ちするなど、主力選手が相次いで離脱。ただ、選手層の厚さと若手の台頭で乗り切り、9/15に優勝マジックが点灯した。

 そこからオリックスと一進一退の攻防を続けながら、141試合目にマジック1でリーグ優勝に王手をかけた。しかし、残り2試合でまさかの連敗…逆にオリックスは連勝で最後の最後で勝率で並ばれ、直接対決の勝率差で優勝を逃した。雪辱を晴らすべき臨んだファイナルステージも1勝するのがやっとで2年連続のV逸になった。

 今季は稀に見る大型補強を敢行し、一方で初の4軍制を敷くなど、補強と育成を並行して進め、再度常勝軍団を目指すシーズンになる。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点

    22年 2位   76勝65敗  2分 .255  108本   86個  555点  3.07  471点

 21年 4位 60勝62敗21分 .247  132本   92個  564点  3.25  493点

 20年 1位 73勝42敗  5分 .249  126本   99個  531点  2.92  389点

 19年 2位 76勝62敗  5分 .251  183本 113個  582点  3.63     564点

 18年 2位 82勝60敗  1分 .266  202本   80個  685点  3.90  579点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~野村 勇(内野手~NTT西日本④) 

 20年~なし

 19年~津森宥紀(投手~東北福祉大③)

    18年~泉 圭輔(投手~金沢星稜大⑥)

 17年~周東佑京(内野手~東農大オホーツク育②) 

 選手層の厚さで育成に定評があり、ドラフトが上手く進んでいる印象があるが、直近5年は決して成果が出ているとは言えない。

 投手なら津森と泉のほかにも、椎野新(国士館大~17年④)や甲斐野央(東洋大~18年①)などリリーフばかりで、先発投手がおらず、昨シーズンのV逸の要因の一つになった。ただ昨年、ようやく大関友久(仙台大~19年育②)に板東湧梧(JR東日本~18年④)が結果を残し、今季は大関開幕投手に指名され、主力誕生に期待したい。

 打者もレギュラーと呼べる選手がおらず、野村勇は内外野守れるユーティリティが災いしたか定位置確保には至らず、周東はさすがに代走要員ではないが、レギュラー獲得には至っていない。即戦力入団の佐藤直樹JR西日本~19年①)に海野隆司(東海大~19年②)、柳町達(慶大~19年⑤)もライバルが多く、まだ時間がかかりそうだ。

 このほかにも、13名指名した高校生選手のうち、投手は田浦文丸(秀岳館高~17年⑤)の1勝、打者は野村大樹(早実高~18年③)の20安打が最高で、8選手は一軍出場すらない。また、上位指名選手の活躍が少ない一方、育成選手も17年こそ5名支配下登録されたが、18年~21年の33名のうち、支配下大関と渡邊陸(神村学園高~18年育①)のみと翳りが見え、今季の大型補強に踏み切ったことも理解できる。

 

●投手陣~課題はエース千賀が抜けた先発陣の再編とリーグワーストの与四球の減少

 昨季もチームを支えたのはリリーフ陣で、当初は森をクローザーに据え、モイネロと又吉克樹(四国IL香川~13年中②)のセットアッパー構想だったが、森が不振で二軍調整になり先発へ転向。又吉も骨折で離脱し、リリーフ陣の再編を迫られた。

 モイネロを抑えにし、8回に定着したのが広島を戦力外になり、独立リーグを経て育成選手でNPBに復帰した藤井晧哉(おかやま山陽高~14年広④)で、開幕前に支配下登録された苦労人は55試合で防御率1点台の活躍を見せた。

 左キラーの嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年⑤)は、チーム最多の56試合に登板し、6年連続の50試合登板で防御率は圧巻の0.99。松本裕樹(盛岡大付高~14年①)もシーズン途中から勝ちパターンに定着し、津森と甲斐野は防御率2点台、泉も前半はケガで出遅れたが、後半戦60試合で30試合登板とフル回転した。

 先発はエースの千賀滉大が7年連続、東浜巨(亜大~12年①)は5年振りに2桁勝利を上げたが、石川柊太(創価大~13年育①)は負け越し、大関は病気治療で離脱、和田毅早大~02年自)も17試合登板に留まるなど、先発投手のやり繰りに苦労した。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆千賀滉大(144回)石川柊太(136回1/3)東浜 巨(136回)

     大関友久(101回1/3)レイ(100回)和田 毅(81回)

     板東湧梧(62回1/3)

 ・救援…嘉弥真新也(56試合)藤井晧哉(55試合)モイネロ(53試合)

       津森宥紀(51試合)松本裕樹(44試合)又吉克樹(31試合)

       泉 圭輔(30試合)森 唯斗(29試合)

【今年度の予想】

 ・先発…東浜 巨 ※有原航平 和田 毅 石川柊太 藤井晧哉 大関友久

      (武田翔太 ※大津亮介 ※ガンケル 森 唯斗 杉山一樹 板東湧悟)

 ・中継…津森宥紀 又吉克樹 泉 圭輔 嘉弥真新也 松本裕樹

      (甲斐野央 椎野 新 高橋純平 田浦文丸 ※古川侑利 笠谷俊介)

 ・抑え…モイネロ ※オスナ 

 本人の念願がようやく叶った格好だが、エース千賀のMLB移籍は痛い。実績のある東浜と石川、開幕投手大関が軸で、NPBに復帰した有原航平(早大~14年日①)までは決まりだと言えるが、あとは未知数と言える。残り3枠は、先発転向の藤井、ベテランの和田、先発転向の森、昨年後半に先発ローテに定着した板東も候補になる。

 このほか、毎年、期待の選手で名前の挙がる杉山一樹(三菱重工広島~18年②)に、ここ数年故障続きの武田翔太宮崎日大~11年①)が控え、即戦力右腕の大津亮介(日本製鉄鹿島~22年②)、阪神でNPB通算3年15勝のガンケルも新たに加入した。層が厚くなったとまでは言えないが、昨年より枚数は増えたと言える。

 リリーフ陣は、ロッテからオスナが加入し一番の補強になった。19年にメジャーで最多セーブにも輝いた実績に偽りはなく、昨年ロッテに途中加入し、29試合で10ホールド、9セーブで防御率は0.91で圧巻の数字を残した。

 オスナをクローザーに据え、セットアッパーでモイネロと又吉、松本が揃う布陣は強固で、ここに嘉弥真や津森など、ワンポイントに滅法強い投手が控える。さらに160キロ右腕の甲斐野に新加入の古川侑利(有田工高~13年楽④)、泉や椎野はロングリリーフもでき、層も厚く数的にも問題ない。先発投手が5回までゲームを作ることができれば、鉄壁のリリーフ陣で乗り切れるだろう。

 

●野手陣~今季の課題はチームバッティングの向上!目指す野球を実現できるか

 野手の誤算は栗原のケガによる離脱で、開幕5試合目で左ひざを負傷すると、シーズン復帰が絶望になった衝撃は大きかった。藤本監督は栗原と柳田悠岐(広島経大~10年②)、甲斐拓也(楊志館高~10年育⑥)のレギュラーを明言していたなかで、栗原の開幕早々の離脱で早くも構想が狂ってしまった。

 栗原の離脱に加え、柳田も本調子とは言えず、グラシアルにも衰えが目立つなか、チームを救ったのは今宮健太(明豊高~09年①)と牧原大成(城北高~10年育⑤)の2人だった。レギュラー白紙を言い渡された今宮は、昨季は打撃の好不調の波が少なく実力でレギュラーを奪い返した。内外野を守れる牧原も、藤本監督より試合の流れを変える「ジョーカー」と評され、二塁と三塁、遊撃、中堅を守り、途中出場で存在感を示しレギュラーを獲得。規定打席には2打席不足したが、打率.301の好成績を残した。

 このほか若手の活躍も目立ち、三森大貴(青森山田高~16年④)が一番・二塁に定着。ルーキー野村勇は10本塁打でパンチ力もあることをアピールし、柳町は外野の全ポジションを守り、得点圏打率3割の勝負強さを見せた。ファームではリチャード(沖縄尚学高~17年育③)が3年連続本塁打王、昨季は打点と合わせ2冠に輝いた。

 一方で、主力のグラシアルとデスパイネがチームを去り、松田宣言も出場機会を求め巨人へ移籍するなど、懸念されていた世代交代は否応なしに進んでいる。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…甲斐拓也(130/323)

 内野手…☆今宮健太(130/510)牧原大成(120/441)三森大貴(102/437)

     中村 晃(114/435)グラシアル(90/386)周東佑京(80/319)

     野村 勇(97/203)ガルビス(30/130)川瀬 晃(73/106)

     松田宣浩(43/106)     

 外野手…柳田悠岐(117/437)柳町 達(107/364)デスパイネ(89/331)

       上林誠知(33/100)

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)三森大貴④      1)三森大貴④     

  2)今宮健太         2牧原大成⑧        

  3)柳田悠岐⑨      3)柳田悠岐   

  4)グラシアルDH    4)グラシアル⑦      

  5)栗原陵矢⑦      5)デスパイネDH   

  6)中村 晃③      6)中村 晃③     

  7)松田宣浩⑤      7)今宮健太  

  8)上林誠知⑧      8)周東佑京⑤

  9)甲斐拓也②      9)甲斐拓也②

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…※嶺井博希 甲斐拓也 谷川原健太(海野隆司 渡邊 陸)

 内野手…※アストゥディーヨ 今宮健太 牧原大成 三森大貴 周東佑京

       野村 勇(川瀬 晃 ガルビス 増田 珠 リチャード 野村大樹) 

 外野手…※近藤健介 中村 晃 柳田悠岐 ※ホーキンス 栗原陵矢 正木智也

     柳町 達(佐藤直樹  上林誠知)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)三森大貴④      捕 手)甲斐拓也(嶺井博希)

  2)今宮健太⑥      一塁手)中村 晃(アストゥディーヨ)

  3)近藤健介⑦      二塁手)三森大貴(野村 勇)

  4)柳田悠岐DH     三塁手)栗原陵矢(周東佑京)

  5)栗原陵矢⑤      遊撃手)今宮健太

  6)牧原大成⑧      左翼手)近藤健介

  7)中村 晃③      中堅手)牧原大成(柳町 達)

  8)正木智也⑨      右翼手)正木智也(谷川原健太)

  9)甲斐拓也②      D H)柳田悠岐(ホーキンス)          

 投手最大の補強がオスナなら、打者は日本ハムからFA加入の近藤健介(横浜高~11年④)で、楽天を除くパ・リーグ5球団の大争奪戦のうえ獲得した。通算打率は3割を超え、高い出塁率を誇るリーグ屈指の巧打者の加入は間違いなく打線に厚みを増す。

 現段階でレギュラーポジションはほぼ埋まっていると言え、空いているポジションは一塁または右翼と少ない。また、牧原や周東のほかに、野村勇と増田珠(横浜高~17年③)は内外野を守れ、捕手登録の谷川原健太(豊橋中央高~15年③)も外野での出番が多く、チームにユーティリティプレーヤーが豊富で、ポジション獲得は厳しさを増す。

 ポジション別に見ると、捕手は甲斐で決まりのなか、2番手捕手で嶺井博希(亜大~13年D③)が、DeNAよりFA加入した。若手の海野や渡邊陸は、まず嶺井から2番手捕手を奪い返すことが先決になる。内野は二塁の三森、遊撃には今宮、三塁は今季外野からコンバートになる栗原が控え、一塁は中村晃(帝京高~07年③)が本命だが、若手のリチャードや野村大、新外国人のアストゥディーヨで争う。 

 外野は近藤の加入に加え、同じ左打ちの柳町に、ケガから復帰した上林誠知(仙台育英高~13年④)、左投手に強い正木智也(慶大~21年②)もおり、柳田の守備負担を軽減することで、本来のパフォーマンスを引き出す狙いが活かせる。

 不安材料はグラシアルにデスパイネ、松田の右打者の主力が一斉に退団。レギュラーには左打者が多く、甲斐と今宮以外の右打者の成長がポイントになる。野村勇にリチャード、正木、野村大、増田、佐藤と候補は多いだけに、このチャンスをモノにしたい。また、2年目のガルビス、新加入のホーキンスやアストゥディーヨ等、外国人選手に快音が聞こえないのも気がかりだ。

