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どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年ドラフト予想☆オリックス~盤石な投手陣と攻撃野球で3連覇達成!育成主体のドラフトでさらにチーム強化を図る

 一昨年、昨年の逆転優勝で連覇を果たし、昨年は26年振りの日本一に輝いた。今季も優勝候補に挙げられていたが、主砲の吉田正尚レッドソックス)がMLBへ移籍、ソフトバンクの大型補強もあり、不安要素の多いシーズンだった。

 しかしゴールデンウィークに早くも首位に立つと、7月にソフトバンクが脱落、ロッテも夏場に失速し、終わってみれば7月9日から首位を譲ることなく、2位に15.5ゲーム差の独走で3連覇を果たした。CSも3年連続で突破し、阪神との関西ダービーで、75~77年(阪急時代)以来の2年連続日本一を狙う。 

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 86勝53敗4分①

 防御率…2.73①(2.84②)打率….250①(.246②)

 本塁打…109①(89⑥)盗塁52⑥(62⑤)

 得点…508③(490④)失点…428①(458②)

●鉄壁な投手陣を擁した攻撃野球で、今年も「負けないチーム」は健在!

 強力投手陣は今年も健在で、エースの山本由伸(都城高~16年④)が3年連続の投手4冠(最高防御率最多勝、最高勝率、最多奪三振)を達成し、特に防御率はだだ一人の1点台(1.21)で、2位の高橋光(西武)とは1点も差をつけた。

 宮城も規定投球回数をクリアし、防御率3位で3年連続の2桁勝利を上げた。さらに山崎福也(明大~15年①)も初の2桁勝利の11勝を上げ、本調子ではなかったが田嶋大樹(JR東日本~17年①)も6勝と(4敗)貯金を作った。

 また、プロ初登板が開幕投手と華やかなデビューを飾った山下は、シーズン終盤に離脱するものの、防御率1.61で9勝(3敗)を上げ、さらに東晃平(神戸弘陵高~17年育②)も中盤から先発ローテーションに入ると6勝負けなしで、先発陣で貯金24、先発に限れば12球団ナンバーワンの防御率2.61と盤石だった。

 リリーフもクローザーの平野佳寿京産大~05年希望)はセーブ数こそ29セーブで3位だったが、防御率はオスナ(ソフトバンク)に次ぐ1点台。セットアッパーの山崎颯一郎(敦賀気比高~16年⑥)はリーグ4位の27ホールド、宇田川と阿部が24ホールドで、宇田川は防御率1点台で安定感を増し、後半は山岡泰輔(東京ガス~16年①)もリリーフに廻り、2年目の小木田も敗戦処理のロングリリーフから信頼を勝ち取り、最後は勝ちパターンに入った。

 1点差勝ちが12球団最多の28勝(13敗)、先制した試合は64勝14敗2分とと、12球団トップの勝率8割をほこり、強力投手陣を擁し、先行逃げ切り、接戦に強いの野球で3連覇の原動力になった。

 打線はFAで森友哉大阪桐蔭高~13年西①)が加入。開幕前に育成から支配下登録されたルーキー茶野が打ちまくり、セデーニョも育成から支配下登録されると9本塁打を放ち新戦力が台頭した。打撃が開花した5年目の頓宮が首位打者を獲得、森と紅林、中川圭が打撃10傑入りし、宗佑磨(横浜隼人高~14年②)も規定打席をクリアし、まさに全員で吉田正の穴を埋めた。 

 打線は打率と長打率がリーグ1位の反面、犠打と犠飛、四球数もリーグ最少で、併殺打は2番目の多いなど、一見、大味な野球のように見えるが、高い打率と長打率を背景に超攻撃的な野球を展開した。

●育成主体のドラフトでチーム強化が進むが、来季は主力投手の流出が懸念材料に…

 以前のオリックスのドラフトは、大学・社会人中心の即戦力志向だったが、05年~12年まで日本ハムでコーチ、二軍監督を務めた福良GMが19年に就任し、チーム強化のためには育成が不可欠と、日本ハムのドラフト(育成戦略)を真似、育成主体にシフトした。

 実際、直近5年は19年~20年、22年と高校生の指名が大学生・社会人を上回っており、宮城や紅林など結果も付いてきている。真似たオリックスが3連覇して、その日本ハムは2年連続最下位と、何とも皮肉な話になった。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年④…頓宮裕真(亜大/②・捕手)中川圭太(東洋大/⑦・内野手

