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どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆西武~即戦力先発左腕を確実に獲得したい。今年は投手中心のドラフト

●序盤からベストメンバーが揃わず苦戦のペナントレース。若手の成長に光り

 リリーフの平良海馬(八重山商工高~17年④)が、開幕から39試合連続無失点記録の日本新記録を樹立し、先日は栗山巧(育英高~01年④)が、チームの生え抜きで初の2000本安打を達成するなど、明るい話題が多い反面、成績は残念ながら開幕から低迷している。 

 課題の投手陣は今年も改善することなく、現状4年連続でチーム防御率はリーグ最下位で、4点台は西武とDeNAだけだ。18年~19年は、山賊打線”呼ばれた「超」がつく強力打線で、点数を取られた以上に取り返しリーグ2連覇を果たしたが、昨年、秋山翔吾(八戸大~10年③)がメジャーに移籍したあたりから、自慢の強力打線も迫力を欠き連覇を逃してしまった。

 今年も投手陣は相変わらずピリッとしないまま、クローザーの増田達至(NTT西日本~12年①)が不振で二軍落ちし、野手も序盤は栗山や外崎修汰(富士大~14年③)、山川穂高(富士大~13年②)が戦列を離れ、なかなかベストメンバーで臨むことができなかった。

 そんななか、呉念庭第一工大~15年⑦)や愛斗(花咲徳栄高~15年④)が主力不在の穴を埋めや。特にルーキーの若林楽人(駒大~20年④)は、秋山移籍後、なかなか決まらなかった一番打者に座り、44試合で20盗塁と活躍した。ただ、その若林がケガで今シーズン絶望となったのは痛かった…。さらにオリンピック期間中にメヒアも帰国し、シーズン通してベストメンバーで臨めないのは厳しい。 

【9/8現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 107試合 40勝50敗17分⑤

 防御率…4.14(4.28⑥)打率….247④(.238⑤)

 本塁打…87④(107③)盗塁73②(85④)

 得点…416④(479④)失点…464⑥(543⑥)

 

●4年連続でチーム防御率が最下位…投手陣の底上げが優先課題

 昨年は指名した7選手のうち、野手が5名と野手偏重のドラフトになったが、今年はさすがに投手強化のドラフトになりそうだ。1~2位の上位指名で、確実に左の先発候補を獲得したいところだ。

 野手も内野の層を厚くする即戦力や、年齢バランスで高校生の右打ちは内外野必要だが、必須なのは捕手の獲得で、呉や愛斗、岸潤一郎(四国IL徳島~19年⑧)にルーキーの若林、ファームの本塁打王の渡部健人(桐蔭横浜大~20年①)と若手が育ってきており、ここはハイレベルな競争に期待したい。

 ここ5年のドラフトで、先発では松本と今井達也(作新学院~16年①)、リリーフでは平良に平井克典(ホンダ鈴鹿~16年⑤)、森脇亮介(セガサミー~18年⑥)、野手ではキャプテンの源田壮亮トヨタ自動車~16年③)の主力を獲得し悪くない。

 今年はさすがに全員即戦力投手のような指名にはならないと思うが、投手中心にピンポイントで野手を挟んでいくドラフトになると思う。

【西武の補強ポイント】 

 投 手…左の即戦力投手(先発)、高校生は左右とも必要

 捕 手…ポスト森のレギュラー候補 ※高校・大学生どちらでもOK

 内野手…将来性のある右打ちのスラッガー、二遊間の即戦力

 外野手…即戦力の右打ちのスラッガー 

 

☆投手~左の即戦力投手(先発)、高校生は左右とも必要

 エースの高橋光成前橋育英高~14年①)が9勝、松本航(日体大~18年①)は7勝を上げ、6勝の今井、ニールが先発ローテーションを守っている。松本が25歳、高橋は24歳、今井が23歳と主力は若く、間違いなくこれから数年はこの3投手が中心になっていく。さらに21歳の渡邊勇太朗(浦和学院高~18年②)も頭角を現しており、楽しみな選手が揃っている。