 

FAで近藤と嶺井、有原が復帰し、ガンケルとオスナの80億円補強で優勝大本命

 注目の選手には2人の新加入選手を挙げたい。投手はロッテから加入したオスナで、既にオープン戦でも5イニングで無安打、無失点、奪三振率14.40の驚異的なパフォーマンスを見せている。昨年は途中入団でセットアッパーからのスタートになったが、今季は開幕から守護神を任せられ、冗談なしに日本記録の54セーブ更新に期待がかかる。正直、いまのオスナの投球を見ては打たれるイメージが湧かない。

 野手は近藤健介で、WBCでも2番打者として先発スタメンに名を連ね、チャンスメーカーにもポイントゲッターにもなれる活躍はさすがだ。注目部分はタイトル獲得で、最高出塁率のタイトルは2度あるが、最高打率や最多安打はまだなく、稀代のヒットメーカーとして今季の獲得に期待がかかり。また、長打率もここ5年は4割を超えており、広い札幌ドームから狭いPayPayドームに変わり、本塁打数増も期待できる。

 今年は大型補強で優勝候補の筆頭だが、逆に敵はその「勝って当然」のプレッシャーになるかも知れない。最後に2010年代に圧倒したホークスは、ドラフトと育成、FAのバランスが取れていたが、最近はドラフトと育成の部分が寂しい。入団1年目で育成契約や育成選手も54名いるが、支配下は既に67名は、正直夢がない…。

23年戦力展望☆DeNA~投打に選手層が厚くなり、セ・リーグ優勝の大本命!25年振りの歓喜に期待

 振り返れば昨年もベストメンバーで開幕を迎えることが出来なかった。エースの今永昇太(駒大~15年①)がキャンプ中の故障で2年連続で開幕に間に合わず、ソトとオースティンもケガで離脱し、こちらも2年連続で不在となり、開幕は広島相手に3連敗を喫するなど、一昨年の開幕6連敗…シーズン最下位の悪夢が頭を過った。

 結局、3~4月は借金5で終え、5~6月も借金1となかなか浮上のきっかけを掴めなかった。しかし、徐々に投打が噛み合い、7月に勝ち越すと8月はホームゲーム17連勝を果たすなど、独走状態のヤクルトを猛追し、ゲーム差を4まで縮めた。

 そして8/26から、得意の本拠地で首位攻防戦を迎えたが、投手陣が打ち込まれ3連敗で勢いを失うと、9月は負け越し…結果2位で終えた。ただ、一昨年の最下位から、ヤクルトを追い詰めたことは自信になり、着実にチーム力がアップしている。

【過去5年のチーム成績】

     順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 22年 2位 73勝68敗  2分 .251  117本   49個  497点  3.48  534点

 21年 6位 54勝73敗16分 .258  136本   31個  559点  4.15  624点

 20年 4位 56勝58敗  6分 .266  135本   31個  516点  3.76  474点

 19年 2位 71勝69敗  3分 .246  163本   40個  596点  3.93  611点

 18年 4位 67勝74敗  2分 .250  181本   71個  572点  4.18  642点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~なし

 20年~入江大生(投手~明大①)牧 秀悟(内野手~中大②)

    19年~伊勢大夢(投手~明大③)

 18年~大貫晋一(投手~新日鉄住金鹿島③)

 17年~神里和毅(外野手~日本生命②)

 エースの今永に東克樹(立命大~17年①)の両左腕、昨年リリーフでブレイクした入江、遊撃手の森敬斗(桐蔭学園高~19年①)と正捕手候補の松尾汐恩(大阪桐蔭高~22年①)に共通するのは、DeNAが単独指名した1位指名の選手である。

 競合指名を避け、単独指名は消極的とも言う意見もあるが、以前のように「(競合)指名しても、どうせ来てくれない」時代ではないし、元々横浜が本拠地のDeNAは人気球団であり、逆に単独指名こそ勇気のある指名だと思う。

 また、以前は毎年のように上位は大学生・社会人の即戦力選手の指名が中心で、将来どんなチームを目指しているのかが見えなかった。確かに高卒選手で主力と呼べるのは、投手では田中健二朗常葉菊川高~07年①)、野手は桑原雅志(福知山成美高~11年④)まで遡らなくてはならないが、直近5年は小園健太(市和歌山高~21年①)に松尾と2年連続で高校生選手を1位指名し、森を加えた3名の指名は、育成を重点に「こういったチームを作りたい」という明確な意志を感じ評価できる。

 残念ながら高校生はまだ結果を残せていないが、エース格に成長した大貫、伊勢と入江はセットアッパーの地位を確立し、2年目にして全試合4番で出場した牧など、上位指名した選手が主力に成長しており、着実に結果も付いてきている。

 

●投手陣~競争激化のなか、バウアーの電撃加入でさらに投手陣に厚みを増した

  チームの躍進を支えたのは投手陣の改善で、一昨年12球団で唯一4点台だった防御率がリーグ3位の3.48と大きく改善した。

 先発は大貫が2年連続ただ一人シーズンを完走し、2年振りの2桁勝利を上げ、5月に復帰した今永も11勝を上げ貯金7とエース復活を強く印象づけた。特に、カード頭の火曜に無類の強さを発揮し、ノーヒットノーランを含む10試合で8勝負けなしは見事だった。このほか濱口遥大(神奈川大~16年①)に石田健大(法大~14年②)、ロメロを軸に、コロナの影響で穴が空いた部分を上茶谷大河(東洋大~18年①)や京山将弥(近江高~16年④)、途中加入のガゼルマンが埋めた。

 先発以上に改善を見せたのがリリーフ陣で、山崎康晃(亜大~14年①)は自己最高の防御率1.33、自己最多タイの37セーブで完全復活を遂げると、ともに70試合以上を投げた伊勢は防御率1点台、エスコバーも2点台と圧倒的な安定感を誇った。さらに2年目の入江も57試合登板でリリーフに定着、ベテランの平田と田中は手術から復帰を果たし、同店、僅差、ビハインド等、どんな場面でも登板し存在感を見せた。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆今永昇太(143回2/3)大貫晋一136回2/3)濵口遥大(112回1/3)

      ロメロ(92回1/3)石田健大(82回1/3)上茶谷大河(66回2/3)

 ・救援…伊勢大夢(71試合)エスコバー(70試合)入江大生(57試合)

       山﨑康晃(56試合)平田真吾(47試合)田中健二朗(47試合)

【今年度の予想】

 ・先発…石田健大 今永昇太 濵口遥大 上茶谷大河 ガゼルマン 京山将弥 

      (東 克樹 阪口晧亮 徳山壮磨 大貫晋一 坂本裕哉 ※バウアー) 

 ・中継…伊勢大夢 入江大生 平田真吾 田中健二朗 エスコバー 森原康平   

      (三嶋一輝 三浦銀二 ※橋本達弥 ※ウェンデルケン 宮国椋丞) 

 ・抑え…山﨑康晃

 先発は残念ながら大貫がキャンプ中のケガで間に合わないが、今永と濱口、石田、上茶谷に、キャンプで好投しているガゼルマン、そろそろ先発ローテに定着したい京山がおり頭数は揃っていり。ここにMLB通算83勝、20年にはサイヤング賞にも輝いたバウアーが電撃加入し、大貫が戻り、バウアーが加わった布陣を早く見てみたい。

 このほかにも先発候補は多く、昨年開幕投手を務めた東、平良拳太郎(北山高~13年巨⑤)に中日から加入の笠原祥太郎(新潟医療福祉大~16年中④)は、復活を期すシーズンになり、坂本裕哉(立命大~19年②)も先発ローテに返り咲きたい。若手では、昨年ファームの先発ローテの中心だった阪口晧亮(北海高~17年③)に徳山壮磨(早大~21年②)、優秀投手賞に選ばれた石川達也(法大~20年育①)が控え、即戦力の吉野光樹(トヨタ自動車~22年②)候補で競争が激しくなってきている。

 リリーフはセットアッパーの伊勢とエスコバー、入江からクローザーの山崎に繋ぐ形ができているが、昨年はいずれも登板過多で勤続疲労が心配だ。難病からの復活を目指す三嶋一輝(法大~12年②)に移籍1年目は不本意な成績に終わった森原康平(新日鉄住金広畑~16年楽⑤)が加われば、平田、田中と合わせ経験、実績ともに十分なだけに層が厚くなる。新加入の橋本達弥(慶大~22年⑤)は大学時代からリリーフ専任、ウェンデルケンもMLB通算144試合登板の実績があり、リリーフ陣を救いたい。

 

●野手陣~京田の加入で内野の層はさらに厚くなった。あとは外国人選手の復調がカギ

 一昨年、ともにリーグ2位だったチーム打率と得点数は数字を下げたが、本塁打頼みの大味な打線から、機動力や小技を活かした打線にモデルチェンジした。失策数はリーグ最少の64と1点をもぎ取り、改善した投手陣と堅守で接戦をものにすることができるようになった。

 その中心にいたのが2年目の牧で、三浦監督は一度も牧を4番以外で使うことがなく、牧も打率.291、24本塁打と87打点はいずれもリーグトップで、得点圏打率は3割を超え、4番の重責を果たした。更に、チーム事情で様々な打順を務めた佐野恵太(明大~16年⑨)が、交流戦後に3番に戻ると、佐野~牧~宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)のクリーンアップが機能し、7~8月の快進撃に繋がった。結果、佐野は最多安打のタイトルを獲得し、宮崎も3年連続3割をマークし国産打線が奮起した。

 誤算は両外国人の不振で、ソトは来日5年目にした初めて規定打席に届かず、オースティンは右肘の手術の影響で、24本塁打が1本塁打に激減し、チームが好調だxtyただけに離脱は痛かった。

 そのなかで、若手では森と楠本泰史(東北福祉大~17年⑧)がともにキャリアハイの成績を残し、大和(樟南高~05年神④)や大田泰示東海大相模高~08年巨①)のベテランが要所で良い働きを見せた。また、内野の柴田竜拓(国学院大~15年③)に藤田一也(近大~04年④)、外野の関根大気(東邦高~13年⑤)は守備固めや代走、犠打など安定感抜群のプレーでチームを支えた。WBCのスター選手も良いが、こういう地味だが職人気質でチームを支える選手にも、もっとスポットライトを当てて欲しい。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…嶺井博希(96/362)戸柱恭孝(72/151)伊藤 光(40/103)

 内野手…☆牧 秀悟(135/568)☆宮崎敏郎(122/482)ソト(117/412)

       大和(91/277)柴田竜拓(96/198)森 敬斗(61/168)

 外野手…☆佐野恵太(135/574)☆桑原将志(130/529) 楠本泰史(94/327)

       関根大気(104/225)蝦名達夫(61/181)大田泰示(62/153)

       神里和毅(81/107)     

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)桑原将志⑧      1)桑原将志⑧      

  2)佐野恵太⑦        2)楠本泰史⑨       

  3)楠本泰史⑨           3)佐野恵太⑦    

  4)牧 秀悟③      4)牧 秀悟④     

  5)宮崎敏郎⑤         5)宮崎敏郎⑤      

  6)知野直人      6)ソト③      

  7)柴田竜拓⑥      7)大和⑥     

  8)戸柱恭孝②      8)嶺井博希②

  9)東 克樹①      9)今永昇太①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…戸柱恭孝 伊藤 光 山本祐大(東妻純平)

 内野手…牧 秀悟 森 敬斗 大和 柴田竜拓 宮崎敏郎 ※京田陽太 ソト

    (※林 琢真 藤田一也 田中俊太 小深田大地 知野直人)     

 外野手…大田泰示 桑原将志 佐野恵太 楠本泰史 ※アンバギー 関根大気

    (オースティン 神里和毅 梶原昂希 蝦名達夫)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)桑原将志⑧      捕 手)戸柱恭孝(伊藤 光) 

  2)京田陽太⑥      一塁手)ソト

  3)佐野恵太⑦      二塁手)牧 秀悟

  4)牧 秀悟④         三塁手)宮崎敏郎(柴田竜拓)

  5)宮崎敏郎⑤         遊撃手)京田陽太(大和)

  6)ソト③        左翼手)佐野恵太(楠本泰史)

