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20年順位予想☆阪神~盤石な投手陣は今年も健在か?優勝のカギを握る新外国人選手

 昨年はまさに投高打低で、リーグナンバーワンの防御率に対し、チーム打率は4位、盗塁はセ・リーグで唯一の3桁でリーグ1位も、得点はリーグ最下位に沈み、87失策はリーグ最多で、良くも悪くもチグハグなシーズンになった。

 セ・リーグは本当に混戦だが、優勝となると阪神は打撃陣に課題があり、またベテランへの依存度が高く「4位」予想とした。

 今年の阪神の浮沈のカギを握るのが、5人の新外国人選手だ。投手では防御率1点台の中継ぎのジョンソン、19セーブのドリスがチームを去った。そこで先発のガンケル、中継ぎにソフトバンクから移籍したスアレス、セットアッパー候補で抑えのスペシャリストのエドワーズを獲得し、2人の穴を埋められるかが課題になる。

 野手は今年こそは、中軸を任せられる大砲が必要だ。メジャー通算92本塁打の長距離砲ボーアと、昨年の韓国プロ野球打点王サンズを獲得し、この2人が額面通りに活躍すれば一気に課題が解消される。毎年、開幕前は「今年は当たり、バースの再来」と呼ばれた助っ人が、シーズン早々に馬脚を表すのもお家芸で心配は尽きない…。 

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 3位 69勝68敗6分 .251    94本 100個  538点  3.46  566点

 18年 6位 62勝79敗2分 .253    85本   77個  577点  4.03  628点

 17年 2位 78勝61敗4分 .249  113本   70個  589点  3.29  528点  

 16年 4位 64勝76敗3分 .245    90本   59個  506点  3.38  546点

 15年 3位 70勝71敗2分 .247    78本   48個  465点  3.47  550点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 平均年齢27.8歳と、ついにヤクルトを抜いて12球団でもっとも平均年齢の高いチームになってしまった。昨年のドラフトで高校生5名を獲得しても、投手・野手ともに最も高い。投手力の高いチームだが、ここ5年で戦力になっているのは野手で、しかも大山を除けば、みんな1~2番の左打の巧打者タイプでは打線に迫力が生まれない。

 18年~近本光司(内野手大阪ガス①)木浪聖也(内野手~ホンダ③)

 17年~なし

 16年~大山悠輔(内野手・白鷗大①)糸原健斗(内野手~JX-ENEOS⑤)

 15年~高山 俊(外野手~明大①)

 14年~なし

 このほかには、青柳晃洋(帝京大~15年⑤)が投手で唯一、及第点の成績を上げている。近年のドラフトだけ見れば、打高投低になっても良さそうなものだが、ここにもチグハグ感がある。

 

●投手陣~多くに先発候補に、質量豊富なリリーフ陣で投手王国が着実に進んでいる

 昨年、リーグナンバーワンの投手陣を形成したのが盤石なリリーフ陣だ。クローザーの藤川球児高知商高~98年①)、セットアッパーのジョンソン、チーム最多登板の島本浩也(福知山成美高~10年育②)、岩崎優(国士館大~13年⑥)の両左腕が防御率1点台、前半クローザーを務めたドリスも2点台と充実の布陣だった。

 先発はオリックスからFA加入した西勇輝菰野高~08年③)が10勝を挙げ、青柳も9勝9敗と貯金はできなかったが規定投球回数をクリア。中日から移籍したガルシア、若手では高橋遥人(亜大~17年②)がローテーションを守った。

 ただ、このあとの若手が伸び悩んだ。飛躍が期待された小野泰己(富士大~16年②)と才木浩人(須磨翔風高~16年③)は揃ってケガで不振、そして藤浪晋太郎大阪桐蔭高~12年①)はわずかに1試合登板でプロ入り初の未勝利に終わった。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…メッセンジャー 岩貞祐太 西 勇輝 ガルシア 青柳晃洋 浜地真澄

