ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

2023年~ドラフト候補100名を予想してみました

 今年のドラフトは、1位候補だけで20名前後の名前が挙がる「豊作」と言われている。その中心となるが大学生投手で、佐々木朗希(ロッテ)や宮城大弥、紅林弘太郎(オリックス)に長岡秀樹(ヤクルト)と同世代で、黄金世代と呼ぶにふさわしい選手が揃っている。

 昨年は目玉級の選手が不在で、9球団が事前に1位指名選手を公表する異例の事態になったが今年は違う。仮に1位選手を外したとしても、1~2位で十分にリカバリーできる選手が揃っており、競合を避けることなく、各球団が欲しい選手を積極的に獲りに動くだろう。いま現在、1位指名を公表したのは広島と中日、西武、ソフトバンクの4球団だが、昨年のように他球団へのけん制にはならない。

 今年は豊作ドラフトを見越してのことだと思うが、ドラフトを前に戦力外通告を受けた選手が多く、ビッグネームの選手も多数含まれている。ドラフトは1位で獲りたい選手を獲得できれば成功と言えるが、今年はFAや戦力外選手の補強を見越して、他球団との駆け引きになりそうで、興味深いドラフトになりそうだ。

【今年の特徴】

 ①大学生に即戦力投手が多く、なかでも東都7人衆が1位候補に挙がる

   ※東洋大/細野、青学大/常広・下村、亜大/草加、中大/西舘国学院大/武内、   

    専大/西舘 ※太字は既に1位指名が公表された選手

 ②即戦力の野手が少なく、投手が豊富なだけに指名が繰り上がる可能性がある

 ③第1次戦力外選手が多く、有望選手が多いだけに例年より支配下指名は多め?

 

【各チームの指名予測~指名順】※戦力外表記は支配下登録選手のみです

◆中日…61名(投手32名~野手29名)

 投手は谷元圭介、野手は福田永将含め3選手が引退し、2名が戦力外で指名人数に余裕がある。貧打解消のためここ2年は野手中心の指名になったが、結果は出ていないなか、投手も手薄になってきた。今季は投手中心か、野手補強継続かに注目したい。

日本ハム…64名(投手34名~野手30名)

 谷内亮太と木村文紀の引退に戦力外1名と、支配下人数は現状、最も多い。ただ、加藤貴之と上沢直之のFA移籍が濃厚で、先発投手の即戦力は多ければ多いほど良く、野手は守備強化が課題になる。今季も育成よりも即戦力選手中心の指名になるだろう。

◆ヤクルト…62名(投手33名~野手29名)

 荒木貴裕が引退を決め、投手5名が戦力外になった。課題は明白で12球団ワーストの防御率の投手陣で、特に先発の補強が優先になる。一方で捕手の人数不足、外野の年齢構成の偏り、村上宗隆含めた主力の後継者の獲得など投打に課題は多い。

◇西武…62名(投手26名~野手36名)

 戦力外は7名も、森脇亮介と佐々木健は育成契約で、枠を空けておく必要があり、課題の捕手は炭谷銀仁朗の獲得を検討している。投高打低のチームだが、投手の人数が少なく、野手は若手の奮起に期待し、今季は投手中心の指名になることが予想される。

◆巨人…60名(投手31名~野手29名)

 今季は容赦なくベテランを切り、松田宣浩が引退、中島宏之鍵谷陽平などの功労者も戦力外になるなど、チームは若返りを図ろうとしている。課題は投手で先発・リリーフともに即戦力が必要だ。捕手の補強も必要で今季はバッテリー強化が中心となる。

楽天…59名(投手29名~野手30名)

 既に8名が戦力外になり、主力の高齢化が進むなか過渡期を迎えようとしている。ただ、この間の即戦力中心のドラフトで年齢構成が歪になり、次世代を担う若手は少ない。松井裕樹のFA移籍も濃厚で、今季も即戦力中心の指名から抜け出せそうにない。

◆DeNA…61名(投手31名~野手30名)

 藤田一也が引退し、6名が戦力外になった。ただ、今永昇太と石田健大、戸柱恭孝にFA移籍の可能性があり、バウアーの去就も未定で、既に投手陣の不安が大きい。野手も主力の顔ぶれが変わらず後継獲得が急務で、外野手は今年補強しないとマズイ。

ソフトバンク…63名(投手31名~野手32名)

 3年連続V逸で、嘉弥真新也や上林誠知の主力を戦力外にした。昨年に引き続きFAに積極参戦する姿勢で、ドラフトは育成主体になりそうだが、先発不足や主力野手の高齢化の課題も抱えている。またこの間、成果が足りない育成選手の指名数にも注目だ。

◆広島…64名(投手31名~野手33名)

