ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆広島~主軸はタレント揃うが、課題も多い。世代交代に備えるドラフト

●侍ジャンパンに5人選出!タレントは揃っているが、成績は開幕より低迷…

 ルーキーの栗林良史(トヨタ自動車~20年①)は、開幕からの無失点試合(22試合)の新人記録を作り、オリンピックには栗林のほかに森下暢仁(明大~19年①)が選ばれた。野手も日本の4番・鈴木誠也二松学舎大高~12年②)と菊地涼介(中京学院大~11年②)、コンディション不良で辞退になったが曾澤翼(水戸短大高~06年③)の合計5名が選出されタレントは揃っている。

 ただ、チームの成績は開幕よりずっと低空飛行で、いつの間にかDeNAに並ばれてしまった。昨年課題だったチーム防御率は、数字上は改善したものの変わらずリーグ5位で、防御率の最下位がDeNAなので、投手陣の良し悪しが成績に反映している。

 チーム打率はリーグ1位で、「そんなに打っていたかな…?」っと思っていたが、それもそのはず得点はリーグ5位。長打力も機動力も中途半端で、得点能力に課題があるが、守り切れるほどの投手陣でもなく、結局は勝ちきれないチームになってしまっている。

 忘れてならないのは、広島は16年~18年にリーグ3連覇したチームで、まだ3年しか経っていない。私は3連覇中のドラフトが、あまりに素材型に偏った指名になっており、日本ハム同様に過信ではないかと何度か書いたことがあるが、この3年の不振を見るとあながち間違いではなかったと思う。

【9/4現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 102試合 40勝52敗10分⑤

 防御率…3.87⑤(4.06⑤)打率….260①(.262②)

 本塁打…83⑤(110④)盗塁50⑤(47⑤)

 得点…384⑤(523②)失点…426⑤(529⑤)

 

●課題の投手力は先発・リリーフともに不足、野手は意外に年齢バランス今ひとつ…

 16年~18年のドラフトで主力になっているのは、16年の床田寛樹(中部学院大~16年③)と坂倉将吾(日大三高~16年④)で、ようやく今年、小園海斗(報徳学園高~18年①)と林晃汰(智弁和歌山高~18年③)にひとり立ちの目途が立った。ただ、19年~20年はさすがに不味いと思ったか、即戦力中心のドラフトに切り替えてきた。

 広島の今年のドラフトは一言で言えば難しい。まず投手陣は将来性のあるエース候補獲得は当然のこと、先発とリリーフに即戦力が必要だ。さらにメジャー移籍が現実味を帯びている鈴木誠の後継の育成も必要になる。

 また、野手の年齢バランスが悪く、高校生は捕手、内野手、外野手どこも必要で、今年の大卒組の年齢には中村奨成(広陵高~17年①)しかおらず、大卒野手も必要になる。先述した鈴木誠の後継を即戦力で補うなら社会人野手も選択肢に入れないとならず、かつてのドラフト巧者の真価が問われる。

【広島の補強ポイント】 

 投 手…将来のエース候補、即戦力の先発とリリーフ

 捕 手…高校生 ※現在、支配下は6名のみ

 内野手…高校生、大学生または社会人の右打ちスラッガー

 外野手…将来の主軸候補の高校生 

 

☆投手~将来のエース候補、即戦力の先発とリリーフ

 先発は森下とエースの九里亜蓮(亜大~13年②)が規定投球回数をクリアし、大瀬良大地(九共大~13年①)に、5年目の高橋昂也(花咲徳栄高~16年②)と2年目の玉村昇悟(丹生高~19年⑥)の両左腕がローテーション投手だが枚数は不足している。床田や昨年5勝の遠藤敦志(霞ケ浦高~17年④)の復調、ファームでは好投を続ける矢崎拓也(慶大~16年①)の覚醒が待ち遠しい。また、大瀬良と九里は来年31歳になり、若手の台頭が必要だ。

 リリーフは栗林が奮闘し、シーズン前の急造クローザーだったが期待以上の成績を収めている。栗林の成績を見ると「来年以降も…」と色気が出てしまうが、やはり栗林は先発で起用したほうがチームにとってはプラスになると思う。

 栗林のほかにはチーム最多ホールドの塹江敦哉(高松北高~14年③)と、最多登板のコルニエル、ルーキーの森浦大輔(天理大~20年②)が勝ちパターンだが、先発同様に枚数は十分ではない。ファームでも試合数を重ねているのは中崎翔太日南学園高~10年⑥)や一岡竜司沖データコンピューター教育学院~11年巨③)で、中崎や一岡は一軍にいないといけない選手だが、中堅のケムナ誠(日本文理大~17年③)や島内颯太郎(九共大~18年②)等が機能しないといつまでも厳しい状況は変わらない。

 将来のエース候補では、森木大智(高知高)小園健太(市和歌山高)風間球打(明桜高)の評価が高く、即戦力では佐藤隼輔(筑波大)山下輝(法大)の両左腕を1位候補でリストアップしている。このなかでは山下がリリーフ向きで、栗林の先発転向にはプラスの指名になる。

 この間、広島は19年の森下、昨年の栗林と単独指名で確実に1位選手を獲得している。今年は森木の指名が濃厚だが、小園と風間、佐藤はそれぞれ重複が予想され、達孝太(天理高)畔柳亨丞(中京大中京高)、山下の単独指名もあるかもしれない。

 今年の上位を投手指名で行くのなら、2位指名では廣畑敦也(三菱自動車倉敷)山田龍聖(JR東日本鈴木勇斗(創価大)は即戦力で、さすがに廣畑は残っていないと思うが、山田と鈴木は指名順位から獲得の可能性は高い。

