今年で3回目を迎える現役ドラフトだが、過去2回の結果を見てみると、最も活用できているのが阪神と中日で、阪神は大竹と漆原を獲得し、大竹は移籍2年で23勝を上げて先発の軸になっている。中日も細川が中軸を務め、今年は現役ドラフト選手で初のベストナインに選出され、大きな成功例となっている。
巨人とロッテも悪くなく、レギュラー獲得までとは言えないが、オコエに大下、愛斗はチームに欠かせない存在になっている。共通しているのは獲得した2選手がチームに在籍し、鈴木に佐々木など移籍した選手も新天地で活躍を収めている。
ソフトバンクは長谷川が貴重なワンポイントでリーグ優勝に貢献したが、移籍した選手の活躍が光る・大竹はセ・リーグ向きだったと言えばそれまでだが、水谷はチームに少ない貴重な右打ちで逃がした魚は大きかった。オリックスも鈴木が復活を遂げ、移籍した大下と漆原も一軍に帯同しており、移籍した選手が2人とも在籍しているのはソフトバンクとオリックスだけだ。
ヤクルトと西武は可もなく不可もないというところで、獲得する選手も移籍する選手も、単にウィークポイントを埋めている印象を受ける。広島と楽天は獲得した選手が2なとも退団し、特に楽天は移籍1年目のオフに退団しておりチーム編成に疑問を感じてしまう。
IN OUT
◎阪 神…大竹耕太郎・漆原大晟 ⇔ 陽川尚将(引退)馬場皐輔
◎中 日…細川成也・梅野雄吾 ⇔ 笠原祥太郎(引退)鈴木博志
○巨 人…オコエ瑠偉・馬場皐輔 ⇔ 戸根千明(引退)北村拓己
○ロッテ…大下誠一郎・愛斗 ⇔ 成田 翔(引退)佐々木千隼
△ソフトバンク…古川侑利(引退)長谷川威展 ⇔ 大竹耕太郎・水谷 瞬
△日本ハム…松岡洸希(育成)水谷 瞬 ⇔ 古川侑利(引退)長谷川威展
△オリックス…渡邊大樹(引退)鈴木博志 ⇔ 大下誠一郎・漆原大晟
▽DeNA…笠原祥太郎(引退)佐々木千隼 ⇔ 細川成也・櫻井周斗(戦力外)
▽ヤクルト…成田 翔(引退)北村拓己 ⇔ 渡邊大樹(引退)梅野雄吾
▽西 武…陽川尚将(引退)中村祐太 ⇔ 松岡洸希(育成)愛斗
✕広 島…戸根千明(引退)内間拓馬(戦力外)⇔ 正髄優弥(引退)中村祐太
✕楽 天…正髄優弥(引退)櫻井周斗(戦力外)⇔ オコエ瑠偉・内間拓馬(引退)
【巨人】
盤石な投手陣を誇り、ファームで好投しても一軍の壁は厚く、今村や畠のほかにも、伊藤優輔や菊地大稀など候補は多い。一方、今季MVPで15勝の菅野智之の移籍が濃厚で、獲得を目指すFA投手の動向もあり、投手か野手かチームの選択に注目したい。
●今村信貴/投手(太成学院高~11年②)お薦め:ヤクルト
昨季は不調で出場試合数を減らし、今季は強力投手陣の壁に阻まれ僅か7試合の登板に留まった。ファームではチームで3番目に多い42試合に登板し、防御率2.03の好成績を残している。通算180試合登板の経験豊富なリリーフ左腕を欲しがるチームは多い。
●畠 世周/投手(近大~16年②)お薦め:中日
昨年右肘のクリーニング手術を受け一軍未登板、復帰を目指した今季も1試合の登板に留まった。ファームではリリーフ中心も37試合に登板し、防御率は1点台と完全復帰を果たした。菅野智之の移籍で畠への期待も膨らむが候補に挙がる可能性は十分ある。
将来を嘱望された有望株も、昨年は一軍未出場、今季は出場4試合で無安打に終わった。同年代の門脇誠や泉口友汰が活躍するなか、来季7年目を迎えいよいよ正念場になってきた。ファームでは主に二・三塁を守っており一昨年のブレークを再現したい。
【阪神】
この2年はレギュラーが固定され少数精鋭で臨んでいただけに、投手では浜地真澄や川原陸、野手でも熊谷敬宥や植田海など候補は多い。また、戦力外5名のうち加治屋蓮と岩田将貴、遠藤成が他球団への入団が決まるなど戦力層の厚さ改めて証明した。
●佐藤 蓮/投手(上武大~20年③)お薦め:ソフトバンク
昨年支配下に再登録され、一軍は僅かに1試合の登板も、ファームではチーム2番目の49試合に登板し防御率2.03の好成績を残している。リリーフの層が厚いなか、ドラフトで伊原陵人や木下里都の即戦力ルーキーも加入し、活躍の場を移しても良い。
●小野寺暖/外野手(大商大~19年育①)お薦め:オリックス
昨年はキャリアハイの成績を残し期待された今季は、森下翔太と前川右京の台頭もあり出番が激減した。勝負強い打撃が評価され、三塁にも挑戦したが今季はその肝心の打撃が不振だった。同じ右打ちの大山悠輔の残留や楠本泰史の加入など立場は厳しい。
●豊田 寛/外野手(日立製作所~21年⑥)お薦め:広島
即戦力を期待され社会人から入団するも3年間で通算16試合、本塁打ゼロは想定外だっただろう。ファームでは打率.294の高打率を残しているが、年齢的にも同じ右打ちの小野寺以上に厳しい立場で、長打力不足のチームでリセットするのもアリだと思う。
【DeNA】
