●高いチーム打率に防御率も改善…激減した本塁打と盗塁で得点力不足
3年に一度は優勝を狙うチーム方針のなか、2016年の優勝から3年目。今年は優勝の可能性が消え、それどころか2013年以来の最下位の危険もある。
8月の初めは、首位ホークスと0.5ゲーム差の首位争いをしていたが、最もチームの地力が試される8月にまさかの5勝20敗で、8月終わりには最下位オリックスに迫るほど、歴史的大失速だった。
ただ、チームの成績は決して悪くない。チーム打率.253は西武に次いでリーグ2位で、昨年と大きく変わらない。チーム防御率3.84は、リーグ3位だ。
失速の要因は多々あるが、今年は本塁打数と盗塁数の両方が激減した。本塁打数はリーグ最下位の91本、走るイメージがあるが、盗塁数48はリーグ5位で、なんと昨年から50個も減っており、セ・リーグ下位で低迷している中日と状況が似ている。
【9/17現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
防御率…3.84③(3.77②)打率….253②(.251③)
本塁打…91⑥(140③)盗塁48⑤(98③)
得点543⑤(589③)失点565③(586④)得失点差▲22(+3)
●育成主体のチームだけに、5年後も主力がズラリ
日本ハムの平均年齢25.9歳は、断トツの若さで、投手・野手とも一番若い。北海道移転後、育成をメインにチーム作りを進め、主力が抜けても必ずカバーする若手を輩出してきたが、残念ながら今年は機能しなかった。
投手陣は昨年ともに2桁勝利の上沢直之が5勝、マルティネスは結局復帰できなかった。上沢は打球が直撃し骨折でシーズン離脱…ただでさえ薄い先発陣は有原航平以外、総崩れの状況になった。
当然、そのしわ寄せは中継ぎ陣の負担になり、61試合の玉井大翔を筆頭に、公文克彦、石川直也、宮西尚生、秋吉亮、堀瑞樹の6人が50試合以上に登板している。
打撃陣では、近藤健介を筆頭に、大田泰示と西川遥輝が打撃10傑に入り、渡辺諒と中田翔が規定打席に達した。今年は田中賢介のあと、レギュラー不在だった二塁手に渡辺がはまったが、レアードの抜けた三塁と遊撃のレギュラーが固定できなかった。
レアードが抜けた長打力不足の不安は的中。いくら広い札幌ドームが本拠地とはいえ、中田の23本を最多に、10本以上が大田(19本)と渡辺(11本)しかいないのは大きな課題だ。
盗塁も西川が19個、中島卓也が11個で、マークするのはこの2人だけでは、相手バッテリーにプレッシャーをかけられるはずもない。ソツのない攻撃がウリのチームが、機動力まで失ってしまえば上位進出は難しい。
【日本ハムの5年後の主力選手】
投 手…秋吉 亮・浦野慎司・有原航平・玉井大翔・杉浦稔大・加藤貴之
吉田輝星
捕 手…宇佐見真吾・清水優心
内野手…中田 翔・杉谷拳士・中島卓也・横尾俊健・石井一成・渡辺 諒
平沼翔太・清宮幸太郎
5年後もレギュラークラスの選手が多く残っている。一塁に中田、二塁に渡辺、外野は左翼・近藤、中堅・西川、右翼・大田と万全だ。さらに清水や平沼のレギュラー候補が控え、何より清宮の成長が大きな楽しみだ。
ただレギュラー以外は、なかなか「候補」から抜け切れておらず、ハイレベルな競争がなければ、レギュラーと控えの差が益々広がり、戦力の底上げにはならない。
投手陣は有原と上沢のWエースに、先発で堀や吉田輝と左右のエース候補が控える。中継ぎ・抑えは、既に実績を残しており、リーグ屈指のリリーフ陣を維持できそうだ。
●年齢バランスは問題ないが、長打力よりも機動力が不足…
さすが育成のチームだけあって、年齢バランスは問題ない。しいて言えば、投手では22歳が空白で、野手では右打ちの外野手が少ない。
今年は長打力不足が露呈したが、清宮を筆頭に万波中正や野村佑希、今井順之介など若いスラッガー候補が並ぶ。反面、走れる選手が少なく、機動力不足が課題になる。
投手は23歳と25歳に各4名、27歳に5名と固まっているが、それぞれの年代で左右のバランスが取れており問題ない。
