9/15のソフトバンク戦のTV中継を観ていたとき、解説者が「当初はこの日のカード辺りが優勝を争う天王山になる予想だった」とコメントしていたように、シーズン前はソフトバンクと優勝予想が二分していた。結果は明暗が分かれ、ソフトバンクは独走で優勝間近のなか、オリックスはAクラスもままならずリーグ4連覇を逃した。
要因は多々あり、移籍した山本由伸(ドジャース)と山崎福也(日本ハム)の28勝分を補うはずの投手陣は誤算が続き、FAで西川龍馬(王子~15年広⑤)が加入するも打線の状態は上がらず、得点数はリーグ5位に留まっている。3連覇を支えた主力の離脱が投手・野手ともに相次ぐなか、若手の台頭も不足し、世代交代の課題が浮き彫りになった。結局シーズン通してベストメンバーを組むことができず、ファンならずともストレスの溜まるシーズンになった。
【9/19現在のチーム成績…58勝71敗3分/5位】
24年/5位 23年/1位 22年/1位
防御率(失点数)…2.77②(407②) 2.73①(428①) 2.84②(458②)
打 率(得点数)….236⑤(361⑤) .250①(508③) .246②(490④)
守備率(失策数)….986⑥( 71⑥) .989②( 60②) .986④( 75④)
本塁打数/盗塁数… 65⑤/53⑥ 109①/52⑥ 89⑥/62⑤
先発は山本に代わるエースの宮城がまさかの5勝に留まり、山下や東晃平(神戸弘陵高~17年育②)も不振で、山本の山崎福の穴を埋めるはずが3人合わせて11勝で終えたのは大きな誤算になった。
それでも投手陣はリーグ2位の防御率を誇るのは驚きで、先発は新加入のエスピノーザが中心になり、2年目の曽谷も6勝を上げた。リリーフは新加入のマチャドが23セーブ、ルーキーの古田島は47試合に投げて防御率0点台の好成績を残している。吉田輝星(金足農高~18年日①)と鈴木博志(ヤマハ~17年中①)も移籍を機に復活するなど、主力が昨年から総入れ替えの状況のなか結果を残している。
【投手 ※は規定投球回数 ○の数字は順位】
☆先発…エスピノーザ(128回2/3)宮城大弥(119回2/3)曽谷龍平(113回)
田嶋大樹(105回2/3)カスティーヨ(94回1/3)
☆ リリーフ…マチャド(53試合)吉田輝星(49試合)古田島成龍・山田修義(47試合)
井口和朋(31試合)鈴木博志(29試合)
ケガ人続出のなか結果を残した投手陣と比べ打線は苦戦した。西川はパ・リーグの対応に苦慮して、昨年の首位打者の頓宮裕真(亜大~18年②)がまさかの打率1割台、紅林は規定打席をクリアするも本塁打2本と自慢の長打力が影を潜めた。
何度かの離脱のなか結果を残す森友哉(大阪桐蔭高~13年西①)はさすがだが、杉本裕太郎(JR西日本~15年⑩)の成績が下降し、中川圭太(東洋大~18年⑦)や宗佑磨(横浜隼人高~14年②)は規定打席に到達できていない。
外国人選手もセデーニョ以外は機能せず、新加入のトーマスは18打数0安打で戦力になっていない。また、安達了一(東芝~11年①)やT-岡田(履正社高~04年①)の引退など、野手は本格的な世代交代に差し掛かったと言える。
【野手 ※は規定打数 ○の数字は順位(試合数/打席数)】
☆捕 手…※④森 友哉(107/419)若月健矢(87/269)
☆内野手…※⑭紅林弘太郎(125/482)宗 佑磨(96/318)太田 椋(82/330)
セデーニョ(90/309)頓宮裕真(81/290)西野真弘(83/289)
中川圭太(60/233)大里昂生(43/152)廣岡大志(52/100)
☆外野手…※⑬西川龍馬(127/512)福田周平(68/261)杉本裕太郎(74/221)
来田凉斗(49/177)
●育成主体のドラフトで3連覇達成!今年は不振でも方針は変わらず
オリックスのドラフトが変わったのが、福良淳一GMが着任した19年からで、それまでの即戦力路線から育成路線にシフトした。自身も監督を務めた16~18年はいずれもBクラスで、福良GM着任前の10年間(09年~18年)もAクラスは14年の1回だけと短期的なチーム作りの限界を感じ取り、かつて所属していた日本ハムの育成路線を踏襲した。