  7)アンバギー⑨        中堅手桑原将志

  8)戸柱恭孝②      右翼手)アンバギー(大田泰示

  9)今永昇太①        

 レギュラーポジションはほぼ埋まっており、一塁ソト、二塁は牧、三塁には宮崎がおり、外野も左翼の佐野と中堅の桑原は決まりで、捕手と遊撃手、右翼手の争いになる。

 捕手は嶺井博希がソフトバンクにFA移籍したが、影響は少ないと思う。ここ数年は正捕手不在の状況が続き、戸柱恭孝(NTT西日本~15年④)に伊藤光明徳義塾高~07年オ③)、嶺井が隔年ごとに活躍していた状況だった。強肩の山本祐大(BC滋賀~17年⑨)に、ファームで鎬を削る益子京右(青藍泰斗高~18年⑤)と東妻純平(智弁和歌山高~19年④)にはチャンスで、松尾の加入を起爆剤にして欲しいところだ。

 遊撃も同じで、レギュラー候補の森はキャリアハイの61試合に出場したが、大和や柴田から定位置を奪うことができなかった。そうこうしているうちに、中日から名手の京田陽太(日大~16年中②)が加入し、森の成長を待つ時期は過ぎたと言える。

 右翼は激戦区で、昨年後半に2番に定着した楠本、守備走塁のスペシャリスト関根、走攻守揃ったベテランの大田、打撃の評価が高い蝦名達夫(青森大~19年⑥)に加え、21年にメジャーデビューした長距離砲のアンバギーも控え、誰がレギュラーを勝ち取ってもおかしくない。こうなるとオースティンが戻ってきても、ポジションは確約できておらず、ハイレベルな競争がチームの底上げに間違いなく繋がる。

 最後に期待の若手を紹介すると、ファームで打撃面の成長著しい小深田大地(履正社高~20年④)はポスト宮崎の座を狙う。ルーキーの林琢真(駒大~22年③)と育成の村川凪(四国IL徳島~21年育①)は俊足が武器で、投手から野手転向した勝又温史(日大鶴ケ丘高~18年④)も打撃面の成長著しい。現状、支配下選手64名、うち野手は29名と少なくと枠にはまだ余裕があり、支配下争いにも注目したい。

 

●細かな野球に外国人選手の長打力が加われば、得点力アップで優勝を狙える布陣

 注目の選手は、やはりバウアーで、サイヤング賞を獲得した投手のNPB入団は史上2例目で、否応なしに期待が高まる。15年から5年連続2桁勝利、150キロ後半のストレートにカットボールとスライダー、カーブを駆使し奪三振率が高い。22年に出場停止を受け、1年以上実戦から離れていたブランクと「球界屈指の問題児」と呼ばれた素行部分は気になるが、現役バリバリのメジャーリーガーの投球が今から待遠しい。

 野手は中日からトレードで加入した京田陽太で、昨年は本来のプレーからは程遠く、プロ入り最低の数字に終わった。ただ、今回のトレードには悲壮感はなく、新天地での活躍を期待する声が多い。元々、守備は一級品だが打撃が課題で、1年目の打率.264が最高だが一昨年は打撃も復調気配で、打てる選手が多いチームの中でまだまだ向上できる可能性はある。

 チームの地力は付いてきたが、優勝に不可欠なのは外国人選手の活躍で、投手ならバウアーが先発ローテを守り、ウェンデルケンがリリーフのピースにハマれば層はさらに厚くなる。打線は佐野や牧のマークを厳しくさせないためにも、ソトとオースティンの復調がポイントになる。

23年戦力展望☆西武~投手力が今年も万全!山賊打線が復活すれば3年振りの優勝も狙える!

 一昨年の42年振りの最下位から巻き返しを狙ったシーズンは、大方の下馬評を覆し7月中旬に首位浮上。8月は貯金を最大10にし、オリックスソフトバンクと激しい優勝争いを繰り広げた。勝負の9月に7連敗を喫し優勝争いから脱落したものの、何とかAクラスを確保できた。

 Aクラス復帰の原動力になったのは投手陣の大幅改善で、4年連続でリーグワーストだった防御率が2.75と、1点以上も改善されリーグトップになり、先発陣は前年の4.16から2.99、リリーフ陣も3.59から2.31とまさに盤石で、山賊打線と恐れらた打高投低のチームから、投高打低のチームに変貌した。

 オフには6年指揮を執り、Aクラス5回の辻発彦監督が退任し、松井稼頭央新監督を迎え、チーム再建を引き継ぐことになる。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 22年 3位 72勝68敗  1分 .229  118本   60個  464点  2.75  448点

    21年 6位 55勝70敗18分 .239  112本   84個  521点  3.94  589点

 20年 3位 58勝58敗  4分 .238  107本   85個  479点  4.28  543点

 19年 1位 80勝62敗  1分 .265  174本 134個  756点  4.35  695点

 18年 1位 88勝53敗  2分 .273  196本 132個  792点  4.24  653点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~なし

    20年~水上由伸(投手~四国学院大/育⑤)

 19年~宮川 哲(投手~東芝①)

 18年~松本 航(投手~日体大①)森脇亮介(投手~セガサミー⑥)

 17年~平良海馬(投手~八重山商工高④)

 西武と言えば、もはや恒例ともなってしまったFAによる選手の移籍だが、昨年も正捕手の森友哉オリックスへ移籍した。森の移籍で、チーム通算の選手流出は20人になり、12球団で断トツの多さになる。ただ、FA制度が導入(93年)以降、西武はリーグ優勝7回、うち日本一は5回。最下位は一昨年の一度だけと、育成手腕の高さとドラフト巧者振りが際立ち、ここはもっと評価されて良い。

 昨年こそ、主力選手が生まれていないが、14試合に先発した隅田知一郎(西日本工大~21年①)に、9試合に先発し、隅田を上回る3勝を上げた佐藤隼輔(筑波大~21年②)、森移籍後の正捕手候補で古賀悠斗(中大~21年③)が控えており、なんだかんだ毎年のように主力選手を獲得、育成できている。

 とにかく西武は年齢バランスが秀逸で、平均年齢26.6歳の若いチームながら19歳~33歳まで年齢表の空白がない。年齢の偏りにより、一気に戦力が落ちるリスクが少なく、FAで選手が流出しても安定的な戦いができる要因の一つと言える。

 ただ気になるのは、源田壮亮トヨタ自動車~16年③)以降、野手の主力選手が誕生していないことで、期待の若手は数多くいるが、今ひとつ伸び切れておらず、山賊打線が鳴りを潜め、投高打低のチームになってしまった大きな要因と言える。

 

●投手陣~先発・リリーフともに盤石な投手陣だが、平良の先発転向がどう影響するか

  一昨年、ようやくチーム防御率4点台から抜け出した投手陣は、先述した通り大幅改善し、リーグ屈指の投手陣に変貌した。エースの高橋光成前橋育英高~14年①)に與座海人(岐阜経大~17年⑤)、新外国人のエンスが2桁勝利に防御率2点台の好成績を残し、故障に苦しんだ今井達也(作新学院高~16年①)も、僅か9試合の先発ながら5勝を上げ防御率2.41と、万全であれば結果を残せることを証明した。

 その先発陣より強固だったのがリリーフ陣で、平良と水上はともに60試合以上に登板し、30ホールドで防御率は脅威の1点台。森脇と本田圭佑東北学院大~15年⑥)も40試合で防御率1点台の好成績を残した。クローザーの増田達至(NTT西日本~12年①)は31セーブ、宮川に左腕の佐々木健(NTT東日本~20年②)、新加入のボーを加えたリリーフ陣は、首位に立った7/18時点で防御率1.55、6回終了時にリードしたゲームは36勝1敗とまさに鉄壁を誇った。

 ただ、シーズン終盤は蓄積疲労もあったか、8~10月は防御率3点台と失速の原因になっただけに、さらなる改善も求められる。

【22年シーズン結果】☆は規定投球回数クリア ※は新加入選手

 ・先発…☆高橋光成(175回2/3)松本 航(129回2/3)エンス(122回1/3)

       與座海人(115回2/3)平井克典(81回)

 ・救援…平良海馬(61試合)水上由伸(60試合)増田達至(52試合)

       本田圭佑(52試合)宮川 哲(45試合)森脇亮介(43試合)

       佐々木健(37試合)

【今年度の予想】

 ・先発…高橋光成 松本 航 今井達也 與座海人 平良海馬 エンス 

      (渡邊勇太朗 隅田知一郎 佐藤隼輔 浜屋将太 ※青山美夏人 赤上優人)

 ・中継…宮川 哲 平井克典 佐々木健 森脇亮介 本田圭佑 水上由伸

      (公文克彦 田村伊知郎 ボー ※張奕 ※ティノコ 大曲 錬)

 ・抑え…増田達至  

 先発は開幕投手に指名されている高橋に松本、今季から先発に転向する平良、昨年2桁の與座とエンス、今井も故障の心配がなければ当確と言え、既に先発の枠が埋まっている。ここに中継ぎもできる平井克典(ホンダ鈴鹿~16年⑤)に、2年目の飛躍を目指す隅田と佐藤隼の両左腕、昨年ファームで103回を投げ6勝を上げた渡邊勇太朗(浦和学院高~18年②)も控えており先発の層は厚い。

 さらに一軍登板はないものの、ファームで渡邊に次ぐともに3勝を上げた赤上優人(東北公益文化大~20年育①)、豆田泰志(浦和実高~20年育④)は支配下登録を狙う。また、ルーキーの青山美夏人(亜大~22年④)も完投能力が高く、着実に投手王国の地固めが進んでいる。

 一方で先発に比べ、リリーフ陣は若干心配が残る。平良が本人の強い希望(直訴)により先発に廻り、今季35歳を迎えるクローザーの増田も昨年の後半戦は失敗が目立った。水上を中心に、実績十分の平井と森脇、宮川、リリーフの適性を見せた本田に佐々木は、昨年以上に大事な場面での起用になるが、ここは新戦力にも期待したい。

 新外国人のティノコは最速157キロのストレートが武器で、奪三振能力が高いセットアッパー候補。森の人的補償で、オリックスから移籍した張奕(日本経大~16年オ育①)も50試合以上登板を目標にしており不安を埋めたい。

 

●野手陣~山川と源田、外崎以外のレギュラーは白紙。ポスト森など課題は多い

 改善した投手陣とは逆に、打線は低調で、チーム打率はリーグ最下位に沈み、得点数はリーグ5位で、2度のノーヒットノーランを喫するなど、かつての山賊打線の面影は見る影もなくなった。

 その打線は、山川穂高(富士大~13年②)が本塁打と打点の2冠に輝き、オグレディと外崎修汰(富士大~14年③)、中村剛也大阪桐蔭高~01年②)の4人が2桁本塁打を放ち、本塁打はリーグ1位だったが、得点圏打率は最下位、盗塁数も最下位で機動力も機能せず、結局は本塁打でしか得点できない単調な打線になってしまった。

 また、秋山翔吾(広島)がMLB移籍後、定着しなかった一番打者は今年も固定できず、実に13名を起用するなど課題が解消されなかった。

 チーム本塁打の1/3は山川、盗塁は源田と外崎が同じく1/3を占めており、その源田と外崎は失策数もリーグワーストのチームにおいて、ゴールデングラブ賞も獲得している。この主力の3人が欠けてしまうとチームは機能不全になり、実際に昨年後半の9~10月に山川が調子を落とすと、チームの成績も下降線を辿っている。

 森は移籍したが、外崎が残留を決め、源田も5年契約を結びFA移籍の心配は無くなった。一方で山川は今オフの移籍が濃厚と噂され、中村と栗山巧(育英高~01年④)も今年40歳を迎え、本格的な世代交代と並行して、打線の立て直しが急務だ。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…森 友哉(102/412)柘植世那(42/118)

 内野手…☆外崎修汰(132/547)☆山川穂高(129/528)☆源田壮亮(108/456)

     呉 念庭(94/301)中村剛也(88/294)ジャンセン(35/128)

 外野手…☆オグレディ(123/465)愛斗(123/363)栗山 巧(89/267)

       鈴木将平(58/227)川越誠司(50/159) 金子侑司(44/128)      

