開幕直後に8年振りの首位に立ち「今年こそは…」の期待も膨らんだが、貧打線は相変わらずで、3年連続で得点数は減少…。終わってみれば、今年もヤクルトとゲーム差なしの最下位に沈みんだ。、結局、立浪監督の求める野球が最後まで分からないまま、在任期間3年すべて最下位の不名誉な記録を残しシーズン終了後に辞任した。
昨年で言えばエース格の柳裕也(明大~16年①)が不振で、移籍の中田翔(大阪桐蔭高~07年日①)も期待通りの成績を残せず、既存戦力と新戦力の相乗効果が無かった。
【過去5年のチーム成績】
20年 3位 60勝55敗 5分 .252 70本 33個 489点 3.84 489点
21年 5位 55勝71敗17分 .237 69本 60個 405点 3.22 478点
22年 6位 66勝75敗 2分 .247 62本 66個 414点 3.28 495点
23年 6位 56勝82敗 5分 .234 71本 36個 390点 3.08 498点
24年 6位 65勝75敗 8分 .243 68本 40個 373点 2.99 478点
ドラフトは正直悪くない。高橋宏が昨季は最優秀防御率を獲得しリーグを代表する投手になり、育成出身の松山も最優秀中継ぎに輝いた。岡林がリードオフマンとして不動のレギュラーを掴み、規定打席未満ながら福永も3割を打ち、主軸候補の石川昂などチームの主軸になる選手が育ってきている。
一方、ブライトに仲地、草加勝(亜大~23年①)など大卒1位の苦戦は想定外だが、村松に田中など批判もあったが大量に獲得した内野手が結果を残しつつあり、この3年間の不本意な成績が選手層を厚くするための布石だと感じさせるメンバーが揃っているのも事実で、昨年二軍で指揮を執った井上新監督は若手を熟知しており期待は膨らむ。
【過去5年のドラフトの主戦力】
19年~石川昂弥(内野手~東邦高①)橋本侑樹(投手~大商大②)
20年~高橋宏斗(投手~中京大中京高①)森 博人(投手~日体大②)
21年~ブライト健太(外野手~上武大①)鵜飼航丞(外野手~駒大②)
22年~仲地礼亜(投手~沖縄大①)村松開人(内野手~明大②)
松山晋也(投手~八戸学院大/育①)樋口正修(内野手~BC埼玉/育③)
23年~辻本倫太郎(内野手~仙台大③)土生翔太(投手~BC茨城⑤)
尾田剛樹(外野手~BC栃木/育③)
●昨年のドラフトは神ドラフトになるか?課題の投手陣の補強は進んだ
どうしても貧打線のイメージが強く、野手強化に目が行ってしまうが、今季最大の課題は投手陣の整備になる。勝ち星こそ5勝止まりも、144回を投げた小笠原がMLBへ移籍し、防御率1.09、43セーブのマルティネスが巨人へ、先発・リリーフともにこなす福谷もFAで日本ハムへ移籍した。
マルティネスの移籍は痛いが、リリーフ防御率はリーグ1位で、清水達也(花咲徳栄高~17年④)や松山がおり穴埋めは可能だ。ただ、先発投手に限ると防御率はリーグ5位と高くなく、さらに涌井秀章(横浜高~04年西①)は39歳、大野雄大(佛教大~10年①)は37歳、松葉貴大(大商大~12年オ①)35歳と先発陣の高齢化も進み、昨年は4勝と不振だった柳も今季FA移籍の可能性もあり世代交代が急務だ。
当然、4球団競合の黄金ルーキー・金丸に期待がかかるが、昨年からの腰の不調の影響で2軍スタートになっており、将来を考えると焦らせる必要はなく、即戦力左腕の吉田、新外国人マラーへの期待が高まる。
課題の野手陣の補強は今年は少なく、立浪監督時代に獲得した10名の野手への期待の表れで、1人でも多くレギュラーを狙える活躍を見たい。また、新外国人のボスラーがオープン戦で好調を維持しておりファンの期待が膨んでいる。
