開幕前は強力な投手陣を擁し優勝候補にも挙げられていたが、シーズンが開幕すると目を覆ってしまうような歴史的な貧打で最下位を独走し、三顧の礼で迎えられた松井稼頭央監督が交流戦を前に事実上解任された。
その後は渡辺久信GMが異例の監督兼務で指揮を執り、トレードで松原聖弥(明星大~16年巨育⑤)や野村大樹(早実高~18年ソ③)を獲得するもチーム状況が変わる訳もなく、むしろ松井監督の成績が15勝30敗、渡辺監督代行は24勝51敗2分と悪化しており、117試合目でCS出場の可能性が消え、2年連続のBクラスが確定した。
渡辺GMは、自ら指揮を執ることで、残念ながら監督云々ではなく、現在のチーム編成では歯が立たないことを痛感しただろう。今オフの大刷新が予想できるが、現状からチーム再建の道のりは容易ではない。
【9/6現在のチーム成績…39勝81敗2分/6位】
24年/6位 23年/5位 22年/3位
防御率(失点数)…3.18④(427④) 2.93②(465②) 2.75①(448①)
打 率(得点数)….210⑥(286⑥) .233⑤(435⑥) .229⑥(464⑤)
守備率(失策数)….987③( 60③) .986③( 76③) .984⑤( 86⑤)
本塁打数/盗塁数… 49⑥/62④ 90⑥/80② 118①/60⑥
●12球団ワーストの打線で投手も疲弊?投手王国の成績は下降傾向
この間、投手王国と言われているが、貧打で窮屈な投球を強いられているのか、防御率も今シーズンは下降している。誤算も多くエースの高橋光成(前橋育英高~14年①)は未だ未勝利で、平良海馬(八重山商工高~17年④)も不振でリリーフに回っている。
そのリリーフも甲斐野央(東洋大~18年ソ①)が故障で一時期離脱し、ベテランの増田達至(NTT西日本~12年①)や平井克典(ホンダ鈴鹿~16年⑤)は精彩を欠いていおり、結果論だが、新加入のアブレイユとヤン、現役ドラフト加入の中村祐太(関東一高~13年広⑥)がいなければどうなっていただろうと思う。
【投手 ※は規定投球回数 ○の数字は順位】
☆先発…※④今井達也(142回1/3)※⑦隅田知一朗(146回1/3)
武内夏暉(115回1/5)渡邊勇大朗(87回2/3)高橋光成(76回1/3)
☆ リリーフ…アブレイユ(47試合)佐藤隼輔(39試合)ヤン(35試合)松本航(32試合)
本田圭佑(31試合)ボー・タカハシ(26試合)中村祐太(25試合)
チーム打率と得点数は12球団ワーストで、得点力不足は深刻だ。森友哉(オリックス)と山川穂高(ソフトバンク)の中軸が2年続けてFA移籍し、中軸を期待された新外国人のアギラーとコルデロは2人合わせて3本塁打と期待外れで、アギラーはケガで今季絶望になった。就任以降、松井監督が掲げた走る野球も盗塁数はリーグ4位と定着せずに掛け声倒れになってしまった。
相変わらず主力はともに32歳の外崎修汰(冨士大~14年③)と源田壮亮(トヨタ自動車~16年③)の同級生コンビで、残念ながら若手は一軍半レベルで台頭する選手が見当たらない。外崎も源田もチャンスメーカーの選手で、中軸のポイントゲッター不足が得点力不足の大きな要因と言える。また、ここ数年レギュラー不在の外野は、今季もレギュラーを掴む選手がおらず、これだけのチャンスがあるのに寂しい限りだ。
【野手 ※は規定打数 ○の数字は順位】
☆捕 手…古賀悠斗(89/234)
☆内野手…※⑦源田壮亮(122/492)※㉓外崎修汰(106/428)佐藤龍世(72/262)
山村崇嘉(58/223)中村剛也(58/205)野村大樹(38/133)
アギラー(30/124)
☆外野手…岸潤一郎(82/258)西川愛也(83/249)蛭間拓哉(62/231)
長谷川信哉(53/159)栗山 巧(47/140)金子侑司(36/136)
●ベテランの引退で野手の世代交代が進むが、若手の台頭不足が悩みの種
