●チーム防御率、打率ともリーグ最下位で大苦戦のシーズン
最後に優勝したのが1996年…12球団で最も優勝から遠ざかっていたが、今年も9/11で優勝の可能性が完全に消え、23年間優勝がない。まだAクラスの可能性がないわけではないが、Bクラスで終えると5年連続、直近10年でAクラスは14年の1度のみと低迷期間に出口が見えない。
今年は4/27に最下位になった後、交流戦で2位になったものの順位は上がらなかった。8月に吉田正尚とロメロの中軸が打ちまくり、復調の気配が見え一時期5位に上がったのもつかの間、ロメロがケガで離脱するとチームは一気に低迷し、9月に9連敗を喫するなど、CS進出の希望も風前の灯だ。
チームのWエースだった西勇輝と金子千尋が抜けた不安が的中。昨年、3.69でリーグ1位だったチーム防御率が、今年は4.10(9/12現在)のリーグ5位まで落ち込んだ。
チーム打率.244は昨年と変わらないが、今年はリーグ最下位。本塁打数も昨年と同じ5位、一方で盗塁数109は、西武に次いで2位で昨年の数を超えているが、結果走れてもランナーを返すことができず得点力に結びついていない。
走れる選手は多いが、頼りになるのは吉田正のみの打線は、得点力不足が相変わらずで、頼みの投手陣が崩れたことで優勝争いに食い込むことすらできなかった悔しいシーズンになった。
【9/12現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
防御率…4.10⑤(3.69②)打率….244⑥(.244⑤)
本塁打…94⑤(108⑤)盗塁109②(97④)
得点495⑥(538④)失点582⑤(565①)得失点差▲87(▲27)
●野手の平均年齢が若い発展途上のチーム
オリックスと言うと、イメージ的に社会人出身選手が多く、何となく地味な印象があるが、チームの平均年齢は26.6歳は、12球団で3番目に若いチームだ。投手は27.3歳で4番目に高いが、反面野手は25.9歳と2番目に若く、将来性のあるチームと言える。
その若い野手陣の課題は、レギュラーが決まらないことだ。9/12現在で30名の選手が規定打席に達しているが、オリックスは吉田正と福田周平の2人だけで、最多の西武8人はさておき、楽天が6人、ロッテと日本ハムが5人、ソフトバンクが4人なので極端に少ない。
実は昨年も最小の3名(吉田正・ロメロ・安達了一)で、野手はレギュラーが確立できない状況が続いている。レギュラー不在は一軍だけでなく、ファームでも昨年規定打席に達したのは、12球団で唯一のゼロ…今年もウエスタンリーグ最少の2名で、これはこれで結構深刻な状況だと思う。
【オリックスの5年後の主力選手】
投 手…吉田一将・近藤大亮・山田修義・荒西祐大・山崎福也・K-鈴木・澤田圭佑
黒木優太・竹安大和・山岡泰輔・田嶋大樹・山本由伸・榊原 翼
捕 手…伏見寅威・若月健矢・頓宮裕真
内野手…西野真弘・福田周平・大城滉二・中川圭太・大田 椋
外野手…小田裕也・後藤駿太・吉田正尚・宗 佑磨・佐野晧大・西浦颯大
オリックスの最大の光明は、山本と吉田正の投打の柱が確立したことだ。投手陣は山本と山岡がWエースに成長し、田嶋と榊原、K-鈴木を加えた投手陣は質量ともに豊富だ。特に5年後も山岡が29歳、田嶋が28歳、山本と榊原は26歳で全盛期を迎える。中継ぎに近藤と山田、今年不振だった澤田と黒木が復調すれば投手陣に大きな穴はない。
野手陣は吉田正を軸に、周りに走れる選手が揃っている。福田は打率が上がれば厄介な打者になるし、宗の走攻守に優れた高いポテンシャルや、佐野の超がつく俊足は、観ていて惚れ惚れする。ただ、吉田正以外は全員が1~2番タイプで、ルーキー中川も頑張っているが、4番タイプではない。
23年間優勝から遠ざかっている状況から、余程の若手の覚醒や外国人選手の大活躍でもない限り優勝は厳しい。5年後とは言わず、2~3年後に優勝を狙えるチーム作りを進めるドラフトにしてほしい。
●補強ポイントは明確で、左腕投手と長距離打者
投手陣は年齢的バランスが実は酷い…特に25歳は元々多いところに、さらに阪神から移籍の竹安、ルーキー左澤優、育成から支配下になった神戸文也と張奕が加わり8名にもなった。これは明らかに偏りすぎで、逆に20歳と24歳は1名しかいない。左腕不足は深刻で、一番若い左腕が21歳のルーキー富山凌雅で質量的に不足している。