【IN】
投手…金丸夢斗(関大~24年①)吉田聖弥(西濃運輸~24年②)
高橋幸佑(北照高~24年⑤)有馬恵叶(聖カタリナ高~24年⑥)
伊藤茉央(東農大オホーツク~22年楽④)マラー(アスレチックス)
ウォルターズ(エンゼルス)
野手…森 駿太(桐光学園高~24年③)石伊雄太(日本生命~24年④)
ボスラー(マリナーズ)
【OUT】
投手…小笠原慎之介(移籍→ナショナルズ)福谷浩司(移籍→日本ハム)
マルティネス(移籍→巨人)田島慎二/砂田毅樹(引退)
野手…石垣雅海(移籍→ロッテ)加藤翔平(引退)中島宏之/ビシエド/三好大倫
(退団)
●投手陣~世代交代の波は着実に迫るも、ベテランも健在で質量ともに充実
課題の先発投手陣は、昨年開幕に間に合わなかった高橋宏が今季1年投げられれば、昨年の12勝以上(昨年の初勝利は5月)は十分に期待できる。また、ここに柳が復調すれば二本柱が確立でき、大型連敗を心配する必要もなくなる。
懸念材料は3番手以降で、ベテランの涌井や大野、松葉など計算できる選手が控えるのは頼もしいが、年齢的に大きな上積みを期待するのは難しい。毎年期待の選手で名前もで挙がる梅津晃大(東洋大~18年②)も、はや29歳で今年は有望枠を脱却したい。
このほか昨年育成から支配下になり2勝を上げた松木平、新戦力の吉田とマラーにもチャンスがあり、金丸が万全な状態で合流すれば小笠原の穴を埋めることができる。
リリーフ陣は心配ない。マルティネスに代わるクローザーには清水がおり、昨季の最優秀中継ぎの松山がセットアッパーを務め、経験豊富な藤嶋健人(東邦高~16年⑤)に祖父江大輔(トヨタ自動車~13年⑤)、昨年支配下に復帰した岩嵜翔(市船橋高~07年ソ①)も控えている。左腕でも斎藤鋼記(北照高~14年オ⑤)に昨季キャリアハイの登板数を経験した橋本も控え層は厚い。新戦力で面白いのが、楽天から現役ドラフトで加入した伊藤茉央(東農大オホーツク~22年楽④)で、チームにはいない右のサイドスローで強固なリリーフ陣のインパクトになる。
課題はやはり先発投手陣で、昨年の先制勝利数は巨人に次いでリーグ2位という結果もあり、先発がゲームを作り、強固なリリーフ陣に繋ぐ試合に持ち込み、最小得点で逃げ切る野球が上位進出のカギになる。
【24年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア
・先発…☆小笠原慎之介(144回1/3)☆高橋宏斗(143回1/3)
松葉貴大(93回1/3)涌井秀章(85回)梅津晃大(77回1/3)
メヒア(75回1/3)柳 裕也(67回)
・救援…マルティネス(60試合)清水達也(60試合)松山晋也(59試合)
斎藤綱記(56試合)藤嶋健人(50試合)橋本侑樹(47試合)
勝野昌慶(39試合)祖父江大輔(28試合)
【今シーズンの予想】※は新加入
・先発…柳 裕也 梅津晃大 高橋宏斗 涌井秀章 松葉貴大 ※マラー
(※金丸夢斗 大野雄大 仲地礼亜 松木平優太 ※吉田聖弥 メヒア)
・中継…橋本侑樹 ※伊藤茉央 勝野昌慶 藤嶋健人 斎藤綱記 松山晋也
(岩崎 翔 祖父江大輔 福 敬登 梅野雄吾 土生翔太 ※ウォルターズ)
・抑え…清水達也
●着実に選手層は厚くなってきており、内野の定位置争いに注目
打線はこの間の野手強化型のドラフトや、昨年の積極的な戦力外選手の獲得で確実に層は厚くなっている。
