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どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年順位予想☆日本ハム~伝統の守り勝つ野球を取り戻し、優勝争いに加わりたい

 昨年は先発投手の相次ぐ離脱で、リリーフ投手を先発で起用し継投でゲームを作るオープナーも積極的に試みたが、勝負の8月に5勝20敗で上位争いから脱落した。

 今シーズンは離脱した主力も戻り、ドラフトでも即戦力選手を中心に獲得したが、積極的な補強を行った楽天とロッテには及ばずと思い「5位」予想とした。日本ハムの特徴と言えば、「そつのない攻めの守り勝つ野球」と「若手の台頭」だったが、ここ数年はあまり感じなくなった。

 打率はリーグ2位で高いが、本塁打数は減少、盗塁数も48盗塁で半減した結果、得点はリーグ5位に沈んだ。「打率=得点」ではないが、かつての効率の良い攻めが出来ていないことを数字が表している。主力が抜けたあとに台頭してきた若手選手も見当たらず、ビヤヌエバの加入だけでは課題が解消されたとは言えない。

 課題の先発投手陣は駒が揃い、昨年のような「栗山流オープナー」を連発する必要はなく、中継ぎ陣も層が厚い。若い投手が多いが経験値は高く、昨年のような主力の離脱がない限り大崩れすることはなく、とにもかくにもポイントは打線になる。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 5位 71勝69敗3分 .251    93本   48個  560点  3.76  590点

 18年 3位 67勝74敗2分 .251  140本   98個  589点  3.77  586点

 17年 5位 73勝65敗5分 .242  108本   86個  509点  3.82  596点  

 16年 1位 69勝71敗3分 .266  121本 132個  619点  3.06  467点

 15年 2位 62勝80敗1分 .258  106本 134個  615点  3.62  581点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 平均年齢26.2歳と、とにかく若いチームだ。ただ、本来の育成路線とは相反して、ここ5年は大学、社会人選手が戦力になっており、有原以外で主力と呼べる選手がいないのが気がかりだ。投手では吉田輝星(金足農高~18年①)、野手では清宮幸太郎早実高~17年①)のスター選手候補の覚醒が待ち遠しい。

 18年~なし

 17年~西村天裕(投手~NTT東日本②)

 16年~石井一成(内野手早大②)玉井大翔(投手~新日鉄住金⑧)

 15年~加藤貴之(投手~新日鉄住金②)

 14年~有原航平(投手~早大①)清水優心(捕手~九州国際大高②)

    石川直也(投手~山形中央高④)

 このほかにも、堀瑞樹(広島新庄高~16年①)や清宮の上位指名選手が、及第点の成績を上げている。また、18年からは育成選手獲得も解禁し、選手層を厚くし育成を再強化する姿勢が窺える。

 

●投手陣~先発陣が揃えば、層の厚いリリーフ陣で本来の守り勝つ野球を!

 投手陣は昨年10勝のマルティネスが全休、開幕投手を務めた上沢直之専大松戸高~11年⑥)は、ケガでシーズン後半を棒にふり、6~7回まで任せられる先発は、有原と金子弌大(トヨタ自動車~04年オ自)しかいなかった。先発の駒不足を栗山流オープナーのもと、リリーフ陣が総動員された結果、酷使された中継ぎ陣は疲労困憊で夏場の失速の要因の一つになった。

 ところで栗山流オープナーは、MLBのオープナーとは違い、長いイニングを任せられない投手をショートリリーフで繋ぐ戦法でやや違う。栗山監督は今年も継続を示唆しているが、わざわざ先発の駒が揃っている状況であれば必要かと思う。3試合連続で金子を先発するプランも述べていたが、短期決戦ならまだしも公式戦でやる必要があるのだろうか…。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…上沢直之 金子弌大 有原航平 加藤貴之 ロドリゲス 斎藤佑樹

 ・後半戦…堀 瑞樹 杉浦稔大 有原航平 加藤貴之 浦野博司 金子弌大

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆有原航平(164回1/3)金子弌大(107回2/3)加藤貴之(92回)

     ロドリゲス(91回1/3)上沢直之(71回1/3)杉浦稔大(65回)

