ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年ドラフト予想☆巨人~今年は即戦力投手が豊富で投手力強化!1位は佐藤で決まり?

●原監督のタクトが冴え、混戦予想もぶっちぎりの独走Vで連覇確実

 昨年、5年振りの優勝を果たし、巨人連覇の予想が多かったが、昨年以上の混戦も多くの解説者が予想していた。しかし蓋を開けてみると、巨人が他チームを圧倒し首位を独走。全チームに勝ち越しし、CSのないセ・リーグペナントレースは早々と消化試合化してしまった。

 巨人独走の原動力の大きな要因は、原辰徳監督の指揮に依るところが大きい。投手陣は菅野智之東海大~12年①)が開幕13連勝でまさにエースの活躍を見せ、弱冠20歳の戸郷翔征(聖心ウルスラ高~18年⑥)と左腕の田口麗斗(広島新庄高~13年③)がローテーションを守った。メルセデスとサンチェスの両外国人も、決して万全ではなかったが先発陣を支えた。

 リリーフ陣はデラロサがクローザーを務め、中川皓太(東海大~15年⑦)や高梨雄平(JX-ENEOS~16年楽⑨)、大江竜聖(二松学舎大高~16年⑥)の左腕トリオ、鍵谷陽平(中大~13年日③)やベテランの大竹寛浦和学院高~01年広①)が勝ちパターンを担った、特に先発から中継ぎに転向して復活した大竹や、フォームを変えて覚醒した大江、鍵谷や高梨はいずれもシーズン途中のトレードで獲得した選手で、適材適所の補強は見事としか言えない。

 野手陣も実は3割打者はおらず、丸佳浩(千葉経大高~07年広高③)の打率.287が最高で、チームリーダーの坂本勇人光星学院高~06年高①)と4番の岡本和真(智弁学園高~14年①)、吉川尚輝(中京学院大~16年①)の4名しか規定打席をクリアしていない。

 ここはまさに原監督の用兵が光り、捕手は大城卓三(NTT西日本~17年③)を中心に炭谷銀仁朗(平安高~05年西高①)を併用。内野はベテランの中島宏之(伊丹北高~99年西⑤)やシーズン途中加入したウィーラーなど実績のある選手に加え、北村拓己(亜大~17年④)や若林晃弘(JX-ENEOS~17年⑥)、増田大輝(四国IL徳島~15年育①)の若手が結果を出した。外野もベテランの亀井善行(中大~04年④)に松原聖弥(明星大~16年育⑤)に活きの良い若手が出てきた。

 こうしてみると、かつてはタレント集団だったチームが、「個」の力のチーム作りから、「和」のチームに変わったことを印象付けるシーズンになった。また、期中に楽天と3件のトレードを成立させ、ロッテには澤村拓一(中大~10年①)を放出した。首位独走のチームが積極的なトレードで補強を図る一方、他球団は阪神が1件のトレードを成立させただけで、何とも寂しい気持ちがした。

【10/18現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 101試合 61勝35敗2分⑤

 防御率…3.36①(3.77④)打率….260③(.257②)

 本塁打…118②(183①)盗塁65②(83②)

 得点471①(663①)失点353①(573③)得失点差118(90)

 

 ここ5年の巨人のドラフトは決して良くない。15年は競合を避け桜井俊貴(立命大~15年①)を単独指名、17年は1位~7位まで社会人と大学生で占め、18~19年は一転して高校生中心の指名で、チームとしての方針もビジョンも感じられなかった。

 そのなかで戦力になったのは、投手では戸郷と中川、桜井と畠世周(近大~16年②)、高橋優貴(八戸学院大~18年①)も及第点を上げられる。野手では大城がレギュラーを獲得し、期待の吉川尚もようやくケガなくシーズンを乗り越えられた。育成から増田と松原も戦力になっているが、一軍半の選手が多く今後に期待したい。

【巨人の補強ポイント】

 投 手…将来のエース候補、即戦力先発とクローザー

 捕 手…大学生捕手

 内野手…二遊間の即戦力

 外野手…即戦力の右打ち 

 

