後編は辛口かもしれませんが、やや評価を厳しくしたチームを紹介してきたいと思います。
△DeNA(65点)
良くも悪くも重複を避けての単独指名が続いていたので、今年の小園健太(市和歌山高・投手)指名は個人的には嬉しかった。単独指名は悪いことではないし、戦略的にも必要だが、リスク覚悟でも将来の主戦になる選手を獲りに行く姿勢は長期的に見て大事で、そうしないとチームは強くならない。
小園は高校生ながら完成度が高く、来季の後半あたりには一軍デビューしているかもしれない。ただ心配なのは、DeNAはここ数年、高校生投手が大成しておらず育成手腕が試させられる。同じ高校生で5位の深沢鳳介(専大松戸高・投手)は、技巧派のサイドスローで、小園、深沢とタイプの違う投手をどう育成していくか注目したい。
2位の徳山壮磨(早大・投手)、4位の三浦銀二(法大・投手)は、ともに高校時代から注目されていた投手で、大学でも順調に成長したが、徳山は安定感に課題があり、三浦は最終学年で評価を落とした。2位はウェーバーで一番先に指名できたので、投手なら佐藤(西武)や鈴木(阪神)の両左腕や、野手なら正木(ソフトバンク)が残っていたので、先発ローテを任せらる即戦力や課題の外野手補強でも良かったと思う。
野手の課題はセンターラインの強化で、即戦力捕手、二遊間の強化、そして外野の層を厚くすることだったが、一つも出来なかった。捕手は指名がなく、3位の粟飯原龍之介(東京学館高・内野手)は走攻守揃った大型遊撃手だが、森というレギュラー候補がいるのにどう活用するか疑問で、補強ポイントとは違う気がした。
6位の梶原昂希(神奈川大・外野手)も柳田2世と呼ばれる走攻守揃った外野手だが、センターラインを任せられる守備力は疑問で、しかも19歳から22歳まで外野手が不在のなか、今年も高校生外野手の指名はなかった。将来性なのか課題の補強なのか、どちらとも取れないドラフトになった印象を持った。
ただ、育成指名は良かった。育成1位の村川凪(四国IL徳島・外野手)は、超がつく俊足で、脚力だけで飯が食える選手。リーグワーストの盗塁数改善には打って付けの選手で支配下登録も早いだろう。育成2位の東出直也(小松大谷高・捕手)はプロ意識の高い選手で、甲斐(ソフトバンク)のように這い上がってきて欲しい。
△巨人(65点)
クジ運の悪さは別にして、今年も外れ1位指名を評価できなかった。翁田大勢(関西国際大・投手)の名前が呼ばれたとき、アンチ巨人の私でさえ頭を抱えた…。翁田は当然、良い投手には間違いないが、1位ではなくても獲得できた。故障で4年時の登板が限られ、即戦力と言うよりは育成型の選手で、補強ポイントと合致したとは言えない。
今年は7名中、6名が投手と巨人の現状の課題が如実に顕われている。2位の山田龍聖(JR東日本・投手)は、高卒3年目の21歳の急成長中の左腕。3位の赤星優志(日大・投手)は制球力に優れ、打たせて取る投球でゲームメークに長けている。
下位では高校生を獲得し、4位の石田隼都(東海大相模高・投手)は、今春のセンバツの優勝投手で制球力に優れた左腕。6位の代木大和(明徳義塾高・投手)は巧派左腕だが、体が出来上がればまだ球速は上がる。7位の花田侑樹(広島新庄高・投手)は、よくここまで残っていたと思う。花田はゲームメークに長けた先発型の右腕で、打者としての評価も高く、打者へのコンバートも予想される。
ただ、これだけ獲得したものの、本当に即戦力と呼べるのはは赤星くらいであとは全員育成型だ。結果が出なかったり、ちょっとケガでもすれば、直ぐに育成契約が待っている堪え性のないチームが、そこまで腰を据えて育成するのか注視していきたい。
野手では唯一、5位で岡田悠希(法大・外野手)を指名した。走攻守揃ったバランスの取れた選手だが、今ひとつセールスポイントに欠ける。野手はFAで獲れば良いという考えなのか、ポスト坂本の遊撃手やレギュラー不在の二塁手、極端に少ない右打ちの外野手など課題の補強は出来なかった。
育成選手は8名指名し、育成1位の鈴木大和(北海学園大・外野手)は広角に打ち分けるスピードスター、育成2位の高田竜星(BC石川・投手)は、今季高卒新人ながら開幕投手を任せられた期待の右腕で、し烈な競争を勝ちぬき支配下を目指す。
最後に、「巨人が強くないと野球は面白くない」ということは微塵も思わないが、いまの巨人を見て、次世代のスター候補が岡本しかいないのは寂しいと思う。なぜ、森木や正木など補強ポイントに合ったスター性もある選手をなぜスルーしたのか…。
×ヤクルト(60点)
優勝が秒読みだが、来季も優勝争いができるほど選手層は決して厚くない。そのなかで本指名5名、育成選手1名は人数が少なすぎると思う。また、指名した選手の順位が全体的に高く、決して失敗ドラフトではないが今一つ評価できなかった。