ここ5年のドラフトで特徴的なのは、上位は高校生と大学生の育成がメイン、下位はピンポイントで社会人を指名することで結果も出ている。19年は高校生3名と大学生2名、20年は1~3位まで高校生で、6位で阿部を獲得。21年は1~4位まで大学生、6~7位で社会人投手を指名している。22年は高校生3名に大学生2名を指名し、昨年は1~4位まで高校生で、4~7位で社会人投手を指名した。
特に昨年は同じ遊撃手に紅林がいるなか、横山聖哉(上田西高~23年①)を単独1位指名する傍ら、6位で古田島を獲得しており、この間のドラフトの成果と1つ上のチーム作りをする姿勢が窺えた。また、育成から支配下登録も多く、19年から23年までの5年間で、9名の支配下登録(うち2名は退団または移籍)は12球団最多で選手にとっても励みになる。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
19年⑥…宮城大弥(興南高/①・投手)紅林弘太郎(駿河総合高/②・内野手)
20年⑥…山下舜平太(福岡大大濠高/①・投手)阿部翔太(日本生命/⑥・投手)
宇田川優希(仙台大/育③・投手)
21年①…小木田敦也(TDK/⑦・投手)
22年①…曽谷龍平(白鷗大/①・投手)茶野篤政(四国IL徳島/育④・外野手)
↓↓
【オリックスの補強ポイント】
投 手…先発・リリーフ左腕
捕 手…大学生と社会人
外野手…高校生+中軸候補(右打ちならベスト)
今季はBクラスが濃厚だが、若手の積極起用で既にチームは来季に向けた準備を進めている。今季の成績で慌てることなく、今年のドラフトも育成路線を変えることはないだろう。ただ、盤石な投手陣と比べ課題は攻撃陣で、上位は野手中心の指名なることが想定される。
安達とT-岡田が引退し、杉本や西野真弘(JR東日本~14年⑦)、福田周平(NTT東日本~17年③)が30代半ばに差し掛かる。西川に森、若月健矢(花咲徳栄高~13年③)など主力が30歳になり世代交代が否応なしに起こっている。期待の若手がいない訳ではないが、中軸候補と呼べるのは紅林に横山、内藤鵬(日本航空石川高~22年②)くらいで、今年は長打力のある中軸候補を獲得したい。
☆投手~先発・リリーフ左腕
投手はこれだけのケガ人が出ても、防御率がリーグ2位なのだから、来季離脱した選手が戻ってきたらどんな投手陣になるか末恐ろしい。
先発は宮城を中心に、実績十分の田嶋大樹(JR東日本~17年①)と山岡泰輔(東京ガス~16年①)、山下と斎藤響介(盛岡中央高~22年③)の若手に、椋木蓮(東北福祉大~21年①)に東が戻れば層は厚く、エスピノーザやカスティーヨが残れば万全だ。
リリーフは平野佳寿(京産大~05年希)代わるクローザーが課題だが、山崎颯一郎(敦賀気比高~16年⑥)に宇田川、小木田、阿部が戻り、今年活躍した鈴木に吉田、古田島、ベテランの山田修義(敦賀気比高~09年③)を加えた救援陣も層は厚い。
当然、上位候補で金丸夢斗(関大)や今朝丸裕喜(報徳学園高)、藤田琉生(東海大相模高)、清水大暉(前橋商高)をリストアップしており、左腕の金丸や藤田は補強ポイントに合うが、上位が野手指名になれば、投手は3位以降の指名が濃厚だ。
リストアップされている選手で、3位以降の候補で想定すると、小川哲平(作新学院高)に、甲子園は未出場で無名だが池田悠真(紋別高)に昆野太晴(白鷗大足利高)、村上泰斗(神戸弘陵高)、川勝空人(生光学園高)は球速が150キロを超え、大学生では岩崎峻典(東洋大)の評価も高い。隠し玉的な存在では、塩貝迅平(京都翔英高)や前田明慶(福岡一高)も140キロ後半の真っ直ぐを投げ将来性は十分だ。