●菅野の去就でドラフト戦略も大きく変わる。今年はオール投手でも良い

☆投手~将来のエース候補、即戦力先発とクローザー

 投手陣は菅野の去就で大きく変わる。巨人を熱望し1年浪人、その後はエースとしてチームを支え、今年は開幕から13連勝。代わりなど要ないが、本人が希望すればチームとしては送り出すしかないだろう。

 菅野が抜けると一気に先発陣は厳しくなる。先発陣は25歳の田口と20歳の戸郷、26歳の畠の23歳の高橋プラス外国人の編成になる。ただ、巨人のエースとしてはどうだろうと思う。単に今いるメンバーのなかで一番良い投手ではなく、巨人のエースは名実ともにリーグを代表する選手で、将来のエース候補、または即戦力投手が必要だと思う。

 リリーフは抑えはデラロサだが、選手層は厚い。26歳の中川を中心に、高木京介国学院大~11年④)と鍵谷が30歳を超えるが、28歳の高梨に21歳の大江がおり緊急性は先発に比べては低い。ただ、右のクローザー候補は必要で、極論だが今年の巨人のドラフトはオール投手でも良いと思うほど、強化が必要だ。

 将来のエース候補には、巨人が好きな右の本格派が多い。高橋宏斗(中京大中京高)中森俊介(明石商高山下舜平大(福岡大大濠高)はいずれも巨人のエース候補にふさわしい逸材だ。即戦力先発では大道温貴(八戸学院大栗林良史(トヨタ自動車は安定感が抜群で、木澤尚文(慶大)は抑えの適性もあるが、先発でもローテションに入る力がある。

 クローザー候補では、伊藤大海(苫小牧駒大)伊藤優輔(三菱日立PS)はともにストレートに力のあるパワーピッチャー。森博人(日体大はスリークオーターの右腕で、不足する役割を埋める器用さがあり上位で獲得したい選手だ。

 即戦力投手ではほかに大江克哉(NTT西日本)内間拓馬(亜大)森浦大輔(天理大)は貴重な先発左腕だ。リリーフでも鈴木昭汰(法大)山本一輝(中京大岡田和馬(JR西日本は豊富な左腕リリーバーをさらに厚くする。

 高校生投手も多くリストアップしており、育成含め指名が増えそうだ。嘉手苅浩太(日本航空石川高)内田了介(埼玉栄高)有馬太玖登(都城東高)はパワーピッチャー。蓼原慎二(桐生一高豆田泰志(浦和実高)は総合力が高く、左腕では根本悠楓(苫小牧中央高)への評価が高い。打者としても非凡な秋広優人(二松学舎大高)にも注目している。

 

☆捕手~大学生捕手

 捕手は大城が打てる捕手としてレギュラーに近づき、ベテランの炭谷に小林誠司日本生命~13年①)、24歳の岸田行倫(大阪ガス~17年②)もおり戦力的に補強は急ぐ必要はないが、捕手の支配下が5名しかおらず、20~23歳が空白なこともあり大学生捕手を獲得したい。

 打てる捕手の古川裕大(上武大)萩原哲(創価大)、強肩の榮枝裕貴(立命大)喜多隆介(京都先端科学大)が候補になる。優先度から下位指名になりそうで、萩原や喜多は獲得の可能性が高い。

 

内野手~二遊間の即戦力

 内野手はチームリーダーの坂本が30歳を超えたが、若き主砲の岡本は24歳、二塁の吉川尚は25歳で問題はない。このほかに俊足の増田大、長打力のある北村、巧打の田中俊太(日立製作所~17年⑤)、若林は外野も守れ、オープン戦でアピールに成功した湯浅大(健大高崎高~17年⑧)も控えている。

 年齢バランスも悪くなく、質量ともに豊富で、補強ポイントは故障の不安がある吉川尚の二塁と、ポスト坂本で将来性のある遊撃手を抑えておきたい。

 二塁の即戦力では牧秀悟(中大)が一番だが、守備力の高い上川畑大悟(NTT東日本)や巧打者の峯本匠(JFE東日本)は内野の層をさらに厚くする。同じ社会人で右のパワーヒッター平山快(JFE東日本)福永裕基(日本新薬の評価も高い。

