常勝チームを目指す「Vision25」を目前にしたシーズンは、ソフトバンクの独走のなか、5月に引き分けを含む11連勝で一時期は差を詰めたが、以降は5割をキープするのがやっとで、最後は日本ハムにも抜かれ3位でシーズンを終えた。
今年は下位チームには勝ち越しも、上位チームに大きく負け越した。特に西武にはリーグ新記録の開幕から16連勝で21勝4敗で圧倒するも、日本ハムに借金12、ソフトバンクには借金8と貯金を使い果たした。
要因は多々あるが、毎年期待している選手の伸び悩みが頭の痛いところで、佐々木は今季も途中離脱し、規定投球回数も未達成。藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)はオープン戦で骨折し合流が遅れ、安田尚憲(履正社高~17年①)もノーアーチに終わるなど、今年も期待を裏切った。
【24年度チーム成績…71勝66敗6分/3位】
24年/3位 23年/2位 22年/5位
防御率(失点数)…3.17⑤(495⑤) 3.40⑤(524⑤) 3.39④(536⑤)
打 率(得点数)….248②(493③) .239④(505④) .231⑤(501①)
守備率(失策数)….987③( 71④) .985④( 83⑤) .987③( 70③)
本塁打数/盗塁数… 75③/64⑤ 100④/73④ 97③/132①
チーム防御率は昨年よりは改善したものの、今季もリーグ5位で、先発の防御率は5位、リリーフは4位でともに3点台を全体的に底上げが必要だ。
先発は小島和哉(早大~18年③)と種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)が規定投球回数をクリアし、小島と佐々木、西野勇士(新湊高~08年育⑤)で8つの貯金を作ることがができ、数字以上にゲームを作ることができた。
リリーフは益田直也(関東国際大~11年④)がリーグ3位のセーブ数を上げ、鈴木はチーム最多登板の51試合に登板しリーグ2位のホールド数に、防御率0点台の好成績を挙げ、横山もキャリアハイの43試合に投げ防御率は1点台と益田の後継候補が台頭した。先発、リリーフともに数字以上に来季に向け繋がるシーズンにはなった。
【投手 ※は規定投球回数 ○の数字は順位】
☆先発…※⑨種市篤暉(147回1/3)※⑪小島和哉(163回1/3)
メルセデス(126回1/3)西野勇士(122回1/3)佐々木朗希(111回)
☆ リリーフ…鈴木昭汰(51試合)益田直也(44試合)横山陸人(43試合)
国吉佑樹(41試合)澤村拓一(39試合)坂本光士郎(37試合)
打線は数字を見ると、得点力が不足しているのが分かる。チーム打率と出塁率はリーグ2位で、ヒットを打つこともランナーを出すこともできている。本塁打は専らソトとポランコの両外国人頼みだが長打率もリーグ3位の成績で、得点圏打率も悪くない。
課題は何かと言うと犠打の成功率と盗塁数の低さで、犠打成功率はリーグ最下位で、平均すると5回に1回は失敗している。盗塁の成功率はリーグトップの.821だが、盗塁企画数78は断トツのリーグ最下位(日本ハムの半分)で、一昨年130盗塁したチームが、大きくメンバーも変わっていないなか激減している。そうなると増えるのが併殺数で105はリーグ最多で、走者を進塁させることが出来てない。
【野手 ※は規定打数 ○の数字は順位(試合数/打席数)】
☆捕 手…※④佐藤都志也(116/452)田村龍弘(51/160)
☆内野手…※⑥ソト(132/542)中村奨吾(120/433)友杉篤輝(125/393)
藤岡裕大(90/369)小川龍成(119/313)安田尚憲(55/174)
☆外野手…※⑲ポランコ(118/468)岡 大海(103/420)高部瑛斗(76/287)
藤原恭大(74/264)角中勝也(84/217)荻野貴司(80/213)
山口航輝(51/181)
●世代交代が着実に近づいており、補強と将来に向けた準備を今年も進める
