昨年オフは6球団との争奪戦の末にFAの山崎福也(明大~14年オ①)を獲得し、レイエスも日米争奪戦を制し入団にこぎつけた。さらにNPBで通算13勝を上げたバーヘイゲンも加入し、2年連続最下位ながら台風の目になる予想が多かった。
その予想通りに山崎が10勝を上げ、レイエスは日本の野球に慣れた後半戦から打ちまくり、リーグ2位の25本塁打、打点もリーグ5位の65打点で役割を果たした。さらに伊藤が最多勝を獲得し、清宮幸太郎(早実高~17年①)や万波中正(横浜高~18年④)、田宮裕涼(成田高~18年⑥)など新庄監督が育てた若手が躍動し、昨季加入の郡司裕也(慶大~19年④)、現役ドラフト加入の水谷瞬(石見智翠館高~18年ソ⑤)がキャリアハイの成績を残し、5年連続Bクラスのチームを8年振りの2位に押し上げた。
【24年度チーム成績…75勝60敗8分/2位】
24年/2位 23年/6位 22年/6位
防御率(失点数)…2.94③(485③) 3.08③(496③) 3.46⑥(534⑤)
打 率(得点数)….245③(532②) .231⑥(454⑤) .234④(463⑥)
守備率(失策数)….985⑤( 75⑤) .982⑥( 94⑥) .984⑥( 86⑥)
本塁打数/盗塁数… 111②/91① 100④/75③ 100④/96③
ディフェンス重視の新庄監督らしく、就任時にリーグ最下位だった防御率が、今季は2点台まで改善した。特筆できるのは与四球数の少なさで、369はリーグ最小で四球を嫌がる新庄イズムの浸透がここにも見て取れる。
今季は伊藤や山崎、加藤貴之(新日鉄住金~15年②)が2桁勝利を上げたが、リリーフの頑張りが大きかった。田中正義(創価大~16年ソ①)をクローザーに据え、一時期離脱すると、今季支配下になった柳川大晟(九州国際大高~21年育③)を抜擢した。また、河野がリーグ最多ホールドを上げ、7選手が2桁のホールドポイントを上げた。
【投手 ※は規定投球回数 ○の数字は順位】
☆先発…※⑥伊藤大海(176回1/3)※⑫加藤貴之(166回2/3)山崎福也(147回2/3)
金村尚真(136回)北山亘基(81回2/3)
☆ リリーフ…田中正義(53試合)河野竜生(52試合)生田目翼(43試合)
杉浦稔大・マーフィー(40試合)山本拓実(36試合)宮西尚生(30試合)
池田隆英(29試合)
昨年リーグ最下位だったチーム打率も改善し、得点能力はリーグ2位まで向上した。本塁打数と長打率がリーグ2位で、華やかな攻撃が目立つ一方で、犠打の成功率がリーグ1位の9割超えで選手が役割を果たしている。一方、賛否両論があるのが盗塁で、盗塁数はリーグ最多だが、リーグ最下位の成功率.641は大きな課題だ。
新庄監督着任後の1年目のチーム内トライアウトを経て、1年目は松本剛(帝京高~11年②)が首位打者を獲得し、近藤健介(ソフトバンク)が抜けた穴を万波が埋め、今季の後半は清宮が完全覚醒し、規定打席には届かなかったが打率3割で終えた。
さらに今季は捕手で強肩の田宮、遊撃に水野達稀(JR四国~21年③)を抜擢し、打力を活かすために郡司を三塁にコンバート。一軍未出場で守備に難のある水谷を我慢強く起用するなど、選手の長所を活かすマネジメント力が随所に発揮された。
【野手 ※は規定打数 ○の数字は順位(試合数/打席数)】
☆捕 手…※⑬郡司裕也(127/495)※㉑マルティネス(126/459)
田宮裕涼(109/349)伏見寅威(62/184)
☆内野手…水野達稀(105/359)清宮幸太郎(89/329)上川畑大悟(106/305)
石井一成(68/219)野村佑希(56/152)奈良間大己(63/114)
☆外野手…※⑮万波中正(136/556)※⑳松本 剛(127/486)レイエス(106/368)
水谷 瞬(97/353)五十幡亮汰(94/127)淺間大基(90/150)
●選手層が厚くなり、即戦力志向から再び育成重視のドラフトに回帰するか
日本ハムのドラフトは育成が主体で、ドラフト1位指名は年齢、ポジション関係なくその年の一番良い選手に行くことが基本になっている。
