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どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年ドラフト予想☆楽天~前半の不振が響き2年連続のBクラス…来季に繋がる若手の成長が収穫

 一昨年、昨年と2年連続で後半に失速し、特に昨年は歴史的な大失速でBクラスに沈んだ。今季は前半から苦戦し、4~6月は3度の5連敗もあり最下位に低迷…。主力の高齢化が懸念されるなか、誰もが今シーズンは終わりかと思った。

 ただ今年は一味違い、若手選手の積極登用と台頭に加え、主力が徐々に復調してくると、課題の夏場の7月を15勝7敗で乗り切り、最大13あった借金を完済した。最終戦までCS出場のチャンスを残したが、ロッテとの大一番に敗れ、2年連続の4位に終わり、石井監督の退任も発表された。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 70勝71敗2分④

 防御率…3.52⑥(3.47⑥)打率….244③(.243③)

 本塁打…104②(101③)盗塁102①(97②)

 得点…513②(533②)失点…556⑥(522④)

●若手ぼ台頭と主力の復調で、後半戦は快進撃もCSには一歩届かず

 チーム成績を見て分かるように完全な打高投低のチームになっており、防御率は2年連続、失点数も昨年より後退しリーグワーストになった。一方で、打線は出塁率がリーグで最も高く、四球数、犠打数、盗塁数もリーグ最多で、粘り強く出塁して手堅く、時には機動力でランナーを進め得点数を増やす理想的な形が出来つつある。

 昨年は投手力強化でオール大学生・社会人で5名の即戦力投手を獲得し、先発では荘司が5勝を上げ、渡辺翔は51試合に登板しチーム最多の25ホールドを上げ新人王候補にも挙がる活躍を見せたが、残念ながら投手陣の底上げにはまだ不十分だった。

 先発では則本昂大三重中京大~12年②)が唯一規定投球回数をクリアし8勝を上げ、岸孝之東北学院大~06年西希)と田中将大駒大苫小牧高~06年①)、ルーキーの荘司が100イニングを超え、早川とともに先発ローテーションを支えた。

 ただ、今季もリリーフ陣への負担が大きく、鈴木翔が最多の61試合に登板。松井裕樹桐光学園高~13年①)と安楽智大済美高~14年①)、内星龍(履正社高~20年⑥)にルーキー渡辺翔が50試合を超え、宋家豪と酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)などリリーフ陣がフル回転した。昨年61試合登板の西口直人(甲賀健康医療専門学校~16年⑩)は右肘の手術でシーズンを終え、育成契約を打診され来季に不安もよぎる。

 野手は浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)と辰巳、小深田が規定打席をクリアし、浅村は最多本塁打、小深田が最多盗塁のタイトルを獲得した。ただ、前半は浅村の調子が上がらず、もう一人の主砲・島内宏明(明大~11年⑥)も不調で2軍落ちした。MLBで通算130本塁打フランコ、中日から移籍の実績十分の阿部寿樹(ホンダ~15年中⑤)の新戦力も結果を残すことができなかった。

 そんななかチームを救ったのが、村林一輝(大塚高~15年⑦)と小郷裕哉(立正大~18年⑦)で、村林が1番、小郷が3番に座った夏場からチームが浮上。ようやくパ・リーグに慣れた阿部も復調、島内も復帰し役者が揃った打線が夏場から機能した。

 ここ数年、主力の顔ぶれが変わらないなか、登板を重ねるたびに頼もしさを増したルーキーの荘司と渡辺翔、内の活躍は来季に向け心強い。野手では守備・走塁要員だった村林や小郷が打撃でも結果を出しキャリアハイの成績を上げ、小深田と辰巳を中心にした若手への世代交代を印象づけたシーズンになった。

●即戦力で獲得した選手が主力に成長するも主力の高齢化で「補強」も「育成」も急務

 過去5年のドラフトの成果が見え始めており、辰巳や小深田、太田がチームの中心に成長し、今季一軍デビューの内に小郷もブレイクした。ルーキーも当たり年で荘司や渡辺翔、伊藤茉央(東農大オホーツク~22年④)もリリーフで結果を出している。

 この間、岸に浅村、鈴木大地東洋大~11年ロ③)などFAでチーム作りを進め、即戦力志向が目立つなか優勝争いを出来る戦力は揃っている。ただ、リーグ優勝から10年が経過し、これまでの路線ではリーグ優勝に届かないのも現実で、不得手ではあるが、そろそろ高校生選手を中心にした育成に本腰を入れても良いと思う。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年⑥…辰巳涼介(立命大/①・外野手)太田 光(大商大/②・捕手)

