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どのチームが「人」を育て強くなるのか

24年現役ドラフト候補選手を予想する~パ・リーグ編

 今年のオフの移籍市場は菅野智之(巨人)や九里亜蓮(広島)、甲斐拓哉(ソフトバンク)など9選手がFA宣言し大山悠輔(阪神)と木下拓哉(中日)の残留以外は移籍先含め決まっていない。また、青柳晃洋(阪神)と佐々木朗希(ロッテ)はポスティングでMLB移籍を目指している。

 一方でトレードの成立はなく、戦力外選手では12名の移籍先が決まったが、岩田将貴(阪神→DeNA)と加治屋蓮(阪神楽天)、石川達也(DeNA→巨人)と楠本泰史(DeNA→阪神)以外はいずれも育成契約とと厳しさを増している。

 今年で3年目を迎える現役ドラフトは、各球団が対象選手から2名以上をリストアップし、そのリストを基に全球団が指名するこシステムで、このペースだと今年は現役ドラフトの移籍がFA移籍よりも早くなるかもしれない。

【昨年の現役ドラフト指名】※( )は移籍前の球団

 ・阪 神…漆原大晟(オリックス)38試合1勝4敗0S 6HP

 ・広 島…内間拓馬(楽天)一軍登板なし →戦力外

 ・DeNA…佐々木千隼(ロッテ)28試合0勝1敗1S 6HP

 ・巨 人…馬場皐輔(阪神)1試合0勝0敗0S

 ・ヤクルト…北村拓己(巨人)48試合/打率.125/1本塁打

 ・中 日…梅野雄吾(ヤクルト)18試合1勝0敗0S 3HP

 ・オリックス…鈴木博志(中日)32試合1勝1敗0S 10HP

 ・ロッテ…愛斗(西武)52試合/打率.188/0本塁打

 ・ソフトバンク…長谷川威展(日本ハム)32試合4勝0敗0S 10HP

 ・楽 天…櫻井周斗(DeNA)8試合0勝0敗0S →戦力外

 ・西 武…中村祐太(広島)27試合0勝1敗0S 

 ・日本ハム…水谷 瞬(ソフトバンク)97試合/打率.287/9本塁打 

 一昨年の大竹耕太郎(ソフトバンク阪神)や細川成也(DeNA→中日)よう大活躍はないが、佐々木や長谷川はチームの優勝に貢献し、鈴木は移籍することで復活を遂げ、一軍未出場の水谷がブレイクするなどチームと個人でそれぞれ結果が出ている。

 ここ2年は各1名ずつの移籍になったが、システム上は複数名の移籍も可能で、今季はどのようなドラマがあるか注目したい。

 

ソフトバンク

 今季戦力外になった選手で、育成を含む新たに所属先が決まったのは12名だが、うち4名はソフトバンクで、一昨年の大竹耕太郎(阪神)、昨年の水谷瞬(日本ハム)の大活躍からも人材の宝庫なのは間違いない。

●板東湧梧/投手(JR東日本~18年④)お薦め:ロッテ

 昨年は30試合に登板しキャリアハイの5勝を上げるも、今季は厚い投手陣に阻まれ一軍登板はなかった。ファームでは14試合(65回)を投げ3勝を上げており、先発・リリーフともにこなせるだけに他球団から垂涎の的だと思う。

●野村 勇/内野手(NTT西日本~21年④)お薦め:西武

 今季は出番が少なくシーズン通して調子が上がらなかったが、本職の二塁には牧原大成がおり、同じ右打ちで廣瀬隆太も加入しチャンスも限られる。走力だけではなく、ルーキーイヤーに10本塁打を放ったパンチ力もあり、他球団ならレギュラーを狙える。

●リチャード/内野手沖縄尚学高~17年育③)お薦め:広島

 5年連続ファームで本塁打王を獲得し、二軍でやることはもうない。ただ、一軍の同じポジションで一塁に山川穂高、三塁には栗原陵矢がおり、26歳という年齢も考えると契約交渉で移籍志願したのも頷け、広島や西武などは欲しい選手だと思う。

日本ハム

 候補者を選定したとき、改めて選手層が厚くなったと感じたのが日本ハムだ。今回は3名を候補に挙げたが、他にもリリーフ左腕の堀瑞樹や福田俊、ファームで防御率2点台の田中瑛斗など、まさしく宝の山でオフはトレード依頼が増えるかもしれない。

●石川直也/投手(山形中央高~14年④)お薦め:オリックス

 かつてのリリーフエース候補も、今季は一軍未登板に終わったが、ファームでは36試合に投げ9セーブを上げている。年齢も脂の乗り切った29歳で、地元の楽天に加え、DeNAやヤクルトなど投手力強化を図りたいチームは多い。

●清水優心/捕手(九州国際大高~14年②)お薦め:楽天

 FAで伏見寅威、ドラフトで進藤勇也が加入し、さらに今季は田宮裕涼の台頭もあり一軍は12試合出場に留まった。ファームでは進藤に次いでマスクを被り、打率も.290の好成績を残していおり、捕手として円熟味も増す29歳で再度レギュラーを狙いたい。

●今川優馬/外野手(JFE東日本~20年⑥)お薦め:ヤクルト

 万波中正と水谷瞬の同じタイプの選手が台頭し、今季は僅かに6試合出場とすっかり一軍が遠くなってしまった。ただ、ファームでは主軸として8本塁打を放ち長打力は健在で、日本ハムでは余剰気味の右打ち外野手も不足しているチームは多い。