 19年⑥…宮城大弥(興南高/①・投手)紅林弘太郎(駿河総合高/②・内野手

 20年⑥…山下舜平太(福岡大大濠高/①・投手)阿部翔太(日本生命/⑥・投手)

       宇田川優希(仙台大/育③・投手)

 21年①…野口智哉(関大/②・内野手)小木田敦也(TDK/⑦・投手)

 22年①…茶野篤政(四国IL徳島/④・外野手)

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オリックスの補強ポイント】 

 投 手…先発・リリーフ左腕、即戦力のクローザー候補

 捕 手…人数不足で高校生または大学生

 内野手…高校生(左打ちならベスト)、即戦力二塁手

 外野手…将来の中軸候補

 リーグ4連覇を目指す来季は課題が多い。山本のMLB移籍が決定的で、山崎福もFA移籍の可能性があり、山崎福が移籍すると左投手が宮城と田嶋、山田修義(敦賀気比高~09年③)と曽谷龍平(白鷗大~22年①)の4名のみと厳しくなる。また、平野佳が来季は40歳のシーズンを迎え、山崎颯や宇田川がいるが後継の育成も大事だ。

 今季、最終戦でプロ初勝利を上げた曽谷や、一軍デビューした斎藤響介(盛岡中央高~22年③)など期待の若手もいるが、山下も東も実質来季が2年目のシーズンで、山本と山崎福の穴を埋めるのは容易ではない。

 野手は投手ほど切羽詰まった状況ではないが、捕手が6名しかおらず、頓宮は捕手登録ながらマスクを被ったのは1試合だけで人数的に確保が必要になる。投手中心のチームだけに来季に向けバッテリー強化が課題になる。

☆投手~先発・リリーフ左腕、即戦力のクローザー候補

 今季は山本と宮城、山崎福が先発ローテーションを守り、前半は今季一軍デビューの山下が山本と並び防御率1点台、後半は東が負けなしの投球で盤石の先発陣を支えた。さらにルーキーの曽谷と斎藤も150キロを超える真っ直ぐで押す投球で、成績以上にインパクトのあるパフォーマンスを見せた。

 リリーフは、山崎颯が最多の53試合に登板し、阿部と宇田川からクローザーの平野佳まで繋ぐ形ができ、後半からは山岡も加わりさらに安定感を増した。ベテランの比嘉幹貴日立製作所~09年②)と山田も安定感抜群で、小木田や本田仁海(星槎湘南高~17年④)もブルペンを支えた。

 ファームでは村西良太(近大~19年③)が、先発で防御率1点台、育成の入山海斗(東北福祉大~22年育③)は最多の44試合登板して13セーブを挙げており、支配下登録も目の前にきている。

 来季は山本と山崎福の去就が不透明ななか、今年の最上位候補は高校ナンバーワンの前田悠伍(大阪桐蔭高)で、名門校で1年秋からエースを務め、148キロに真っ直ぐに変化球も一級品で制球力も高い。U-18では3試合に先発し、日本を初の世界一に導くなど大舞台にも強く、左投手が不足するなか最も適したチームかもしれない。

 前田に次ぐ上位候補では、上田大河高太一(ともに大商大)の名前が挙がり、上田は最速154キロの真っ直ぐと多彩な変化球で、今秋のリーグ戦でノーヒットノーランも記録している。高は制球力に長けた左腕で、高校2年から投手へ転向し、大学で素質が開花した選手で伸びしろもある。

 高校生の上位候補は、東松快征(享栄高)は最速152キロの真っ直ぐで押すパワーピッチャー。クレバーな投球術の杉原望来(京都国際高)は細身ながらスタミナも十分で、前田と同じ左腕で補強ポイントに合う。

 いずれも甲子園未出場では無名だが、木村優人(霞ケ浦高)坂井陽翔(滝川二高)、191センチの長身右腕の篠崎国忠(修徳高)は他球団も高評価の上位候補で、全員が真っ直ぐが150キロを超える右の本格派。

 下位指名になると思うが天野京介(愛産大工高)奪三振率の高い東海のドクターKで、中山勝暁(高田高)高橋快秀(多度津高)松石信八(藤蔭高)も最速150キロを超え、高いポテンシャルを秘めた将来のエース候補だ。

 大学生では西舘勇飛(中大)草加勝(亜大)は安定感抜群の即戦力先発候補で、冨士隼人(平成国際大)はリリーフの適性が高く、高校時代は公式戦未登板で大学で急成長した社会人ではゲームメークに長けた川船龍星(日本通運が候補に挙がっている。