 このほかの指名候補では、今年豊富な高校生左腕から木村大成(北海高)秋山正雲(二松学舎大高)は甲子園でも好投し、その実力は証明済みで、羽田慎之介(八王子高)はスケールの大きい大型左腕。右の本格派の床枝魁斗(修徳高)市川祐(関東一高、長身右腕の柳川大晟(九州国際大高)、ゲームメークに長けている地元の花田侑樹(広島新庄高)もリストアップしている。

 大学生では、松井友飛(金沢学院大森田晃介(慶大)は先発、岡留英貴(亜大)は変則フォームの速球派で貴重なリリーバーになる可能性を秘めている。150キロのストレートが武器の木蓮東北福祉大加藤竜馬(亜大)八木彬(三菱重工エスト)はクローザー候補で、それぞれ補強ポイントに合う選手だ。

☆捕手~高校生

 若手の捕手が豊富で、坂倉と中村奨を軸に、石原貴規(天理大~19年⑤)もおり質的には問題ない。ただ現状支配下が6名しかおらず、白濱裕太広陵高~03年①)も37歳を迎え、量的にも不足している。急いで補強の必要はないが、高校生捕手は年齢的にも獲得しておきたいところだ。

 順位は下位指名になると思うので、今夏の甲子園で活躍し、ドラフト候補として注目されている中川勇斗(京都国際高)などは面白い選手だと思う。

内野手~高校生、大学生または社会人の右打ちスラッガー

 現在、レギュラーは二塁の菊地涼のみだが、ともに21歳の林が三塁、遊撃に小園に目途が立った。ただ、田中広輔JR東日本~13年③)や堂林翔太中京大中京高~09年②)のベテランが不振で、選手層は厚いと言えない。将来の主力候補の高校生と、内野の層を厚くする即戦力(特に右打ち)が必要で、今となっては何で小窪哲也青学大~07年大社③ ※現ロッテ)を戦力外にしたかと思う。

 今年、高校生の右打ちスラッガーが豊富で、有薗直輝(千葉学芸高)は高校通算70本塁打三塁手で、投手も務め且つ俊足と、ポスト鈴木誠にピッタリの逸材だ。このほかには外野も守れ、名門校で一年から4番を務めた徳丸天晴(智弁和歌山高)に、中央では無名だが星野真生(豊橋中央高)清水武蔵(国士館高)も右の長距離砲。清水は捕手や外野手も守れる器用な選手で、ソフトバンクの栗原のような起用もできる。前川誠太(敦賀気比高)も、右打ちの遊撃手で守備力に定評がある。

 即戦力では、大学ナンバーワンスラッガー正木智也(慶大)は、守備は一塁と外野だが、それを余り得る長打力を持つ。正木のほかでは、池田来翔(国士館大)はアベレージ型の中距離打者で、中川智裕(セガサミーは長身の大型遊撃手。今年こそは右打ちのスラッガーを確実に獲得したいところだ。

☆外野手~将来の主軸候補の高校生

 外野手には不動の4番・鈴木誠と巧打者の西川がおり、ともに27歳と脂が乗り切っている。ただ、メジャー志向の高い鈴木誠のMLB挑戦が現実味を帯びるなか、ポスト鈴木誠の育成は必須だ。ファームでは正髄優弥(亜大~18年⑥)が2桁本塁打を放ち候補の一人だが、プラスして高校生スラッガーをじっくり腰を据えて育てていきたい。

 また、野間峻祥(中部学院大~14年①)や宇草孔基(法大~19年②)が、なかなかレギュラーポジションを獲れないなか、俊足・左打者のリードオフマン候補も抑えておきたいポイントだ。

 内野のイチオシが有薗なら、外野は吉野創士(昌平高)で、レベルの高い埼玉で高校通算55本塁打、俊足を活かして守備も巧く、まさに鈴木誠のプレースタイルを彷彿させる選手。俊足のリードオフマン候補では、走攻守三拍子そろった福本綺羅(明石商高に、典型的な一番・中堅の丸山和郁(明大)をリストアップしている。

 

●1位は高校生・即戦力?、投手か野手か?重複覚悟か単独指名か?注目の1位指名

 先述したが、今年のドラフトは難しく、課題の投手陣の補強をしつつ、ポスト鈴木誠の獲得が必要だ。今年は全体を見渡すと長距離打者は多くなく、確実に獲得するためには指名順位を上げる対応も必要になってくる。

 順当にいけば、森木大智(高知高)小園健太(市和歌山高)風間球打(明桜高)、佐藤隼輔(筑波大)の重複覚悟の指名になると思うが、即戦力なら山下輝(法大)正木智也(慶大)、高校生なら畔柳亨丞(中京大中京高)などの単独指名で、補強ポイントをしっかり埋めても良いと思う。

【指名シミュレーション】 

1位~森木 大智(高知高・投手)

 …中学時代に軟式で150キロを記録した剛腕。変化球の質も高く球界のエース候補

2位~吉野 創士(昌平高・外野手)

 …天性のリストワークで広角に長打を打ち分ける。俊足で守備にも定評がある

3位~鈴木 勇斗(創価大・投手)

 …小柄ながら下半身を使った力のあるボールを投げ、先発・リリーフともに適性

4位~丸山 和郁(明大・外野手)

 …高校時代は投手で、大学で野手に専念。50メートル5秒8の俊足の巧打者

5位~清水 武蔵(国士館高・内野手

 …1年生から主軸を任せられ、強肩で俊足。捕手と外野も守れる器用さもある

6位~前川 誠太(敦賀気比内野手

 …名門で1年生から遊撃のレギュラーを獲得。プロではアベレージヒッターか

7位~加藤 竜馬(亜大・投手

 …最速152キロのパワーピッチャーで、まだまだ伸びしろ十分。大化けの可能性も