ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆日本ハム~新球場に向けどういったチームを作るか、分岐点になるドラフト

●開幕から最下位独走…グラウンド以外の話題が多すぎの異常なシーズン

 開幕より最下位に沈み、後半戦も浮上のきっかけが掴めないなか、チームの看板選手である中田翔大阪桐蔭高~07年高①)が暴力事件で巨人へ無償トレードされた。さらにチームメイトへの差別発言なども発覚し、成績の悪さ以上に醜聞が目立っている。かつてそつない野球と定評のあった育成プランで、一目置かれていたチームが残念ながら今は見る影もない。

 今シーズンは昨年課題だった投手陣は改善しており、不振の最大の要因は貧打に喘ぐ打線にある。本拠地が広い札幌ドームで、元々本塁打は多くないが、昨年のチーム打率はリーグ2位と打線はむしろ強みだった。

 その打線の中心を担っていたのが、打点王の中田のほか、近藤健介(横浜高~11年④)と西川遥輝智弁和歌山高~10年②)、大田泰示東海大相模高~08年巨①)、渡邊諒(東海大甲府高~13年①)だが、今年は全員が不振に陥っている。

 近藤こそ4割を超える高い出塁率をほこっているが、打率.285は近藤の実力からすると物足りない。西川と渡邊は規定打席に到達するも打率は.240前後で、渡邊は現在2軍調整中。大田は規定打席に届かず、中田は放出された。

 残念なのは、このチャンスを掴む若手の出現がないこと。野村佑希(花咲徳栄高~18年②)がいるじゃないかと思うが、レアード(ロッテ)移籍以降、レギュラー不在の三塁手で、13年の渡邊を最後にレギュラーを獲得する野手が出てこないのが、現在の成績を反映している。

【9/2現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 96試合 35勝47敗14分⑥

 防御率…3.54③(4.02④)打率….232⑥(.249②)

 本塁打…54⑥(89⑥)盗塁52⑤(80⑤)

 得点…308⑥(493③)失点…372②(528⑤)

 

●育成の日本ハムの信頼を取り戻るか、分岐点になるドラフト

 今年のドラフトは、今後のチーム戦略の分岐点になると思う。栗山監督の退任が現実味を帯び、23年の新球場開業に向け、戦力面でもコンプライアンス面でもチームを建て直す課題は多い。

 戦力面では今一度、原点に立ち返り育成重視で中・長期的にチームを立て直すか、3年に一度の優勝の方針から、即戦力中心に短期にチームを立て直すかのどちらかを選択する形になる。私はこの間の過信とも言えるチーム編成や運営を反省し、中長期的にもう一度ファイターズ・イズムをゼロベースから立て直し、信頼を損ねたファンに形(=行動)で見せてくれることを期待したい。

日本ハムの補強ポイント】 

 投 手…将来のエース候補+即戦力の先発

 捕 手…必要なし

 内野手…二塁と遊撃を守れる即戦力、将来の主軸候補

 外野手…将来の主軸候補 

 補強ポイントに加えて、中田に代わる看板選手の獲得も必要だ。本来であれば吉田輝星(金足農高~18年①)や清宮幸太郎早実高~17年①)が担わなければならないが、まだ時間がかかりそうで、ドラフト以外でもFA選手の獲得や大胆なトレードでチームを活性化させてほしい。

☆投手~将来のエース候補+即戦力の先発

 投手陣は改善が進み、先発はエースの上沢直之専大松戸高~11年⑥)を中心に、伊藤大海(苫小牧駒大~20年①)と加藤貴之(新日鉄住金~15年②)が規定投球回数をクリアしている。さらに楽天から移籍した池田隆英(創価大~16年楽②)、中継ぎから先発に回った河野竜生(JFE西日本~19年①)も控え、先発陣は整備できつつある。

 一方でリリーフ陣は、クローザーの杉浦稔大国学院大~13年ヤ①)が、リーグ3位の17セーブを上げ、堀瑞樹(広島新庄高~16年①)の26ホールドもリーグ1位だが、杉浦は調整にため離脱し、勝ちパターンまでは形成できていない。

 Bロドリゲスや井口和朋(東農大オホーツク~15年③)、ベテランの宮西尚生関西学院大~07年大社③)が頑張っているが、宮西は来年37歳を迎え、質量とも十分とは言えない。また、公文克彦大阪ガス~12年巨④)が西武へ移籍したことから、左腕のリリーフも欲しいところだ。

 将来のエース候補では、森木大智(高知高)を推したい。残念ながら甲子園で見ることは出来なかったが、中学時代より知名度は全国区で、ドラフト1位間違いなしの逸材に成長し、スター性も兼ね備えている。小園健太(市和歌山高)風間球打(明桜高)も外しがたい選手だが、今年投手を1位指名するなら森木にいってほしい。

 日本ハムの優先課題は野手で、上位指名は野手になる可能性が高く、そうなると3位以降で投手を獲得することになる。高校生なら地元の木村大成(北海高)田中楓基(旭川実高)、今夏の甲子園初戦で、センバツ準優勝の明豊高を完封した深沢鳳介(専大松戸高)などは3位以降でも獲得のチャンスがある。故障で今夏の登板は限られたが、羽田慎之介(八王子高)金井慎之介(横浜高)はスケールの大きい左腕で、同じくリストアップしている床枝魁斗(修徳高)末木克典(甲府工高)はともにパワーピッチャーで、伸びしろのある将来のリリーフエース候補だ。

 上位候補の大学生では、三浦銀二(法大)飯田琉斗(横浜商大、社会人では廣畑敦也(三菱自動車倉敷)山田龍聖(JR東日本を上位でリストアップしており、先発陣に厚みを増す。このほか徳山壮磨(早大赤星優志(日大)の評価が高く、速球派の古屋敷匠真(法大)松井友飛(金沢学院大もリストアップしている。