将来性を見越し、特に高校生野手を積極的に1位で獲得する姿勢は評価できるが、残念ながら結果が出ていない。安田は来季8年目、藤原は7年目で期待の若手ではなく、松川虎生(市和歌山高~21年①)もファームの正捕手すらままならない。今季5年目を迎えた佐々木も初の2桁勝利は達成したものの、ポテンシャルを考えるとこれで満足してもらっては困る。
佐々木を獲得した19年のドラフトは、ロッテにとって当たり年になったが、以降も1位指名選手は悪くない。鈴木と菊地吏玖(専大~22年①)はリリーバーで活躍し、上田希由翔(明大~23年①)も古傷で戦列を離れたが、随所に非凡な才能を見せた。
2位以降でも、投手では中森俊介(明石商高~20年②)と田中晴也(日本文理高~22年③)が今季は先発で勝利を挙げた。野手では友杉がと小川龍成(国学院大~20年③)がキャリアハイの成績を残し、高卒ルーキーの寺地隆成(明徳義塾高~23年⑤)もファーム2位の打率を残した。
ここ最近は5年連続、支配下指名は5名になっており、高校生2~3名に大学・社会人の組み合わせでバランスは悪くない。一方で35歳以上の日本人選手8名は12球団最多で、ベテランに依拠しているチームで、若手の台頭がないと厳しい。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
19年④…佐々木朗希(大船渡高/①・投手)佐藤都志也(東洋大/②・捕手)
高部瑛斗(国士館大/③・外野手)横山陸人(専大松戸高/④・投手)
20年②…鈴木昭汰(法大/①・投手)
21年②…なし
22年⑤…友杉篤輝(天理大/②・内野手)
23年②…なし
↓↓
【ロッテの補強ポイント】
投 手…即戦力の先発と高校・大学生左腕
捕 手…大学生または大卒社会人
内野手…右打ちの中軸候補
外野手…年齢構成で高校生
来季に向けた最大の心配事は、佐々木のMLB移籍の強行で、西野のFA移籍などが重なれば先発投手が不足する。特に左腕は小島含め5名(外国人選手を除く)しかおらず左腕不足は心配だ。
野手は23歳以下に内・外野手1ずつしかおらず、本塁打は外国人頼みのなか将来の中軸候補も必要だ。長距離砲の候補と呼べるのは山口航輝(明桜高~18年④)と山本大斗(開星高~20年育③)しかおらず、暫くは外国人選手に頼らざるを得ない状況を考えると中軸候補を獲得したい。
☆投手~即戦力の先発と高校・大学生左腕
来季は佐々木と西野の去就がチームの状況を左右し、小島と種市に続くのが、今季ともに3勝の36歳の唐川侑己(成田高~07年①)に37歳の石川歩(東京ガス~13年①)、ともに1勝の中森や田中が候補になり、菊地や岩下大輝(星稜高~14年③)の先発転向など様々な対応が考えられるが、即戦力の先発投手が必要だ。
リリーフは益田を中心に、鈴木や横山がクローザー候補で控え、ベテランの澤村拓一(中大~10年巨①)に国吉佑樹(秀岳館高~09年横①)、坂本光士郎(新日鉄住金広畑~18年ヤ⑤)を中心に層は厚く、リリーフ左腕以外の補強は必要ない。
1位候補で挙がるのが金丸夢斗(関大)で、今年は既に先発ローテーションに入ると言われ、チームが欲しい先発左腕で補強ポイントに合致する。上位候補では中村優斗(愛工大)と篠木健太郎(法大)、左腕の伊原陵人(NTT西日本)がリストアップされ、中村は最速159キロの速球派で、篠木と伊原はゲームメークに長けている。。
大学生・社会人では、坂口翔楓(国学院大)に岩崎峻典(東洋大)、箱山優(日体大)、沢山優介(ヤマハ)が候補に挙がり、岩崎と箱山、沢山は力強い真っ直ぐで押す本格派右腕で、坂口は打たせる投球術も持ち合わせている。
高校生では今朝丸裕喜(報徳学園高)が上位候補で、身長189センチの世代ナンバーワンと評されるエース候補。清水大暉(前橋商高)に柴田獅子(福岡大大濠高)は他球団も上位候補でマークしている逸材だ。
このほか、いずれも最速150キロを超える本格派右腕の昆野太晴(白鷗大足利高)に川勝空人(生光学園高)、狩生聖真(佐伯鶴城高)の評価が高く、小船翼(知徳高)は長身から角度のある真っ直ぐを投げる。
