19年から4年連続Aクラス入りを果たしたものの優勝には届かず、遂に05年優勝の際の岡田彰布監督の再登板が決まり、18年振りの優勝を目指してのシーズン。
昨年の開幕9連敗の悪夢から、今季は開幕4連勝で首位スタートをきり、盤石な投手陣で大きな連敗は5連敗一度だけだった。圧巻は5月で、9連勝を含む19勝5敗で抜け出し、5月13日に首位に立つと、以降は一度も譲ることなく独走。8月に10連勝、9月も11連勝と終盤も圧倒し、2位に12ゲーム差をつけ「ARE(優勝)」を達成した。CSでも3連勝で盤石な戦い方で日本シリーズに駒を進めた。
【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】
勝敗 143試合 85勝53敗5分①
防御率…2.66①(2.67①)打率….247③(.243⑤)
本塁打…84⑤(84⑤)盗塁79①(110①)
得点…555①(489⑤)失点…424①(428①)
●盤石な投手陣と出塁率の高い打線で、投打が噛み合い18年振りのリーグ制覇
防御率や失点数で12球団ナンバーワンの投手陣は、今季は新戦力が丸々上積みになった。3年目の村上は昨季まで一軍通算2試合だったが、防御率1点台で最優秀防御率を獲得し10勝を上げた。
現役ドラフトでソフトバンクから加入した大竹耕太郎(早大~17年ソ育④)も、昨年わずか2試合登板の選手が、12勝(2敗)でチームの勝ち頭になった。ソフトバンクではストレートの速さを求められ出番がなかったが、緩急を使った技巧派の投球が阪神では認められ、現役ドラフトの成功例にもなった。
村上と大竹の新戦力で貯金14、伊藤も規定投球回数をクリアして10勝(5敗)、西勇輝(菰野高~08年オ③)と才木浩人(須磨翔風高~16年③)がともに8勝(5敗)を上げ、エースの青柳晃洋(帝京大~15年⑤)は今季は苦しみならも8勝(6敗)を上げ、先発ローテーション投手すべて貯金できた。
リリーフでは、WBC選出の湯浅京己(BC富山~18年⑥)が離脱するなか、岩崎優(国士館大~13年⑥)が、防御率1点台で35セーブを挙げ、初の個人タイトルを獲得。経験のある岩貞祐太(横浜商大~13年①)と加治屋蓮(JR九州~13年ソ①)がセットアッパーを務めた。
また、島本浩也(福知山成美高~10年育②)もケガから完全復帰し、2年目の桐敷拓馬(新潟医療福祉大~21年③)と3年目の石井大智(四国IL高知~20年⑧)が2桁のホールド数を上げ湯浅の穴を埋め、改めて層の厚さを見せつけた。
野手陣は守備に不安のあった中野を二塁にコンバートがハマり、中野は最多安打のタイトルを獲得。大山悠輔(白鷗大~16年①)はチームトップの打率で、近本に佐藤輝、中野の代わりに遊撃に入った木浪、新外国人のノイジーの6名の規定打席クリアはリーグ最多で、一年間レギュラーを固定できた。
チーム打率も本塁打も飛び抜けた数字ではないが、出塁率が12球団ナンバーワンで、四球は一番多い。粘り強く出塁し、犠打や盗塁を織り交ぜ1点を獲りに行く野球で得点数はリーグナンバーワンで、併殺打は最も少なく、犠飛は最も多い。各選手がいま何をすべきかを理解し、実践できる意識と技術の高さを感じる。一方、課題の失策数は、今季もリーグワーストで改善が急務だ。
●今季で5年連続のAクラス!その成果はドラフトの成功と言っても過言ではない
この間のドラフトが結果に結びつき、過去5年でFAで獲得したのは西勇だけで、あとはすべてドラフト指名した選手だ。1位の近本や佐藤輝、森下が活躍し、岩崎や青柳に中野、湯浅、石井など下位で指名した選手も主力に成長している。今オフもFA市場に参加しないでチームを強化する方針もこの結果を見れば頷ける。