 問題は先発左腕が皆無で、期待の浜屋将太(三菱日立PS~19年②)は防御率7点台、即戦力ルーキーの佐々木健(NTT東日本~20年②)は、初回3球で史上最速の危険球退場をしたのち、規律違反で謹慎と戦力になれていない。トレードで獲得した内海哲也東京ガス~03年巨自)や吉川光夫広陵高~06年日①)も、往年のパフォーマンスには程遠い。

 リリーフは、昨年無敗だった増田は今年は不調で2軍落ちし、代わりにギャレットを抑えにするも結果を残せず、セットアッパーの平良をクローザーにするしかなかった。当初先発の平井をリリーフに戻すも、今度はセットアッパーが不在になり、増田の不振がチームに大きく響いた。

 即戦力左腕で言えば、今年は佐藤隼輔(筑波大)に決まりだろう。キレのあるボールを投げ込む大学ナンバーワン左腕で、先発が不足しているロッテやDeNAと重複する可能性が高いが、佐藤指名がベストだと思う。

 佐藤が獲得できれば御の字だが、外れ1位候補では同じ先発左腕の隅田知一郎(西日本工大は、150キロのストレートに多彩な変化球を持ち制球力も高い。山田龍聖(JR東日本は、社会人3年目の本格派で21歳と若く伸びしろ十分。廣畑敦也(三菱自動車倉敷)は最速154キロの右腕で、ゲームメークに長けており先発の層を厚くする。

 1位で即戦力投手を獲得できたなら、2位は高校生指名で将来のエース候補を獲得したい。畔柳亨丞(中京大中京高)達孝太(天理高)は、状況によっては2位で獲得できるチャンスがあるし、上位指名が有望視される左腕の木村大成(北海高)松浦慶斗(大阪桐蔭高)は順位を繰り上げてでも獲得した選手だ。

 このほか即戦力では森田晃介(慶大)松井友飛(金沢学院大への評価が高く、先発左腕では桐敷拓馬(新潟医療福祉大)森翔平(三菱重工エスト)は中位で獲得できるチャンスもある。リリーフ陣に厚みを持たせるなら木蓮東北福祉大北山亘基(京産大上出拓真(NTT東日本)はリリーフの適性が高い。

 高校生では速球に力のある竹山日向(享栄高)に、井上透摩(金沢龍谷高)黒田将矢(八戸工大一高)をリストアップしている。左腕では金井慎之介(横浜高)代木大和(明徳義塾高)は打者としての評価も高く、コロナ禍でプロになるため高校を中退した17歳の渡辺一成(BBCスカイホークス)も面白い存在だ。

☆捕手~ポスト森のレギュラー候補 ※高校・大学生どちらでもOK

 捕手は絶対的なレギュラーの森友哉大阪桐蔭高~13年①)がおり、打撃も良い柘植世那(ホンダ鈴鹿~19年⑤)とベテランの岡田雅利(大阪ガス~13年⑥)が控え、補強を急ぐ必要はない。ただ、支配下人数が6名と少なく、高校生ならポスト森の打てる捕手、大学生なら3~4番手を任せられる捕手が欲しい。

 高校生捕手では松川虎生(市和歌山高)は高校通算39本塁打高木翔人(県岐阜商高)も強肩強打の捕手でポスト森を担うのに十分な逸材だ。3~4年後に松川や高木がレギュラーを掴んだとしても、森はまだ30歳で、打撃に集中することが出来れば打線に厚みを増すのは間違いない。このほか、大学生では岩本久重(早大福永奨(国学院大)は、ともに守備やリードに定評があり、課題の打撃を磨けばレギュラー候補に食い込むこともできる。

内野手~将来性のある右打ちのスラッガー、二遊間の即戦力

 内野のレギュラー陣は万全で、一塁に山川、二塁に外崎、三塁が中村、遊撃に源田がいる。控えでも打撃の良い呉、内野のユーティリティプレーヤーの平沼翔太(敦賀気比高~15年日④)をトレードで獲得し、二遊間のバックアップ要員も控える。中村が来年39歳を迎え、ポスト中村が必要だが、昨年のドラフトで渡部を獲得しており、世代交代の準備もできている。

