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どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年順位予想☆D℮NA~筒香の抜けた穴は大きい…混セを抜けるには新戦力に期待

 昨年、97年以来の2位になり、その時は翌年優勝している。さらにラミレス監督が16年に就任してからはAクラスが3度と、「今年こそ」の思いはあるが「5位」予想とさせてもらった。

 やはり筒香嘉智(横浜高~09年①)の抜けた穴が大きい。チームの主力であり、キャプテンであり、何よりチームの顔だった選手で、そう易々と代わりになる選手は出てこない。以前からポスト筒香は課題の一つだったが、解消されないまま筒香がMLBに移籍してしまった。また、走れないのも課題で、昨年も盗塁数はリーグワースト。機動力を重視せずに、長打に頼る戦いかたをしてきたが、筒香が抜けたあとにそういう野球ができるかは疑問だ。

 投手陣はまずまず安定しているが、毎年主力にけが人が発生しており、今年も早々と18年新人王の東克樹が離脱してしまった。実績のある投手が多いだけに、1~2人くらいの離脱で投壊することは考えにくいが、反面若手がなかなか結果を出せていないのも事実で、投打ともにブレイクする選手がいないと厳しいシーズンになる。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗    打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 19年 2位 71勝69敗3分 .246  163本   40個  596点  3.93  611点

 18年 4位 67勝74敗2分 .250  181本   71個  572点  4.18  642点

 17年 3位 73勝65敗5分 .252  134本   39個  597点  3.81  598点  

 16年 3位 69勝71敗3分 .249  140本   67個  572点  3.76  588点

 15年 6位 62勝80敗1分 .249  112本   57個  508点  3.80  598点 

【過去5年のドラフトの主戦力】

 平均年齢26.4歳は昨年と変わらず、12球団で広島に次いで若いチームだ。ここ5年のドラフトで投手陣の層は厚くなっているが、スラッガータイプが筒香のあと誕生しておらず、野手での主力育成が課題になる。

 18年~上茶谷大河(投手~東洋大①)大貫晋一(投手~新日鉄住金鹿島③)

 17年~東 克樹(投手~立命館大①)神里和毅(外野手~日本生命②)

 16年~濱口遥大(投手・神奈川大①)

 15年~今永昇太(投手~駒大①)柴田竜拓(内野手国学院大③)

    戸柱恭孝(捕手~NTT西日本④)

 14年~山崎康晃(投手~亜大①)倉本寿彦(内野手日本新薬③)

 このほかにも、投手では石田健大(法大~14年②)が、及第点の成績を上げている。ただ一方で、15年2位の熊原健人は昨年楽天へトレード、16年2位の水野滉也と3位の松尾大河も戦力外で退団しており、上位指名選手が既に3名もチームを去っている。

 

●投手陣~エース今永とクローザー山崎を擁し、ケガ人さえ出なければ投手陣は安泰

 投手陣は先発の今永昇太が13勝と昨年絶好調で、濱口遥大や東が出遅れたが、ルーキーの上茶谷大河が7勝、大貫晋一が6勝と主力の穴を埋めた。ただ、枚数の不足は否めず、いま流行のブルペンデーで先発の谷間を埋めた。

 ただ、そのツケは当然リリーフ陣にまわり、エスコバーが74試合、三嶋一輝(法大~12年②)が71試合と登板数が嵩んだ。クローザーの山崎康晃は61試合登板し、30セーブと断トツの成績でセーブ王を獲得した。

【昨年の先発ローテーション】

 ・開幕時…今永昇太 京山将弥 井納翔一 上茶谷大河 濱口遥大 大貫晋一

 ・後半戦…井納翔一 上茶谷大河 濱口遥大 今永昇太 平良拳太郎 大貫晋一

【19年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆今永昇太(170回)上茶谷大河(134回)濱口遥大(82回1/3)

     井納翔一(70回)平良拳太郎(70回)大貫晋一(66回2/3)

 ・救援…エスコバー(74試合)三嶋一輝(71試合)山崎康晃 (61試合)

     国吉佑樹(53試合)パットン(42試合) 石田健大(40試合)

 開幕投手には今永が指名されたが、言い換えれば今永しか計算できる選手がいない。先述したが東はトミージョン手術で今シーズンは絶望、濱口も相変わらず好不調の波が大きく、上茶谷も出遅れており不安要素のほうが大きい。

 現状では今永以降の投手が決まらず、本来なら中継ぎで使いたい井納翔一(NTT東日本~12年③)や石田も候補になってくる。新外国人のピープルズも外国人枠の関係で微妙だ。こうなると若手がチャンスを掴みたいところだが、平良拳太郎(北山高~13年巨⑤)や飯塚悟史(日本文理高~14年⑦)、京山将弥(近江高~16年④)に阪口皓亮(北海高~17年③)、桜井周斗(日大三高~17年⑤)など、名前はスラスラ出るのだがどの選手も決め手に欠ける。都合よく毎年ルーキーが台頭するわけでもなく、開幕からローテーション編成に頭を悩ませそうだ。

 リリーフ陣はクローザーの山崎は不動だが、山崎までどう継投していくかが課題になる。中継ぎの柱であるエスコバーが故障で開幕に間に合わず、一気に枚数が不足した。三嶋やパットンへのウェイトが高くなり、さらに国吉佑樹秀岳館高~09年育①)や藤岡好明JR九州~05年ソ大社③)、武藤祐太(ホンダ~10年中③)のベテランへの期待値が高まる。昨年ケガで離脱した中継ぎ陣の兄貴分・三上朋也(JX-ENEOS~13年④)や、貴重な左腕の砂田毅樹(明桜高~13年育①)が復活すれば不安も解消されるが…。