【ロッテ】

 若手に成長株が多く、主力にベテランが多いなか候補は迷った。目標としていた25年の常勝チーム最終年を迎える来季は、佐々木が移籍するなか石川柊太獲得を目指すなど、投手力強化は必須なだけに現役ドラフトを有効に活用したい。

●二木康太/投手(鹿児島情報高~13年⑥)お薦め:中日

 かつての開幕投手も一昨年のケガが長引き、ようやく今年ファームで本格的な復帰を果たしたが、ここ2年は一軍登板がない。経験は十分で30歳とまだ衰える歳でもない。変化球を駆使して投球術で打ち取るスタイルだけにセ・リーグが合うかもしれない。

●廣畑敦也/投手(三菱自動車倉敷~21年③)お薦め:DeNA

 即戦力を期待され入団するも、ルーキーイヤーに30試合に登板した後は、昨季と今季ともに8試合登板で出番を減らしている。ファームでも起用法は定まらず、先発・リリーフの座を射止めることが出来ておらず環境を変えるのも手かもしれない。

●平沢大河(仙台育英高~15年①)お薦め:阪神

 来季で10年目を迎える平沢も、今季は一軍出場がなく、ファームでも打率.216と結果を残せなかった。出場機会を増やすために内外野守れるユーティリティなっており、環境を変えてチャレンジすることで、打撃が覚醒するかも知れない。

楽天

 今江監督の解任やチームのレジェンド田中将の電撃退団など、今季もオフのゴタゴタ感は否めない。打高投低のチームだけに、野手で予想したが、今オフにはベテランの加治屋蓮が加入しており、投手では津留崎大成や小孫竜二、宮森智志も候補になる。

●山崎 剛/内野手国学院大~17年③)お薦め:DeNA

 一昨年はキャリアハイの117試合に出場したが、昨年中盤からは村林一輝が遊撃のレギュラーを獲得し、僅か5試合の出場のに留まった。さらに、今年のドラフトで宗山塁も加入し、茂木栄五郎のFA移籍を差し引いても立場的には昨年以上に厳しくなった。

●田中和基/外野手(立大~16年③)お薦め:西武

 田中も山崎同様、もう一花咲かせて欲しい選手だ。すっかり守備・走塁固めが定位置になっているが、パンチ力を兼ね備え走力は衰えておらず、2年連続で一軍を完走して体力的にも十分に出来る選手で、控えに甘んじるのはまだ早い。

●武藤敦貴/外野手(都城東高~19年④)お薦め:ソフトバンク

 中堅に辰己涼介、右翼に小郷裕哉がおり、宗山の加入で小深田大翔の再コンバートの可能性もあり、同じ左打ちの武藤の立場の益々厳しくなった。ファームでは89試合で打率.281の好成績を上げており、まだ24歳と若く他球団でチャンスは十分にある。

オリックス

 今年のドラフトで余裕のあるポジションや年齢層が浮き彫りになった。現役ドラフトの候補になると思われていたウエスタン最多セーブの横山楓、ケガで出遅れた宜保翔などがいずれも育成契約になり、現役ドラフトを見越してのチーム編成が進んでいる。

●川瀬堅斗/投手(大分商高~20年育①)お薦め:日本ハム

 4年目の今季、念願の支配下になり一軍でも8試合に登板して経験を積んだ。ただ、投手層の厚さに加え、同年代に山下舜平大がおり、今年のドラフトで寺西成騎と片山楽生も入団し、余裕のある年齢構成で候補に挙げた。

●石川 亮/捕手(帝京高~13年日⑧)お薦め:楽天

 レギュラーで強打の森友哉、盗塁阻止率リーグ1位の若月健矢がおり、第3の捕手として貴重な存在だが一・二軍とも出番が限られている。ドラフトで山中綾真が加入し、若手の堀柊那の成長も著しく、年齢的にも今年がラストチャンスになるかもしれない。

●佐野晧大/外野手(大分高~14年③)お薦め:巨人

 俊足を活かした高い守備力に加え、打っては両打ちと申し分ない選手で、機動力不足のチームにおいて、今季は4試合出場でヒットなしに終わった。昨年の西川龍馬、今年はドラフト1位で麦谷祐介も加入しており、来季も立場的には厳しい。

【西武】

 今年は断トツの最下位で、一時は100敗に迫るペースのなか、今オフに注目していたが、FAには参戦せず補強らしい補強もなくファンならずとも心配になってしまう。投手は精鋭揃いだが人数が少なく、貧打線が課題のなか野手も候補は多くない。

●與座海人/投手(岐阜経大~17年⑤)お薦め:ロッテ

 一昨年2桁勝利を上げるも、昨年は2勝に留まり、今季も松本航がリリーフに回るなど先発の層は厚いなか、僅かに1勝と結果を出せていない。ファームでは7勝と勝ち頭で、貴重なサブマリンだけに他球団で先発の機会は増えると思う。

●渡部健人/内野手桐蔭横浜大~20年①)お薦め:阪神

 ポスト中村剛也として4番を期待され、昨年は6本塁打で片りんをのぞかせたが、いかんせん三振が多く、今季は33打数1安打でシーズンを終えた。現状の西武ではこれ以上の伸びしろを感じず、環境を変えることが本人にとっても良い機会になると思う。

●松原聖弥/外野手(明星大~16年巨育⑤)お薦め:ヤクルト

 今季シーズン途中に、若林楽人とのトレードで巨人から加入したが、残念ながら期待に応えることが出来なかった。巨人在籍時には起用法の問題もあったと思うが、西武では打率.182で苦戦したのち24試合に留まり、少し見切りが早い感じがした。