ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

24年戦力展望☆ロッテ~直近5年で3度の2位!若手の本格覚醒があれば念願の優勝に手が届く

 昨季は新たに吉井理人監督を迎え、日替わり打線など決して十分な戦力でないなか、前半は先発投手陣が抜群の安定感を見せ、6月まで首位争いを演じた。しかし攻撃陣の調子が一向に上がらず、頼みの先発陣も小島を除き次々と離脱すると、後半戦は先発の枚数が不足しブルペンデーを実施するなど苦肉の策でシーズンを乗り越えた。

 そんななか迎えた最終戦は、勝てば2位、負ければ4位の楽天との大一番に勝利し2位でCSへ進出。1stステージ3戦目も延長10回裏に3点差を跳ね返す劇的な勝サヨナラ勝ちででファイナルステージへ進んだが、オリックスの前に力尽きた。

【過去5年のチーム成績】

     順位   勝敗      打率 本塁打 盗塁   得点  防御率 失点 

 23年 2位 70勝68敗  5分 .239  100本  73個  505点  3.40  524点

 22年 5位 69勝73敗  1分 .231    97本   132個  501点  3.39  536点

 21年 2位 67勝57敗19分 .239  126本   107個  584点  3.67  570点

 20年 2位 60勝57敗  3分 .235    90本  87個  461点  3.81  479点

 19年 4位 69勝70敗  4分 .249  158本  75個  642点  3.90  611点

 昨季は数字を見ると得失点数はマイナス、チーム防御率はリーグ5位、特にリリーフの防御率はリーグ最下位に沈んだ。打撃もチーム打率に本塁打数、盗塁数がリーグ4位で、得点圏打率と失策数がリーグ5位と数字だけを見れば、2位はおろか最下位でもおかしくないところだが、「個」ではなく「束」になってかかってくるスタイルと吉井監督のマネジメントが相成り全員野球で2位をキープした。

【過去5年のドラフトの主戦力】

 22年~なし

 21年~なし

 20年~なし

 19年~佐々木朗希(投手~大船渡高①)佐藤都志也(捕手~東洋大②)

 18年~小島和哉(投手~早大③)山口航輝(外野手~明桜高④)

 直近5年で3度の2位は特筆でき、フロックではないと思うが、優勝に届かないのは、ここ数年のドラフトの低迷が要因の一つと言える。      

 これが高校生主体の指名なら我慢も出来る。ただ、18~22年の5年は判を押したように毎年5名ずつの指名のなか、25名中うち大学生が12名、社会人4名と6割が即戦力指名になっているが、主戦と呼べるのは小島しかいない。

 また、ドラフト1位が今一つ伸びきれていない。松川虎生(市和歌山高~21年①)はまだどうこう言う段階ではないが、佐々木朗はシーズンを通して投げたことはなく、藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)も規定打席をクリアしたことがない。鈴木昭汰(法大~20年①)と菊地吏玖(専大~22年①)も即戦力を期待されながら、役割は別にしても一軍定着すらままならないのは誤算だった。

 一方、ドラフトの低迷に反してチームが上位をキープできている要因はトレードの巧さで、18年の岡大海(明大~13年日③)から始まり、20年の澤村拓一(中大~10年巨①)、21年の国吉佑樹秀岳館高~09年横育①)、22年の坂本光士郎(新日鉄住金広畑~18年ヤ⑤)、昨年の西村天裕(NTT東日本~17年日②)と石川慎吾(東大阪大柏原高~11年日③)と毎年チームに欠かせない選手を獲得できている。

 ただ、若手の伸び悩みは、結果としてベテランや外国人頼みになり、佐々木朗や中森俊介(明石商高~20年②)、藤原に山口、安田尚憲(履正社高~17年①)など毎年ブレイク候補を期待され名前の挙がる若手の突き上げがないと優勝には届かない。 

●投手陣~先発は佐々木のシーズン完走、リリーフはポスト益田の出現がカギ

 シーズン序盤は小島に佐々木朗、種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)、西野勇士(新湊高~08年育⑤)、メルセデスが抜群の安定感を誇りチームの好調を支えた。ただ、佐々木朗と種市、西野が離脱し、メルセデスも早いイニングで打ち込まれるシーンが目立つようになると、最後までローテーションを守ったの小島だけだった。

 ベテランの美馬学東京ガス~10年楽②)の初勝利が7月でまで遅れ、石川歩(東京ガス~13年①)も一軍未登板に終わり、後半戦になると先発投手が不足し、ブルペンデーを4度、CSのファイナルステージでも実施するなど層の薄さが露呈した。

 リリーフは益田直也関西国際大~11年④)が36セーブを上げ、新外国人のぺルドモは最多ホールドのタイトルを獲得した。坂本と西村は登板数、東妻勇輔(日体大~18年②)はホールド数でキャリアハイの成績を残し、若手の横山陸人(専大松戸高~19年④)やオリックスから育成加入の澤田圭佑(立大~16年オ⑧)もセーブを上げるなど、先発不足でフル回転したリリーフ陣は数字以上の貢献を見せた。