☆捕手~人数不足で高校生または大学生

 今季は若月健矢(花咲徳栄高~13年③)が最もマスクを被り、森と石川亮(帝京高~13年日⑧)の3人でシーズンを乗り切った。そんななかFA移籍も囁かれていた若月のシーズン中の残留表明は朗報になったが、支配下登録の人数が少なく、しかも森と若月、石川は同学年で、個人差はあるにせよ同時に衰える可能性があり課題は深い。

 ただ、今年もあまり捕手には興味がないようで、堀柊那(報徳学園高)しか候補に挙がっていない。ファームでは福永奨(国学院大~21年③)が103試合でマスクを被っており、若い捕手が多いチームだけに焦る必要はないと言うことだろう。

内野手~高校生(左打ちならベスト)、即戦力二塁手

 内野は一塁に頓宮、三塁は堅守の宗、遊撃に紅林がレギュラーに定着し、欲しかった右打ちの内野手で廣岡大志(智弁学園高~15年ヤ②)をトレードで獲得した。ただ、今季も決まらなかったのが二塁手で、最多は54試合出場の宜保翔(未来沖縄高~18年⑤)で、ゴンザレスと大城滉二(立大~15年③)、西野真弘(JR東日本~14年⑦)が務めたが、いずれも決定力に欠けた。

 また、19歳~22歳に左打者がおらず、年齢構成的には高校生の左打ちがベストになり、高校通算62本塁打真鍋慧(広陵高)と31本塁打佐倉侠史朗(九州国際大高)は将来の中軸候補。横山聖哉(上田西高)は強肩強打の大型遊撃手で走攻守にレベルが高い左の強打者だ。

 さらに高校ではエースで4番の明瀬諒介(鹿児島城西高)は通算49本塁打百崎蒼生(東海大熊本星翔高)は一番打者ながら39本塁打とパンチ力もある。大学生では村田怜音(皇學館大)も候補に挙がり、大柄な体から桁外れの飛距離を放つ長距離砲だ。

☆外野手~将来の中軸候補

 外野のレギュラーは中堅の中川圭だけだったが、杉本裕太郎(JR西日本~15年⑩)は本塁打16本と長打力は健在で、内野手の野口は外野で出番を増やした。前半戦大活躍した茶野、俊足の佐野晧大(大分高~14年③)に渡部遼人(慶大~21年④)とタレントが揃い、ファームでは池田陵真(大阪桐蔭高~21年⑤)が3割を超え、レギュラー候補が揃っている。さらに守備走塁でチームを献身的に支えるベテラン小田裕也(日本生命~14年⑨)の存在も忘れてならない。

 今年は候補も少ないこともあり、補強を急ぐ必要はないが、獲得するなら将来の中軸候補が良く、星野ひので(前橋工高は高校通算16本の右の長距離砲で走塁の技術も高い。平田大樹(瀬田工高)も21本塁打を放ち、機動力と強肩も兼ね備え走攻守三拍子揃っている。

●戦力が充実している今こそ、将来性重視のドラフトが長期スパンで活きてくる

 他球団が常廣羽也斗(青学大や西舘勇飛(中大)の即戦力投手を競合必至で指名予想されるなか、オリックスは高校生を中心にリストアップしている。今年は他球団の動向に反して、高校生中心の指名が予想され、山下のように素質ある高校生をじっくり育成できる余裕が今のオリックスにはある。

 そのなかで1位指名は各球団の間隙を縫って高校生ナンバーワンの前田悠伍(大阪桐蔭高)の指名が濃厚で、将来の中軸候補として真鍋慧(広陵高)や横山聖哉(上田西高)の1位指名も想定できる。 

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~前田悠伍(大阪桐蔭高・投手)   真鍋 慧(広陵高・内野手

 2位~上田大河(大商大・投手)     高 太一(大商大・投手)

 3位~冨士隼人(平成国際大・投手)   草加 勝(亜大・投手)

 4位~百崎蒼生(東海大熊本高・内野手) 天野京介(愛産大工高・投手)

 5位~松石信八(藤陰高・投手)     村田怜音(皇學館大・内野手) 

 6位~星野ひので(前橋工高・外野手)  高橋快秀(多度津高・投手) 

 おススメの選手は、森田駿哉(ホンダ鈴鹿で、高校時代から注目されていた左腕だが、大学から不振に陥り、社会人5年目でようやく結果が出た。27歳のオールドルーキーになるが阿部のようなサプライス指名があるかもしれない。