年齢バランスが良いので、今年もその年の一番良い選手を1位指名し、補強が必要な箇所に即戦力を宛がい、育成で高校生選手を、投手・野手合わせ2~3名獲得するドラフトが可能だ。
【日本ハムの補強ポイント】
投 手…将来のエース候補と先発と中継ぎの左腕投手
捕 手…社会人の即戦力捕手
内野手…三塁のレギュラー候補と二遊間のバックアップ
外野手…右打ちまたは俊足外野手
日本ハムの1位指名は、その年のナンバーワン選手を指名する方針で、他チームがどうだろと1位指名がブレることはない。今年は早々と佐々木朗希(大船渡高・投手)指名を公言している。
佐々木の素質は異次元で、メジャーのトップクラスの投手になる可能性を秘めている。ただ、まだ素質型で育成には相当な覚悟と責任、そして時間が生じる。ノウハウの不足しているチームは見送る方向だが、日本ハムはダルビッシュ有や大谷翔平を育てた実績があり問題ない。
2~3位指名では、即戦力左腕または今年豊富な遊撃手を指名したい。今年は左腕投手の候補が少なく、1位の指名動向次第で、宮城大弥(興南高・投手)は2位で獲得できるチャンスがあるし、即戦力の浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ・投手)や坂本裕哉(立命大・投手)は、1つ順位を上げてでも獲得したい投手だ。
遊撃手候補では、スピードスターの森敬斗(桐蔭学園・内野手)と武岡龍世(八戸学院光星高・内野手)は走攻守にバランスが優れ、韮澤雄也(花咲徳栄・内野手)は打力が魅力で上位で消える選手だ。
また、小深田大翔(大阪ガス・内野手)は三塁と遊撃の守備に定評があり、勝俣翔貴(国際武道大・内野手)も強打の三塁手で補強ポイントに合っている。
4~5位では、素質ある高校生で落合秀市(和歌山東高・投手)や鈴木寛人(霞ヶ浦高)、地元の小林珠維(東海大札幌・投手)に、不足する左腕で林優樹(近江高・投手)が候補になる。甲子園で評価をあげた桃谷惟吹(履正社高・外野手)は、右打ちの強打者だ。
また、投手の空き年齢を埋めるのに、今年豊富な大学生投手指名もありだ。横山楓と吉村貢司郎の国学院大コンビに、伊勢大夢(明大・投手)、左腕の橋本侑樹(大商大・投手)は、この順位でも獲得のチャンスがある。
野手に絞るなら俊足巧打の外野手で木下元秀(敦賀気比高・外野手)、大学生で高部瑛斗(国士館大・外野手)や菅田大介(奈良学園大・外野手)はリードオフマン候補。内野のバックアップで、遊撃の守備力に定評のある諸見里匠(日本通運・内野手)や、俊足の稲垣誠也(日本通運・内野手)は、現状にもってこいの即戦力だ。
6位以降は育成主眼で高校生選手や、地元選手を抑えておきたい。高校生では井上温生(前橋商高・投手)は貴重な左腕で、右投げの酒井海央(京都国際高・投手)、遠藤慎也(京都翔英高・投手)は他球団もマークしている隠れた逸材だ。
地元枠では小林以外に、今夏の甲子園で星稜に善戦した旭川大高のバッテリー、能登崇都(投手)や持丸泰輝(捕手)、北照高出身の小畑尋規(トヨタ自動車・捕手)は強肩で守備力に定評がある。
【日本ハムのドラフトを勝手にシミュレーション】
1位…佐々木朗希(大船渡高・投手)…最速163キロの怪物は日本のエース候補
2位…浜屋 将太(三菱日立PS・投手)…スライダーを武器に先発もこなせる
3位…韮澤 雄也(花咲徳栄高・内野手)…打率を残せる巧打者で守備も一級品
4位…林 優樹(近江高・投手)…体は細いが抜群の制球力を誇る技巧派左腕
5位…稲垣 誠也(日本通運・内野手)…小柄だが広角に打てるパンチ力と俊足
6位…井上 温生(前橋商高・投手)…守備も巧い総合力の高いサウスポー
7位…小畑 尋規(トヨタ自動車・捕手)…名門チームの正捕手で強肩
日本ハムは、若手の台頭が上手くハマり、主力選手が移籍しても高い戦力を維持できた。ただ、今年はレギュラーを脅かす選手の輩出がなく、即戦力主体で行くか、育成主体で行くのか、ドラフト巧者の日本ハムの戦略が楽しみだ。