【23年シーズン結果】※☆は規定投球回数クリア

 ・先発…☆小島和哉(158回1/3)種市篤暉(136回2/3)西野勇士(117回)

     メルセデス(116回1/3)美馬 学(98回1/3)佐々木朗希(91回)     

 ・救援…益田直也(58試合)ペルドモ(53試合)坂本光士郎(51試合)

       西村天裕(44試合)横山陸人(38試合)東妻勇輔(36試合)

       澤村拓一(34試合)

【今年度の予想】

 ・先発…小島和哉 美馬 学 種市篤暉 佐々木朗希 西野勇士 メルセデス

    (二木康太 唐川侑己 東條大樹 ※大谷輝龍 ※ダイクストラ 中森俊介

     森遼大朗 ※フェルナンデス)

 ・中継…澤村拓一 東妻勇輔 坂本光士郎 西村天裕 横山陸人 澤田圭

      (菊地吏玖 廣畑敦也 高野脩汰 小野 郁 岩下大輝 鈴木昭汰 

       中村稔弥 ※コルデロ 国吉佑樹)     

 ・抑え…益田直也 

 今シーズンは小島が2年連続の開幕投手に指名された。小島は昨年、楽天との最終戦やCS1stステージ第3戦目の負けられない試合を勝利に導く投球を見せ、エースと呼べる信頼感を得た。ここに昨年リーグ2位の奪三振の種市、小島とのWエースを期待される佐々木朗に、西野、メルセデスが加わる。特に早期のMLB移籍を希望している佐々木朗は、シーズン完走以外にも、タイトル獲得など圧倒的な成績を残し周囲を納得させたい。

 残り1枠をベテランの美馬、若手では中森、復活を期す二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)が争う形になるが、今季も先発の層は厚くない。東條大樹(JR東日本~15年④)と本前郁也(北翔大~19年育①)がケガで離脱し、森遼大朗(都城商高~17年育②)は肘の手術、石川歩も育成スタートになり、中森以外の若手の覚醒や、新外国人のフェルナンデスにダイクストラなど新戦力の台頭が必要だ。 

 層の薄い先発陣とは裏腹にリリーフ陣は豊富で、益田を中心に澤村や西村、澤田に東妻、若手の横山に左の坂本に加え、MLB通算119試合の新外国人のコルデロ等が勝ちパターンの役割を担える選手は多い。

 さらに岩下大輝(星稜高~14年③)や今季リリーフ起用の菊池、国吉や小野郁(西日本短大付高~14年楽②)が復帰すれば心強い。課題の左のリリーフでは、坂本以外に鈴木や中村稔弥(亜大~18年⑤)、高野脩汰(日本通運~22年④)が控え、先ずはロングリリーフで信頼感を高めたい。

●野手陣~ソトの加入で長打力アップ!内野シャッフルはレギュラー固定になるか

 課題の打線は昨年も苦労し、巨人から移籍の本塁打王のポランコがいなければどうだっただろ思う。中村奨吾(早大~14年①)に安田、山口、ポランコが規定打席に達したが、パ・リーグ規定打席達成の22名中、ポランコの18位が最高で、安田19位、山口21位、中村奨は最下位の22位との寂しい結果になっている。

 一昨年、盗塁王の高部瑛斗(国士館大~19年③)は一軍未出場に終わり、藤原や佐藤都もレギュラーに届かず、途中加入のブロッソーも後半戦の起爆剤にはならなかった。結局は相変わらずのベテラン頼みで、岡や角中勝也(四国IL高知~06年⑦)がチームの勝利に貢献し、左キラーの石川慎、ケガで試合数は少ないものの荻野貴司トヨタ自動車~09年①)が結果を残した。

 ただ収穫もあり、藤岡裕大(トヨタ自動車~07年②)は規定打席未達も出塁率が高く、安田はチャンスに強くサヨナラ打は4度を数え、和田康士朗(BC富山~17年育①)も打撃面で成長を見せた。また、茶谷健太(帝京三高~15年ソ④)や友杉篤輝(天理大~22年②)の成長は、今季の内野シャッフルに繋がった。 

【23年シーズン結果(試合数/打席数)】※☆は規定打席クリア

 捕 手…佐藤都志也(103/278)田村龍弘(78/214)

 内野手…☆中村奨吾(137/508)☆安田尚憲(122/472)藤岡裕大(93/380)

       友杉篤輝(64/209)茶谷健太(79/187)平沢大河(57/170)

       ブロッソー(37/147)池田来翔(40/118)井上晴哉(32/106)      

 外野手…☆ポランコ(125/497)☆山口航輝(115/474)岡 大海(109/372)

     藤原恭大(103/361)角中勝也(86/244)荻野貴司(50/203)

     石川慎吾(44/118)和田康士朗(80/113)             