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)鈴木将平⑧      1)外崎修汰④      

  2)オグレディ⑦     2)源田壮亮⑥       

  3)森 友哉②      3)森 友哉②    

  4)山川穂高③      4)山川穂高③     

  5)中村剛也⑤         5)呉 念庭⑤      

  6)外崎修汰④      6)愛斗⑨    

  7)栗山 巧DH       7)栗山 巧DH    

  8)愛斗⑨        8)オグレディ

  9)源田壮亮⑥      9)鈴木将平⑧  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…古賀悠斗 柘植世那(岡田雅利 中熊大智)

 内野手山川穂高 外崎修汰 源田壮亮 ※マキノン 平沼翔太 呉 念庭

      ※佐藤龍世 中村剛也 

     (山野辺翔 渡部健人 山村崇嘉 ※陽川尚将 滝澤夏央 長谷川信哉)

 外野手…栗山 巧 ※蛭間拓哉 ※ペイトン 鈴木将平 愛斗  川越誠司

      (金子侑司 若林楽人 西川愛也 岸潤一郎 高木 渉)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)外崎修汰④      捕 手)柘植世那(古賀悠斗) 

  2)源田壮亮⑥      一塁手山川穂高

  3)ペイトン⑦      二塁手)外崎修汰(佐藤龍世)

  4)山川穂高③      三塁手)呉 念庭(マキノン)

  5)呉 念庭⑤      遊撃手)源田壮亮

  6)愛斗⑨        左翼手)ペイトン(川越誠司)

  7)栗山 巧DH       中堅手)鈴木将平(蛭間拓哉)

  8)柘植世那②      右翼手)愛斗

  9)鈴木将平⑧       D H) 栗山 巧(中村剛也

 今季の重要課題は、森に代わる正捕手の確立と一番打者の固定、そして若手または新戦力台頭の3点になる。一塁の山川と二塁の外崎、WBCでの指の骨折が心配だが遊撃の源田は決まりで、残りのポジションはすべて白紙と言って良い。

 正捕手候補は柘植世那(ホンダ鈴鹿~19年⑤)と2年目の古賀、ベテランの岡田雅利(大阪ガス~13年⑥)が軸になる。ただ、柘植は3年通算で94試合の出場に留まり、通算打率は1割台。古賀も守備、打撃ともに課題は多い。べテランの岡田も左ひざ手術の影響で昨年はわずかに1試合出場と大きな期待を寄せるのは酷で、ファームの正捕手、中熊大智(徳山大~18年育③)も交えて横一線の競争になる。

 一番打者の固定は、昨年は外崎の38試合が最多で、次いで鈴木将平(静岡高~16年④)に源田、川越誠司(北海学園大~15年②)、若林楽人(駒大~20年④)等13名が務めた。機動力を活かすと源田に外崎、若林や金子侑司(立命大~12年③が候補になり、源田に川越、機動力も使える愛斗(花咲徳栄高~15年④)は出塁率が高い。また、19年のプレミア12米国代表で一番打者を務めたペイトンも候補になる。

 最後は若手と新戦力の台頭で、愛斗と呉念庭第一工大~15年⑦)は、今季こそレギュラーを確立するシーズンになり、新外国人マキノンと阪神から加入した陽川尚将(東農大~13年③)は長打力が期待される。

 このほか、内野では平沼翔太(敦賀気比高~15年日④)に日本ハムから出戻りの佐藤龍世(富士大~18年⑦)、昨年、源田の穴を埋めた滝澤夏央(関根学園高~21年育②)、内外野守れる長谷川信哉(敦賀気比高~20年育②)が控え、外野も走攻守揃ったルーキー蛭間拓哉(早大~22年①)にも十分にレギュラー獲得のチャンスはある。

 

ルーキー蛭間のレギュラー獲得はなるか?水上を輩出した20年育成指名組は宝の山

 期待の選手では、投手は同期入団の赤上優人と豆田泰志の2人で、ともに一軍経験はないが、赤上は昨年ファームで74回1/3を投げ3勝。豆田は赤上を上回る81回を投げ同じく3勝を上げ、ともに防御率は3点台を結果を残した。この年(20年)は、育成で5名指名されているが長谷川と水上はすでに支配下登録され、水上は新人王も獲得している。今季、2人がシンデレラボーイになる可能性は十分にある。

 野手はルーキーの蛭間拓哉で、外野のレギュラーポジションが決まっていないなか、1年目からの活躍が期待できる。走攻守ともにレベルが高く、チャンスメーカーにもポイントゲッターにもなれ、それこそ秋山翔吾のような選手になれる。この間、渡部健人(桐蔭横浜大~20年①)をはじめ、即戦力で獲得した野手が結果を残すことが出来ておらず、そろそろこの負のスパイラルを止めたいところだ。

 今季、森が抜けた穴は攻守で大きい。投手力は盤石だが、打線の課題は解消されておらず、守り勝つ野球をするにしても失策含め改善が求められる。優勝を狙うには戦力が不足しているが、競争のなかからの新戦力の台頭でAクラスを確保しながら、終盤まで優勝争いに絡めば十分にチャンスはる。

23年戦力展望☆阪神~盤石な投手陣のもと、守備重点の守り勝つ野球で優勝を目指す!

 振り返ると開幕戦がすべてだったと言っても過言ではない。開幕戦に7点差をひっくり返されると、そこから悪夢の9連敗を喫し、10試合目で初勝利を上げたが、翌日から引き分けを挟み6連敗で、早々とペナントレースから脱落した。

 それでも盤石な投手陣を背景に、最大16あった借金を前半戦で完済。後半戦はコロナ感染で主力が離脱し、なかなか波に乗れなかったが、巨人、広島との激しいCS争いを制し3位でシーズンを終えた。

 キャンプ前に矢野監督が異例の退任を発表し、賛否を呼んだが、結果的にはマイナスに作用してしまった。12球団ナンバーワンの投手陣を擁しながら、チーム打率と本塁打、得点数はリーグ5位で、得点力不足を解消することができず、失策数は7年連続ちーグワーストで、課題が先送りされたまま岡田監督の再登板が決まった。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 22年 3位 68勝71敗  4分 .243    84本 110個  489点  2.67  428点 

 21年 2位 77勝56敗10分 .247  121本    114個  541点  3.30  508点

 20年 2位 60勝53敗  7分 .246  110本   80個  494点  3.35  460点 

 19年 3位 69勝68敗  6分 .251    94本 100個  538点  3.46  566点

 18年 6位 62勝79敗  2分 .253    85本   77個  577点  4.03  628点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~なし

 20年~佐藤輝明(外野手~近大①)伊藤将司(投手~JR東日本②)

     中野拓夢(内野手三菱自動車岡崎⑥)

 19年~なし

 18年~近本光司(内野手大阪ガス①)木浪聖也(内野手~ホンダ③)

 17年~なし

 ここ5年のドラフトは社会人を中心に主力選手が誕生している。こう見ると、チームは即戦力中心の編成だと思えるが、18年~22年のドラフトでは、高校生を15名獲得しており、平均年齢26.5歳はリーグで一番、全体では2番目に若いチームだ。現在、2年連続でウエスタンリーグを制しており、着実に力は付いてきており、高卒から育成してきた若手が一気に覚醒することも期待できる。

 25歳以下で見ると、投手では昨年ブレイクした湯浅京己(BC富山~18年⑥)を中心に、昨季6勝の西純矢(創志学園高~19年①)がおり、森木大智(高知高~21年①)も一軍デビューを果たした。野手では佐藤輝がチームの中心選手に成長するなか、捕手では中川勇斗(京都国際高~21年⑦)、内野手の高寺望夢(上田西高~20年⑦)がファームで高打率を残し、遊撃守備に定評のある小幡竜平(延岡学園高~18年②)は今季遊撃のレギュラー候補の一番手だ。

 外野手でも長距離砲の井上広大(履正社高~19年②)がファームで11本塁打、前川右京(智弁学園高~21年④)も高卒1年目ながらプロへの高い適応力を見せた。また、昨年は即戦力で森下翔太(中大~22年①)も加入しており、楽しみな若手選手の名前がスラスラ出てくる。この間の育成路線が、花開く時期もそう遠くないと思う。

 

●投手陣~守りの野球を基本とする岡田監督のもと、どのような構成になるか注目

 チーム防御率は12球団ナンバーワンの2.67で、先発・リリーフ陣ともに万全だった。そのなかでも光るのが投手3冠に輝いた青柳晃洋(帝京大~15年⑤)で、13勝4敗で最多勝、最高勝率と最高防御率のタイトルを獲得した。青柳はエース級と投げ合うカード初戦の先発がほとんどで、そのなかでの貯金9は数字以上の価値がある。

 リリーフでブレイクしたのが湯浅で、シーズン開幕時は期待の若手の一人だったが、鋭いフォークを武器にセットアッパーに定着し、チーム最多59試合に登板し、WBC代表まで昇りつめた。さらに浜地真澄(福岡大大濠高~16年④)も52試合で21ホールドを上げ、ともに防御率1点台の好成績を残した。

 クローザーこそ固定できなかったものの、岩崎優(国士館大~13年⑥)がチーム最多の28セーブ、防御率1点台の抜群の安定感を見せ、ケラーも当初はリリーフ失敗が目立ったが、終盤は勝ちパターンを担った。さらに岩貞祐太(横浜商大~13年①)に加治屋蓮(JR九州~13年ソ①)、渡邊雄大(BC新潟~17年ソ育⑥)も防御率2点台の好成績を上げ、理想ともいえる投手陣が出来つつある。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆青柳晃洋(162回1/3)☆西 勇輝(148回1/3)伊藤将司(136回2/3)

     ガンケル(92回1/3)西 純矢(77回1/3)ウィルカーソン(70回2/3)     

 ・救援…湯浅京己(50試合)岩崎 優(57試合)岩貞祐太(53試合)

       浜地真澄(52試合)アルカンタラ(39試合)加治屋蓮(39試合)

     ケラー(34試合)渡邊雄大(32試合)

【今年度の予想】

 ・先発…岩貞祐太 西 純矢 西 勇輝 青柳晃洋 伊藤将司 才木浩人  

      (森木大智 秋山拓巳 ※Bケラー 高橋遥人 村上頌樹 ※大竹耕太郎)

 ・中継…岩崎 優 浜地真澄 ケラー 加治屋蓮 渡邊雄大 ※ビーズリー  

      (二保 旭 島本浩也 ※富田 蓮 小林慶祐 岡留英貴)

 ・抑え…湯浅京己 

 FAで移籍濃厚と言われていた西勇輝菰野高~08年オ③)をはじめ、岩崎も残留を決めた。最後まで悩んだ末に岩貞もチームに残ることを決め、これで今季も計算できる布陣になった。

 先発は青柳に西勇、伊藤に加え、岩貞も今季は先発で勝負をかける。残り2枠は若手の西純と才木浩人(須磨翔風高~16年③)、復活を期す秋山拓巳(西条高~09年④)が候補になる。このほか、ソフトバンクから移籍の大竹耕太郎(早大~17年ソ育④)、新外国人のB・ケラーもおり先発争いが激しい。さらに2年目の森木、ファームでエース格の村上頌樹(東洋大~20年⑤)、トミージョン手術からリハビリ中の高橋遥人(亜大~17年②)が終盤にも間に合えば、さらに戦力が増す。

 リリーフ陣はクローザーの筆頭候補は湯浅で、真上から腕を振り下ろすストレートとフォークは威力十分。さらに昨季、クローザースタートだったケラーに岩崎、新外国人のビーズリーもセットアッパーが期待され、盤石な勝ちパターンを形成できる。

 このほか若手では、浜地にキャンプで好投を続けるルーキーの富田蓮(三菱自動車岡崎~22年⑥)、ベテランも負けておらず加治屋に小林慶祐(日本生命~16年オ⑤)、ファームでセーブタイトルを獲得した二保旭(九州国際大高~08年ソ育②)、左のワンポイントの渡邊、復活を期す島本浩也(福知山成美高~10年育②)など本当に層が厚い。

 