1位で隅田を指名したのち、抽選で外れ同じ大学生左腕の山下輝(法大・投手)を、広島との競合で獲得した。山下は長身から球速150キロを超える大型左腕で、未完の大器と言う言葉がピッタリの投手で、先発・リリーフともに適性がある。
捕手以外の課題はすべて補強できたと思うが、2位以降の順位が高いと感じた。2位では、欲しかったリードオフマン候補で丸山和郁(明大・外野手)を指名したが、逆ウエーバーで直ぐに3位指名ができ、同じ課題を持つオリックスとの兼ね合いを考えて順位を上げたのかなと推測したが、廣畑(ロッテ)や赤星(巨人)の即戦力投手を獲得してからでも良かったと思う。
3位の柴田大地(日本通運・投手)も今季急成長を遂げたが、故障から回復して活躍し始めたのは今季からで、即戦力という面では疑問が残る。4位の小森航太郎(宇部工高・内野手)も、補強ポイントの右打ちの内野手で俊足巧打の選手。ただ、中央では無名の隠し玉的存在で、柴田同様にもう一つ下位でも獲得できたと思う。
5位の竹山日向(享栄高・投手)の指名は絶妙だった。今夏、最速150キロを超えた本格派右腕で、現状では制球力に課題は残るものの、体が出来上がれば素材は申し分なく、エースにもなれる可能性を秘めている。
個人的には2位で即戦投手をもう一人獲得して、3位丸山、4位柴田、5位竹山、6位小森でも良かったと思う。
また、育成選手も1人では少なすぎる。育成1位の岩田幸宏(BC信濃)は、丸山同様に俊足の外野手で、チームに不足している左打ちだが、昨年の並木と合わせて丸山とも被る。同じ左打ちなら川村(ソフトバンク)のようなスラッガーを指名しても良かった。20歳代が3名しかいない捕手も必要で、東出(DeNA)や村山(ロッテ)など有望な高校生を指名して欲しかった。
×広島(60点)
1位で隅田(西武)と山下(ヤクルト)を指名し、何よりも即戦力左腕が欲しい意図は伝わった。徹頭徹尾最後の12人目で、黒原拓未(関学大・投手)を1位指名した。黒原は小柄だが最速151キロの馬力のある左腕で、課題の多い先発陣だけに先発ローテーションに食い込む力は十分にある。
2位も即戦力左腕の森翔平(三菱重工ウエスト・投手)を指名。森は直球を軸に、制度の高い変化球が決め球の完成度の高い投手で、黒原と一緒に先発ローテーションを任せられる。大瀬良と九里のFAの去就が決まらないなか、最悪流失に備えて上位で即戦力で揃えたのは理解できる。ただ、即戦力の次に欲しかったのは、将来性のあるエース候補となり得る高校生投手、小園と林に続く内野のレギュラー候補、外野はポスト鈴木誠の獲得だった。
投手は5位で松本竜也(ホンダ鈴鹿・投手)を指名。松本は高卒4年目で年齢的には22歳と若く、即戦力として課題の投手陣には必要なピースだが、残念ながら高卒投手の指名は1名もなかった。
野手は結果外野手中心に、3位で中村健人(トヨタ自動車・外野手)、6位で末包昇大(大阪ガス・外野手)の社会人と、4位で田村俊介(愛工大名電高・内野手)、最後の最後で、数的に少なくなることが予想されるの高木翔斗(県岐阜商高・捕手)を7位で獲得した。このなかでポスト鈴木誠に近いのは中村で、広角に打ち分ける長打力が持ち味だが、手薄な外野陣を埋める即戦力だが、スケール面では鈴木誠には及ばない。
4位の田村は二刀流挑戦を公言しており、広島がどういった判断をするか注目したい。末包は110キロを超える巨体からの長打力が魅力だが、こういった選手が大成したケースは少なく、ましてや25歳で直ぐにでも結果が求められる。
育成では4名指名し、1位で新屋颯(田辺高・投手)、3位で中村来生(高岡一高・投手)の左右の高校生投手、内野手で前川誠太(敦賀気比高・内野手)を獲得し、何とか課題を埋めきった感はある。ただ、やはり3位以降が全体的に即戦力、育成とも図りかねる指名になり、敢えて評価を低くさせてもらった。
×楽天(55点)
一言でいうと、今年も石井ワールドというか…良く分からないドラフトになった。課題は明確で、早川以外ほぼ皆無と言っても過言ではない将来のエース候補。そして野手はチームに少ない右打ちの野手獲得の2つだった。
1位は将来のエース候補で、小園(ヤクルト)や風間(ソフトバンク)、2年続けてだが大学生で隅田や佐藤(ともに西武)に行くのかと予想していたところに、まさかの吉野創士(昌平高・外野手)で驚いた。吉野は良い選手で上位候補には間違いないが、地元の風間や即戦力の佐藤も仙台出身で、別に地元出身に縛られる必要はないが、次の入札で1位指名でも良かったのではないかと思う。