 ・後半戦…ガルシア 岩田 稔 望月惇志 高橋遥人 西 勇輝 青柳晃洋

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆西 勇輝(172回1/3)☆青柳晃洋(143回1/3)高橋遥人(109回2/3)

     ガルシア(103回2/3)メッセンジャー(79回)岩田 稔(77回2/3)

 ・救援…島本浩也(63試合)ジョンソン(58試合)守屋功輝 (57試合)

       藤川球児(56試合)ドリス(56試合)能見篤史(51試合)

 開幕投手には西勇が指名され、今年も2桁勝利が期待される。さらに青柳と高橋は当確で、新外国人のガンケルもローテーションに入ってくるだろう。

 注目は5~6番手だが、ここは候補がたくさんいる。岩田稔(関大~05年大社希)や秋山拓巳(西条高~09年④)、ソフトバンクから移籍した中田賢一北九州市立大~04年②)など実績のある投手に加え、若手では小野と才木、浜地真澄(福岡大大濠高~16年④)や望月惇志(横浜創学館高~15年④)など候補はたくさんおり、これが贅沢な悩みなのか、単に決め手に欠くかはシーズンでのチェックポイントになるだろう。ただ、一番の望みはかつてのエース藤浪の復活で、藤浪が復活することでリーグ優勝も夢ではなくなる。

 盤石なリリーフ陣だが、今年はやや不安が残る。まず藤川だが、今年40歳を迎え精神的にも体力的にも厳しいクローザーを一年間勤めるのは容易ではない。そうなるとエドワーズへの期待が必然的に高まり、昨年のジョンソンのような活躍がないと厳しい。

 昨年、大車輪の活躍をした島本は、オフに左肘の手術を行っており、回復具合を見ての起用になる。岩崎を中心に、実績のある桑原謙太朗(奈良産大~04年横大社③)の復調や、守屋功輝(ホンダ鈴鹿~14年④)が勝ちパターンに収まるようになれば心強い。

 さらにベテランの能見篤史大阪ガス~04年自)や、ガルシアも昨シーズン後半からは中継ぎに回り、実績のあるスアレスが加わり質量ともに豊富だが、計算できる選手が藤川と岩崎、守屋しかおらず投手陣のやりくりに注目したい。現時点では7回を守屋または岩崎、エドワーズ~藤川と継投していくのが理想か。

 昨年のファームでは、馬場皐輔(仙台大~17年①)や福永春吾(四国IL徳島~16年⑥)、斎藤友貴哉(ホンダ~18年④)などの若手が結果を出しており、馬場は今年あたりブレイクして欲しい選手だ。 

【今年度の予想】

 ・先発…西 勇輝 青柳晃洋 高橋遥人 ガンケル  

       岩田 稔 ガルシア 岩貞祐太 中田賢一 秋山拓巳 藤浪晋太郎

 ・中継…島本浩也 守屋功輝 能見篤史 岩崎 優 浜地真澄 

       スアレス 桑原謙太郎 飯田優也 高野圭佑

 ・抑え…藤川球児 エドワーズ  

 

●野手陣~機動力は身についた!長打力不足解消のカギを握る外国人選手

 昨年、チーム打率はリーグ4位、盗塁数は1位で、この結果だけ見るとそんなに悪くない。本塁打数は少ないが、広い甲子園で長打を狙うより、機動力を絡めた攻めは理がかなっており、実践できたにも係わらず得点力12球団最小は意外だった。

 昨年はルーキーの近本が大当たりで、指名当初の評価は散々だったが、まさに結果で評価を一蹴。セ・リーグ新人安打記録を更新し、盗塁王にも輝いた。主力では夏場に離脱したが糸井嘉男(近大~03年日自)が3割をキープ、梅野隆太郎(福岡大~13年④)も正捕手として1年間マスクを被った。ただ、本塁打はチーム最多が大山の14本で、助っ人もマルテの12本が最高ではさすがに渋すぎた。

【19年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…☆梅野隆太郎(129/492)

 内野手…☆大山悠輔(143/587)☆糸原健斗(143/572)マルテ(105/412)