18~19年の2連覇以降、野手は主力の相次ぐ流出もあるがチーム打率は後退の一途を辿っている。決して手を打っていない訳ではなく、直近5年でも20年の渡辺健人(桐蔭横浜大~20年①)と山村崇嘉(東海大相模高~20年③)、21年は古賀、22年は蛭間から古川雄大(佐伯鶴城高~22年②)、野田海人(九州国際大高~22年③)と1~3位の上位で野手を獲得している。
また、育成でも長谷川信哉(敦賀気比高~20年育②)や滝澤夏央(関根学園高~21年育②)が一軍に定着しつつあり、ルーキーの奥村光一(BC群馬~23年育⑥)もシーズン途中で支配下登録された。
投手は隅田と武内のエース候補を競合ののち獲得し、佐藤隼もセットアッパーとしてチームを支えている。育成からは水上や豆田泰志(浦和実高~20年育④)、菅井信也(山本学園高~21年育③)が一軍で結果を残しており、投打の年齢バランスも秀逸で、ドラフト自体大きな失敗があったとは言えない。
ただ、結果だけを見ればレギュラーを獲得したのは古賀のみで、期待の蛭間や山村、長谷川は伸び悩み、渡部は一軍すらままならないのは誤算で、課題の打線の底上げが進んでいない。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
19年①…なし
20年③…水上由伸(四国学院大/育成⑤・投手)
21年⑥…隅田知一郎(西日本工大/①・投手)佐藤隼輔(筑波大/②・投手)
古賀悠斗(中大/③・捕手)
22年③…蛭間拓哉(早大/①・外野手)青山美夏人(亜大/④・投手)
23年⑤…武内夏暉(国学院大/①・投手)
↓↓
【西武の補強ポイント】
投 手…将来のエース候補(左右)、即戦力リリーフ
捕 手…打てる即戦力捕手
内野手…即戦力、将来の中軸候補(右打ちの高校生)
外野手…即戦力のレギュラー候補、高校生または大学生の左打ち
昨年は野手の成長に手応えを感じていたのか、村田怜音(皇學館大~23年⑤)以外、指名6名中5名が投手だった。今季はこれが逆転しても構わないと思う。ベテランの金子侑司(立命大~12年③)と岡田雅利(大阪ガス~13年⑥)が相次ぎ引退を表明し野手の補強は急務だ。
その野手は課題が山積で、最優先は外野のレギュラー候補になるが、外崎と源田に代わる二遊間、古賀に次ぐ捕手の不在など、若手の成長の遅れがそのまま補強ポイントの多さに直結している。
また、高橋光や平良はメジャー志向が強く、将来的な移籍に備え投手の補強も待ったなしで、今オフはFAやトレードを積極活用しても良いと思う。
☆投手~将来のエース候補(左右)、即戦力リリーフ
先発は今井達也’(作新学院高~16年①)に高橋光、隅田を中心に、武内や復調した渡邊勇大朗(浦和学院高~18年②)が控え、今季はリリリーフだが平良や松本航(日体大~18年①)もおり層は厚い。高橋光と平良のMLB移籍の可能性や、ファームの若手の突き上げがないにのは不安材料だが、全員が20歳代後半で急ぐ必要はない。
やや不安なのがリリーフで、増田は来季37歳、平井が34歳で世代交代が必要で、森脇亮介(セガサミー~18年⑥)や佐々木健(NTT東日本~20年②)の復帰も遅れているなか、来季は先発よりもリリーフを優先したい。
当然、金丸夢斗(関大)や今朝丸裕喜(報徳学園高)を上位でリストアップしているが、敢えて投手を1位指名するならリリーフもこなせる中村優斗(愛知工大)を推したい。また、上位で希望通り野手を獲得できれば、清水大輝(前橋商高)や小川哲平(作新学院高)、高尾響(広陵高)の将来のエース候補を獲得しても良い。
一方で上位を野手で固めたなら、必然的に投手が下位指名になる。4位以降でシミュレーションしても、最速150キロを超える昆野太晴(白鷗大足利高)や川勝空人(生光学園高)、狩生聖真(佐伯鶴城高)、池田悠真(紋別高)の好素材がおり、左腕では最速148キロの山内悠生(北見柏陽高)や奪三振率の高い冨士大和(大宮東高)など将来のエース候補が目白押しで、山内は高校入学時、池田は高2夏から投手を始めた超素材型で伸びしろに期待できる。
大学生では篠木健太郎(法大)や寺西成騎(日体大)、岩崎峻典(東洋大)をリストアップしているが、いずれも先発タイプで、リリーフなら一條力真(東洋大)や東山玲士(ENEOS)は下位指名でも獲得のチャンスがあり、ファームで最多セーブの上村知輝(オイシックス)は実績もある。