 ・救援…玉井大翔(65試合)公文克彦(61試合)石川直也 (60試合)

       宮西尚生(55試合)堀 瑞樹(53試合)秋吉 亮(53試合)

 開幕投手には有原が指名され、ここは誰も文句ないだろう。昨シーズンは最後に山本由伸(オリックス)に防御率のタイトルを獲られたが、リーグ2位の2.46、15勝は最多勝で、名実とも絶対的エースに成長した。有原の次には実績十分の金子が控え、上沢とマルティネスのイニングイーターが復調すれば、中継ぎ陣の負担も軽減される。

 5~6番手のローテーション争いは熾烈で、順当にいけば杉浦稔大国学院大~13年ヤ①)と加藤になり、杉浦は故障防止、加藤は打順2周りまででともに長いイニングは厳しいが、5回までなら安心して任せられる。新加入のバーヘイゲンはゴロを打たせて取る技巧派で、メジャーでは中継ぎを務めた。貴重な先発左腕の即戦力ルーキーの河野竜生(JFE西日本~19年①)も候補になる。

 リリーフ陣の層は厚いが、絶対的クローザーの確立が課題になる。候補一番手の秋吉亮(パナソニック~13年ヤ③)は防御率2.96、石川直も防御率3.31と、ともに安定感に欠ける。

 中継ぎは鉄腕リリーバーの宮西尚生関学大~07年大社③)を中心に、スクランブル登板でも抜群の安定感をほこる玉井大翔(新日鉄住金~16年⑧)、パワーピッチャーの西村天裕(NTT東日本~17年②)、左キラー公文克彦大阪ガス~12年巨④)とタイプの違うスペシャリストが揃っている。さらにロングリリーフを任せられる堀やロドリゲス、変則右腕のルーキー鈴木健矢(JX-ENEOS~19年④)も加われば、投手陣は質量ともに豊富になる。 

 若手では当然、吉田輝星(金足農高~18年①)に期待がかかるが、基礎体力はついたがもう少し時間がかかろそうで、昨年初勝利を上げた左腕の北浦竜次(白鷗大足利高~17年⑤)などは面白い存在だ。 

 

【今年度の予想】

 ・先発…有原航平 上沢直之 金子弌大 マルティネス 杉浦稔大 加藤貴之 

       バーヘイゲン 河野竜生 立野和明 吉田輝星 村田 透 北浦竜次

 ・中継…宮西尚生 玉井大翔 公文克彦 堀 瑞樹 西村天裕 

       ロドリゲス 井口和朋 浦野博司 生田目翼 鈴木健

 ・抑え…秋吉 亮 石川直也  

 

●野手陣~怖い上位打線と対照的に下位打線は…カギを握る両外国人の出来栄え

 一言で言うと、昨年は上位打線と下位打線の力の差がありすぎた。1番~西川、2番~大田、3番~近藤がそれぞれ結果を残し、本来の成績ではなかったものの4番~中田までの並びは良かったが、5番以降に怖さを感じなかった。

 前半5番を務めた台湾の4割バッターの王伯融は打率.265、3本塁打と期待を裏切った。後半5番に定着した渡邊諒(東海大甲府高~13年①)も健闘したが、パンチ力はあるものの中距離打者で、ロッテに移籍したレアードの穴を埋めることはできなかった。

【19年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…清水優心(98/246)宇佐見真吾(45/103)

 内野手…☆近藤健介(138/600)☆渡邊諒(132/543)☆中田翔(124/514)

     中島卓也(120/328)清宮幸太郎(81/278)石井一成(76/226

     横尾俊健(78/191)平沼翔太(73/184)田中賢介(89/170)

     杉谷拳士(83/157)

 外野手…☆西川遥輝(142/651)☆大田泰示(132/594)王伯融(83/340)      

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)浅間大基⑤      1)西川遥輝⑧      

  2)西川遥輝⑧      2)杉谷拳士⑨       

  3)近藤健介DH          3)近藤健介⑦    

  4)中田 翔③      4)中田 翔③      

  5)王 伯融⑦      5)渡邊 諒④      

  6)大田泰示⑨      6)田中賢介DH      

  7)石井一成④      7)横尾俊健⑤      

  8)鶴岡慎也②      8)石井一成⑥

  9)中島卓也⑥      9)清水優心②  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)西川遥輝⑧      捕 手)清水優心(宇佐見真吾) 

