●リーグNO1のチーム打率、12球団最小の本塁打数で得点力が不足
2011年を最後に成績が下降し、今年もBクラス確定で7年連続となった。2002年から12年までは、11年連続のAクラス(うち優勝4回)のかつての強豪チームの記憶が薄れるほど、低迷期間が長くなっている。
今年は4月が好調で、一時期は首位に0.5ゲーム差まで迫ったものの、その後急落。そこからは最近の定位置5位のまま、阪神と熾烈な4位争いを展開している。
余り打つイメージがないが、チーム打率.265はリーグ1位で、昨年と変わらない。12球団でチーム打率1位の西武が.266だから、本当は強力打線と呼ばれるはずだが、貧打線なのは12球団最少の本塁打数と、同じく少ない盗塁数で得点力が不足している。
では投手陣はどうかというと、チーム防御率3.79はリーグ4位で、昨年は4.36で最下位だったので大きく改善している。打率も良く、投手陣も良くなっているなか、昨年と成績が変わらないのは、新監督の経験不足なのか、勝ちきれないゲームが多い。
【9/14現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
防御率…3.79④(4.36⑥)打率….265①(.265②)
本塁打…82⑥(97⑤)盗塁61④(61⑤)
得点511⑤(598④)失点512①(654⑤)得失点差▲1(▲56)
●投手は期待値十分も、野手はレギュラーと控えの差が歴然
中日の平均年齢は27.3歳で、落合監督時代に社会人選手を獲りまくっていた印象があるが、意外に高くない。むしろ投手陣は26.7歳と若い方だ。
投手陣は昨年0勝の大野雄大が9勝を上げ復調し、柳裕也が10勝を上げエース格に成長した。この2人以外、先発ローテーションが十分に組めないなか、ロドリゲスの61試合を筆頭に、福敬登、谷元圭介、藤嶋健人、マルティネスの中継ぎ陣が奮起した。鈴木博志が離脱後、心配されたクローザーも岡田俊哉がチームのピンチを救った。
打撃陣では、ビシエドと大島洋平、高橋周平、阿部寿樹の4名が打撃10傑に入っていてリーグ最多を誇り、京田陽太を加えた5名が規定打席に達している。本塁打が少ない話をしたが、ビシエドと福田永将の17本が最多で、10本を超えているのは、あとは堂上直倫しかおらず、この3人でチーム本塁打の数半分を占める。
盗塁は大島一人で30盗塁と半分を占め、17盗塁の京田と合わせると約8割にもなる。長打力と走れる選手が限られているので、結果打率以上の怖さを感じないのが課題と言える。
【中日の5年後の主力選手】
投 手…田島慎二・又吉克樹・岡田俊哉・福 敬登・佐藤 優・柳 裕也
笠原祥太郎・梅津晃大・鈴木博志・小笠原慎之介・藤嶋健人
捕 手…木下拓哉・加藤匠馬
外野手…遠藤一星
中日の5年後は、若手の育成なくして躍進はない。年齢的に現在31歳の大野雄と平田良介の主力に、福田と堂上も残っていると思うが、投打に若手の成長がないと厳しい。
投手では今年先発を務めた山本拓実や、清水達也にはクローザーの資質もある。大野雄と柳を軸に、笠原と小笠原の両左腕に梅津を加えると質量ともに申し分ない。抑えも鈴木博や藤嶋と、球に力のあるクローザー向きの投手が実績を残しており、大きな穴は見当たらない。
野手陣はこのままいけば、長打力不足は解消されない。若手のなかでもスラッガー候補は石垣雅海しかおらず、根尾や伊藤康祐もポスト大島の1~2番タイプで、4番を任せられる選手の育成が必要だ。
●上位で将来のエース候補と4番候補を狙う。ポスト大島も喫緊の課題
中日は野手の年齢バランスがとにかく悪い。特に捕手と外野手が酷く、捕手は石𣘺康太が今年入団したが、それまでは27歳の加藤が最年少で、28歳に3名も固まっている。外野手も今年、滝野要が入団したが、それまでは20~25歳までゼロだ。内野手は幾分悪くはないが、25歳に3名が固まっており、全体的に空き年齢が多い。
一方で投手は、19~32歳まで空き年齢がなくバランスは悪くない。ただ、左腕投手が少なく、ロドリゲスを除いて7名は12球団で最小で、左腕投手に主力が多いだけに量的な不足は否めない。
【中日の補強ポイント】
投 手…将来のエース候補と左腕投手の拡充
