ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

25年戦力展望☆西武~投手陣は万全も、攻撃陣は今年も厳しく、得点力アップが最大の課題

 一時はシーズン100敗ペースとまで言われるなか、球団ワースト91敗でシーズンを終えた。特に負けだしたら止まらず、最長8連敗が4度もあり、7連敗も1度で首位ホークスから42ゲーム差の断トツの最下位だった。

 要因は何と言っても歴史的な貧打で、チーム打率.212は67年振りにパ・リーグ最低記録を更新し、1試合平得点2.45点では勝ち筋を見つけるのは難しかった。今季から西口文也新監督が指揮を執るが、チームの再建の道は険しい。

【過去5年のチーム成績】

    順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 20年 3位 58勝58敗  4分 .238  107本   85個  479点  4.28  543点

 21年 6位 55勝70敗18分 .239  112本   84個  521点  3.94  589点

 22年 3位 72勝68敗  1分 .229  118本   60個  464点  2.75  448点

 23年 5位 65勝77敗  1分 .233    90本   80個  435点  2.93  465点

 24年 6位 49勝91敗  3分 .212    60本   83個  350点  3.02  485点

 昨シーズンは山川穂高がFAで移籍し、これまで12球団最多の21名が移籍しているが、それでも上位争いが出来ていたのはドラフトで獲得した選手の育成と台頭で、空いた穴を埋める選手が出てきていたからだ

 過去5年のドラフトを見ても、隅田や水上、昨年新人王の武内など投手は揃っているが、野手で主力クラスと呼べるのは岸と古賀悠くらいしかいない。期待の蛭間も伸び悩み、相変わらずレギュラーは外崎修汰(冨士大~14年③)と源田壮亮トヨタ自動車~16年③)だけで、山川に森友哉オリックス)、浅村栄斗(楽天)、秋山翔吾(レッズ→広島)移籍の影響は大きかった。

【過去5年の主なドラフト指名選手

 19年~柘植世那(捕手~ホンダ鈴鹿/⑤)岸潤一郎(外野手~四国IL徳島/⑧)

 20年~山村崇嘉(内野手東海大相模高/③)長谷川信哉(外野手~敦賀気比高/育②)

    水上由伸(投手~四国学院大/育⑤)

    21年~隅田知一郎(投手~西日本工大/①)佐藤隼輔(投手~筑波大/②)

    古賀悠斗(捕手~中大/③)羽田慎之介(投手~八王子高/④)

    滝澤夏央(内野手~関根学園高/育②)菅井信也(投手~山本学園高/育③)

 22年~蛭間拓哉(外野手~早大/①)青山美夏人(投手~亜大/④)

    児玉亮涼(内野手大阪ガス/⑥)

 23年~武内夏暉(投手~国学院大/①)上田大河(投手~大商大/②)

    奥村光一(外野手~BC群馬/育⑥)

●課題は攻撃陣もFA選手の興味なし…コーチ陣は外部招聘で補強は進んだが…

 投手陣で急を要するのが、昨季チーム最多の52試合に登板し28セーブを上げたアブレイユの後釜で、平良海馬(八重山商工高~17年④)の起用が決まっているが、37試合登板のヤン、31試合登板の本田もチームを去っており、救援防御率は昨季リーグ5位と課題があっただけに、リリーフ陣の再編が大きなポイントになる。

 課題の攻撃陣では、昨季2桁本塁打の選手がゼロのなか、オリックスから昨季15本塁打のセデーニョの加入はプラスになる。なた、実績は乏しいが現役ドラフトで獲得した平沢は内外野を守ることができ、新天地での覚醒が期待される。新外国人のネビンは一昨年3Aで3割を打ち、巧打とパワーを兼ね備えている。

 ただ、昨年91敗のチームが再建するには期待値は不足している。宗山塁(楽天)をドラフトで外したのは残念だったが、不思議だったのが、今オフFA宣言した原口文也(阪神)や木下拓哉(中日)、茂木栄五郎(楽天→ヤクルト)に興味すら示さなかったことで、特に地元・埼玉出身の原口は、阪神では代打が主戦場と言え、勝負強い打撃に加え人的補償もないCランクで、検討の姿勢すらなかったのは理解できない。

 一方、コーチ陣は鳥越祐介に仁志敏久、大引啓示などの外部からの招聘が進み、こちらは期待値が高く何とも皮肉な形になってしまった。

【IN】

 投手…狩生聖真(佐伯鶴城高~23年③)篠原 響(福井工大福井高~23年⑤)