特に捕手の層は厚く、FA移籍濃厚だった木下拓哉(トヨタ自動車~15年③)が残留を決め、強肩の加藤匠馬(青学大~14年⑤)など経験豊富なベテランの存在は大きい。そこに即戦力ルーキーの石伊が加わったことで、同い年の石橋康太(関東一高~18年④)もうかうかしておられず質の高い競争が期待できる。また、打撃の良い宇佐見真吾(城西大~15年日④)を野手で起用できるなど攻撃のバリエーションも拡がる。
内野もレギュラーを約束されている選手はいないなか、福永とカリステが頭一つ抜けている。福永は遊撃以外、カリステも内外野守れるユーティリティプレーヤーで、一塁と三塁は中田と石川の新旧4番の争いや高橋周平(東海大甲府高~11年①)の復調がカギを握る。最もし烈なのは二遊間で、打撃では村松や昨年戦力外からキャリアハイの成績を残した板山祐太郎(亜大~15年神⑥)がリードしているが、田中に土田、辻本はいずれも守備に定評があり、守備職人の山本泰寛(慶大~15年巨⑤)も控え、井上監督の起用に注目したい。
一方で外野は、中堅の岡林と右翼の細川は決まりで、左翼を争う形になる。内野に比べて候補は多くなく、ベテランの大島洋平(日本生命~09年⑤)がいるがさすがに40歳のシーズンになり、世代交代を進めたほうが良い。上林誠知(仙台育英高~13年ソ④)も老け込む年ではなく、ブライトや鵜飼などの若手の台頭に期待したいが、現実的にはカリステや新外国人のボスラーが有力候補になる。
【24年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入
捕 手…木下拓哉(74/203)宇佐見真吾(61/164)加藤匠馬(86/133)
内野手…福永裕基(111/402)カリステ(114/393)田中幹也(112/343)
村松開人(109/418)石川昂弥(82/275)中田 翔(62/225)
高橋周平(60/190)山本泰寛(79/179)
外野手…☆細川成也(140/600)☆岡林勇希(123/460)板山祐太郎(65/194)
大島洋平(75/125)上林誠知(46/102)ディカーソン(32/102)
【今シーズンの開幕一軍候補】
捕 手…木下拓哉 宇佐見真吾 加藤匠馬(※石伊雄太)
内野手…辻本倫太郎 田中幹也 高橋周平 カリステ 村松開人 中田 翔
福永裕基 石川昂弥
(津田啓史 土田龍空 山本泰寛 板山祐太郎 ロドリゲス 樋口正修)
(尾田剛樹 濱将之介 ブライト健太 川越誠司 駿太 鵜飼航丞)
【今シーズン予想~打順】 【今シーズン予想~守備】
3)福永裕基④ 二塁手)福永裕基(田中幹也)
4)細川成也⑨ 三塁手)カリステ(高橋周平)
5)ボスラー⑦ 遊撃手)村松開人(辻本倫太郎)
9)高橋宏斗①
●課題は得点力アップで、昨季ファーム優勝の井上新監督の選手起用と手腕に期待
上位進出に向けた課題はやはり得点力のアップで、広いバンテリンドームで本塁打で得点を重ねるゲームは難しく、決して一発狙いだとは思えないが、リーグ最多の三振数も削減したい。チーム打率は悪くないので、犠打や盗塁でランナーを進め、犠飛で1点を獲り、強固な投手陣と鉄壁の守備で守り抜く、かつての落合野球が今のチームでも理想だと思う。
また、そのためには出塁率のアップも課題で、出塁率の高い村松や岡林、山本がチャンスを作り、長打率の高い細川や宇佐見が返して得点に繋げるのが現時点では理想な形だ。そんななか打線のキーを握るのは、チームナンバーワンのOPSをほこる福永で、福永をどの打順に置くのかがポイントになる。
チームは世代交代を迎えているが、今季だけ見れば経験豊富なベテランが元気で、若手が覚醒すれば最下位に甘んじるチームではなく、いきなり優勝はハードルは高いが、巨人と阪神を除けば、投打のどちらかに課題があるチームだけにAクラス入りのチャンスも見えてくる。