野手もバランスが悪い。捕手は正捕手の若月(24歳)が最年少で、育成に時間がかかるポジションだけに、今年は捕手の指名は必然になる。
野手は長打力のある選手が補強ポイントになる。ただでさえ長打を打てる選手が少ないなか、T-岡田が退団しそうで益々深刻だ。また、24~25歳は内外野ともにゼロで、ここは社会人選手で埋める必要がある。野手も23歳に5名、26歳に4名と、所々に見えるバランスの悪さが気になる。
【オリックスの補強ポイント】
投 手…左腕投手の量的確保とポスト増井のクローザー候補
捕 手…若月のライバルになる正捕手候補
外野手…長打力(将来性)のある右打ち選手
1位を左腕で行くならば、即戦力なら河野竜生(JFE東日本)は先発・抑えのどちらでも結果を残せる。将来性なら及川雅貴(横浜高)で、強固な先発陣を形成できる。
野手では盗塁阻止率は高いが、打撃は非力な若月のライバルで海野隆司(東海大・捕手)を獲得できれば、今シーズン当初のプラン通りに頓宮を三塁手で使える。また、リストアップはしていないようだが、石川昴弥(東邦高・内野手)は補強ポイントに合致する。
2位指名は指名順位が早いので、単純だが左腕投手を獲得できたなら野手、野手1位指名なら左腕投手が無難と言えば無難だ。
野手の長距離打者の上位候補は石川以外には、井上広大(履正社・外野手)や片山勢三(パナソニック・内野手)に原澤健人(スバル・内野手)がいる。最近のプロでは稀少な右打ちの長距離打者で、ともに評価も上がってきており、順位を上げないと獲得できないかもしれない。
左腕投手では将来性抜群の宮城大弥(興南高)、即戦力の坂本裕哉(立命大)、浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ)が候補になる。また、ポスト増井で西田光汰(JR東日本)も良いと思う。
3位指名は、1~2位指名の状況で当然変わるが、投手ならば、前佑囲斗(津田学園)、打者としても評価の高い浅田将汰(有明高)や小林珠維(東海大札幌・投手)がいる。野手では郡司裕也(慶大・捕手)、スラッガーの加藤雅樹(早大・外野手)が候補になる。
4~5位では、素質豊かな高校生を指名したい。特に投手は、昨年1名も指名のなかったので、岡林勇希(菰野高)、鈴木寛人(霞ヶ浦高)、落合秀市(和歌山東高)、岩本大地(石岡一高)と素質豊かな高校生選手のいずれかは獲得したい。
野手では、正捕手候補で山瀬慎之介(星稜高)や東妻純平(智弁和歌山高)、スラッガー候補で韮澤雄也(花咲徳栄高・内野手)、内外野どこでも守れる遠藤成(東海大相模高)など楽しみな選手が多い。
6位以降の下位選手では、左腕投手に年齢バランスで補強したい大学生右腕、即戦力またはスラッガー候補をもう一枚獲得したい。
左腕投手では、公立校の将来性豊かな玉村昇吾(丹生高)や井上温生(前橋商高)、橋本侑樹(大商大)がおり、大学生右腕では浦本千広(九産大)が候補になる。
さらにスラッガー候補なら、伸びしろもある中村健人(慶大・外野手)や安本竜二(法大・内野手)、青木蓮太朗(浜松開城館高・内野手)は下位でも獲得できそうだ。
【オリックスのドラフトを勝手にシミュレーション】
1位…海野 隆司(東海大・捕手)…攻守で総合力ナンバー1の即戦力捕手
2位…坂本 裕哉(立命館大・投手)…ストレートと変化球が抜群の即戦力左腕
3位…原澤 健人(スバル・内野手)…左右に打ち分けられる長距離砲の三塁手
4位…岡林 勇希(菰野高・投手)…最速153キロで先輩・西を超える逸材
5位…玉村 昇吾(丹生高・投手)…内角への制球力抜群の福井のドクターK
6位…浦本 千広(九産大・投手)…ゲームメークに優れた隠し球右腕
7位…青木蓮太朗(浜松開誠館・内野手)…大化けの可能性を秘めた大型遊撃手
昨年は遊撃手にこだわり、小園海斗を外したあとも、方針を曲げずに太田と宜保翔の2人の将来性豊かな選手を獲得し、2位でも頓宮を指名するなど、上位で野手2人を指名した会心のドラフトになった。今年も海野を予想したが、石川や井上といった高校生スラッガーの1位指名などもサプライズであるかもしれない。