今季はトレードが少なく、シーズン前の郡拓也(日本ハム)⇔若林晃弘(巨人)の一例しかない。パ・リーグはソフトバンクと日本ハム、ロッテのAクラス組とBクラスの差がついてしまったが、セ・リーグは混戦状態で、どのチームにも可能性はある。そこで、各チームの補強ポイントを探ってみたいと思う。
◇中 日(4位)21勝23敗5分
今年のスタートは好調で一時期首位に立つなど、序盤戦はファンならずとも盛り上がった。ただ、いつの間にかここ最近の定位置のBクラスに陥っているが、首位からはまだ4.5ゲーム差で浮上のチャンスは十分にある。
今季は自由契約の中田翔(大阪桐蔭高~07年日①)を始め、巨人から中島宏之(伊丹北高~00年西⑤)、阪神からは山本泰寛(慶大~15年巨⑤)と板山祐太郎(亜大~15年神⑤)、ソフトバンクから上林誠知(仙台育英高~13年ソ④)など実績のある選手を獲得し、課題だった打撃陣の改善が進んでいる。
現在支配下は68名と枠に余裕は少なく、育成に野手の候補は少ないが、投手では先発で松木平優太(精華高~20年育③)、リリーフでは実績十分の岩嵜翔(市立船橋高~07年ソ①)が好成績を残しており、優勝を狙うのであればトレードを活用して補強を進めたい。
【投手成績】
◆防御率…2.74④(3.08②)先発…2.84④(3.12②)リリーフ…2.58④(3.02②)
失点…149④ 被本塁打…18① 与四球…129⑤ QS率…63.27%③
【打者成績】
◆打率….,237③(.234⑥)得点圏打率….,368③ 得点…129⑤ 本塁打21本③
盗塁数…14⑥ 犠打…44③ 四球数…122⑤ 長打率….317④ 出塁率…289⑥
1⃣機動力アップを目指し、俊足巧打の外野手の補強
攻撃陣は数字を見ても改善が進んでいるが、なかなか得点力アップには繋がっていない。中田の加入で打線に厚みが増し、二塁の田中幹也(亜大~22年⑥)が抜群の守備力を見せ、岡林勇希(菰野高~19年⑤)も戦列に復帰した。好調だった高橋周平(東海大甲府高~11年①)の離脱は痛いが、ここは石川昂弥(東邦高~19年①)の奮起に期待したい。
不足しているのは盗塁数と出塁率で、盗塁数14はさすがに12球団ワーストで対策が必要だ。本拠地は広いバンテリンドームで、何故機動力を活かした攻撃で1点をもぎ取り、強力投手陣を軸に守り切る野球を実践しないのか理解できない。若しくはやろうとしているか結果が伴っていないだけかもしれないが、数字から意図が伝わってこない。
足のスペシャリスト候補では、ルーキーの尾田剛樹(BC栃木~23年育③)がおり、福永裕基(日本新薬~22年⑦)も機動力を使えるので、起用法を変えれば盗塁数はまだ上がると思う。
ただ、岡林と組めるリードオフマン候補の補強は確実にプラスになり、いずれも外野手だが田中和基(楽天)と佐野晧大(オリックス)は貴重なスイッチヒッターで、俊足が売りの島田海吏(阪神)や神里和毅(DeNA)も層の厚い外野で出番が限られている。このほか面白そうなのが遠藤成(阪神)で、一軍出場はないがファームでは10盗塁を記録しており、チームにはいないタイプの内野手だ。
交換要員には、若手の台頭が目立つ豊富なリリーフ陣のなか、出番の少なくなっている福敬登(JR九州~15年④)や福谷浩司(慶大~12年①)であれば、投手陣が不足している楽天やDeNAと成立する可能性が高い。
2⃣高齢化が危惧される先発陣…将来に向け若手投手の獲得を
先発は枚数が豊富で、小笠原慎之介(東海大相模高~15年①)が規定投球回数をクリアし、柳裕也(明大~16年①)に涌井秀章(横浜高~04年西①)、松葉貴大(大商大~12年オ①)を中心に、トミージョン手術から復帰した梅津晃大(東洋大~18年②)が復活し、出遅れた高橋宏斗(中京大中京高~20年①)も戻ってきた。