 ところでクローザーの山崎は本当に素晴らしい。実力もさることながら、「打てるものなら打ってみろ」と言わんばかりの自信に満ちたマウンド上でので立ち振る舞いや、名前がコールされたときの球場の大歓声は、大魔神佐々木主浩以来で見ていてワクワクする選手だ。

【今年度の予想】

 ・先発…今永昇太 上茶谷大河 濱口遥大 大貫晋一 

     平良拳太郎 井納翔一 ピープルズ 阪口皓亮 桜井周斗 坂本裕哉 

 ・中継…エスコバー 三嶋一輝 国吉佑樹 パットン 石田健大 砂田毅樹

       藤岡好明 武藤祐太 三上朋也 伊勢大夢

 ・抑え…山崎康晃  

 

●野手陣~筒香の穴を佐野とオースティンで埋めることができるか

 昨年は中軸の破壊力が抜群だった。ソトは43本塁打本塁打王を獲得し、ロペスが31本、筒香が29本、宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)も15本と2~5番が2桁本塁打を記録した。他にも神里和毅が15盗塁と一番打者に定着し、後半戦になると佐野恵太(明大~16年⑨)が頭角を表した。課題だった正捕手も、伊藤光明徳義塾高~07年オ高③)が定着し、ここ数年来のレギュラー不在に目途がついた。

【19年シーズン結果(試合数/打数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…伊藤 光(84/301)嶺井博希(64/130)戸柱恭孝(45/111)

 内野手…☆ロペス(142/597)☆ソト(141/584)☆大和(137/490)

     ☆宮崎敏郎(114/473)柴田竜拓(111/196)中井大介(79/183)

     石川雄洋(50/119)

 外野手…☆筒香嘉智(131/557)☆神里和毅(123/458)佐野恵太(89/215)

     乙坂 智(97/119)梶谷隆幸(41/110) 

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の後半戦スタメン】  

  1)梶谷隆幸⑧      1)神里和毅⑧      

  2)楠本泰史⑨      2)筒香嘉智⑦       

  3)ソト④             3)ソト④    

  4)筒香嘉智⑦      4)ロペス③      

  5)宮崎敏郎⑤      5)佐野恵太⑨      

  6)ロペス③       6)宮崎敏郎⑤      

  7)伊藤 光②      7)嶺井博希②      

  8)大和⑥        8)大和⑥

  9)今永昇太①      9)井納翔一①  

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)神里和毅⑧      捕 手)伊藤 光(嶺井博希) 

  2)オースティン⑦    一塁手)ロペス(ソト)

  3)ソト④        二塁手)ソト(伊藤裕季也)

  4)佐野恵太⑨      三塁手)宮崎敏郎

  5)ロペス③          遊撃手)大和(倉本寿彦)

  6)宮崎敏郎⑤      左翼手)オースティン

  7)伊藤 光②      中堅手)神里和毅(乙坂 智)

  8)大和⑥        右翼手)佐野恵太(梶谷隆幸

  9)今永昇太①      

 まずはポスト筒香候補だが、ラミレス監督の期待値が高い佐野が4番に座り、キャプテンを務める。佐野はレギュラーの経験はまだないが、昨シーズンは打率.295、5本塁打でブレイクを予感させる。

 佐野以上に期待感を集めているのが、新外国人のオースティンで、メジャー通算33本塁打の大砲だ。三振の多さが懸念されていたが、現時点では日本野球への適応性を見せており、このままいけば筒香の穴を十分に埋められる。

 個人的に今年もっとも期待しているのが神里で、一番打者として3割30盗塁は最低ラインになるだろう。二番にオースティンが入り、3番に本塁打王のソト、4番の佐野を挟み、5番ロペス、6番に勝負強い宮崎が並ぶ打線は迫力がある。佐野とオースティンが期待通りに機能すれば、昨年以上の打線となる。

 若手にも楽しみな選手が多く、乙坂智(横浜高~11年⑤)や関根大気(東邦高~13年⑤)はレギュラー候補を返上して外野の一角を狙いたい。さらに昨年ファームで2桁本塁打を放った細川成也(明秀日立高~16年⑤)や伊藤裕季也(立正大~18年②)など、和製大砲も育ってきている。

 ここに桑原将志福知山成美高~11年④)や倉本といったかつてのレギュラー選手が復調し、ベテランの石川雄洋(横浜高~04年⑥)や梶谷隆幸(開星高~06年高③)などが加わると層は厚くなる。

 不安なのが守備で、二塁ソトや左翼のオースティンは心もとなく、守備のスペシャリストの柴田、捕手以外どこでも守れる中井大介宇治山田商高~07年高③)の出番も増えそうだ。また、神里以外に走れる選手も必要だが、現時点では乙坂以外の候補者が見当たらないのも不安材料だ。

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…伊藤 光 嶺井博希(戸柱恭孝)

 内野手…ロペス ソト 宮崎敏郎 大和 オースティン 

     伊藤裕季也 中井大介 柴田竜拓 倉本寿彦(石川雄洋)

 外野手…神里和毅 佐野恵太 乙坂 智 梶谷隆幸 桑原将志

    (細川成也 関根大気)  

 今年注目の若手では、投手では地元贔屓で申し訳ないが、北海高出身の阪口皓亮を上げたい。まだ一軍で勝利はないが、昨シーズンは3試合に先発して経験を積んだ。一つ勝てば一気に勝ち星を積み重ねる予感があるので、チャンスを掴み取ってほしい。

 野手では今年こそ関根大気のブレイクが見たい。ファームでは敵なしで、昨シーズンも打率.329、12本塁打を放ち、今オフのメキシコのウィンターリーグでも結果を残している。今年で7年目の25歳、ファームの主軸をそろそろ卒業して良いころだ。