       鈴木翔天(富士大/⑧・投手)

 19年③…小深田大翔(大阪ガス/①・内野手

 20年④…早川隆久(早大/①・投手)

 21年③…なし

 22年④…荘司康誠(立大/①・投手)渡辺翔太(九産大/③・投手)

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楽天の補強ポイント】 

 投 手…将来のエース候補の高校生、即戦力の先発投手

 捕 手…高校生

 内野手…高校生・大学生スラッガー(左打ちならベスト)

 外野手…年齢構成で大学生または大卒社会人

 これまでの即戦力志向且つ偏重ドラフトの結果、年齢構成が悪く、投手と捕手、外野手に空白の年代が多い。

 一方で主力の高齢化に備えて、即戦力の選手もカバーしなくてはならない。35歳以上の選手を挙げると、投手では岸と田中将、野手では炭谷銀仁朗龍谷大平安高~05年西①)に銀次(盛岡中央高~05年③)、鈴木大に岡島豪郎(白鷗大~11年④)とズラリと主力が並ぶ。

 さらに最多セーブの松井裕のFA移籍の可能性もあり、投手は先発・リリーフともに早急な対応が求められ、野手も今以上に若手の成長が臨まれる。主力の高齢化を放置していたわけではないが、結果として世代交代が進まず、短期的な補強をせざるを得ないドラフトに陥っており「補強」と「育成」の両立の難しさに直面している。

☆投手~将来のエース候補の高校生、即戦力の先発投手

 一昨年は岸に田中将、則本、涌井秀章(現中日)を擁し黄金のローテーションとも呼ばれたが、1年経つと高齢化が危惧される状況となっている。今後は早川と荘司が中心になるだろうが、次に続く選手が見当たらない。ファームでは松井友飛(金沢学院大~21年⑤)がエース格で奮闘しているが、次に続くのがベテランの塩見貴洋(八戸大~10年①)とバニュエロスで、ともに戦力外になり不安しかない。

 リリーフ陣は松井裕の移籍の可能性も含め強化が必要だが、昨年獲得した即戦力投手のうち荘司以外はリリーフ起用で、投手陣全体を見渡してもリリーフタイプが多く、今年は先発候補に絞って良い。

 1位候補に挙がっているのが、最速158キロの左腕の細野晴希(東洋大で、変化球も多彩でスタミナも十分。制球力に課題はあるが、それも伸びしろと言える。このほか、常廣羽也斗(青学大前田悠伍(大阪桐蔭高)も1位候補に挙がるが、さすがに1位入札で消える選手で、最後まで熟考することになるだろう。

 入札1位指名を外した際は、パワーピッチャー東松快征(享栄高)や安定感抜群の武内夏暉(国学院大)の両左腕に、ストレートと変化球のバランスが良い完成度の高い下村海翔(青学大を候補に挙げている。

 さらに上位候補では、多彩な変化球を駆使する木村優人(霞ケ浦高)西舘昂汰(専大松本凌人(名城大)はサイドハンドから153キロを投げる変則投手で、楽天にいないタイプの投手だけに指名しても面白い。

 このほか高校生では、いずれも本格派右腕の日當直喜(東海大菅生高)武内涼太(星稜高)天野京介(愛産大工高)に、地元の大内誠弥(日本ウェルネス宮城高)は190センチの長身選手。左腕では甲子園でも活躍した仁田陽翔(仙台育英高)、U-18代表の武田陸玖(山形中央高)が候補で、武内と武田は打者としても評価が高い。

 大学生では、安定感抜群の村田賢一(明大)石沢大和(東農大オホーツク)の評価が高く、真野凛風(同大)滝田一希(星槎道都大)荒木隆之介三浦克也(ともに東京国際大)は大学で急成長した選手で伸びしろにが期待できる。

 社会人では奪三振率の高い速球派の稲葉虎生(シティライト岡山)と、サイドハンドから豊富な変化球でゴロを打たせる技巧派の粂直輝(東芝が候補に挙がっている。

☆捕手~高校生

 今季は大田を正捕手に据え、ベテランの炭谷と打力が魅力の安田悠馬(愛知大~21年②)でシーズンを乗り切った。27歳の大田はこれからが全盛期を迎え、現状補強を急ぐことはないが、炭谷も来季は37歳、安田は打力を活かすならコンバートもアリで、充実しているうちに育成を進めたい。

