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どのチームが「人」を育て強くなるのか

24年戦力展望☆DeNA~主力が移籍するも新戦力の台頭に期待でき、リーグの台風の目に

 強力打線を擁し、シーズン開幕直前にはサイ・ヤング賞にも選ばれたバウアーの獲得も発表されるなど優勝候補に挙げる声が多かった。

 開幕こそ4連敗スタートだったが、下馬評通り3~4月を16勝3敗の首位で終えた。ただ、その後は月間で勝ち越しと負け越しを隔月で繰り返すなど連敗が多く、4連敗は開幕を含め4度、5連敗と6連敗が一度ずつと、エース今永昇太(駒大~15年①)や16勝で最多勝を上げた東克樹(立命大~17年①)、バウアーの3本柱を擁しても連敗癖は止まらず、7月に3位に転落するとそのままシーズンを終えた。 

【過去5年のチーム成績】

     順位   勝敗      打率 本塁打  盗塁   得点  防御率 失点 

 23年 3位 74勝66敗  3分 .247  105本   33個  520点  3.16  496点

 22年 2位 73勝68敗  2分 .251  117本   49個  497点  3.48  534点

 21年 6位 54勝73敗16分 .258  136本   31個  559点  4.15  624点

 20年 4位 56勝58敗  6分 .266  135本   31個  516点  3.76  474点

 19年 2位 71勝69敗  3分 .246  163本   40個  596点  3.93  611点

 昨年は投手陣が改善し、チーム防御率はリーグ3位で、リリーフ陣のやり繰りに苦労したものの、失点数は昨年より減少し、失策数もリーグで2番目に堅守は相変わらずだった。攻撃陣は一見すると、昨季も打率や本塁打は減少するも、着実に大味で淡白な攻撃から、三振を減らし犠打や進塁打でランナーを一つでも前に進める攻撃が成果として表れ、得点数は一昨年より増加し今シーズンに繋がる形ができた。

【過去5年のドラフトの主戦力】

 22年~なし

 21年~なし

 20年~入江大生(投手~明大①)牧 秀悟(内野手~中大②)

    19年~伊勢大夢(投手~明大③)

 18年~大貫晋一(投手~新日鉄住金鹿島③) 

 WBCメンバーの今永に最多勝の東、昨年打点王最多安打の牧など投打の柱の活躍であまり目立ちはしないが、直近5年のドラフトは成果としては乏しい。

 特に高校生がなかなか主戦に成長せず、ドラフト1位組では、松尾汐恩(大阪桐蔭高~22年①)はまだどうこう言う段階ではないが、正遊撃手を期待された森敬斗(桐蔭学園高~19年①)は一軍定着すらままならず、小園健太(市和歌山高~21年①)も焦る必要はないとは言え、未だ一軍未登板で昨年はファームでも2勝と物足りなさは残る。

 さらに今春のキャンプでブレイク候補と期待された深沢鳳介(専大松戸高~21年⑤)は、肘の手術で今季絶望…。また、既に在籍3年で2名が戦力外になり、2名が育成契約になるなど高校生指名選手が出てくる気配がない。

 実際に高卒の主力となると、投手では直近10年では見当たらず、昨年自由契約で退団した田中健二朗(ハヤテ)くらいで、高卒ドラフト6位からエースに上り詰めた三浦監督は何とも歯痒いと思う。野手は関根大気(東邦高~13年⑤)が昨季レギュラーを獲得したが、現役ドラフトで放出した細川成也(中日)が移籍先で大ブレイクするなど、こちらも皮肉な結果になっている。

 前身の大洋時代から大学生・社会人指名が多い伝統は変わらず、14~23年の直近10年間でも高校生指名が大学生・社会人指名を上回ったのは19年の一度だけで、昨年は最小1名の指名になった。育成主体の指名の結果が伴わず、昨年は以前のような即戦力主体に舵を切ったことで、今後のチーム作りに変化が表れるかもしれない。

●投手陣~主力が移籍し戦力ダウンが危惧されるなか、若手の台頭に期待がかかる

 チーム防御率は年々改善を見せている。先発は東がルーキー以来の2桁勝利を挙げ最多勝と最高勝率、今永も最多奪三振のタイトルを獲得し、バウアーはメジャー仕様の中4日で登板し10勝を上げた。また、自身3度目の開幕投手の石田健大(法大~14年②)は、チーム最多の23試合に先発し、平良拳太郎(北山高~13年巨⑤)も肘の手術から復帰を果たすなど、勝ち星は伸びなかったが次年度に続く成績を残した。

 改善が進んだ先発陣に対し、リリーフ陣は勤続疲労からか精彩を欠いた。クローザーの山崎康晃(亜大~14年①)は防御率4点台で7敗を喫し、終盤はクローザーの座を森原康平(新日鉄住金広畑~16年楽⑤)に明け渡した。負の連鎖は続き、一昨年70試合登板の伊勢とエスコバー、57試合の入江など軒並み成績を落とした。