 課題に挙げたリリーフ候補では、木蓮東北福祉大北山亘基(京産大はともに右の本格派、左のリリーフでは鈴木勇斗(創価大)井奥勘太(天理大)は補強ポイントに合う選手だ。

☆捕手~必要なし

 現状、コーチ兼任の鶴岡慎也三菱重工横浜~02年⑧)を含め8名おり、人数的にも十分で急いで補強する必要はない。清水優心(九州国際大高~14年②)がいよいよレギュラーを掴みそうで、石川亮(帝京高~13年⑧)をはじめ20代中盤に選手が集中しており、むしろトレードで30歳前後のベテランを獲得したほうが良いと思う。

 強いて言えば、清水含め打力に課題があるので、打てる捕手の古賀悠斗(中大)の獲得は清水や石川へのカンフル剤になるし、将来を見据えて松川虎生(市和歌山高)高木翔斗(県岐阜商高)の獲得も面白いと思う。

内野手~二塁と遊撃を守れる即戦力。将来の主軸候補

 現在、レギュラーは二塁の渡邊と、ここ数年課題だった三塁に野村がレギュラーを獲得しつつある。中田の抜けた一塁には清宮が入るのが理想的だが、外国人選手でも賄えるので、ここは清宮の成長に期待したい。

 控えでは高濱祐仁(横浜高~14年⑦)や西武から移籍した佐藤龍世(富士大~18年西⑦)など、右には強打者が揃っているが、左打者は清宮以外はアベレージヒッターで左のスラッガーも欲しいところだ。

 補強ポイントはレギュラー不在の遊撃手で、欲を言えば二遊間も守れるとベストだ。ピッタリはまりそうなのは中山誠吾(白鷗大)で、守備にも定評のある左打ちのスラッガー。俊足巧打の大内信之介(JPアセット証券)は、二遊間を守れ補強ポイントに合致する。

 高校生では粟飯原龍之介(東京学館高)は、俊足の一番打者だが高校通算33本塁打のパンチ力もある大型遊撃手、清水武蔵(国士館高)も強肩強打に加え機動力も使え、捕手と外野も守れるセンスの塊。星野真生(豊橋中央高)は、高校通算25本塁打スラッガーで守備も巧く、清水や星野は下位で獲得できるチャンスがある。

 ただ内野手のイチオシは阪口楽(岐阜第一高)で、守備は一・三塁だが、広角に打ち分ける長打力が魅力の選手で、スケールの大きい将来の4番候補だ。さらにチームの顔になれる可能性を秘めた選手で、こういうときにこそ、個人的に是非1位指名してもらいたい選手だ。

☆外野手~将来の主軸候補

 外野手は西川が29歳、近藤は28歳、大田もまだ31歳で、この3人が本来の調子を取り戻せば、補強を急ぐ必要はない。控え選手を見ても、ポスト西川で俊足の五十幡亮汰(中大~20年②)がおり、浅間大基(横浜高~14年③)はレギュラー獲りが見えてきた。身体能力の高い万波中正(横浜高~18年④)は、攻守に光るプレーを見せ、今川優馬(JFE東日本~20年⑥)も機動力も使えるスラッガーで、質量ともに問題はない。ここは将来の主軸候補を獲得し、じっくり育成していきたい。

 そうなると当然高校生が候補になり、甲子園で活躍した前川右京(智弁学園高)徳丸天晴(智弁和歌山高)皆川岳飛前橋育英高)など将来の主軸候補が揃っている。高校通算47本塁打吉野創士(昌平高)は足も早く、OBの新庄剛志のようなプレーヤーになる可能性を秘めている。

 大学生では正木智也(慶大)は今年の即戦力ではナンバーワンスラッガーで一塁も守れる。ブライト健太(上武大)は高い身体能力を誇るスラッガーで飛距離はケタ違い、梶原昂希(神奈川大)ソフトバンクの柳田を彷彿させるパワーを秘めており、ブライトと梶原はともに俊足でスケールの大きい選手だ。俊足巧打の丸山和郁(明大)もリストアップしているよいうだが、今年はとことん長打力にこだわった指名になっても良いと思う。

 

●今年はナンバーワン選手より、看板選手になれるナンバーワン野手に行って欲しい

 今年は不祥事が多く発生し、新球場移転へ向けスター選手候補または課題のスラッガーを1位候補にしてほしい。順当に考えれば森木大智(高知高)小園健太(市和歌山高)風間球打(明桜高)の重複指名が無難だが、個人的には阪口楽(岐阜一高)や、正木智也(慶大)など野手1位指名を見てみたい。

【指名シミュレーション】 

1位~阪口 楽(岐阜第一高・内野手

 …広角に打ち分ける技術と長打力を秘めた将来の4番候補。投げては140キロの二刀流

2位~飯田 硫斗(横浜商大・投手)

 …187センチの長身から最速154キロの本格派で、制球力が課題もスタミナは抜群

3位~羽田慎之介(八王子高・投手)

 …190センチを超える左腕で、和製ランディ・ジョンソンと呼ばれ将来性は十分

4位~星野 真生(豊橋中央高・内野手

 …高校通算25本塁打の遊撃手で、俊足で守備も巧い。阪口と並び将来の主軸候補

5位~赤星 優志(日大・投手)

 …最速152キロのストレートに、多彩な変化球で凡打の山を築くグラウンドボーラー

6位~大内信之介(JPアセット証券内野手

 …バットコントロールに定評がある俊足巧打で、二遊間の貴重なリザーブになる

7位~田中 楓基(旭川実高・投手

 …最速148キロのストレート、カーブやチェンジアップに磨きをかける伸びしろ十分