小川哲平(作新学院高)に津嘉山憲志郎(神戸国際大高)、高尾響(広陵高)、吉岡暖(阿南光高)、スリークオーター左腕の冨士大和(大宮東高)は制球力や変化球の精度など総合力の高さを評価しており、岩瀬将(誉高)や森巌徳(県岐阜商高)もリストアップしている。
☆捕手~大学生または大卒社会人
今季は佐藤が正捕手を務め、リーグ4位の打率も見事で、べテランの田村龍弘(光星学院高~12年③)との併用になった。ファームでは寺地が最もマスクを被り、松川との併用になった。
松川の伸び悩みは誤算だが、寺地の台頭もあり補強を急ぐ必要はない。ただ、打撃の良い佐藤や寺地を野手で起用することも考えると、年齢構成で大学生または大卒社会人を狙っても良く、石伊雄太(日本生命)は強肩でリードに定評がある。高校通算35本の箱山遥人(健大高崎高)も、松川の状況を考えると指名の可能性がある。
☆内野手~中軸候補(右打ちならベスト)
今季は内野を競争促進でシャッフルして臨んだが、思うような結果には繋がらなかった。一塁のソト以外は、いずれも規定打席に達せず、二塁・藤岡裕大(トヨタ自動車~17年②)、三塁・中村奨吾(早大~14年①)、遊撃は友杉が主に務め、安田と小川、茶谷健太(帝京三高~15年ソ④)を併用した。ただ、内野は20歳代中盤にタレンが揃っており、補強を急ぐ必要はなく、優先は長打を打てる中軸候補に絞って良い。
上位候補の石塚裕惺(花咲徳栄高)は、高校通算26本の遊撃手で強肩で走力もある。宇野真仁朗(早実高)も走攻守三拍子揃ったスラッガーで、今夏の甲子園では木製バットで活躍した。片井海斗(二松学舎大高)は1年生から4番を任され、確実性に課題はあるが佐々木泰(青学大)も勝負強い右打ちの長距離砲で将来性十分だ。
一方で、今年も遊撃手が課題で、友杉と小川、茶谷は守備は問題ないが、いずれも打力が課題で、宗山塁(明大)は10年は遊撃に心配することない逸材で、この間の課題が解消される。このほか、庄子雄大(神奈川大)は一塁到達3.9秒台の俊足で外野も守れ、斎藤大翔(金沢高)は強肩と守備が評価されている。
☆外野手~年齢構成で高校生
外野手は岡大海(明大~13年日③)と藤原、ケガが治れば高部が控えており、山口の復活が待たれる。ファームの本塁打王の山本、俊足の和田康士朗(BC富山~17年育①)と20歳中盤にタレントがおり補強を急ぐ必要はない。
ただ、内野と違って23歳以下に山本しかおらず、上位候補で西川史礁(青学大)と渡部聖弥(大商大)が挙がる。ともに右打ちの強打者だが、投手を差し置いての指名は考えにくく、狙うのなら年齢構成で高校生になり、モイセエフ・ニキータ(豊川高)は中軸を担えるスラッガーで補強ポイントに合う。同じ長距離砲では勝負強さを兼ねる吉納翼(早大)も評価急上昇中で、柴崎聖人(大経大)は俊足を活かし大学を代表する安打製造機で、飯森太慈(明大)も3年春には首位打者も獲得した韋駄天だ。
●即戦力投手の金丸を競合覚悟で入札か?とにかく左腕投手の補強が必要
1位候補で金丸夢斗(関大)と宗山塁(明大)、西川史礁(青学大)、石塚裕惺(花咲徳栄高)が挙がるが、競合覚悟なら今年は金丸で良いと思う。即戦力の先発且つチームに不足している左腕で、課題を一気に埋める。また、今年は左腕が少なく、順位を上げてでも伊原陵人(NTT西日本)や沢山優介(ヤマハ)の即戦力を獲得したい。
一方で外国人頼みの長打力解消のために和製大砲の獲得も必須で、石塚の1位指名はチームの覚悟を感じる指名になる。
【指名シミュレーション】
(Aパターン) (Bパターン)
1位~金丸夢斗(関大・投手) 石塚裕惺(花咲徳栄高・内野手)
2位~モイセエフ・ニキータ(豊川高・外野手) 篠木健太郎(法大・投手)
3位~伊原陵人(NTT西日本・投手) 吉納 翼(早大・外野手)
4位~狩生聖真(佐伯鶴城高・投手) 沢山優介(ヤマハ・投手)
5位~川勝空人(生光学園高・投手) 小船 翼(知徳高・投手)
6位~庄子雄大(神奈川大・内野手) 冨士大和(大宮東高・投手)
おススメは、地元出身の篠木健太郎(法大)で、出身校の木更津総合高は進学が基本で、OBの早川隆久(楽天)や山下輝(ヤクルト)はいずれも獲得できていない。戦力面でも即戦力投手の獲得は必須で、今年こそは是非獲得したい。