【昨年の開幕時スタメン】 【昨年の基本オーダー】  

  1)荻野貴司⑨      1)荻野貴司⑨      

  2)中村奨吾④      2)藤岡裕大⑥       

  3)山口航輝⑦         3)中村奨吾④   

  4)井上晴哉③      4)ポランコDH    

  5)ポランコDH     5)山口航輝③    

  6)安田尚憲⑤      6)安田尚憲⑤  

  7)田村龍弘②      7)岡 大海⑦

  8)藤岡裕大④      8)佐藤都志也② 

  9)藤原恭大⑧      9)藤原恭大⑧  

【今シーズンの開幕一軍候補】

 捕 手…松川虎生 田村龍弘 佐藤都志也(柿沼友哉)

 内野手…友杉篤輝 安田尚憲 藤岡裕大 中村奨吾 茶谷健太 ※ソト

    (池田来翔 ※上田希由翔 平沢大河 大下誠一郎 井上晴哉 小川龍成)

 外野手…荻野貴司 角中勝也 ポランコ 石川慎吾 岡 大海 山口航輝 

       和田康士朗 (藤原恭大 高部瑛斗 ※愛斗)

【今シーズン予想~打順】  【今シーズン予想~守備】

  1)岡 大海⑧      捕 手)佐藤都志也(田村龍弘) 

  2)藤岡裕大④      一塁手)安田尚憲(井上晴哉

  3)安田尚憲③      二塁手)藤岡裕大(小川龍成)

  4)山口航輝⑨      三塁手)中村奨吾(上田希由翔)

  5)ポランコ⑦      遊撃手)茶谷健太(友杉篤輝)

  6)ソトDH       左翼手)ポランコ(石川慎吾)

  7)中村奨吾⑤      中堅手)岡 大海(和田康士朗)

  8)佐藤都志也②     右翼手)山口航輝(荻野貴司

  9)茶谷健太⑥      D H)ソト

 今季は2度の本塁打王を獲得したソトが加入し、ポランコとともに長打力が期待ができ、7年目の安田や6年目の山口の和製大砲候補も今年覚醒したい。

 今季の最注目は内野のコンバートで、正二塁手だった中村奨が三塁、藤岡が遊撃から二塁に移り、遊撃は茶谷と友杉が争う。安田は一塁と三塁併用になり、ソトと中村奨の実績十分の相手との競争になる。ルーキーの上田希由翔(明大~23年①)もキャンプで結果を残しており、内野のレギュラー争いはし烈さを増した。

 遊撃候補の茶谷と友杉は、守備力は遜色なく、機動力を使える友杉と打撃の良い茶谷を暫くは相手に合わせた併用になる。心配なのが二塁で、藤岡に続く控え選手がやや心もとなく、守備の良い小川龍成(国学院大~20年③)や昨年打撃で成長を見せた池田来翔(国士館大~21年②)の成長がカギになり、上田も二塁に挑戦している。

 外野の層は厚く、藤原がケガで離脱したが、左翼はベテランの荻野や石川慎、角中が有力だがソトの加入でポランコが守る機会も増えそうだ。中堅は岡に高部、和田とリードオフマンが並び、右翼は山口と現役ドラフトで加入した愛斗(花咲徳栄高~15年西④)が候補になり外野の定位置争いにも注目だ。

 捕手は今季も田村龍弘光星学院高~12年③)と佐藤の併用になるが、3年目の松川も加わり正捕手争いもし烈だ。リード面では田村に一日の長があるが、佐藤と松川はともに打力が魅力の打てる捕手で、自力で正捕手を掴み寄せたい。

 ロッテは昨年142通りのオーダーで臨んだように絶対的なレギュラーはいないが、主力と控えの差が少ない。安田や山口、松川、夏場以降の合流が期待される藤原など、期待の高卒選手の覚醒や、脂の乗り切った藤岡や中村奨、岡、田村の活躍も不可欠で、レギュラーが固定され、代打で角中や石川慎、代走で和田が控えるようになれば怖さを増してくる。

●投打に期待の若手の本格覚醒があれば、50年振りの勝率1位優勝も夢ではない

 支配下は65名で、このまま開幕を迎えると思うが、課題の先発投手や内野手の補強が必要となる。石川歩の復帰が一番だが、土肥星也(大阪ガス~16年④)や古谷拓郎(習志野高~18年⑥)、育成加入の二保旭(九州国際大高~08年ソ育②)や吉田凌(東海大相模高~15年オ⑤)も支配下復活に期待がかかる。

 若手では田中楓基(旭川実高~21年育①)は佐々木朗も認めるポテンシャルの高い投手で、野手は昨年ファームで最多出場の勝又琉偉(富士宮東高~22年育①)はシュアな打撃で支配下を狙いたい。

 この間、選手の層が決して厚くはないが、総合力で上位をキープしてきた。ただ、優勝を狙うには、個の力のプラスアルファが必要で、投手なら小島と佐々木朗、種市の三本柱、野手なら安田や山口、藤岡がタイトル争いをするような成績を残せれば74年以来、半世紀近く遠ざかっている優勝に手が届く。