      ウィンゲンター(カブス)ラミレス(マーリンズ) 

 野手…斎藤大翔(金沢高~23年①)渡部聖弥(大商大~23年②)

      林冠臣(日本経大~23年④)龍山 暖(エイジック高~23年⑥)

      古賀輝希(千曲川硬式野球C~23年⑦)平沢大河(仙台育英高~15年ロ①)

      セデーニョ(オリックス)ネビン(アスレチックス)

【OUT】

 投手…本田圭佑オリックスへ移籍)増田達至(引退)ヤン、アブレイユ(退団) 

 野手…岡田雅利、金子侑司(引退)アギラー、コルデロ、鈴木将平(退団)   

●投手陣~武内が離脱も先発陣は万全の布陣。反面、リリーフは平良中心に再編が必要

  昨年、リーグ2位の防御率の先発投手陣は今井達也(作新学院高~16年①)と隅田を中心に、昨年0勝11敗の高橋光成前橋育英高~14年①)が復調すれば十分に計算できる。武内が左ひじの故障で夏場くらいの復帰になるのは誤算だったが、昨年自己最多のイニング数を投げた渡邊勇大朗(浦和学院高~18年②))やプロ初勝利を上げた菅井などの若手がこのチャンスを掴みたい。また、松本航(日体大~18年①)が今季は先発に再転向し、22年に10勝を上げた與座海人(岐阜経済大~17年⑤)の復活などベテラン勢も期待できる。

 クローザーは今年も交渉が難航したが、平良がリリーフ再転向を受け入れたことで十分に計算できる。課題は平良に繋げる形の構築で、佐藤隼や甲斐野央(東洋大~18年ソ①)、ボーが候補に挙がり、田村伊知郎(立大~16年⑥))や平井克典(ホンダ鈴鹿~16年⑤))など経験のある選手も控える。若手では今季はリリーフで経験を積む羽田んぶ上田、ともに奪三振率の高いウィンゲンターやラミレスの新戦力にも期待がかかる。

 ただ、全体的な層の薄さは否めず、特に先発は心配だ。武内が遅れる分、若手に頼るしかなく、ボーや中村祐太(関東一高~13年広⑤)など先発経験のある選手の起用もあるかもしれない。投手力に自信があるのは分かるが、現在の支配下はリーグ最小の29名、育成では佐々木健(NTT東日本~20年②)や森脇亮介(セガサミー~18年⑥)、日本ハムから獲得した黒木優太(立正大~16年オ②)など実績のある選手もいるが、故障で療養中または伸び悩み気味の若手が多くチーム編成に疑問を感じる。

【24年シーズン結果】☆は規定投球回数クリア 

 ・先発…☆隅田知一郎(179回1/3)☆今井達也(173回1/3)☆武内夏暉(145回1/3)

     渡邊勇大朗(87回1/3)高橋光成(81回1/3)

 ・救援…アブレイユ(52試合)佐藤隼輔(45試合)ヤン(37試合)

       松本 航(34試合)ボー・タカハシ(33試合)本田圭佑(31試合) 

【今年度の予想】※は新加入選手

 ・先発…渡邊勇太朗 高橋光成 與座海人 隅田知一郎 松本 航 今井達也  

      (武内夏暉 青山美夏人 杉山遥希 菅井信也)

 ・中継…佐藤隼輔 田村伊知郎 甲斐野央 ボー 羽田慎之介 ※ラミレス 

      (糸川亮太 平井克典 ※ウィンゲンター 黒田将矢 中村祐太 水上由伸) 

 ・抑え…平良海馬  

●野手陣~レギュラーは源田のみで、若手の定位置争いが得点力強化に結びつくか

 西口監督がレギュラーは源田だけと言うように、ベテラン、若手ともにチャンスはある。特に外野は19年に秋山がMLBへ移籍した以降、一人も規定打席に達した選手がおらず、5年間もレギュラー不在の異常事態だけに今年こそ台頭が望まれる。

 今年レギュラー獲得が期待できる選手として挙げたいのが佐藤龍世(冨士大~18年⑦)と古賀悠、西川愛也(花咲徳栄高~17年②)で、佐藤龍は昨季はケガでシーズン途中離脱するも、安打数に打点、本塁打数ともにキャリアハイの成績を残した。古賀悠も強肩に加えリード面の成長も著しく、西川は昨季外野手で最多104試合に出場し、広い守備範囲をほこる中堅守備は抜群で、ともに課題の打撃で結果を残したい。このほか、内野手では山村に昨季途中加入の野村大樹(早実高~18年ソ③)、外野手では蛭間に長谷川、ルーキー渡部聖にも十分にレギュラー獲得のチャンスはある。