シーズン3位から26年振りの日本一を果たしたチームは、リーグ優勝に向けオフも本気度を窺える補強を続けている。戦力外の石川達也と楠本泰史が入団を決めるなど投打に層は厚くなっており、豊富な野手陣を基に投手力強化を図りたいところだ。
●京山将弥/投手(近江高~16年④)お薦め:巨人
DeNAには数少ない高卒の生え抜きだが、先発・リリーフどっちつかずの状況のなかはや8年が過ぎた。今季はリリーフで復帰し、23試合で7HPを上げたが、元々は先発で結果を残しており、26歳と若く個人的には先発で活躍を見てみたい選手だ。
●知野直人/内野手(BC新潟~18年⑥)お薦め:広島
内外野を守れるユーティリティに加え、パンチ力もあり、機動力も使え、まさしく走攻守三拍子揃っているが、リーグナンバーワンの打線のなか少ない一軍チャンスを活かせていない。貴重な右打ちの内野手だけに他球団でレギュラーのチャンスはある。
●神里和毅/外野手(日本生命~17年②)お薦め:西武
かつてのレギュラーもケガなどが相次ぎ、なかなかチームに貢献できないシーズンが続くなか、同じ左打ちの楠本が戦力外になった。高い守備力と走塁は健在だが、佐野恵太が残留し、梶原昂希や度会隆輝の若手が伸びているなか今年以上に立場は厳しい。
【広島】
9月の大失速でまさかのBクラス転落になったなか、課題の打撃力強化で新外国人選手を獲得し、来季に向け早くも編成が進んでいる。一方、投手陣もエース格の九里亜蓮がFAでの移籍が濃厚で、131回を投げ7勝(10敗)の右腕の穴埋めも大きな課題だ。
●高橋昂也/投手(花咲徳栄高~16年②)お薦め:巨人
19年のトミージョン手術から復活の道は険しく、ファームではリリーフで32試合に登板し、一軍でも1試合ながらようやく登板を果たした。年齢構成で編成を進めるチームだけに、同じ26歳には6選手、左腕だけでも3選手がおり候補になる可能性が高い。
●林 晃汰/内野手(智弁和歌山高~18年③)お薦め:オリックス
将来の主軸候補と期待されながら、今季も結果を残すことができなかった。僅か27試合の出場で打率1割台、得意の長打力も活かせず0本塁打に終わり、三塁のポジションも矢野雅哉の台頭で小園海斗が入り、ドラフトで佐々木泰も加入し立場は厳しい。
得意の打撃を活かすために捕手から外野手登録に変更になり、ファームではチーム最多の8本塁打を放っているが、一軍では30試合で打率1割台、0本塁打と今年も結果を残せなかった。来季で8年目を迎え、地元を離れ環境を変える時機かも知れない。
【ヤクルト】
FAで茂木栄五郎を獲得できたが、課題の投手力強化が進まず、同じFAの石川柊太に断られ、福谷浩司へシフトさせている。ただ、それなりに結果を残していた外国人投手がすべて退団し、今野龍太も楽天へトレードされるなどチグハグ感は否めない。
●阪口晧亮/投手(北海高~17年D③)お薦め:中日
チームを移籍しても状況は変わらず、ファームではエース格で今季も9勝の好成績を上げたが、一軍では僅か2試合登板に留まり、投手力が課題のチームにおいても結果を残せなかった。ポテンシャルは高いだけに、投手育成に長けたチームで見てみたい。
●金久保優斗/投手(東海大市原望洋高~17年⑤)お薦め:日本ハム
将来の主戦を期待されながら既にプロ入り7年が経過した。ここ数年は出番が減り、昨季は1試合、今季は5試合で未勝利に終わっている。ファームでも可もなく不可もない成績で、大きなケガもないだけに、きっかけを掴めば大化けする可能性は高い。
●太田賢吾/内野手(川越工高~14年日⑧)お薦め:DeNA
リーグ屈指の打撃陣のなか、昨季から長岡秀樹がレギュラーに定着し、今季からは本格的に外野にもチャレンジしている。内野ならどこでも守れるユーティリティだが、最近は得意の打撃で結果を残せておらず、同じ左打ちの茂木の加入で立場は厳しい。
【中日】
打撃が課題のチームだが、小笠原慎之介や福谷浩司、マルティネスに移籍が濃厚で、投手陣の不安の方が多く、今回の現役ドラフトでは投手を狙いたい。この間のドラフトや補強が野手中心で登録人数も多かったから、候補をすべて野手にしてみた。
●石橋康太/捕手(関東一高~18年④)お薦め:ロッテ
ファームでは最多のマスクを被ったが、20歳の山浅龍之介が迫ってきている。FA宣言した木下拓哉も早々と残留を決め、ドラフトでは即戦力の石伊雄太が入団し、捕手は豊富になった。一軍での実績は乏しいが、打てる捕手として欲しがるチームは多い。
主軸候補と期待されながら、素質を開花できないまま来季は9年目を迎える。出番を求めて内野はどこでも守れるようになったが、今季は僅か10打席しかチャンスがなかった。器用貧乏にならずに、今一度セールスポイントの打撃で勝負して欲しい。
高い守備力で遊撃のレギュラーを掴みかけたが、課題の打撃が克服されずに一軍では村松開人、ファームではロドリゲスに定位置を奪われてしまった。実績や年齢的にも候補になるのは早いと思うが、遊撃手はどこも強化したいポイントで需要は高い。