 そんななか森原は17セーブを挙げ、ウェンデルケンは61試合で防御率1.66と圧巻の成績を残した。また、石川達也(法大~20年育①)と宮城滝太(滋賀学園高~18年育①)がキャリアハイの成績を上げるなど若手の台頭もあった。

【23年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆東 克樹(172回1/3)☆今永昇太(148回)バウアー(130回「1/3)

      石田健大(118回)大貫晋一(76回1/3)

 ・救援…ウェンデルケン(61試合)伊勢大夢(58試合)山﨑康晃(49試合)

       上茶谷大河(46試合)森原康平(46試合)エスコバー(40試合)

     入江大生(32試合)

【今年度の予想】

 ・先発…東 克樹 石田健大 大貫晋一 ※森 唯斗 ※ジャクソン 平良拳太郎 

      (小園健太 濵口遥大 京山将弥 ※中川 颯 ※石田裕太郎 ※ケイ) 

 ・中継…伊勢大夢 三嶋一輝 上茶谷大河 石川達也 ウェンデルケン   

      (坂本裕哉 入江大生 三浦銀二 ※松本凌人 橋本達弥 ※佐々木千隼

       ※ウィック 中川虎大 宮城滝太) 

 ・抑え…山﨑康晃 森原康平

 石田とウェンデルケンは残留したが、今永(カブス)が移籍し、エスコバーも退団。バウアーは去就未定だがシーズンに間に合わず、先発とリリーフ再編が課題になる。

 今季の開幕投手には東が指名され、今永に代わるエースの役割に期待がかかる。順当なら大貫と平良、石田と濱口遥大(神奈川大~16年①)の両左腕が有力で、今永とバウアーの穴を埋めるのは容易ではないが、実績と経験含め計算できる選手が控える。

 新戦力にも期待でき、ともに戦力外から加入した森唯斗三菱自動車倉敷~13年ソ②)にサブマリンの中川颯(立大~20年オ④)、新外国人のジャクソンもオープン戦で好投しており先発の枚数は揃ってきている。更に3年目の小園やルーキーの石田裕太郎(中大~23年⑤)は、多彩な変化球と制球力の良さでゲームメークに長け、新外国人のケイなど候補は多く新戦力の競争に期待したい。

 リリーフは山崎に伊勢、入江が本来の調子を取り戻せば層は厚い。クローザーには山崎と森原が控え、新外国人のウィックもMLBでの実績十分の守護神候補。セットアッパーにはウェンデルケンと伊勢が控え、連投を避け休ませながらの起用も可能になる。

 さらに昨年リリーフに転向した上茶谷大河(東洋大~18年①)にベテランの三嶋一輝(法大~12年②)、現役ドラフトで佐々木千隼(桜美林大~16年ロ①)など実績十分の選手に加え、石川と宮城、最速157キロの中川虎大(箕島高~17年育①)などの若手の成長も頼もしい。面白いのが右のサイドハンドのルーキー松本凌人(名城大~23年②)で、先発・リリーフともに適性があり起用法に注目したい。

●1~2番が固定され機動力が備われば、リーグ随一の中軸を擁し得点能力は高い

 まだ十分とは言えないが、着実に犠打や進塁打を活用した打線にモデルチェンジが進んでいる。その裏付けとなっているのが、打点王最多安打の牧と首位打者の宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)の中軸で、佐野恵太(明大~16年⑨)やケガの影響もありソトが不振だったが、破壊力十分の打線が機能した。

 課題は中軸の前を打つ1~2番で、1番は桑原将志福知山成美高~13年②)の不振もあり固定することができず9名が務め、決して1番タイプではない佐野までも起用された。2番に至っては15名と最後の最後まで固定できず、そんななか10年目の関根が定着し、序盤は首位打者争いもする小技と巧打でチャンスメークした。

 チームの打撃成績を見ると、得点圏打率はリーグ1位でチャンスに強く、三振数はリーグ最小の反面、四球数はリーグ4番目で出塁率は決して高くない。33盗塁はリーグ最小で、失敗が何と26と成功率も低く機動力不足が顕著だ。

 また、この間の課題の捕手は昨季もレギュラーを固定できず、遊撃も京田陽太(日大~16年中②)と大和(樟南高~05年神④)の併用で、課題解消にはならなかった。

【23年シーズン結果(試合数/打席数)】☆は規定打席クリア ※は新加入

 捕 手…山本祐大(71/200)戸柱恭孝(70/181)伊藤 光(61/176)

 内野手…☆牧 秀悟(143/605)☆宮崎敏郎(124/461)ソト(109/399)

       京田陽太(93/287)大和(88/230)林 琢真(65/154)柴田竜拓(86/66)

 外野手…☆佐野恵太(141/613)☆関根大気(140/532)☆桑原将志(132/479)

       大田泰示(75/186)楠本泰史(94/176)    