 ただ、残念ながら層の薄さは否めない。実績があるのは源田と外崎、ベテランの炭谷銀仁朗(平安高~05年①)に中村剛也大阪桐蔭高~01年②)と栗山巧(育英高~01年④)になり、中村剛と栗山は42歳、炭谷は38歳で年齢的に厳しい。

 その外崎も今季は三塁にコンバートされるが、三塁には佐藤龍や山村が控え、ファームでは渡部健人(桐蔭横浜大~20年①)と村田怜音(皇學館大~23年⑥)の長距離砲もいる。一方で二塁はレギュラー不在になり、候補として挙がるのは滝澤や児玉、移籍の平沢では打撃が課題のチームでは心許ない。個人的には外崎を二塁で起用し、三塁を若手に競わせる形のほうが打撃面ではプラスになると思う。捕手も不安で、万が一古賀悠が長期離脱するなことがれば、候補は炭谷しかおらず心配は尽きない。

【24年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア

 捕 手…古賀悠斗(105/279)炭谷銀仁朗(49/103)

 内野手…☆源田壮亮(143/577)☆外崎修汰(127/500)佐藤龍世(93/345)

       山村崇嘉(58/223)中村剛也(58/205)野村大樹(57/204)

       平沼翔太(45/144)滝澤夏央(68/137)アギラー(30/124)

 外野手…西川愛也(104/335)岸潤一郎(98/311)長谷川信哉(72/239)

       蛭間拓哉(63/232)栗山 巧(60/154)金子侑司(37/141)    

【今シーズンの開幕一軍候補】※は新加入

 捕 手…古賀悠斗 ※炭谷銀仁朗(柘植世那 古市 尊)

 内野手…外崎修汰 源田壮亮 佐藤龍世 山村崇嘉 ※平沢大河 ※セデーニョ

       中村剛也 野村大樹

     (児玉亮涼 山野辺翔 元山飛優 滝澤夏央 渡部健人 村田怜音)

 外野手…栗山 巧 ※渡部聖弥 ※ネビン 西川愛也 長谷川信哉 岸潤一郎

      (蛭間拓哉 平沼翔太 松原聖弥 奥村光一)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)西川愛也⑧      捕 手)古賀悠斗(炭谷銀仁朗) 

  2)源田壮亮⑥      一塁手)佐藤龍世(野村大樹)

  3)佐藤龍世③      二塁手)平沢大河(滝澤夏央)

  4)セデーニョDH      三塁手)外崎修汰(山村崇嘉)

  5)ネビン⑦       遊撃手)源田壮亮

  6)外崎修汰⑤      左翼手)ネビン(渡部聖弥)

  7)長谷川信哉⑨     中堅手)西川愛也(岸潤一郎)

  8)古賀悠斗②      右翼手)長谷川信哉(蛭間拓哉)

  9)平沢大河④       D H) セデーニョ(中村剛也)  

投打ともに戦力の層は薄く、中長期でチーム再建を進める必要がある

 今季も優勝を見据えるには戦力が足りなく、正直Aクラス入りも厳しいのが現実的な評価だろう。強力投手陣を擁し、相手を0点に抑えれば負けることはないが、得点が無ければでは勝つこともできない。

 昨季の最大の課題は得点力不足だが、今季の補強は実質的にはセデーニョだけで、あとは殻を破りかけている佐藤龍や西川等の台頭、渡部聖やネビンの新戦力頼みの期待値だけでは厳しい。

 また、投打に層が薄く、主力が離脱すると一気に戦力が落ちてしまう。短期的に見れば支配下64名はまだ余裕があり、昨年のように外国人選手が機能しなかった場合は、トレードも含めて早急に対応しないと昨年の二の舞になってしまう。トレードも昨年のような期待の若手同士ではなく、豊富な投手陣で主力級クラスの獲得も検討したい。

 ただ、現実的には中長期的な視点でチーム作りを進める必要がある。昨年、2位に躍進した日本ハムではないが、新庄監督1年目のように「今年は全員がトライアウト」の起用で層を厚くすることもが必要だと思う。