ただ、直近5年はチームの成績が停滞していたこともあるが、育成の中心になるであろう高校生の指名が少なく、19年は本指名7名中1名、20年が6名中2名、21年は増えて9名中5名、22年は6名中1名、そして昨年は5名中2名と合わせて11名(33名中)の指名に留まっている。その前の14~18年は40名中23名と半分以上が高校生だったことを考えると以前のような育成路線が翳りを見せている。
ドラフト1位も同様で、直近5年は19年の佐々木朗希(ロッテ)→河野から始まり、伊藤、達孝太(天理高~21年①)、矢澤宏太(日体大~22年①)、西舘勇飛(巨人)→前田悠伍(ソフトバンク)→細野晴希(東洋大~23年①)と、入札も含めすべて1位指名が投手で、平凡なドラフトになっている。
河野や伊藤、金村の上位指名選手がが主力に成長し評価できる側面もあるが、反面、高校生投手の育成は進んでおらず、17年1位の吉田輝星(オリックス)はトレードで移籍し、今季はキャリアハイの成績を残した。かつてダルビッシュ有(パドレス)や大谷翔平(ドジャース)をエースとして育成し輩出したチームだけに寂しさを感じる。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
19年⑤…河野竜生(JFE西日本/①・投手)
20年⑤…伊藤大海(苫小牧駒大/①・投手)
21年⑤…北山亘基(京産大/⑧・投手)上川畑大悟(NTT東日本/⑨・内野手)
22年⑥…金村尚真(冨士大/②・投手)
23年⑥…なし
↓↓
【日本ハムの補強ポイント】
投 手…高校生と大学生(左の先発候補ならベスト)
捕 手…年齢構成で高校生
内野手…遊撃手と将来の中軸候補
外野手…高校生・大学生(左打ちならベスト)
☆投手~高校生と大学生(左の先発候補ならベスト)
投手陣は先発・リリーフともに万全で、先発は加藤貴と山崎の両左腕に、20代中盤の伊藤と金村、北山がおり来季も充実している。さらにシーズン最終戦で達が初勝利を上げ、ファームでは根本悠楓(苫小牧中央高~20年⑤)の若手に、ベテラン左腕の上原健太(明大~15年①)も控えている。
リリーフも田中正と河野、池田が勝ちパターンを担い、ベテランの宮西尚生(関学大~07年③)、移籍組の斎藤友貴哉(ホンダ~18年神④)に山本拓実(市西宮高~17年中⑥)も定着し、今季8セーブの柳川もおり層は厚い。
1位候補に挙げられているのが、金丸夢斗(関大)で補強ポイントに合う即戦力の先発左腕で、獲得できればリーグ屈指の先発陣を形成することができる。高校生では藤田琉生(東海大相模高)が上位候補で、じっくり育成する余裕がいまのチームにはある。
さらに上位候補では、ともに真っ直ぐが150キロを超える中村優斗(愛工大)と寺西成騎(日体大)、高校生では今朝丸裕喜(報徳学園高)と村上泰斗(神戸弘陵高)の名前が挙がり、最速153キロの村上は高校時代から投手を始めた逸材。
このほか清水大暉(前橋商高)と昆野太晴(白鷗大足利高)、小船翼(知徳高)いずれも最速150キロを超え、清水と小船はともに身長190センチを超える。吉岡暖(阿南光高)と柴田獅子(福岡大大濠高)、篠原響’(福井工大福井高)も右の本格派で、吉岡と篠原は完投能力が高く、柴田は打者としても評価が高い。
大学生・社会人も真っ直ぐに力のある投手をリストアップしており、山城航太郎(法大)の浅利太門(明大)、岡本駿(甲南大)、木下里都(KMGホールディングス)、小柄な左腕の荘司宏太(セガサミー)も最速150キロを超える。また、牟田稔啓(神戸医療未来大)は公式戦での実績は少ないが最速154キロを超え、木下を除いて今後に期待できる素材型だ。
最後に地元選手は今年も逸材が多く、高橋幸佑(北照高)はU-18にも選出され、山内悠生(北見柏陽高)と渋谷純希(帯広農高)はともに180センチを超える大型左腕。最速150キロの池田悠真(紋別高)は、本格的な投手転向が高2の夏の大会からで1年でドラフト候補に上り詰めた。
☆捕手~年齢構成で高校生