 特に、19歳~22歳が不在なだけに高校生を指名したい。一番手は走攻守三拍子揃った堀柊那(報徳学園高)で、将来の正捕手候補の一番手になれる。ただ、堀は上位で消える可能性が高く、下位指名なら強肩でインサイドワークが良い鈴木叶(常葉菊川高)や、打力も兼ね備える萩原義輝(流通経大)を獲得したい。

内野手~高校生・大学生スラッガー(左打ちならベスト)

 レギュラーが決まっているポジションはなく、一塁は鈴木大と阿部、二塁は浅村と小深田、三塁はフランコと小深田、伊藤裕季也(立正大~18年D②)、遊撃は前半は山崎剛(国学院大~17年③)、後半は村林が起用された。

 かつては右打者不足に泣いたチームだが、近い将来左打者不足になる可能性もある。鈴木大と銀次、茂木栄五郎(早大~15年③)等かつての主力の出番が減り、振り返ると若手では黒川史陽(智弁和歌山高~19年②)しかいない。また、長打を打てる選手が少なく、今季はスラッガーに特化した指名で良いと思う。

 ただ、細野と並んで1位候補だった佐々木麟太郎(花巻東)が、アメリカ留学を決めリストから外れることになった。そうなると佐々木と同じタイプで、小笠原蒼(京都翔英高)佐倉侠史朗(九州国際大高)が候補になり、小笠原はパワー、佐倉は技術も兼ね備えるスラッガーで、佐々木がいなくなったことで順位に影響するかもしれない。

 また、右の長距離砲の廣瀬隆太(慶大)も候補に挙がり、レギュラー不在の三塁候補になる。このほか遊撃守備に定評がある山田脩也(仙台育英高)伊藤瑠偉(BC新潟)もリストアップされている。

☆外野手~年齢構成で大学生または大卒社会人

 外野は辰巳がレギュラーを獲得し、小郷も成長を見せた。今季は島内の不振が想定外だったが、岡島が安定感のあるプレーで強力打線を支え、守備要員として田中和基(立大~16年③)の献身も大きかった。

 ファームでも和田恋(高知高~13年巨②)が16本塁打、正髄優弥(亜大~18年広⑥)も7本塁打を放ち、今季は出番が激減したが武藤敦貴(都城東高~19年④)も控え補強の必要はないが、年齢構成が悪く、24歳~27歳が不在で出来れば大卒社会人が欲しい。

 ただ、現役ドラフトやトレードで埋めることもでき、リストアップされている選手は少なく、西川遥輝智弁和歌山高~10年日②)の放出もあり、俊足の福島圭音(白鷗大)や投手と二刀流の田中大聖(太成学院大)が候補として挙がる。

●佐々木のアメリカ留学で、競合覚悟で細野、常廣、武内の即戦力大学生投手を熟考

 楽天のドラフトも基本はその年に一番良い(欲しい)選手に行くのが基本で、今年は大学生投手を中心に豊作ドラフトと言われ競合必至で指名してくるだろう。本来であれば細野晴希(東洋大)か佐々木麟太郎(花巻東高)の選択になると思ったが、佐々木のアメリカ留学で状況が大きく変わった。

 そうなると細野一本のような気がするが、安定感抜群の武内夏暉(国学院大)やクローザーも務められる常廣羽也斗(青学大)も当然候補になり、サプライズではないが前田悠伍(大阪桐蔭高)や東松快征(享栄高)の高校生1指名の可能性もある。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~細野晴希(東洋大・投手)       東松快征(享栄高・投手)

 2位~木村優人(霞ヶ浦高・投手)      松本凌人(名城大・投手)

 3位~小笠原蒼(京都翔英高・内野手)    萩原義輝(流通経済大・捕手)

 4位~鈴木 叶(常葉菊川高・捕手)     村田賢一(明大・投手)

 5位~稲葉虎生(シティライト岡山・投手)  福島圭音(白鷗大・外野手) 

 6位~仁田陽翔(仙台育英高・投手)     粂 直輝(東芝・投手)   

 おススメの選手は、東北に初の真紅の優勝旗をもたらせた最速150キロ左腕の仁田陽翔(仙台育英高)で、チームでは主にリリーフを務め、今夏の甲子園では調子が今ひとつだったが課題の制球力を克服できれば松井の後継も夢ではない。