 ドラフトが戦力補強の基本で、毎年6~7名を指名している。現状、一岡竜司が引退し、戦力外も3名と少ない。今季も投手陣への負担が大きく、先発とリリーフともに即戦力で層を厚くしたい。野手はスラッガー不足でスケール感のある選手を獲得したい。

◇ロッテ…63名(投手34名~野手29名)

 今季の2位は大健闘と言えるが、大事なところで選手層の薄さが際立った。投手は先発やリリーフともに必要で、野手は期待の選手が足踏みが続いている。ただ、若手に有望株が多く、投手と野手の即戦力プラス有望な高校生を獲得し選手層を厚くしたい。

阪神…61名(投手30名~野手31名)

 盤石な投手陣と野手はレギュラー陣が固定され、中堅選手7名を戦力外にした。戦力が充実しており、投打に育成中心の指名になる。昨年同様、上位は即戦力で2位以降で高校生や伸びしろのある大学生の指名が予想され、上位は即戦力投手が欲しい。

オリックス…64名(投手30名~野手34名)

 現在、戦力外は3名と少ないが、山本由伸と山崎福也の移籍が濃厚で、従来は育成中心で臨めるが、今年は豊富な大学生投手中心に即戦力指名も必要で、野手よりも投手中心のドラフトになることが予想される。ドラフト巧者だけに育成指名も含め注目だ。

 

【指名順位予想】

 既に武内夏暉(国学院大)の競合が決定し、指名が公表されている常広羽也斗(青学大)や度会隆輝(ENEOS)もけん制にはならずに競合するだろう。さらに西舘勇飛(中大)は巨人からの指名が濃厚で、最速158キロ左腕の細野晴希(東洋大)や高校ナンバーワンの前田悠伍(大阪桐蔭高)の1位指名も十分に予想される。

 公表していないチームでは日本ハムとヤクルト、楽天、DeNAは、いずれも投手力不足で、また主力選手のFA移籍の可能性も高く即戦力投手指名が濃厚だ、阪神オリックスは将来性を見越して、高校生の1位指名に舵を取れる。ロッテは迷うところで、少ない即戦力野手を上位指名して、2位以降で投手強化の戦略も考えられる。

 また2回目以降も、1回目の予想を踏襲すれば、下村海翔(青学大)や西舘昂汰(専大)、古謝樹(桐蔭横浜大)など外れ1位指名で競合する可能性が高く、16年の田中正義’(創価大~ソフトバンク)や17年の清宮幸太郎早実高~日本ハム)の時のように、1位指名12名が決まるまでには時間がかかりそうだ。

1位入札候補(1回目予想)

 武内夏暉(国学院大・投手)…ヤクルト、西武ソフトバンク

 常広羽也斗(青学大・投手)…日本ハム広島

 西舘勇飛(中大・投手)…巨人、楽天

 度会隆輝(ENEOS・外野手)…中日、ロッテ

 細野晴希(東洋大・投手)…DeNA、阪神

 前田悠伍(大阪桐蔭高・投手)…オリックス

1位候補(2回目以降)

 投手…坂井陽翔(滝川二高)下村海翔(青学大)西舘昂汰(専大

      古謝 樹(桐蔭横浜大・投手)

 野手…横山聖哉(上田西高・内)上田希由翔(明大・内)

2位候補

 2位指名にも1位クラスの選手が多く、草加や岩井、上田は1位で呼ばれてもおかしくない。また、松本や高をが2位で獲得できれば大きなプラスになる。野手では進藤と廣瀬が即戦力で、滝田は大学生ながら伸びしろに期待できる選手で大化けの可能性も。

 投手…木村優人(霞ヶ浦高)東松快征(享栄高)滝田一希(星槎道都大)

      草加 勝(亜大)岩井俊介(名城大)松本凌人(名城大)上田大河(大商大)

      高 太一(大商大)

 野手…堀 柊那(報徳学園高・捕)進藤勇也(上武大・捕)真鍋 慧(広陵高・内)

      廣瀬隆太(慶大・内)

3位候補

 将来性を重視して高校生が多くなり、杉山や福田、杉原と有望な高校生左腕は指名順位が上がるかもしれない。野手でも森田に小笠原、明瀬と将来の中軸候補を予想してみた。二刀流の武田は投手よりも、岡林(中日)のように外野のほうが良いと思う。

 投手…早坂 響(幕張総合高)日當直喜(東海大菅生高)篠崎国忠(修徳高)

      杉山遥希(横浜高)福田幸之介(履正社高)杉原望来(京都国際高)

      尾崎完太(法大)冨士隼人(平成国際大)

 野手…森田大翔(履正社高・内)小笠原蒼(京都翔英高・内)

      明瀬諒介(鹿児島城西高・内)武田陸玖(山形中央高・外)