野手陣~今季はポジションを固定し、守備強化の守り勝つ野球で優勝を目指す

 盤石な投手陣に反して、得点力不足は相変わらずで、「打線がもう少し機能してくれれば…」と投手陣の嘆き節が聞こえてきそうだ。

 そのなかで、マルテとロハス・ジュニアの外国人選手の不振の影響は大きかった。他球団との争奪戦を制し、鳴り物入りで入団したロハス・ジュニアは2年目も打棒は湿ったままで9本塁打、マルテは懸念されていた故障に泣かされ1本塁打と機能せず、途中加入したロドリゲスも起爆剤にはならず全員退団した。

 一方、機動力はリーグトップの盗塁数で、一番の中野、6月から二番に定着した島田海吏(上武大~17年④)、そして3番近本と、上位3人でチーム全体の盗塁数の6割にあたる74盗塁を記録し、相手バッテリーにプレッシャーをかけることが出来た。

 その後ろを打つ佐藤輝と大山悠輔(白鷗大~16年①)もそれぞれ20本塁打、80打点を超え、及第点の成績を残した。そうなると、この2人のあとを打つ外国人選手の不振が際立ち、投手陣とは逆に若手の台頭も不足したシーズンになった。

 また、守備の不味さも相変わらずで、失策数は7年連続でリーグ最多。昨季の守備率もリーグワーストで、いくら鉄壁の投手陣を擁しても、打てない、守れないでは勝つことができず。チームが3位で終わる一番の要因になってしまった。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…梅野隆太郎(100/331)坂本誠志郎(60/151)

 内野手…☆中野拓夢(135/610)☆佐藤輝明(143/603)☆大山悠輔(124/510)

     ☆糸原健斗(132/495)山本泰寛(86/203)マルテ(33/102)

     木浪聖也(41/101)

 外野手…☆近本光司(132/580)島田海吏(123/339)ロハス・ジュニア(89/211)

       糸井嘉男(62/182) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)近本光司⑧      1)中野拓夢⑥     

  2)中野拓夢⑥      2)島田海吏⑦   

  3)マルテ③            3)近本光司⑧   

  4)佐藤輝明⑨      4)佐藤輝明⑨      

  5)糸原健斗④      5)大山悠輔③   

  6)糸井嘉男⑦      6)糸原健斗⑤    

  7)大山悠輔⑤      7)山本泰寛④      

  8)梅野隆太郎②     8)梅野隆太郎②

  9)藤浪晋太郎①     9)青柳晃洋①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…梅野隆太郎 坂本誠志郎(栄枝裕貴 長坂拳弥 片山雄哉)

 内野手…山本泰寛 大山悠輔 熊谷敬宥 佐藤輝明 ※渡邊 諒 糸原健斗

      小幡竜平 中野拓夢 原口文仁

     (木浪聖也 北條史也 ※高濱祐仁 植田 海 高寺望夢)

 外野手…※森下翔太 近本光司 ※ノイジー 島田海吏 板山祐太郎

    (高山 俊 井上広大 ※ミエセス 前川右京 小野寺暖 豊田 寛)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)近本光司⑧      捕 手)梅野隆太郎(坂本誠志郎) 

  2)中野拓夢④      一塁手)大山悠輔(原口文仁

  3)ノイジー⑦      二塁手)中野拓夢(渡邊 諒)

  4)佐藤輝明⑤      三塁手)佐藤輝明(糸原健斗)

  5)大山悠輔③      遊撃手)小幡竜平(山本泰寛)

  6)梅野隆太郎②     左翼手)ノイジー(森下翔太)

  7)島田海吏⑨      中堅手)近本光司

  8)小幡竜平⑥      右翼手)島田海吏(板山祐太郎)

  9)青柳晃洋①     

 昨季、矢野監督は複数ポジション制で臨んだが、岡田新監督は固定する方針を打ち出している。内野は一塁に大山、三塁には佐藤輝が決まっているなか、目玉が中野の二塁コンバートで、攻撃だけ考えれば、二塁には日本ハムから移籍してきた渡邊諒(東海大甲府高~13年日①)や糸原健斗(JX-ENEOS~16年⑤)を起用し、中野の遊撃がベストだが、守備優先で競争を促すところに、岡田監督の信念が伝わる。

 その遊撃候補の筆頭は小幡だが、打力で勝る木浪に北條史也光星学院高~12年②)、内野のユーティリティプレーヤーの山本泰寛(慶大~15年巨⑤)、9年目を迎える植田海(近江高~14年⑤)に、ファームのレギュラー高寺など、ここまで明確にポジションが空くことは滅多になく、チームに良い競争環境が生まれていると思う。

 外野は攻守の要である近本は確定で、左翼と右翼のポジション争いになる。左翼は新外国人のノイジーとルーキー森下の長距離砲が候補で、ここに若手の井上や勝負強い打撃が売りの小野寺暖(大商大~19年育①)が加わり、高山俊(明大~15年①)は背水の陣で臨むシーズンになる。右翼は島田が有力だが、オープン戦好調の板山祐太郎(亜大~15年⑥)、即戦力ルーキーと言われながら、昨季は無安打に終わった豊田寛(日立製作所~21年⑥)も雪辱を期すシーズンになる。

 捕手は梅野隆太郎(福岡大~13年④)を脅かすライバル捕手の出現が待遠しく、坂本誠志郎(明大~15年②)も二番手捕手脱却のために課題の打撃を磨きたい。このほか強肩の栄枝裕貴(立命大~20年④)、キャリアハイの27試合に出場した長坂拳弥(東北福祉大~16年⑦)が控え、高卒1年目ながら昨季ファームで50試合に出場した中川は課題の守備を磨くことで一軍デビューも遠くない。

 

●投手は成長著しい若手が多いなか注目はやはり湯浅!野手は新戦力の活躍に期待

 今年の注目選手は、投手は湯浅京己で、WBCでも湯浅のフォークは絶賛され、注目度は高まっている。代表チームでは、阪神のレジェンド的クローザーの藤川球児が付けていた#22を着けており、本人が目指すところも明確だ。高校を卒業し独立リーグに進み、1年後の19歳でドラフト6位で指名され、4年目にブレイク。今後、プロを目指す選手が夢を実現できるサクセスストーリーを今季、見せて欲しい。

 野手は日本ハムから移籍した渡邊諒で、本職の二塁はWBC代表の中野が二塁コンバートになり、昨季の正二塁手の糸原もおり競争は厳しい。ただ、パ・リーグ時代にストレートに滅法強く「直球破壊王子」の異名を取り、逆方向にも長打を打てるパンチ力もある。貴重な右の代打としても期待だが、そこにも原口文仁(帝京高~09年⑥)が控えており、得意の打撃でトレードの期待に応えたい。

 今季も優勝を狙うには、課題の打撃と守備がカギを握る。岡田監督が盤石の投手陣を背景に、守り勝つ野球をどう体現していくのか注目している。一昨年は後半に失速、昨年はスタートで躓いたが、ともにAクラスをキープし、シーズン通して投打が安定すれば“アレ”を狙える地力は備わっている。

23年戦力展望☆楽天~ドラフトでチーム方針が見えない…優勝の条件は投手陣再編と若手の突き上げ

 昨年も補強は積極的で、MLBでも実績のあるマルモレホスとギッテンス、日本ハムから西川遥輝智弁和歌山高~10年日②)を獲得し、通算538勝の豪華先発投手陣に鉄壁のリリーフ陣を擁し、間違いなく優勝候補の一角だった。

 序盤は前評判通り、4月後半からの11連勝もあり5/10終了時点で、貯金18、勝率8割で独走状態の思えた。ただ、翌日からの4連敗でチーム状況は一転し、6月以降は月間での勝ち越しがなく、6月後半に首位陥落、8月中旬に最大18の貯金がなくなると最終借金2でシーズンを終えた。ちなみに貯金18→▲2は、74年の阪神の記録を塗り替える歴史的な大失速になった。

 また昨年はブラックフライデーと呼ばれ、金曜に限って言えば2勝22敗と呪縛のようで、3連戦の初戦を落とすのだから、勢いがつかず失速すたのも当然の結果だった。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 22年 4位 69勝71敗  3分 .243  101本   97個  533点  3.47  522点 

    21年 3位 66勝62敗15分 .243  108本   45個  532点  3.40  507点

 20年 4位 55勝57敗  8分 .258  112本   67個  557点  4.19  522点

 19年 3位 71勝68敗  4分 .251  141本   48個  614点  3.74  578点

 18年 6位 58勝82敗  3分 .241  132本   69個  520点  3.78  583点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~なし

    20年~早川隆久(投手~早大①)

 19年~小深田大翔(内野手大阪ガス①)瀧中瞭太(投手~ホンダ鈴鹿⑥)

 18年~辰巳涼介(外野手~立命大①)太田 光(捕手~大商大②)

 17年~なし 

  楽天のドラフトを一言で言えば、「良く分からない」の一言に尽きる。とにかくバランスが悪く、単年ごとに方針で違う印象で、どういうチームにしたいかが分からない。特に、この2年は顕著で、一昨年は同じ右打ちで、タイプもそう違わない吉野創士(昌平高~21年①)と前田銀治(三島南高~21年③)の高校生外野手を上位で獲得。昨年はオール社会人&大学生で、6名指名したなか、5名が投手と極端な指名になっている。

 結果、年齢別で見ると、投手では25歳に6名、27歳にも5名と偏り、逆に22歳以下の若手は4名しかいない。野手も27歳に5名が固まり、ご丁寧に昨年はDeNAから伊藤裕季也(立正大~18年D②)、現役ドラフトで広島の正髄優弥(亜大~18年広⑥)を獲得し、年齢バランスはさして気にしていないことが分かる。

 また、高校生選手を育成するのも不得手で、投手は田中将大駒大苫小牧高~06年①)や松井裕樹桐光学園~13年①)の1位指名選手に加え、下位指名でも辛島航(飯塚高~08年⑥)がいるが、野手では銀次(盛岡中央高~05年③)しかいない。そのことに自覚があるのか、18~22年のドラフト(5年間)で、34名を支配下指名しているが、高校生10名は12球団最少で、反面、選手の平均年齢はもっとも高い27.6歳と、若手の台頭が既知として進まず、FAが主戦略なのも理解できる。

 

●投手陣~昨季、リーグワーストの投手陣の再編が急務。若手の台頭がないと厳しい

  田中将に岸孝之東北学院大~06年西希)、則本昂大三重中京大~12年②)が揃う豪華な先発陣だったが、則本の10勝がチームトップで、田中は9勝(12敗)、岸は8勝(10敗)と期待していた数字ではなかった。また、早川は2年目の洗礼を受け5勝、瀧中も2勝に終わり、貯金が出来のは則本と辛島だけだった。

 一昨年、リーグナンバーワンの防御率を誇ったリリーフ陣も、酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)とブセニッツがケガで途中離脱し、安楽智大済美高~14年①)も50試合以上に登板したが、防御率4点台で成績を大きく落とし、リーグ4位と崩れた。

 ただ、そのなかでも松井は32セーブを上げ2度目のタイトルを獲得し、西口直人(甲賀健康医療専門学校~16年⑩)はリーグトップの61試合に登板し34ホールド、宋家豪も54試合登板20ホールドと好成績を上げた。また、左腕の鈴木翔天(富士大~18年⑧)が自己最多の38試合に登板し、シーズン途中に支配下になった宮森智志(四国IL高知~21年育①)は22試合連続無失点とブレークし、今季は新人王を狙う活躍が期待され、ようやく世代交代も進みつつある。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆田中将大(163回)岸 孝之(141回)則本昂大(125回)

     早川和久(107回1/3)辛島 航(90回)瀧中瞭太(78回)

 ・救援…西口直人(61試合)宋家豪(54試合)松井裕樹(53試合)

       安楽智大(52試合)鈴木翔天(38試合)ブセニッツ(34試合)

【今年度の予想】

 ・先発…岸 孝之 ※バニュエロス 則本昂大 田中将大 瀧中瞭太 辛島 航 

    (※荘司康誠 早川和久 高田孝一 松井友飛 藤平尚真 藤井 聖)  

 ・中継…安楽智大 ※小孫竜二 宋家豪 鈴木翔天 西口直人 宮森智志   

       (酒居知史 ※渡辺翔太 弓削隼人 西垣雅矢 津留崎大成 石橋良太) 