捕 手…22歳~25歳の左打の捕手
外野手…ポスト大島の走攻守揃った巧打者
中日の1位候補は、ずばり2人で高校BIG4の奥川恭伸(星稜・投手)と、U-18の4番石川昴弥(東邦・内野手)だ。奥川は言わずと知れた将来のエース候補で、甲子園とU-18の活躍で、安定感では佐々木朗希よりも評価が高く、早い段階でローテーション投手になれる。
石川は中日が喉から手が出るほど欲しい将来の4番候補だ。三塁には高橋周と福田がいるが、3~4年後には根尾と一緒にチームの顔になれる選手だ。
中日は明言はしていないが、既に奥川指名を公言しているので、奥川指名が基本路線だが、個人的には石川のほうが現在の補強ポイントに合致すると思う。
2位指名は、奥川を指名できたならスラッガーまたはポスト大島を獲得したい。スラッガーなら井上広大(履正社・外野手)、片山勢三(パナソニック・内野手)、打てる捕手の佐藤都志也(東洋大・捕手)は、石川にも負けず劣らずのスラッガーだ。ポスト大島なら宇草孔基(法大・外野手)が候補になる。たらればの話だが、1位・奥川、2位・井上指名に成功したらスケールの大きい指名になる。
石川指名なら2位は先述した宇草または佐藤を指名し、打線に厚みを持たせるか、将来のエース候補で浅田将汰(有明高・投手)や、変則右腕のクローザー候補の津森宥紀(東北福祉大・投手)、不足している左腕で浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ・投手)は、上位でしか獲れない選手だ。
3位指名は、投手なら準地元で将来性もある前佑囲斗(津田学園)、即戦力で本田健一郎(JFE東日本)の指名も面白い。野手ではともにスラッガーの勝俣翔貴(国際武道大・内野手)や加藤雅樹(早大・外野手)が候補になる。
4~5位では、左腕または足のある選手を指名したい。左腕なら将来性のある米山魁斗(昌平高)や玉村昇悟(丹生高)、先日ノーヒットノーラン達成した橋本侑樹(大商大)は即戦力だ。また同じ即戦力で横山楓(国学院大)や杉尾剛史(宮崎産経大)、大西広樹(大商大・投手)の大学生右腕もリストアップしている。
野手では高校時代からマークしている谷川刀麻(近大・外野手)、走攻守に優れた高部瑛斗(国士館大・外野手)は、正真正銘のリードオフマン候補だ。
6位以降の下位選手では、空き年齢を埋めたいところだ。投手なら高卒3年目の社会人、25歳のベテラン即戦力。大学生または社会人捕手、右打ちの社会人内野手が埋まれば空きがなくなる。
高卒3年目投手なら小木田敦也(TDK・投手)や阿部陽登(日立製作所・投手)、ベテラン投手なら岡野祐一郎(東芝・投手)が当てはまる。
捕手なら小藤翼(早大)と小林遼(JX-ENEOS)はともに左打で重宝しそうだ。右打ちの社会人では、下位で獲るのは難しいが諸見里匠(日本通運・内野手)は、守備に定評があり即戦力になる。
上位でスラッガーを獲得できなかった場合は、ともに静岡出身の紅林弘太郎(駿河総合高・内野手)や安本竜二(法大・内野手)も、下位で抑えておきたい選手だ。
【中日のドラフトを勝手にシミュレーション】
1位…奥川 恭伸(星稜高・投手)…最速154キロ×投球術で菅野も認めた逸材
2位…井上 広大(履正社高・外野手)…粗削りだが広角に打てる長打力が魅力
3位…片山 勢三(パナソニック・内野手)…バットコントロールの良いスラッガー
4位…横山 楓(国士館大・投手)…奪振率の高い本格派右腕で伸びしろもある
5位…杉尾 剛史(宮崎産経大・投手)…上背はないが最速147キロの直球が魅力
6位…谷川 刀麻(近大・外野手)…大学で野手専念。高校からマークする逸材
7位…小藤 翼(早大・捕手)…強肩と守備力に、巧さもあるパワーヒッター
ここ数年、野手では高校生指名が多く、22歳~24歳までは滝野しかおらず、大学生または社会人指名で補強する必要がある。
また、今年は地元(東海地方)に有力選手が多い。奥川に石川、立野和明(東海理化)の上位候補に、高校生では前や山瀬慎之介(星稜高・捕手)、藤田健斗(中京大中京高・捕手)は甲子園でもお馴染みだ。
大学生でも安本に篠原涼(筑波大・内野手)、中村健人(慶大・外野手)がおり、地元選手の獲得にも注目したい。