強肩✕強打✕俊足の田宮に正捕手の目途がつき、ベテランの伏見は左投手のリードが上手く来季も併用になる。ファームでもルーキーの進藤勇也(上武大~23年②)に、経験豊富な清水優心(九州国際大高~14年②)がおり補強の優先順位は高くない。ただ、捕手登録の郡司とマルティネスは内野が主戦で、捕手での出場はほぼ無く、年齢構成で高校生が欲しい。
捕手の有力候補が少ないなか、椎木卿五(横浜高)と町田隼乙(BC埼玉)がリストアップされ、椎木は1年から正捕手を掴み、田宮のように俊足で広角に長打も打てる。高卒3年目の町田も強肩強打の打てる捕手で念願のプロ入りを目指す。
☆内野手~遊撃手と将来の中軸候補
今季は一塁にマルティネス、二塁は上川畑と石井一成(早大~16年②)を併用し、遊撃には水野を抜擢した。三塁には郡司をコンバートし、清宮を状況に応じて一・三塁で起用した。また、ファームでは有薗直輝(千葉学芸高~21年②)に阪口楽(岐阜一高~21年④)の若きスラッガーが控え、野村佑希(花咲徳栄高~18年②)もまだ25歳で将来の中軸候補も揃っており層が厚い。
そんななか1位指名が有力なのが、巧打好守の遊撃手・宗山塁(明大)で、まさに今年1番の選手と言える。守備重視の新庄監督が目指す野球を体現することができ、水野や上川畑がいるが、それでも獲得を目指して良い選手だ。
このほか同じ遊撃手で、石塚裕惺(花咲徳栄高)に斎藤大翔(金沢高)、今坂幸暉(大院大高)がリストアップされており、石塚は打撃が注目される強肩で守備も巧く、斎藤は守備型、今坂は打撃面が評価されている。
面白いのが森井翔太郎(桐朋高)と清原正吾(慶大)で、高校通算45本の森井は直接MLB指名を目指すが、日本ハムなら強行指名もあるかもしれない。清原は大学から野球を再開した異色の経歴がどう化けるか見てみたい。
☆外野手~高校生・大学生(左打ちならベスト)
左翼の水谷、中堅の松本、右翼は強肩の万波がおり、勝負強い打撃の淺間大基(横浜高~14年③)に超俊足の五十幡亮汰(中大~20年②)などタレントは豊富で、ここも優先順位は高くない。
上位候補で、西川史礁(青学大)と吉納翼(早大)、モイセエフ・ニキータ(豊川高)が挙がるが、現状、外野のレギュラーが全員右打ちなことを考えると左打者で長打が売りのニキータと吉納を狙いたい。
また、同じ左打者では柴崎聖人(大経大)は、走攻守揃いパンチ力もあり評価が急上昇している。父が元日本ハムの飯山志夢(立正大)は俊足と強肩を活かした守備力で、同じ守備職人だった父親の後を追う。
●選手層が厚くなり良い意味で冒険できるドラフト!今年はサプライズかあるか
新庄監督着任後の22年と23年ドラフトは、チーム状況から即戦力中心のドラフトになったが、今季はベテランと若手、移籍組、外国人選手が融合してAクラス入りを果たしただけに、今年は日本ハムらしいドラフトの復活に期待している。
今年の1位指名は金丸夢斗(関大)と宗山塁(明大)に絞られたと言って良く、どちらも競合必至だが、例え獲得できなくても現状の戦力を考えれば十分にリカバリーできる。また、森井翔太郎(桐朋高)をこのままMLBへ行かせるのか、飯山志夢(立正大)の父子鷹が誕生するか、清原の指名は…など「何かやってくれそうなドラフトになる」その期待感が日本ハムにはある。
【指名シミュレーション】
(Aパターン) (Bパターン)
1位~宗山 塁(明大・内野手) 藤田琉生(東海大相模高・投手)
2位~吉岡 暖(阿南光高・投手) 森井翔太郎(桐朋高・内野手)
3位~高橋幸佑(北照高・投手) 荘司宏太(セガサミー・投手)
4位~木下里都(KMGホールディングス・投手) 柴崎聖人(大経大・外野手)
5位~椎木卿五(横浜高・捕手) 池田悠真(紋別高・投手)
6位~飯山志夢(立正大・外野手) 町田隼乙(BC埼玉・捕手)
おススメは、高橋幸佑(北照高)で、U-18の強化合宿で一躍注目され、球速が着実にアップしm制球力や変化球に課題はあるが上位候補の可能性すらある。20年の根本を最後に地元選手の指名がなく、今年こそは道産子の上位指名に期待したい。