短期的に見れば、補強を急ぐ必要はないが、高齢化が課題で涌井の38歳を先頭に、大野雄大(佛教大~10年①)が36歳、松葉も34歳と世代交代の波が来ており、小笠原もMLB挑戦の意向を示すなど、モタモタしていると一気に先発投手不足に陥る可能性がある。25歳以下の若手では、高橋宏がおり大黒柱になり得る投手がいるが、その次となると現段階では仲地礼亜(沖縄大~22年①)しか見当たらない。
ここは敢えて将来性を考えて23~26歳の年代に絞ってみた。候補は多くなかったが、遠藤淳志(広島)や京山将弥(DeNA)、田中瑛斗(日本ハム)がハマり、親会社の関係で難しいかも知れないが、直江大輔と横川凱(ともに巨人)の成長株もいる。
一番のお薦めは遠藤で、長打力不足が課題の広島であれば、鵜飼航丞(駒大~21年②)や石垣雅海(酒田南高~16年③)のプロスペクト同士のトレードも魅力だ。また、年俸の難しさはあるが、外国人が総崩れのなか、ビシエドの放出も将来を見据えれば可能性はゼロではない。
3⃣根尾は環境を変えて、野手に再チャレンジを
最後に、根尾昂(大阪桐蔭高~18年①)をどうするかである。正捕手の木下拓哉(トヨタ自動車~15年③)のFA移籍の備えも大事だが、ベテランの宇佐見真吾(城西大~15年巨④)や加藤匠馬(青学大~14年⑤)、若手では石橋康太(関東一高~18年④)や山浅龍之介(聖光学院高~22年④)の有望株が控え、質量ともに何とかなる布陣だ。
そうなると気になるのは育成手法が迷走している根尾で、在籍6年で遊撃手1年、外野手2年、今年は投手で3年目では野手としての見切りが早すぎるの同時に、現在の起用法で投手として何を期待しているのか見えない。本人の意思は分からないが、ドラフトの契約時に野手を選択したことから、個人的には野手に再挑戦すべきだと思う。
根尾は中日のほかに、巨人とヤクルト、日本ハムに指名されているが、それぞれ門脇誠(巨人)に長岡秀樹(ヤクルト)、水野達稀(日本ハム)とレギュラーがおり、根尾の野手再出発を考慮すると入る余地はない。現在、遊撃のレギュラー不在はDeNAとロッテで、将来的なことを考えるとソフトバンクや西武も危ういが、同じ若手有望株同士のトレードを検討しても良いと思う。
DeNAとロッテに絞ると、同年代の知野直人や梶原昂希(ともにDeNA)、年齢はやや上だがリリーフの廣畑敦也や同じく伸び悩んでいる平沢大河(ともにロッテ)などは両者ともに良いトレードになると思う。
【お薦めトレード】
2⃣ 鵜飼航丞(外野手)⇔ 遠藤淳志(広島・投手)
3⃣ 根尾 昂(投 手)⇔ 平沢大河(ロッテ・内野手)※根尾は野手で移籍前提
◆西 武(6位)16勝31敗0分
シーズン前は盤石な投手陣が高評価を得て、優勝候補にも挙げられていたが、昨年から課題だった打線がさらに悪化し、打撃成績は本塁打以外、すべてリーグ下位に低迷している。現在、首位ソフトバンクからは14.5ゲーム差で、球団史上最速の39試合目で自力優勝が消滅し、松井監督が事実上解任された。
松井監督の采配をどうこう言うつもりはないが、正直、チーム編成はどうだったのだろうかと思う。昨年は森友哉(オリックス)がFA移籍し、人的補償で獲得したのは投手の張奕で、しかも1年で自由契約(退団)になり、今季も山川穂高(ソフトバンク)の移籍に伴い獲得したのは甲斐野央(東洋大~18年ソ①)だった。
現役ドラフトでも、外野手のレギュラー不在のなか中堅の愛斗(ロッテ)を放出し、獲得したのは中村祐太(関東一高~13年広⑤)だった。どういった中身で現役ドラフトが進んだのかは計り知れないが、現在売り出し中の水谷瞬(日本ハム)や、内野のユーティリティの北村拓己(巨人)を獲得できなかったのだろうか疑問だ。
シーズン前に元山飛優(東北福祉大~20ヤ④)を獲得したが、元山は守備型の選手で、攻撃陣の底上げを期待するのは酷で、このような状況のなかまだトレードも成立していない。支配下人数は64名と12球団最小で、まだ枠に余裕があるにも係わらず、外国人選手の追加の動きもなく、三顧の礼で迎えた松井監督の休養は性急だったのではないかと思ってしまう。
【投手成績】
◆防御率…3.18⑤(3.08②)先発…2.53④(3.12②)リリーフ…4.71⑥(3.02②)