2位の安田悠馬(愛知大・捕手)と3位の前田銀治(三島南高・外野手)も驚いた。捕手は既に8名いるものの、炭谷を期中で獲得したように、捕手が課題なのは理解するが、安田は打撃面が評価されており、チームに多い左打ちでどう活用していくのか。
前田も俊足で守備も巧く、長打力のある右打ちで吉野と同じタイプ。オコエに代表されるように、このような右打ちの選手育成の実績がないチームが、どう育成するか不安が残る。吉野と前田を競い合わせる意図もあると思うが、吉野を1位で獲得したのなら、中村(広島)や福元(中日)の即戦力でも良かったと思う。
4~7位はすべて投手で、4位は泰勝利(神村学園高・投手)、5位で松井友飛(金沢学院大)、6位は西垣雅矢(早大・投手)、7位で吉川雄大(JFE西日本・投手)を指名した。西垣は最終学年で評価を上げたが、泰と松井も0か100の投手で、育成には時間がかかる。大化けすれば将来のエース候補になるかもしれないが、松井も西垣も3年も経てばすぐに25歳を迎え中堅になる。左腕の吉川も先発よりは、チームに少ない左のリリーフ候補で、課題を解消できたとは言えない。。
3名の育成選手も1位の宮森智志(四国IL高知・投手)は23歳の本格派右腕、2位の柳澤大空(日大藤沢高・外野手)と3位の大河原翔(東海大山形高・外野手)もともに右打ちのスラッガー。言い方は悪いがギャンブルのようなドラフト戦略で、長い目で5年後にどういう評価になるか見てみたい。
×中日(50点)
前編で何事にもバランスが大事と書かせたもらったが、今年でいえば中日のドラフトは極端すぎた。確かに誰の目から見ても課題は長打力不足だが、一気に右打ちの大学生を3名も獲得した。年齢的にも必要なポスト大島を無視して、一気に3名である…。
1位は半ば公言していたブライト健太(上武大・外野手)を指名。ブライトは最終学年で一気に素質を開花させた選手で、高い身体能力からの守備走塁のレベルも高く、長打力もあり広い球場で高いパフォーマンスを発揮するだろう。ただ、打ち始めたのは今年からで、大学生とは言えど育成型の選手で時間を要する。
先行投資でのブライト指名は理解できるが、首を傾げたのは2位鵜飼航丞(駒大・外野手)の指名だった。鵜飼も恵まれた体格からの長打力が魅力だが、ブライト同様に育成型。この時点で正木(ソフトバンク)や、同じ地元出身なら中村(広島)も残っており、この2人のほうが即戦力と言え、敢えて1~2位で育成型の大学生を揃える必要があったのか疑問だ。
さらに追い打ちをかけるように、6位で福元悠真(大商大・外野手)を指名。福元は中距離打者だが守備走塁には課題があり、同じ育成型なら左打ちのスラッガー川村(ソフトバンク)や、年齢的に柳澤(楽天)など高校生外野手でも良かったと思う。
今年は6名中5名が野手で、4位で味谷大誠(花咲徳栄高・捕手)と5位で星野真生(豊橋中央高・内野手)を指名した。味谷の指名は補強ポイントに合致するが、星野は長打力が持ちの右打ちの遊撃手。ただ、遊撃候補には根尾と土田がおり、石川昂と石垣も同じ右の長距離砲で被るところが多く、今一つ意図が理解できなかった。
投手は唯一、3位で石森大誠(火の国サラマンダーズ・投手)を獲得。最速155キロの速球派の左腕で、リリーフとして期待が高まる。ただ、リーグ随一の投手陣を誇るが、又吉や祖父江のFA移籍の可能性があるなか、投手1名はやはり少なすぎる。
中日のドラフトを評価しなかった理由が、これだけ偏ったドラフトにも係わらず、育成選手を1名も指名しなかったことだ。将来性豊かな投手や、ポスト大島の候補で鈴木(巨人)や阿部(日本ハム)などの指名があっても良かったと思う。
最後に、有力ながら指名されなかった選手をピックアップしてみた。高校生では本格派右腕の市川の指名漏れは意外だった。野手では、捕手も内・外野手もこなせる清水も指名がなかった。それぞれ進路は違うが、3~4年後の成長に期待したい。
・高校生…市川 祐(関東一高・投手)寺嶋大希(愛工大名電高・投手)
大学生では、特番でも取り上げられていた長谷川は、社会人で1位候補まで成長できる選手。安定感抜群の森田の指名漏れも意外だった。強肩の久保田も攻守で更に力をつけて、ここ最近社会人捕手の評価が厳しいなか2年後のドラフトに臨みたい。
・大学生…長谷川綾佑(青森大・投手)森田晃介(慶大・投手)
久保田拓真(関大・捕手)峯村貴希(日大・内野手)
社会人では、通信制高校に通いながらプロを目指した渡辺が指名されなかったが、まだ17歳・これからの成長に期待したい。藤井の指名漏れも意外で、俊足巧打で堅守の即戦力だが、残念ながら今回の補強ポイントには合致しなかった。
・社会人…米倉貫太(ホンダ・投手)渡辺一成(BBCスカイホークス・投手)
大内信之介(アセット証券・内野手)藤井健平(NTT西日本・外野手)