 ・抑え…松井裕樹

 通算538勝カルテットの涌井秀章が中日へ移籍し、早川が昨年オフの手術で開幕に間に合わず、ローテーションが再編される。開幕投手には田中将が指名され、岸と則本、初の2桁勝利を狙う辛島までは決まりで、残り2枠の争いになる。

 復活を期す瀧中に新外国人バニュエロスが有力だが、ファームのエースを卒業したい高田孝一(法大~20年②)、ともに昨年1勝の藤平尚真(横浜高~16年①)に藤井聖(ENEOS~20年③)など、若手にチャンスは十分にある。岸が39歳、田中将が35歳、則本と辛島も33歳になり、若手の台頭がないと将来的にも厳しくなる。

 リリーフ陣もクローザーの松井に、どう繋げていくかがポイントになり、西口に宋家豪、宮森がセットアッパー候補になるが量的に少ない。西垣雅矢(早大~21年⑥)や鈴木翔の若手の成長、経験のある酒居や安楽も再度勝ちパターンに加わりたい。また、ロングリリーフもできるベテランの石橋良太(ホンダ~15年⑤)やリリーフ転向の弓削隼人(スバル~18年④)にも期待したい。

 新戦力では、26歳のオールドルーキーの小孫竜二(鷺宮製作所~22年②)は即戦力の呼び声が高く、渡辺翔太(九産大~22年③)も多彩な変化球を持っており、先発もリリーフもできる。昨年のドラフトで唯一競合の荘司康誠(立大~22年①)は、じっくり体を作って将来のエース候補としてステップアップしていきたい。

 

●野手陣~超重量打線から、鉄壁の守備陣を擁した守りの野球に変革するシーズン

 昨年の開幕前は、西川が一番に座り、浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)と島内宏明(明大~11年⑥)の中軸のあとを、ギッテンスとマルモレホスの新外国人選手が務めめる打線が期待された。ただ、西川は序盤こそ良かったものの打撃不振で調子を落とし、期待の新外国人はマルモレホスは7本塁打で退団し、ギッテンスも0本と期待を裏切りった。結局、打線は浅村と島内頼みで、浅村はリーグ2位の27本塁打、島内は最多安打で2年連続でタイトルを獲得した。

 改善したのは機動力で、盗塁王4回の西川の加入で走塁への意識が高まったのか、小深田大翔(大阪ガス~19年①)が自己最多の21盗塁、辰巳と山崎剛(国学院大~17年③)を含めた4選手が2桁盗塁を記録し、一昨年リーグワーストの盗塁数が、リーグ2位まで改善した。

 さらに良かったのが守備で、49失策は12球団最小。捕手で炭谷銀仁朗(平安高~05年西①)、二塁手で浅村がリーグトップの守備率を記録した。特に外野陣は素晴らしく、中堅の辰巳は俊足を活かした広い守備範囲で2年連続ゴールデングラブ賞を獲得。島内も無失策、弱肩と言われた西川もリーグトップの10補殺でまさに鉄壁だった。

 ここ数年は相手に恐れられた超重量打線から、守り勝つ布陣に変わりつつある。そういった意味でも、やはり優勝を狙うには投手陣がカギを握っている。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…太田 光(71/182)炭谷銀仁朗(98/288)

 内野手…☆浅村栄斗(143/633)☆小深田大翔(118/479)☆鈴木大地(125/477)

       銀次(83/271)茂木栄五郎(73/268)山崎 剛(79/218

       渡邊佳明(60/168)       

 外野手…☆島内宏明(142/613)☆辰巳涼介(120/476)西川遥輝(108/451)

     マルモレホス(58/223)岡島豪郎(53/199)武藤敦貴(43/99)     

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)西川遥輝⑦      1)西川遥輝⑦       

  2)山崎 剛⑥        2)小深田大翔⑥ 

  3)浅村栄斗④           3)浅村栄斗④    

  4)島内宏明⑨      4)島内宏明⑨     

  5)茂木栄五郎⑤     5)銀次③     

  6)和田 恋DH     6)鈴木大地⑤      

  7)鈴木大地③      7)マルモレホスDH   

  8)安田悠馬②      8)辰巳涼介⑧

  9)小深田大翔⑧     9)炭谷銀仁朗 

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…太田 光 炭谷銀仁朗 安田悠馬(田中貴也)

 内野手…小深田大翔 浅村栄斗 ※阿部寿樹 茂木栄五郎 鈴木大地 ※フランコ

       銀次 山崎 剛 渡邊佳明

    (黒川史陽 ※平良竜哉 伊藤裕季也 ギッテンス 入江大樹 村林一輝)

 外野手…西川遥輝 辰巳涼介 岡島豪郎 島内宏明

      (吉野創士 田中和基 武藤敦貴 小郷裕哉 和田 恋 ※正髄優弥)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)西川遥輝⑦      捕 手)炭谷銀仁朗(安田悠馬) 

  2)小深田大翔⑥     一塁手鈴木大地(銀次)

  3)浅村栄斗④         二塁手)浅村栄斗

  4)島内宏明⑨         三塁手)阿部寿樹(茂木栄五郎)

  5)フランコDH        遊撃手)小深田大翔(山﨑 剛)

  6)阿部寿樹⑤      左翼手西川遥輝(渡邊佳明)

  7)鈴木大地③      中堅手)辰巳涼介

  8)辰巳涼介⑧      右翼手島内宏明岡島豪郎

  9)炭谷銀仁朗②        D H)フランコ       

 今季の打線の課題は、①主力となる右打者不足の解消と、②世代交代を進める若手の台頭の2つになる。

 浅村以外、主力の右打者不足の解消では、中日からトレードで阿部寿樹(ホンダ~15年中⑤)が加入し、メジャー通算130本塁打フランコ、現役ドラフトではオコエ瑠偉を放出した代わりに正髄を獲得した。また、ドラフトではパンチ力と俊足を兼ね備えた平良竜哉(NTT西日本~22年⑤)も指名し、積極的に補強を続けている。

 そのなかで阿部の加入は大きく、守っては二塁と三塁、外野も守れることができ、浅村と島内を休ませながら起用することが出来る。打ってはチャンスメーカーにもポイントゲッターにもなれ、阿部が下位打線に入ることで打線に厚みが出来た。

 若手の台頭はチーム喫緊の課題だが、今季もレギュラー陣の壁は厚い。そのなかでも昨年開幕マスクを被った安田悠馬(愛知大~21年②)、内野手の黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)はレギュラー獲得のチャンスがある。

 安田は、炭谷と太田光(大商大~18年②)は守備力に定評があり、ともにチームに不足している右打ちということもありハードルは高い。黒川も同様で、二塁に阿部が加入し、三塁には鈴木大地東洋大~11年ロ③)と茂木栄五郎(早大~15年③)と同じタイプの選手控え、2人とも打撃でアピールしてレギュラーを獲りに行くしかない。

 このほか、内野手の村林一輝(大塚高~15年⑦)に外野手の武藤敦貴(都城東高~19年④)は守備・走塁要員からの卒業を目指し、2年目の吉野もここまで一軍キャンプに帯同し今季の一軍デビューを目指す。また、ともに5年目の渡邊佳明(明大~18年⑥)に小郷裕哉(立正大~18年⑦)も、まだまだレギュラーを諦めてはいない。

 

ベテラン頼みのチームで世代交代が課題だが、今季も厳しいシーズンになりそう

 注目の選手は、投手はルーキーの小孫を挙げたい。遊学館高で甲子園に出場し好投手と言われながらも指名漏れ。創価大に進学し、同学年のドラフト候補3人のうち小孫のみ指名がなく、一昨年の社会人2年目も名前が呼ばれることなく、3度の指名漏れを味わった苦労人である。同学年は移籍したオコエと村林で、比較するとその苦労が分かると思う。投手陣が課題のチームにあって即戦力としての力を発揮してもらいたい。

 野手は黒川で、ファームでは不動のレギュラー。打撃技術の高さは誰もが認めるところだが、本職の二塁には浅村がおり、鈴木大に茂木、小深田、山崎と同じタイプの左打ちの選手が多数おり、正直気の毒な部分もある。ただ、昨季一軍17試合で打率2割前半と結果を残せていないのも事実で、結果でレギュラーをもぎ取って欲しい。キャプテンシーの高い選手で、主力へのい成長を心待ちにしているのはファンだけではない。

 最後に、個人予想で楽天が優勝するなら昨年と思っていたので、今季は正直厳しいと予想している。優勝のためには投手陣の整備と若手の台頭が必須条件で、外野は層が厚く岡島豪郎(白鷗大~11年④)や田中和基(立大~16年③)、和田恋(高知高~13年巨②)など、控えでは勿体ない選手がおり、阪神や西武といった投高打低のチームとのトレードもアリだと思う。

23年戦力展望☆巨人~投打に数字は良くないなか、優勝には投手陣の再建が必須!

 昨季のスタートは良く、ルーキーの(扇田)大勢がクローザーに抜擢され、新外国人ウォーカーの思わぬ活躍もあり、3~4月は最大貯金11を数え、20勝11敗で首位独走の雰囲気すらあった。

 しかし、良かったのはここまでで、5月に入り坂本勇人光星学院高~06年①)が故障で離脱を繰り返し、主砲の岡本和真(智弁学園高~14年①)も不振に陥るとチームは失速。投手陣の崩壊も止まらず、2年連続の負け越しで5年振りのBクラスに沈んだ。

 とにかく数字が悪い。チーム防御率と失点数はリーグワーストで、先発陣も酷かったが、リリーフ陣はさらに悪く、イニング別失点数は8回が最も多かった。チーム打率最下位のなか、本塁打はリーグ2位と一発頼みの大味な野球になり、昨年最小の失策数もリーグ5位まで後退…攻守にこの成績では優勝はおろか、Aクラスも厳しかった。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗       打率 本塁打  盗塁   得点 防御率 失点 

 22年 4位 68勝72敗  3分 .242  163本   64個  548点  3.69  589点

 21年 3位 61勝62敗20分 .242  169本   65個  552点  3.63  541点

 20年 1位 67勝45敗  8分 .255  135本   80個  532点  3.34  421点 

 19年 1位 77勝64敗  2分 .257  183本   83個  663点  3.77  573点

 18年 3位 67勝71敗  5分 .257  152本   61個  625点  3.79  575点

【過去5年のドラフトの主戦力】 

 21年~大勢(投手~関西国際大①)赤星優志(投手~日大③)

 20年~なし

 19年~なし

 18年~戸郷翔征(投手~聖心ウルスラ高⑥)

 17年~大城卓三(捕手~NTT西日本③)

 昨年は、大勢が37セーブを挙げ、文句なしの新人王を獲得。赤星も5勝を挙げ、久しぶりにルーキーが躍動した。さらに平内龍太(亜大~20年①)や堀田賢慎(青森山田高~19年①)のドラ1コンビに、山崎伊織(東海大~20年①)と井上温大(前橋商高~19年④)も初勝利を上げた。

 ただ、昨季53試合に登板した平内、今季プロ初勝利を上げた戸田懐生(四国IL徳島~20年育⑦)、さらに一昨年2桁勝利の高橋優貴(八戸学院大~18年①)もオフに育成契約になり、正直、どういう風に選手を育成したいのかが見えない。平内のように前年活躍しても、故障して翌年育成では選手も、その選手を送り出すアマチュア側も納得できないだろう。

 一方で、数こそ多くはないが、戸郷や岡本など、高校生選手を主力に育てた手腕もあるし、無名だった大勢や戸郷と言った未知数の選手を獲得する慧眼も、思い切りの良さもあり、ここは自信を持って辛抱も必要だと思う。

 既に「FA権取得=巨人入団」となる状況ではない。現に、昨年オフのFA選手獲得に巨人参戦のニュースもなく、そろそろ思い切って育成を主体にチーム構成やドラフト戦略を抜本的に見直す時期にきている。

 

●投手陣~先発・リリーフとも課題は山積だが、支配下人数26名と質量ともに不足

 先ずリーグワーストの投手陣だが、先発ではなかなか2桁勝利に届かなかった戸郷がキャリアハイの12勝を挙げ、最多奪三振のタイトルを獲得しエース格に成長。菅野智之東海大~12年①)も決して本調子ではないなか、10勝の最低限の仕事をした。