 将来性のある高校生遊撃手は今年は豊作で、小深田大地(履正社高)中山礼都(中京大中京高)蔵田亮太郎(聖望学園高)はいずれも強打の遊撃手。本職は三塁だが遊撃にもチャレンジしている山村崇嘉(東海大相模高)も候補に挙がっている。

 

☆外野手~即戦力の右打ち

 外野は亀井が38歳を迎え、レギュラーは31歳の丸のみ。25歳の松原が2番に定着しているが実績には乏しく、野手では外野が最優先になる。特に22~24歳が空白で大学生と社会人、右打ちで戦力になっているのが石川慎吾(東大阪大柏原高~11年日③)しかおらず右打者ならベストだ。

 外野には野手ナンバーワン評価の佐藤輝明(近大)がおり、現状でもレギュラーを狙え、狭い東京ドームで本塁打も量産できるスラッガーで、佐藤が加われば打線にスキがなくなる。超俊足の五十幡亮汰(中大)は、ここにきて打撃力が上がりリードオフマンに十分になり得る。右打者では今川優馬(JFE東日本)は俊足強打の二番打者、向山基生(NTT東日本)は勝負強い巧打者で、今年は即戦力外野手を確実に獲得したい。

 

●1位は即戦力野手ナンバーワンで佐藤が濃厚!個人的には投手だと思うが…

 今年は早々と野手の1位指名を公言しており、佐藤輝明(近大)が最有力候補になる。ただ、菅野の去就もあり、個人的には即戦力投手で競合覚悟で早川隆久(早大や指名もあると思う。敢えて単独で栗林良史(トヨタ自動車高橋宏斗(中京大中京高)の指名もありだ。ただ、栗林以外はいずれも抽選になりそうで、現在9連敗中のクジ運にも注目したい。

【指名シミュレーション】 

 1位~大道温貴(八戸学院大・投手)…下級生時代から主戦を務め、実戦経験が豊富な完成度の高い右腕。153キロのストレートに制球力の良い変化球でゲームメークに長けており、スタミナもあり大崩れしないのが最大の魅力。

 2位~大江克哉(NTT西日本・投手)…社会人1年目より主戦を務め、社会人で習得したカーブでさらに投球術がアップした。スライダーとチェンジアップの精度も高く、打者との駆け引きが巧い。体重も増えストレートの威力が増した。

 3位~森浦大輔(天理大・投手)…ボールの出所が分からない、力を抜いたフォームからキレのあるストレートとチェンジアップを投げ込む左腕。杉内を彷彿とさせる。

 4位~根本悠楓(苫小牧中央高・投手)…中学時代に全国制覇した左腕で、スクリューのように沈むツーシーム奪三振率が高い。小柄だが強気な投球が身上。1

 5位~岡田和馬(JR西日本・投手)…今年に入り評価が急上昇した即戦力左腕で、勢いのあるストレートとスライダーを武器に、先発・リリーフともに適性がある。

 6位~平山 快(JFE東日本内野手…本職は一・三塁だが、遊撃も守れるスラッガー。右にも長打が打てるスケール感のある打撃が武器。

 7位~山村崇嘉(東海大相模高・内野手…高校通算45本塁打スラッガーで、投手も務める大黒柱。強肩を活かして、今夏は三塁、遊撃にもチャレンジしている。

 今年の巨人は、本指名では5名の予定で決して多くない。ただ、リストアップしている選手は多く、育成指名が増えそうな気がする。合同練習会で注目を浴びたシャピロ・マシュー一郎(国学院栃木高)や長打力が魅力の岡本大翔(米子東高)、俊足の奥野翔琉(明徳義塾高)、準硬式出身の大曲錬(福岡大)等の一芸に秀でた選手や、無名の逸材発掘にも注目したい。