     木浪聖也(113/390)北條史也(82/211)上本博希(62/119)

     鳥谷敬(74/105)

 外野手…☆近本光司(142/640)☆糸井嘉男(103/444)福留孝介(104/403) 

     高山俊(105/300)中谷将大(62/131)  

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)木浪聖也④      1)近本光司⑧      

  2)近本光司⑧      2)糸原健斗④       

  3)糸井嘉男⑨           3)糸井嘉男⑨    

  4)大山悠輔⑤      4)大山悠輔⑤      

  5)福留孝介⑦      5)マルテ③      

  6)ナバーロ③      6)梅野隆太郎②     

  7)糸原健斗④      7)陽川尚将⑦      

  8)梅野隆太郎②     8)木浪聖也⑥

  9)メッセンジャー①   9)ガルシア①  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)近本光司⑧      捕 手)梅野隆太郎(原口文仁) 

  2)糸原健斗④      一塁手)ボーア(マルテ)

  3)糸井嘉男⑨      二塁手)糸原健斗(上本博希)

  4)ボーア③       三塁手)大山悠輔(陽川尚将)

  5)サンズ⑦          遊撃手)木浪聖也(北條史也

  6)大山悠輔⑤         左翼手)サンズ(高山 俊)

  7)梅野隆太郎②     中堅手)近本光司(中谷将大)

  8)木浪聖也⑥      右翼手糸井嘉男福留孝介

  9)西 勇輝①      

     

 レギュラーは捕手の梅野、二塁~糸原、三塁~大山、中堅~近本は決まりで、右翼は糸井と福留孝介日本生命~98年中①)の両ベテランが務める。順当にいけば新外国人のボーアが一塁をマルテと争い、サンズが高山と左翼を争う形になり、ボーアとサンズが機能すれば打線は厚みを増す。熾烈なのが遊撃争いで、一歩リードしている木浪を北條史也光星学院高~12年②)等が追う。

 打順は昨シーズン後半と同じ並びだが、リードオフマンの近本は、今年は打率3割前後で、課題の出塁率を上げたい。ボーアとサンズが中軸を務め、将来の4番候補の大山を良い意味でプレッシャーのない6番で起用し、梅野と木浪または北條と続く下位打線は切れ目がなくなり、やはり外国人選手の出来がカギを握る。

 控えには代打の切り札で原口文仁(帝京高~09年⑥)、高山もレギュラークラスで問題ないが、控えの層の薄さは否めない。特に捕手は深刻で、梅野以外で一軍レベルは原口しかおらず、梅野のアクシデントがあれば攻守に戦力が低下する。失策の多さも課題で、全体の守備力強化は避けられない課題だ。

 昨年のファームでは、内野では熊谷敬宥(立大~17年③)に小幡竜平(延岡学園高~18年②)、外野で島田海史(上武大~17年④)が結果を出しているが、熊谷と島田は一軍の壁に何度も跳ね返されており、そろそろ殻を破りたいところだ。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…梅野隆太郎 原口文仁 坂本誠志郎

 内野手…ボーア 糸原健斗 大山悠輔 木浪聖也 

      上本博希 陽川尚将 北條史也(マルテ 植田 海)

 外野手…近本光司 糸井嘉男 サンズ 福留孝介

       中谷将大 高山 俊(江越大賀)  

 今年注目の若手では、数ある若手のなかで投手は望月惇志を挙げたい。一つ下の才木や浜地との先発ローテ争いは、間違いなくチームの底上げになる。昨年は8試合登板で1勝と結果を出せなかったが、CS1stステージで先発を任せられるなど期待値は高く、今年は一気にブレイクする予感が漂う。

 野手では既に中堅の域だが、2~3年前から江越大賀(駒大~14年③)に期待している。走攻守すべて兼ね備えたオールラウンドプレーヤーで、二軍では無敵を誇るが、なぜか一軍では結果を出せない。昨年は15打数1安打、1盗塁と、こんな成績で終わる選手ではない。きっかけを掴めば一気に花開くポテンシャルを秘めている。