 ただ、昨季の開幕ローテーションは、菅野→山崎→赤星、戸郷→メルセデス→堀田の並びで、山崎に赤星、堀田はプロ未登板で、良く言えば若手の抜擢、悪く言えば菅野と戸郷、メルセデス以外の投手が見当たらなかった。本来であれば高橋や新外国人のシューメーカーが埋めなくてはならなかったが、ともに戦力になれず、実に12名の選手が先発したが、及第点は赤星と山崎のみで、このチャンスを掴む若手は現れなかった。

 リリーフ陣は正直、大勢がいなければどうだっただろう…と背筋が凍る思いだ。この間、ブルペンを支えた中川晧太(東海大~15年⑦)や鍵谷陽平(中大~12年巨③)が不振で、平内に鍬原拓也(中大~17年①)、左腕の高梨雄平(JX-ENEOS~16年楽⑨)と今村信貴(太成学院高~11年②)に負担が寄り、ここでも台頭する投手が現ることなく、最後まで大勢に繋ぐ形ができなかった。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆戸郷翔征(171回2/3)☆菅野智之(147回)メルセデス(110回1/3)

     山崎伊織(97回1/3)シューメーカー(95回1/3)赤星優志(78回)

 ・救援…高梨雄平(59試合)大勢(57試合)今村信貴(55試合)

       平内龍太(53試合)鍬原拓也(49試合)デラロサ(30試合)

【今年度の予想】

 ・先発…菅野智之 山崎伊織 戸郷翔征 ※グリフィン 赤星優志 ※ビーディ 

    (直江大輔 ※メンデス 代木大和 堀田賢慎 井上温大 横川 凱)    

 ・中継…今村信貴 鍵谷陽平 畠 世周 鍬原拓也 高梨雄平 ※船迫大雅 

      (山田龍聖 ※田中千晴 大江竜聖 菊地大稀 堀岡隼人) 

 ・抑え…大勢 ※ロペス

 残念ながら、今年も状況は変わらない。頼りは戸郷と菅野で、未だに開幕投手も決まっていない。正直、この状況でよくメルセデスをロッテに放出したと思う。3番手候補は2年目の赤星になり、期待の山崎に堀田、井上はキャンプでコンディション不良で二軍落ちし、一軍復帰が見えていない。

 そうなると新外国人が頼りで、ビーディとグリフィンに期待がかかる。ただ、ビーディは159キロのストレートの右の本格派だが、19年にメジャーで5勝をマークするも、活躍はこの1年だけで通算7勝、左腕グリフィンに至ってはメジャー通算7試合1勝で、実績が高いとは言えない。キャンプで評価を上げた代木大和(明徳義塾高~21年⑥)や横川凱(大阪桐蔭高~18年④)にメキシカンリーグで活躍したメンデスにもチャンスはあるが、どちらにしろ今季も先発投手のやり繰りに苦労しそうだ。

 肝心のリリーフも、大勢にどう繋げるかの課題は解消されていない。ここでもメジャー通算121試合で26ホールドのロペスや、ルーキー船迫大雅(西濃運輸~22年⑤)の新戦力の新戦力に期待する声が大きく、鍵谷に畠世周(近大~16年②)、大江竜聖(二松学舎大高~16年⑥)など実績のある選手が復調してこないと厳しい。

 どちらにしろ、この状況下でトレードすらしない編成に首を傾げる。日本ハムから西村天裕がロッテへ移籍したが、巨人とでも十分に成立するトレードだったと思う。

 

 野手陣~超攻撃的な打線も、3年連続3割打者が生まれず大味な打線は変わらず

 21年シーズンと比較すると、本塁打はリーグ1位→2位、打率はリーグ5位→最下位、盗塁数はリーグ4位→変わらず、得点数リーグ4位→3位と一発頼みの大味な打線に変わりはなく、課題が解消されないまま2年続けて同じ轍を踏んでしまった。

 狭い東京ドームが本拠地ということもあるが、岡本の30本を筆頭に丸佳浩(千葉経大高~07年広③)、中田翔大阪桐蔭高~07年日①)、ポランコとウォーカーの新外国人2人が20本塁打以上を放った。また、度重なるケガに悩まされていた吉川尚輝(中京学院大~16年①)もシーズンを完走するなど明るい話題もある。

 ただ一方で、吉川やウォーカー、丸も打率は2割7分台では物足りなさは否めず、中田は規定打席に届かなかった。その規定打席は4名クリアしたが、岡本は不振で4番降格、坂本の離脱も重なり、色々な選手が出場していた記憶があるが、100打席以上で網をかけると意外に少なく、投手陣同様に台頭する選手はいなかった。

 内野手なら開幕スタメンの廣岡大志(智弁学園高~15年②)、坂本不在時に遊撃を務めた中山礼都(中京大中京高~20年③)がおり、外野には一昨年育成出身でチーム初の規定打席をクリア松原聖弥(明星大~16年育⑤)、さらに重信慎之介(早大~15年②)もいるが、いずれも殻を破れていない。チャンスを掴めない若手に問題があるのか、見込んだ選手を辛抱強く起用しない首脳陣に問題があるのか…考えて込んでしまう。 

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…大城卓三(115/393)小林誠司(60/91)

 内野手…☆岡本和真(140/589)☆吉川尚輝(132/567)中田 翔(109/375)

       坂本勇人(83/352)増田 陸(69/156)中山礼都(50/142)

     中島宏之(62/111)

 外野手…☆丸 佳浩(143/607)☆ポランコ(138/484)ウォーカー(124/438)   

     重信慎之介(77/128)  

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)吉川尚輝④      1)吉川尚輝④   

  2)廣岡大志⑥         2坂本勇人⑥       

  3)ポランコ⑨           3)丸 佳浩⑧    

  4)岡本和真⑤      4)岡本和真⑤     

  5)中田 翔③      5)ポランコ⑨     

  6)丸 佳浩⑨      6)中田 翔④      

  7)ウィーラー⑦     7)ウォーカー⑦     

  8)小林誠司②      8)大城卓三② 

  9)菅野智之①      9)戸郷翔征①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…小林誠司 大城卓三 岸田行倫(山瀬慎之助) 

 内野手…吉川尚輝 坂本勇人 中田 翔 ※松田宣浩 岡本和真 中山礼都

     ※門脇 誠 増田 陸

      (湯浅 大 増田大輝 中島宏之 若林基弘 北村拓己 香月一也) 

 外野手…※長野久義 丸 佳浩 ※ブリンソン ウォーカー ※オコエ瑠偉

      (※萩尾匡也 石川慎吾 岡田悠希 重信慎之介 松原聖弥)  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)吉川尚輝④      捕 手)大城卓三(小林誠司) 

  2)坂本勇人⑥      一塁手)中田 翔(松田宣浩

  3)丸 佳浩⑨      二塁手)吉川尚輝

  4)岡本和真⑤      三塁手)岡本和真

  5)中田 翔③      遊撃手)坂本勇人(門脇 誠)

  6)ブリンソン⑧     左翼手)ウォーカー(オコエ瑠偉

  7)ウォーカー⑦        中堅手)ブリンソン(増田 陸)

  8)大城卓三②      右翼手)丸 佳浩

  9)菅野智之①  

 補強したのは、ソフトバンクを戦力外になった40歳の松田宣浩(亜大~05年希)と広島から復帰の39歳の長野久義(ホンダ~09年①)で、ポジションこそ違うものの、ともにベテランの右打ち、しかもチームリーダーと役割が被る。松田が守るポジションには中田と岡本がおり、長野と同じ右打ち外野手では萩尾匡也(駒大~22年②)とオコエ瑠偉関東一高~15年楽①)を獲得している。こうなるとチームリーダーを2名も獲得しなければならないほど、チーム状況が悪いのかと勘ぐってしまう。

 今季の注目は、さすがに衰えを隠せなくなった坂本の起用法と、丸以外白紙の外野レギュラーになる。坂本に聖域だった遊撃には、ルーキー門脇誠(創価大~22年④)の評価が上がっており、遊撃からのコンバートが現実味を帯びてきた。仮に坂本が三塁にコンバートされれば、一塁に岡本、左翼に中田という布陣も可能になる。

 外野の定位置争いは、中堅は新外国人のブリンソンに2年目の岡田悠希(法大~21年⑤)、内外野守れる増田陸(明秀日立高~18年②)が争い、左翼はウォーカーとオコエの争いに、ここにきて長野も名乗りを上げている。嬉しい悲鳴ではないが、丸を守備負担の少ない右翼に回す目途がつき、守備に課題があるポランコ放出も合点がいく。

 他のポジションでは、捕手の心配が昨年から解消されていない。大城がレギュラーを務めるが、2番手は小林誠司日本生命~13年①)になり、小林は3年連続打率1割台で自慢の強肩にも衰えが見えてきたが、その小林すら脅かす若手がいないのは寂しい。

 予想打順では、2番の坂本から8番の大城まで一発があり、いずれも3割を打てる選手が揃っており強力打線を形成できる。ここにオコエや増田陸、松原にルーキー門脇が機動力で絡んでくると得点力は上がってくる。

 

●育成主体へ変更でFA選手は敢えてスルー?若手の台頭で世代交代を進めたい

 注目選手には、ルーキーの2人を挙げたい。投手はオールドルーキーの船迫で、今季で27歳を迎える。同学年には岡本がおり、その苦労の道程が分かる。変則的なサイドスローからの150キロのストレートとスライダーで、ブルペン陣の一角を担う。チームを献身的に支える社会人出身選手として、試合数を重ねれば新人王も夢ではない。

 野手は先ほども紹介した門脇で、高校1年夏から大学4年秋までの公式戦116試合すべてフル出場している。身長171センチと小柄で、しかもポジションは遊撃と、そのタフさは尋常じゃない。オープン戦では遊撃以外に二塁、三塁もこなしており、巨人に不足している機動力も持ち合わせており、是非開幕スタメンで観てみたい選手だ。

 ヤクルトが2連覇しているなか、今季は混戦の予想だが、そのなかで巨人の優勝は正直厳しいと思う。やはり投手力が見劣りし、打線もここ2年の課題が解消されたとは言えない。例年、大物FA選手や外国人選手を獲得し、若手選手の出番が狭まっていたが、今季はチャンスは十分にあると思う。仮に優勝には届かなくても、来季に期待できる若手の台頭に期待したい。

23年戦力展望☆ロッテ~世代交代が進み、若手の本格的な覚醒があれば優勝のダークホース

 2年連続の2位で、優勝候補にも挙げられたシーズン。優勝には若手の台頭とレアード、マーティンの主力選手の活躍が必要だったが、蓋を開ければ、若手は伸び悩み、両外国人も不振を極め、打線は湿りぱなっしで、5月までチーム打率は.210と低迷した。

 そんななか投手陣は奮闘し、序盤は石川歩(東京ガス~13年①)や史上最年少で完全試合も達成した佐々木朗が勝ち星を重ねた。交流戦に入ると、徐々にチームの状況も上向き、最大9あった借金を完済し、貯金2で前半戦を終えた。

 ただ、後半は手痛いところで、優勝したオリックスにことごとくやられ、本拠地で2度の3タテを喫するなど、一昨年のマジック点灯寸前で本拠地3連敗の悪夢が思い出される敗戦になった。結果、8/30以降は一度も貯金できないまま、ペナントレースから脱落し5位でシーズンを終え、最終戦のセレモニーで井口監督が電撃辞任した。

【過去5年のチーム成績】

     順位   勝敗      打率 本塁打 盗塁   得点  防御率 失点 

 22年 5位 69勝73敗  1分 .231    97本 132個  501点  3.39  536点

 21年 2位 67勝57敗19分 .239   126本   107個  584点  3.67  570点

 20年 2位 60勝57敗  3分 .235    90本   87個  461点  3.81  479点

 19年 4位 69勝70敗  4分 .249  158本   75個  642点  3.90  611点

 18年 5位 59勝81敗  3分 .247    78本 124個  534点  4.04  628点

【過去5年のドラフトの主戦力】

 21年~松川虎生(捕手~市和歌山高①)廣畑敦也(投手~三菱自動車倉敷③)

 20年~なし

 19年~佐々木朗希(投手~大船渡高①)佐藤都志也(捕手~東洋大②)

    高部瑛斗(外野手~国士館大③)