一方、左腕が少ない状況から、山内悠生(北見柏陽高)や洗平比呂(八戸学院光星高)、冨士大和(大宮東高)、河野伸一朗(宮崎学園高)が候補に挙がる。また、伊原陵人(NTT西日本)はゲームメークに長けチームにフィットする気がする。伊原以外の社会人では長身右腕の鷲尾昂哉(三菱重工ウエスト)も評価が高く、先発・リリーフともにこなせる。
☆捕手~大学生と社会人
捕手は課題が多く、森と若月がいて安泰と思えるが、捕手の支配下人数6名のうち頓宮は一塁が主で、今季は捕手の出場がなく実質的には5名しかいない。また、森と若月、石川亮(帝京高~13年日⑧)は同い年の29歳で年齢構成も良くない。現状のチーム状況から考えると、森を頓宮と同じように野手起用で打撃強化を図る方法もあり、捕手の補強は野手の優先課題になる。
昨年、堀柊那(報徳学園高~23年④)を獲得しているので、年齢構成からも大学生または社会人を狙いたい。大学生であれば強肩強打の清水智裕(中部大)、社会人なら強肩で守備に長けた石伊雄太(日本生命)、打撃がセールスポイントの野口泰司(NTT東日本)や大友宗(BCL茨城)が候補になる。一方で、森と若月が健在なうちに将来性重視で箱山遥人(健大高崎高)も指名もアリだと思う。
今季は遊撃の紅林のみがレギュラーを務めるが、一塁にはタイトルホルダーの頓宮にセデーニョ、二塁は太田椋(天理高~18年①)と俊足の大里昂生(東北福祉大~21年育③)、三塁には名手の宗佑磨(横浜隼人高~14年②)と西野がおりタレントは豊富だ。また、横山聖や内藤の中軸候補も控え、内野の補強を急ぐ必要はない。
1位候補では宗山塁(明大)と石塚裕惺(花咲徳栄高)の名前が挙がり、二塁も守れる宗山は即戦力で、U-18の4番・石塚は将来の中軸候補で、ともに補強ポイントに合っており1位入札もある。
中軸候補では石塚と同じU-18代表の花田悠月(智弁和歌山高)、高校通算64本塁打の宇野真仁朗(早実高)に45本塁打の森井翔太郎(桐朋高)をリストアップしてる。また、広角に長打を打てる石見颯真(愛工大名電高)や今坂幸暉(大院大高)も評価が高い。大学生では、ともに打撃に定評のある三塁手で、佐々木泰(青学大)は勝負強さ、柳館憲吾(国学院大)は広角に打ち分ける技術が評価されている。
☆外野手~高校生+中軸候補(右打ちならベスト)
外野手は西川以外のレギュラーが不在で、中川の復帰や、若手では野口智哉(関大~21年②)や渡部遼人(慶大~21年④)、来田涼斗(明石商高~20年③)の成長など期待値は高いが、内野と同様のに中軸候補が欲しい。
1位候補では西川史礁(青学大)か渡部聖弥(大商大)が挙がり、ともに右打ちで補強ポイントに合致する。西川は守備も良く、渡部は強肩俊足に三塁も守れ、外野を1位指名するならどちらにするか迷うだろう。高校生では、モイセエフ・ニキータ(豊川高)がリストアップされている
●世代交代が進むなか、野手強化で今年は大学生野手をドラフト1位指名か
今年は西武や広島、ヤクルトなど外野手強化が課題のチームが多いなか、候補は決して多いとは言えない。相対的に外野手の順位が上がる可能性が高く、1位は西川史礁(青学大)と渡部聖弥(大商大)で予想してみた。
18年を最後に高校生指名が全体指名人数の半数を割ったことはなく、今年も高校生主体の指名が予想されるが、全体的に大学生と社会人に候補が多くなく、上位と下位のバランスは逆転するかも知れない。
【指名シミュレーション】
(Aパターン) (Bパターン)
1位~西川史礁(青学大・外野手) 渡部聖弥(大商大・外野手)
2位~村上泰斗(神戸弘陵高・投手) 清水大暉(前橋商高・投手)
3位~山内悠生(北見柏陽高・投手) 石伊雄太(日本生命・捕手)
4位~柳館憲吾(国学院大・内野手) 伊原陵人(NTT西日本・投手)
5位~石見颯真(愛工大名電高・内野手) 河野伸一朗(宮崎学園高・投手)
6位~鷲尾昂弥(三菱重工ウエスト・投手) 花田悠月(智弁和歌山高・内野手)
おススメの選手は村上泰斗(神戸弘陵高・投手)で、高校入学から投手に転向し、2年夏に150キロを超えた。まだまだ投手としては学ぶところは多いが、地元の原石を投手育成に長けたチームでどう化けるか見てみたい。