4位候補

 チームの自由度が出る4位は、大学生でも素質重視の伸びしろに期待できる選手を予想し、結果的に捕手が多くなった。また、天野や村田怜のようにこれまでプロ選手を輩出していないチームからの指名があるか注目で、村田賢と萩原、有馬は即戦力候補。

 投手…天野京介(愛産大工高)藤原大翔(飯塚高)村田賢一(明大)

    石原勇輝(明大)真野凛風(同大)谷脇弘起(立命大)

 野手…鈴木 叶(常葉菊川高・捕)萩原義輝(流通経大・捕)有馬 諒(関大・捕)

      佐倉侠史朗(九州国際大高・内)百崎蒼生(東海大熊本星翔高・内)

      村田怜音(皇學館大・内)

5位候補

 社会人投手の上位候補が今年は少なく、上位で思うように即戦力投手を獲得できなかったときに社会人選手が増えそうで、皆川に稲葉、広沢が候補になる。石沢と中岡、赤塚は無名ながら真っ直ぐに力があり、打撃の良い武内は将来的には中軸も任せられる。

 投手…細野龍之介(札幌新陽高)武内涼太(星稜高)中山勝暁(高田高)

      石沢大和(東農大オホーツク)中岡大河(冨士大)赤塚健利(中京学院大

      広沢 優(JFE東日本)皆川喬涼(東京ガス)稲葉虎大(シティライト岡山)

 野手…山田脩也(仙台育英高・内)仲田侑仁(沖縄尚学高・内)

      桃谷惟吹(立命大・外)

6位候補

 6位は一芸に秀でた選手が並び、椎葉は最速159キロで今回のドラフト候補のなかでも最も速い投手。辻本は遊撃守備に定評があり、守備だけで飯が食え、武田も守備プラス俊足で機動力も武器になる。東恩納は今夏の甲子園で一気に評価を上げた。

 投手…仁田陽翔(仙台育英高)清水麻成(樹徳高)高橋快秀(多度津高)

      松石信八(藤蔭高)東恩納蒼(沖縄尚学高)津田淳哉(大経大)

      川船龍星(日本通運)榛葉 剛(四国IL徳島)

 野手…久保田拓真(パナソニック・捕)辻本倫太郎(仙台大・内)

      武田登生(日本新薬・内)田中大聖(太成学院大・外)

下位候補

(高校生)

 下位候補ながら投手はいずれも球速が140キロ後半を投げ、河内は評価急上昇中で、川下や伊地知以外にも北海道に候補者が多い。野手は長打力が魅力の田上に高野、広角に打てる高見澤と寺地、走攻守揃った星野など将来性豊かな選手が揃っている。

 投手…川下将勲(函館大有斗高)伊地知晴(旭川志嶺高)ハッブス大起(東北高)

      大内誠弥(日本ウェルネス宮城高)宮國凌空(東邦高)

      河内康介(聖カタリナ高)

 野手…藤田柊太郎(福岡大大濠高・捕)寺地隆成(明徳義塾高・捕)

      田上優弥(日大藤沢高・内)高見澤郁魅(敦賀気比高・内)

      高野颯太(三刀屋高・内)星野ひので(前橋工高

(大学生)

 大学生は今年豊富で、6位以降になると少なくなったが、蒔田は安定感があり、この間の不振から秋に復活し、松田は細身ながら真っ直ぐに力がある。佐藤と東門は走攻守揃ったスラッガーで将来性重視、福島と宮崎はいずれも俊足で一芸で一軍を狙える。

 投手…蒔田 稔(明大)工藤泰成(東京国際大)松田琢磨(大産大

 野手…佐藤啓介(静岡大・内)福島圭音(白鷗大・外)宮崎一樹(山梨学院大・外)

      東門寿哉(日本文理大・外)

(社会人・独立L)

 社会人にもなると過去の指名漏れの悔しさもあり、古田島や松本、竹田は念願のプロ入りを果たしたい。安定感抜群の高島、高卒3年目の片山は今年が初のチャンス。野手では独立リーグの2人に注目で、井上は四国ILで2年連続2冠のスラッガーだ。

 投手…片山楽生(NTT東日本)古田島成龍日本通運)松本健吾(トヨタ自動車

      高島泰都(王子)竹田 祐(三菱重工エスト)石黒佑弥(JR西日本

 野手…津田啓史(三菱重工エスト・内)伊藤瑠偉(BC群馬・内)

      井上絢登(四国IL徳島・外)

 いよいよ明日、ドラフトが開催される。紹介した100名以外にも有望な選手はまだまだおり、今年もどんなドラマが待ち受け、どのチームが成功し、どの選手が何処のユニフォームに袖を通すか、年に一度のイベントを純粋に楽しみたい。