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)佐野恵太③      1)佐野恵太⑦      

  2)林 琢真⑤        2)関根大気⑨       

  3)神里和毅⑧           3)宮崎敏郎⑤    

  4)牧 秀悟④      4)牧 秀悟④     

  5)楠本泰史⑨         5)ソト③      

  6)関根大気      6)桑原将志⑧      

  7)戸柱恭孝②      7)京田陽太⑥     

  8)森 敬斗⑥      8)山本祐大②

  9)石田健大①      9)東 克樹①  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…戸柱恭孝 伊藤 光 山本祐大(松尾汐恩)

 内野手…林 琢真 牧 秀悟 大和 柴田竜拓 ※石上泰輝 宮崎敏郎 京田陽太

      (森 敬斗 西浦直亨 ※井上絢登 知野直人 西巻賢二)     

 外野手…オースティン 大田泰示 桑原将志 ※度会隆輝 佐野恵太 関根大気

    (神里和毅 勝又温史 楠本泰史 梶原昂希 蝦名達夫)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)度会隆輝⑨      捕 手)山本祐大(戸柱恭孝) 

  2)関根大気⑧      一塁手)オースティン(大和)

  3)佐野恵太⑦      二塁手)牧 秀悟

  4)牧 秀悟④         三塁手)宮崎敏郎(京田陽太

  5)宮崎敏郎⑤         遊撃手)石上泰輝(林 琢真)

  6)オースティン③    左翼手)佐野恵太

  7)石上泰輝⑥         中堅手)関根大気(桑原将志

  8)山本祐大②      右翼手)度会隆輝(大田泰示

  9)東 克樹①        

 今シーズンの期待は、何と言っても3球団競合の1位指名の度会隆輝(ENEOS~23年①)で、オープン戦ではヒットを連発しパンチ力もあり、課題のリードオフマンにはピッタリだ。そこに小技と機動力を使える関根が続き、中軸に佐野~牧~宮崎と続く打線は強力で、オースティンが加われば昨年以上の得点能力が期待できる。

 守備では課題の捕手と遊撃手に注目で、捕手は侍ジャパンにも選出された強肩の山本祐大(BC滋賀~17年⑨)は打撃も開花し、正捕手に最も近い存在になった。ここにベテランの伊藤光明徳義塾高~07年オ③)と戸柱恭孝(NTT西日本~15年④)、松尾が加わる正捕手争いは新たな局面を迎えている。

 遊撃候補で注目なのがルーキーの石上泰輝(東洋大~23年④)で、オープン戦は打撃好調を維持し、セールスポイントの広い守備範囲と俊足は、機動力不足を補えることができる。京田に森敬、林琢磨(駒大~22年③)と左打ちで俊足、堅守が持ち味と同じタイプの選手が多いだけに競争激化が予想される。

 二塁の牧と三塁の宮崎は決まりで、守備に秀でる柴田竜拓(国学院大~15年③)に、機動力も使える西巻賢二(仙台育英高~17年楽⑥)が控えており、長打力が魅力のルーキーの井上絢登(四国IL徳島~23年⑥)は三塁と外野を守れる。一塁は佐野とオースティンの併用が濃厚だが、オースティンが復調すれば佐野が外野に回る。

 外野は桑原が出遅れ、楠本泰史(東北福祉大~17年⑧)もケガで離脱しているが、佐野と関根、ルーキー度会、ベテランの大田泰示東海大相模高~08年巨①)と層は厚い。楽しみなのが梶原昂希(神奈川大~21年⑥)で、オープン戦で2本塁打と得意の打撃でアピールしており、蝦名達夫(青森大~19年⑥)は課題の守備で信頼を高めたい。また、コンバート組にも注目で、勝又温史(日大鶴ケ丘高~18年④)は打撃、東妻純平(智弁和歌山高~19年④)は強肩を活かしたい。

●主力の移籍で戦力ダウンが予想されるも、新加入と即戦力ルーキーに期待がかかる

 昨オフは投手補強に積極的に動き、新外国人選手3名に戦力外の森唯と中川を支配下で獲得し、育成で昨年ファームで43試合登板で防御率1点台の堀岡隼人(青森山田高~16年巨育⑦)も獲得した。一方、野手の補強はドラフト中心で、高校~大学~社会人~独立リーグと万遍なく指名したが、全員が左打者とバランスの悪さは否めない。

 現在、支配下は65名。特に外国人野手がオースティンしかいない状況では、打線が不振に陥った時の補強で空けておきたい。育成では堀岡や4名いる外国人投手にも期待で、野手では村川凪(四国IL徳島~21年育①)は、昨年ファームで29盗塁の韋駄天で、終盤の代走で出てくると嫌な選手だと思う。

 正直、今永やバウアー、ソトが抜けたチームは、新戦力や若の台頭に期待がかかるものの未知数の部分が多い。優勝候補としては厳しいが、若手が台頭すれば台風の目になる力はある。