失点…170⑤ 被本塁打…20⑤ 与四球…151⑥ QS率…63.83%②
【打者成績】
◆打率…..211⑥(.234⑥)得点圏打率…..340⑥ 得点…119⑥ 本塁打23本②
盗塁数…23④ 犠打…32⑤ 四球数…121⑥ 長打率…..300⑥ 出塁率….274⑥
1⃣盤石な先発陣を支えるリリーフ陣強化で上位追撃
今シーズンの西武の試合を見ると、先発投手陣は抜群の安定感を誇るが、得点力の低い打線の援護に恵まれず試合中盤まで接戦の末、今季苦戦しているリリーフ陣が打ち込まれるパターンが目立っている。実際にチーム防御率はリーグ5位で、先発の防御率はリーグ2位もリリーフ陣はリーグ最下位で、リリーフの防御率4点台は西武だけと数字にも顕われている。
残念ながらファームに期待の若手選手も見当たらず、先発の松本航(日体大~18年①)をセットアッパーに転向させるなど、それなりに手は打っているが、メキシカンリーグで好成績を残し、前年最多ホールドのペルドモ(元ロッテ)もオリックスに獲得され、編成が後手に回っている感は否めない。
リリーフ候補を見てみると、投手層が厚くなかなか出番のない石川直也(日本ハム)や平内龍太(巨人)、笠谷俊介(ソフトバンク)は先発もできる。ベテラン組でも加治屋蓮(阪神)や祖父江大輔(中日)がおり、好投を続けながらも外国人枠の関係で出番のないフェリス(中日)やコルニエル(広島)など候補は多い。
交換要員では、26歳に野手が集中していることから、児玉亮涼(大阪ガス~22年⑥)や若林楽人(駒大~20年④)、鈴木将平(静岡高~16年④)などプロスペクト同士のトレードもありで、打撃が課題の阪神や巨人なら成立の可能性は高く、ソフトバンクもケガで長期離脱となった柳田悠岐(ソフトバンク)の代わりの外野手は欲しい。
このほか、ハヤテの田中健仁朗(元DeNA)とアルビレックスの三上朋也(元巨人)の両ベテランも好投を続け、アルビレックスの薮田和樹(元広島)は先発で結果を残しており、薮田を獲得することでボーなど先発からの配置点検も可能になる。
2⃣Aクラス入りを目標に実績十分のベテランを獲得
課題の攻撃陣は、西武は昨年オフに育成含め20名の選手を戦力外にしたが、誰ひとり他球団と契約した選手はおらず、この現実からも層は厚くない。
現状。レギュラーは捕手の古賀悠斗(中大~21年③)に、二塁の外崎修汰(冨士大~14年③)と遊撃の源田壮亮(トヨタ自動車~16年③)、大ベテランの中村剛也(大阪桐蔭高~01年②)が頑張り、2年目の蛭間拓哉(早大~22年①)も台頭してきた。それ以外は決定力に欠けるが、個人的には渡部健人(桐蔭横浜大~20年①)や岸潤一郎(四国IL四国~19年⑧)、長谷川信哉(敦賀気比高~20年育②)などの若手を我慢強く起用しても良いと思うが…。
短期的な補強であれば、実績のある大田泰示(DeNA)に井上晴哉(ロッテ)、清水優心(日本ハム)は今季一軍出場がなく、投手陣の層を厚くしたいDeNAやロッテなら成立の可能性は高く、大田(外野)と井上(一塁)のポジションは空いている。さらに中田翔の加入で出番が少なくなったビシエド(中日)など思い切ったトレードも見てみたい。
3⃣環境を変えることで大化けが期待できる若手の獲得も◎
将来を見越した若手野手の獲得に舵を切っても良く、パ・リーグではリチャード(ソフトバンク)や山本大斗(ロッテ)、黒川史陽(楽天)、セ・リーグでは中村奨成(広島)に知野直人(DeNA)など層の厚い攻撃陣のなか出番が少なく、特に元捕手の中村はチーム状況を考えるとマッチする選手だ。また、小野寺暖に豊田寛(ともに阪神)も外野のレギュラーが決まっているチーム状況のなか出場が限られている。
DeNAや楽天は投手陣に不安のあるチームだけにトレードが成立する可能性は高い。さらにオイシックスの高山俊(元阪神)や中山翔太(元ヤクルト)もまずまずの成績を残しており、チャンスを与えても良い選手だと思う。
【お薦めのトレード】
1⃣ 若林楽人(外野手)⇔ 平内龍太(巨人・投手)