 現状、急ぐポジションではないが、19~22歳に右打者がおらず年齢バランスの意味で将来性のある右打ちのスラッガー、または二遊間の即戦力を獲得してさらに厚みを持たせたい。

 高校生では、投打二刀流の阪口楽(岐阜一高)を上位でリストアップしており、貴重な左打ちのスラッガー。右打ちでは今夏甲子園でも活躍した徳丸天晴(智弁和歌山高)山下陽輔(智弁学園高)、大型遊撃手の松下歩叶(桐蔭学園高)は、手本となる選手が多くいるチームで、どういう風に成長するか見てみたい。

 即戦力の二遊間で絞ると、池田来翔(国士館大)は右打ちの二塁手で、パワーもある中距離打者。中山誠吾(白鷗大)は、強打の左打ちの遊撃手で守備も巧い。野口智哉(関大)はミート力の長けた左の巧打者で、源田二世の異名をとる和田佳大(トヨタ自動車はともに遊撃手で、守備は抜群の安定感をほこるい。

☆外野手~即戦力の右打ちのスラッガー

 内野よりは外野のほうが緊急性が高い。レギュラーの栗山も来年39歳を迎え、指名打者の出場がさらに増えてくる。愛斗がレギュラーを掴みかけているが、若手の若林に中堅の岸や川越、ベテランの金子侑司(立命大~12年③)の争いになるが、愛斗と川越以外は俊足巧打のタイプで、中軸を打てるスラッガーが欲しい。

 一番の候補は、地元の吉野創士(昌平高)で、高校通算55本塁打で機動力も使え、3~4年後にはチームの中心選手になっているかもしれない。正木智也(慶大)も大学ナンバーワンスラッガーで、配球を読む鋭さもある即戦力だ。ただ、吉野も正木も上位でしか獲れず、投手を優先すると3位以降になる。

 ブライト健太(上武大)は、この間一気に評価を上げてきた強打者で、高い身体能力から放つ打球は規格外で、50メートル5秒9の快足も備える。今夏の甲子園優勝メンバーの徳丸天晴(智弁和歌山高)も将来の4番候補、池田陵真(大阪桐蔭高)福元悠真(大商大)は右打ちの巧打者で、ともにパンチ力もある。

 

●上位で確実に先発左腕を獲得したい。2年連続の野手1位指名の可能性もあり

 1位指名は佐藤隼輔(筑波大)が本命だが、直近のリーグ戦の状況を見て隅田知一郎(西日本工大山下輝(法大)の指名もあり得る。仮に抽選で外れたとしても、山田龍聖(JR東日本森翔平(三菱重工エスト)の即戦力左腕は確実に獲得したいところだ。

 一方で昨年は、早川隆久(楽天)を外したあと、渡部指名でアッと言わせた。上位指名が確実視されている阪口楽(岐阜一高)吉野創士(昌平高)等の野手1位指名の可能性も十分にある。

【指名シミュレーション】 

1位~山田 龍聖(JR東日本・投手)

 …長身から投げ下ろす左の本格派で、制球力を磨けば大化けする可能性も高い

2位~木村 大成(北海高・投手)

 …春から夏にかけて課題を克服し、さらにレベルアップを遂げ、球速もアップ

3位~松川 虎生(市和歌山高・捕手)

 …高校通算39本塁打の強打の捕手で、パワーあふれる長打力は折り紙つき

4位~森田 晃介(慶大・投手)

 …最速149キロのストレートを軸に、テンポ良い変化球で打たせて取る

5位~竹山 日向(享栄高・投手)

 …最速148キロのストレートの速球派右腕で、制球力が課題も伸びしろ十分

6位~黒田 将矢(八戸工大一・投手)

 …長身から投げ下ろすパワーピッチャーで、打撃も良く中軸で外野も守れる

7位~渡辺 一成(BBCスカイホークス・投手

 …最速148キロのキレのあるストレートを武器に、目標はあくまでもプロ