 18年~小島和哉(投手~早大③)

 17年~安田尚憲(内野手履正社高①)藤岡裕大(内野手トヨタ自動車②)

 井口体制のもと、優勝には届かなかったが、ドラフトの成果は着実に出てきている。佐々木朗が着実に成長曲線を描き、小島は今季の開幕投手に指名された。

 打者では安田や佐藤のスラッガーに、俊足巧打の高部、高卒1年目ながら76試合にマスクを被った松川など、リーグを代表するような選手がこの1年で頭角を表してきた。また、昨年、2桁本塁打の山口航輝(明桜高~18年④)に和製大砲覚醒の予感が漂い、藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)や小川龍成(国学院大~20年③)もキャンプで好調を維持し、レギュラーを狙える立場に成長してきた。

 ロッテのこの5年間を見て評価できるのは、一つ目は上位指名選手が、期待に応え主力に成長している。2つ目はスケール感の大きさで、佐々木朗に安田、藤原、松川の1位指名選手に山口と言った高校生選手が着実に育ってきている。

 最後は育成から支配下登録選手の多さで、この5年で7名の選手が支配下になっており、ソフトバンクに次いで多い。足のスペシャリスト和田康士朗(BC富山~17年育①)を始め、昨年も佐藤奨真(専大~20年育④)と森遼大朗(都城商高~17年育②)が一軍デビューを果たしている。制度活用が形骸化しておらず、チームの競争が円滑に行われている。

 

●投手陣~エース佐々木朗が誕生するシーズンになるか!吉井監督の起用に注目

 年々、チーム防御率は改善を見せ、昨年の3・4月は防御率1点台の抜群の安定感を誇った。前半は石川と佐々木朗が引っ張り、後半は美馬学東京ガス~10年楽②)が復調して10勝を挙げた。だだ、一昨年10勝の小島は、規定投球回をクリアするも、3勝11敗と先発陣の借金を丸抱えしてしまった。また、6人目も決まらず、本前郁也(北翔大~19年育①)の3勝が最多でチャンスを掴む選手が出てこなかった。

 リリーフ陣も、一昨年の勝ちパターンが崩れ、益田直也関西国際大~11年④)がひとり奮闘したが、その益田も後半から安定感を欠きクローザーから外れた。ただ、東條大樹(JR東日本~15年④)がキャリアハイの59試合を投げ、防御率2点台の好投を見せれば、小野郁(西日本短大高~14年楽②)は3年連続40試合に登板、西野勇士(新湊高~08年育⑤)も見事復活し、15ホールド防御率1点台は見事だった。

 さらにルーキーの廣畑、新外国人のゲレーロとオスナも加わり、リリーフ陣の層の厚さを見せつけた。特にオスナは益田に代わりクローザーを務め、10セーブ13ホールドで、失点(自責点)はわずかに3で防御率0点台の圧巻の成績を残した。

【22年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆小島和哉(143回1/3)佐々木朗希(129回1/3)石川 歩(123回)

     美馬 学(117回2/3)ロメロ(115回1/3)     

 ・救援…東條大樹(59試合)益田直也(52試合)ゲレーロ(49試合)

       小野 郁(44試合)西野勇士(39試合)廣畑敦也(30試合)

       オスナ(29試合)

【今年度の予想】

 ・先発…小島和哉 美馬 学 種市篤暉 佐々木朗希 西野勇士 ※メルセデス

    (石川 歩 ※菊地吏玖 岩下大輝 鈴木昭汰 中村稔弥 森遼大朗)

 ・中継…唐川侑己 東條大樹 廣畑敦也 坂本光士郎 小野 郁 

      (佐々木千隼 ※高野脩汰 ※カスティーヨ ※ペルドモ 国吉佑樹)     

 ・抑え…益田直也 澤村拓一

 先発は開幕投手の小島、佐々木朗と美馬、巨人から移籍のメルセデスは決まりで、調整遅れの石川がどの時期に合流するかで陣容は変わるが、残り1~2枠の争いになる。

 有力なのは西野と岩下大輝(星綾高~14年③)になるが、右肘の手術から完全復活を目指す種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)も候補に挙がる。また、かつて不足していた先発左腕も揃ってきており、中村稔弥(亜大~18年⑤)に本前、3年目の鈴木昭汰(法大~20年①)や佐藤奨にもチャンスはある。

 新戦力ではルーキーの菊地吏玖(専大~22年①)に3年目中森俊介(明石商高~20年②)、新外国人のカスティーヨとペルドモは、ともに先発・中継ぎの適性を見極めていく。特にスリークオーターの本格派カスティ-ヨ、制球力が高いグラウンドボーラーのペルドモはMLB23勝の実績があり、どの場面で起用するか注目したい。また、澤村拓一(中大~10年巨①)が入団し、オスナ移籍を埋める補強になった。

 今季の吉井監督は、レバレッジ継投で7~9回を固定せずに状況に応じて起用していくことを明言している。リリーフ陣は益田と澤村、小野、東條を中心に、今季復活を期す佐々木千隼(桜美林大~16年①)に唐川侑己(成田高~07年①)、不足していたリリーフ左腕も坂本光士郎(新日鉄住金広畑~18年ヤ⑤)にルーキーの高野脩汰(日本通運~22年④)が加われば、お釣りがくるくらいの布陣になる。

 

●野手陣~得点力不足のまぁ大きな補強がなかったのは、若手への期待の裏返しか

 昨年はとにかく打てず、序盤は本当に酷かった…。荻野貴司トヨタ自動車~09年①)が開幕に間に合わず、期待の安田と藤原、山口も開幕スタメンから漏れ、レアードとマーティンの調子は最後まで上がらず、エチェバリアとともに退団した。

 そんななか気を吐いたのが高部で、オープン戦で首位打者の勢いそのままに一気にレギュラーを獲得した。俊足巧打を活かしリーグ2番目の148安打を放ち、44盗塁で盗塁王、守ってはわずか3失策の堅守でゴールデングラブ賞も獲得した。

 また、高卒1年目ながら松川が開幕マスクを被り、さすがに捕逸数や盗塁阻止率はリーグワーストで課題は多いが、随所に光るものを見せた。一方で佐藤都は一塁で開幕スタメンを勝ち取ったが、捕手でも63試合に先発出場しリーグトップの盗塁阻止率を記録した。

 後半戦に入ると、安田が覚醒を予感させる打撃で、キャリアハイの9本塁打を打ち、山口もチームトップの16本塁打を放ち左右の大砲候補の片りんを見せた。また、レギュラー不在の遊撃も、後半は茶谷健太(帝京三高~15年ソ④)が定着し43試合にスタメン出場するなど世代交代が進むシーズンになった。

 また、足にスランプなしではないが、両リーグ最多の132盗塁で、長打力不足を機動力で補った戦術は、MLBのように盗塁が敬遠されている現代のなか特筆できる。

【22年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…佐藤都志也(118/402)松川虎生(76/212)

 内野手…☆中村奨吾(138/596)安田尚憲(119/440)レアード(112/396)

       エチェバリア(76/257)井上晴哉(60/232)茶谷健太(57/156)       

 外野手…☆高部瑛斗(137/608)山口航輝(102/349)岡 大海(98/248)

     荻野貴司(89/373)マーティン(68/266)角中勝也(53/138)

        藤原恭大(49/126)      

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)高部瑛斗⑦      1)荻野貴司⑦      

  2)マーティン⑨     2)高部瑛斗⑧       

  3)中村奨吾④         3)中村奨吾④   

  4)レアードDH     4)山口航輝⑨      

  5)佐藤都志也③     5)井上晴哉③     

  6)岡 大海⑧      6)レアードDH    

  7)藤岡裕大⑥      7)安田尚憲⑤ 

  8)松川虎生②      8)エチェバリア⑥ 

  9)平沢大河⑤      9)松川虎生②  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…松川虎生 田村龍弘 佐藤都志也(柿沼友哉)

 内野手…藤岡裕大 安田尚憲 中村奨吾 井上晴哉 小川龍成 茶谷健太

    (池田来翔 ※友杉篤輝 平沢大河 三木 亮 ※大下誠一郎 福田光輝)

 外野手…荻野貴司 藤原恭大 ※ポランコ 岡 大海 高部瑛斗 山口航輝 

       和田康士朗 (角中勝也 福田秀平 菅野剛士 山本大斗)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)荻野貴司⑦      捕 手)松川虎生(田村龍弘) 

  2)高部瑛斗⑧      一塁手)佐藤都志也(井上晴哉

  3)中村奨吾④      二塁手)中村奨吾

  4)安田尚憲⑤      三塁手)安田尚憲(藤岡裕大)

  5)山口航輝⑨      遊撃手)茶谷健太(小川龍成)

  6)ポランコDH     左翼手荻野貴司(平沢大河)

  7)佐藤都志也③     中堅手)高部瑛斗(藤原恭大)

  8)茶谷健太⑥      右翼手)山口航輝(岡 大海)

  9)松川虎生②      D H)ポランコ

 FA権を取得したチームリーダーの中村奨吾(早大~14年①)と、投手陣から信頼の厚い田村龍弘光星学院高~12年③)が揃って残留を決めファンを安心させた。また、昨季巨人で24本塁打を放ったポランコが加入し、課題の長打力不足に期待がかかる。

 先ずは予想打順だが、中軸に長打力のある選手が並ぶ。安田に山口、ポランコ、佐藤都はいずれも20本塁打以上打てる選手で、守備に不安にあったポランコが指名打者に専念できるのはプラスになる。20本は難しいが、松川も元々は内野手指名も検討されていた打てる捕手で、さらに一塁で井上晴哉日本生命~13年⑤)、外野にも山本大斗(開星高~20年育③)のスラッガーが控えており、一発の怖さを秘めた打線になる。

 守備では、捕手は田村の復活がポイントで、松川との併用になれば、右翼や三塁にも挑戦している佐藤都が打撃に専念できる。その佐藤都が一塁、二塁の中村奨と三塁の安田も決まり。特に安田は守備が飛躍的に巧くなり、ゴールデングラブ賞も夢ではない。

 最大の課題は今季も遊撃で、候補は多い。順当に行けば茶谷と藤岡裕大(トヨタ自動車~17年②)だが、小川も打撃面で成長を見せ、ルーキーの友杉篤輝(天理大~22年②)は守備と走塁は問題なく、今季は例年になく良い競争が出来ていると思う。

 外野の層は厚く、左翼・荻野、中堅・高部、右翼・山口が濃厚だが、藤原が打撃好調で贅沢な悩みが出てきた。さらにベテランの岡と角中勝也(四国IL高知~06年⑦)、外野での出場が増えている平沢大河(仙台育英高~15年①)も打撃好調を維持し、開幕にどの名前が並ぶか注目したい。

機動力も健在で、荻野と高部、中村奨の走れる選手が上位におり、岡大海(明大~13年③)や和田といった走塁のスペシャリストを抱えているのも心強い。

 

若手の本格覚醒があれば、優勝争いも夢ではない。エースと主砲誕生に期待!

 注目の選手は、投手ではやはり佐々木朗希しかいない。成績だけ見れば、3年で通算12勝の投手が、MLBではダルビッシュ有大谷翔平、山本由伸と並んで日本の主力として数えられている。昨年は前半の好調を維持することができなかったが、今季1年間完走することで、おのずと結果はついてきて、タイトルにも手が届くだろう。チーム待望のエース誕生から、リーグを代表する投手に成長するシーズンにして欲しい。

 打者は山口で、86年の落合博満以来、チーム38年振りの本塁打王への期待がかかる。キャンプは絶好調で、本塁打を連発しており、特に、MLB代表のヤクルトの高橋奎二から、2打席連続で放った本塁打は練習試合とは言え衝撃的で、和製大砲の覚醒を予感させる。多少の不振でも我慢して起用し続ければ、30本塁打は固いだろう。

 現状の戦力では、良くてAクラスの予想で、物事に“たら、れば”は禁物だが、投手では佐々木朗に種市、野手では安田に藤原、山口といった若手が、昨季の高部のように一気に覚醒すれば優勝争いも夢ではない。一昨年、マジックを点灯させたことがフロックではないことを証明するよう、74年以来、半世紀近く遠ざかっいる勝率1位での優勝を目指すシーズンになる。