  2)渡邊 諒④      一塁手)中田 翔(清宮幸太郎

  3)近藤健介⑦      二塁手)渡邊 諒(杉谷拳士

  4)中田 翔③      三塁手)ビヤヌエバ(横尾俊健)

  5)大田泰示⑨         遊撃手)石井一成(中島卓也

  6)王 伯融DH       左翼手)近藤健介(王 伯融)

  7)ビヤヌエバ⑤     中堅手西川遥輝

  8)清水優心②      右翼手大田泰示(松本 剛)

  9)石井一成⑥      D H)王 伯融

     

 今年も課題の上位と下位打線の差は明白で、ともに2年目の王伯融と巨人から移籍したビヤヌエバの両外国人がカギを握っている。1~5番は色々な組み合わせができそうだが、俊足で出塁率の高いリードオフマンの西川、安打製造機の3番近藤は不動だ。渡邊と中田は5番、大田は2番または4番も打てる。4番~大田、5番~中田の並びも悪くないが、誰よりも4番にプライド持っている中田は外せないだろう。

 王伯融は打率3割、ビヤヌエバは20本塁打以上と、それぞれ期待に応えることができれば、気の抜けない下位打線になる。本来であれば清宮が、6~7番のプレッシャーのあまりない打順でレギュラーを掴むのが理想なのだが、思いのほか苦しんでいる。

 一方でファームで結果を残した若手に楽しみな選手がいる。高卒ルーキーだった万波中正(横浜高~18年④)は本塁打14本、育成の海老原一佳(BC富山~18年育①)も11本、今井順之介(中京高~16年⑧)も10本塁打と楽しみなスラッガーが育ってきた。

 守備面では捕手のレギュラーが決まらない。一番近いのは清水だが、打撃のよい宇佐見真吾(城西大~15年巨④)や、有原と相性の良い石川亮(帝京高~13年⑧)、39歳の鶴岡慎也三菱重工横浜~02年⑧)も候補で、そろそろ正捕手を固定したい。

 内野は一塁の中田、二塁の渡邊は決まりで、三塁はビヤヌエバと横尾俊健(慶大~15年⑥)、遊撃は中島卓也(福岡工高~08年⑤)に石井と、ともに同じタイプの選手で、どちらがレギュラーを獲得しても遜色ない。外野は近藤、西川、大田が鉄壁で、トラブルでもない限り、この3人からのレギュラー奪取は難しい。

 控えには内外野守れるムードメーカーの杉谷拳士(帝京高~08年⑥)、守備固めで内野は谷内亮太(国学院大~12年ヤ⑥)、外野に松本剛(帝京高~11年②)が控える。特に守備は、昨シーズン二塁~横尾、左翼~清宮など、危なかっしくて見ていられない布陣にならないよう、控えの層を厚くする必要がある。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…清水優心 宇佐見真吾 鶴岡慎也(石川 亮)

 内野手…中田 翔 渡邊 諒 ビヤヌエバ 石井一成 清宮幸太郎 

       杉谷拳士 横尾俊健 中島卓也 (谷内亮太 平沼翔太 今井順之介)

 外野手…近藤健介 西川遥輝 大田泰示 王 伯融 松本 剛

    (谷口雄也 浅間大基 万波中正)  

 今年注目の若手では、投手では生田目翼(日本通運~18年③)を挙げたい。流通経済大時代に上位候補もまさかの指名漏れ。ようやく昨年プロ入りしたが、ケガで4試合登板に留まった。テンポの良い投球で、力強いストレートを投げ込むスタイルは、個人的には中継ぎ~クローザーに適性があると思う。

 野手ではケガで出遅れているが平沼翔太(敦賀気比高~15年④)に注目だ。甲子園の優勝投手も打撃力を買われ野手で入団した昨年、一軍レベルの打撃力を随所に見せた。守備に課題はあるが遊撃と三塁も守れ、そこは余りある打力でレギュラーを奪い取ってほしい。