☆捕手~打てる即戦力捕手
捕手は古賀に正捕手の目途が立ったが、二番手捕手が柘植世那(ホンダ鈴鹿~19年⑤)と37歳の炭谷銀仁朗(平安高~06年①)では心許ない。ファームでは22歳の古市尊(四国IL徳島~21年育①)や23歳の牧野翔矢(遊学館高~18年⑤)の若手が経験を積んでいるが、古賀との差は大きく、古賀とポジションを争える即戦力が欲しい。
今年は大学生や社会人に候補が少なく、石伊雄太(日本生命)や野口泰司(NTT東日本)が補強ポイントに合うが、今オフは捕手でFAする可能性のある選手が多く、木下拓哉(中日)は打力もあり補強ポイントに合うと思う。
☆内野手~即戦力、将来の中軸候補(右打ちの高校生)
短期的に見れば外崎と源田の二遊間はまだ問題はなく、ここは高校生の有望選手を獲得したい。期待を込めて言えば、一塁は山村に野村、三塁は佐藤龍世(冨士大~18年⑦)が独り立ちできれば問題なく、渡部や村田の中軸候補も控える。
1位候補で宗山塁(明大)は当然挙がるが、遊撃には源田がおり、元山飛優(東北福祉大~20年ヤ④)も遊撃守備には定評があり、遊撃候補を狙うなら高校生で良い。敢えて将来性にかけて石塚裕惺(花咲徳栄高)の1位入札もアリだが、2~3位候補が現実的で、森井翔太郎(桐朋高)や宇野真仁朗(早実高)、岸本佑也(奈良大高)は右打ちで補強ポイントに合う。
大学生では、荒巻悠(上武大)は遊撃以外を守れる長距離砲で、内野は山村以外に左のスラッガーがおらず打線に厚みを与える。三塁手の佐々木泰(青学大)は右のスラッガーで、佐藤龍と同じタイプだけに獲得すれば刺激になる。
☆外野手~即戦力のレギュラー候補、高校生または大学生の左打ち
最大の課題の外野手だが、個人的には蛭間と長谷川、西川愛也(花咲徳栄高~17年②)、岸潤一郎(四国IL徳島~19年⑧)がレギュラー候補として観ている。
大学生と言えどもいきなりレギュラーを獲るのは難しいが、今季の1位候補は西川史礁(青学大)か渡部聖弥(大商大)に絞って良いと思う。ともに右打ちの中軸候補で、蛭間とレギュラーを組む姿を想像するだけで期待が膨らむ。どちらも甲乙つけがたいが、三塁も守れる渡部のほうがチームの補強ポイントには合っている。
一方で、高校生・大学生の左打ちも年齢バランスで欲しい。モイセエフ・ニキータ(豊川高)は天性の長距離砲で正林輝大(神村学園高)もスケール感では引けを取らない。長距離砲ではないが飯森太慈(明大)は俊足巧打のリードオフマンタイプで、引退した金子の穴を埋めることもできる。また、年齢構成は被るがイースタンでリーグ2位の打率の知念大成(オイシックス)は即戦力になると思う。
●1位は入札覚悟で即戦力外野手が欲しい。支配下投手の人数不足も課題
今季は1位で即戦力の外野手が獲得できれば成功で、西川史礁(青学大)と渡部聖弥(大商大)のどちらかを獲得したい。
野手中心のドラフトになると思うが、一方で支配下登録の投手人数32名は12球団最小で、野手より投手が少ないのも西武と中日だけだ。投手の「質」は高いかもしれないが、「数」が不足しており、バランスを取ることも必要で、結構難しいドラフトになることが予想される。
【指名シミュレーション】
(Aパターン) (Bパターン)
1位~西川史礁(青学大・外野手) 渡部聖弥(大商大・外野手)
2位~森井翔太郎(桐朋高・内野手) モイセニフ・ニキータ(豊川高・外野手)
3位~荒巻 悠(上武大・内野手) 柴田獅子(福岡大大濠高・投手)
4位~池田悠真(紋別高・投手) 山内悠生(北見柏陽高・投手)
5位~上村知輝(オイシックス・投手) 野口泰司(NTT東日本・捕手)
6位~冨士大和(大宮東高・投手) 一條力馬(東洋大・投手)
おススメの選手は、最速149キロ右腕の柴田獅子(福岡大大濠高・投手)で、この名前で西武に入団すればインパクトは大きい。当然、シャレではなく将来性も十分で、下位で獲れる投手ではなく、将来のエース候補として狙ってほしい。