投手の最年長が34歳の西勇、野手は31歳の原口文仁(帝京高~09年⑥)と若いチームで、今季の優勝でさらに一段レベルアップしたチームになろうとしている。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
18年⑥…近本光司(大阪ガス/①・外野手)木浪聖也(ホンダ/③・内野手)
19年③…なし
20年③…佐藤輝明(近大/①・内野手)伊藤将司(JR東日本/②・投手)
村上頌樹(東洋大/⑤・投手)中野拓夢(三菱自動車岡崎/⑥・内野手)
21年②…なし
22年③…森下翔太(中大/①・外野手)
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【阪神の補強ポイント】
投 手…即戦力クローザー、将来のエース候補
捕 手…大学生または社会人
内野手…大学生の右打ち
外野手…大学生・社会人の左打ちスラッガー
今季の主力を見渡して、高校生の輩出が少ないのが気がかりだったが、ファームには有望株が揃っている。内野の遠藤成(東海大相模高~19年④)に高寺望夢(上田西高~20年⑦)、外野は井上広大(履正社高~19年②)に前川右京(智弁学園高~21年④)、井坪陽生(関東一高~22年③)が好成績をあげている。
投手では才木が主戦に成長し、及川雅貴(横浜高~19年③)も復帰。来季5年目の西純矢(創志学園高~19年①)も着実に成長曲線を描き、ルーキーの門別啓人(東海大札幌高~22年②)は今季一軍デビューを果たしている。
年齢バランスは悪くなく、多少の左右のバランスの悪さはあるが極端に偏ってはいない。脂の乗り切った20歳後半~30歳に主力選手が集中し、ファームでは若手が着実に成長しており、本当に欲しい選手からドラフト指名することができる。短期的な結果に左右されず、育成主体にチームを強くするプロセスが出来つつある。
☆投手~即戦力クローザー、将来のエース候補
先発は青柳と西勇、伊藤と大竹、若手の才木と村上と先発の層は厚く、西純や秋山拓巳(西条高~09年④)も控える。湯浅が復帰すれば、元は先発の桐敷も控え、富田蓮(三菱自動車岡崎~22年⑥)もファームで防御率1点台の好成績を収めている。今季の村上のように若い投手のブレイクが続けばスキのない先発陣になる。
リリーフは岩崎と岩貞、加治屋がともに来季34歳を迎え、世代交代に向けた準備が必要だ。石井や及川、浜地真澄(福岡大大濠高~16年④)が30試合以上の登板で経験を積み、湯浅が戻れば万全と言えるが、投手は幾らいても良く、さらなる投手王国確立を目指したい。
1位候補では、常廣羽也斗(青学大)に西舘勇飛(中大)、細野晴希(東洋大)と古謝樹(桐蔭横浜大)の両左腕が挙がる。常廣は超がつく即戦力投手で、先発・リリーフともに適性が高く、安定感抜群の西舘と古謝は先発候補。細野は制球力が課題だが、投手王国の阪神ならさらに大化けするかもしれない、
下村海翔(青学大)や武内夏暉(国学院大)も上位候補だが、さすがに2位以下で残っている選手ではなく、上田大河(大商大)や岩井俊介(名城大)を狙いたい。上田は力のある真っ直ぐと多彩な変化球の本格派で、岩井は回転の効いた真っ直ぐで勝負する投球でリリーフもいける。
このほか、安定感抜群の西舘昂汰(専大)に草加勝(亜大)、制球力に長けた左腕の高太一(大商大)は即戦力。将来性なら高校まで軟式の真野凛風(同大)、奪三振率の高い谷脇弘起(立命大)、工藤泰成(東京国際大)は真っ直ぐが150キロを超える。
社会人ではゲームメーク能力に長けた川船龍星(日本通運)や高島泰都(王子)は先発候補、古屋敷匠真(セガサミー)はリリーフもこなし、稲葉虎大(シティライト岡山)は奪三振率の高いリリーバー。
高校生では、前田悠伍(大阪桐蔭高)は、豊富な大学生を押しのけてでも1位指名のある逸材で、坂井陽翔(滝川二高)や東松快征(享栄高)も前田と並ぶ1位候補だ。投手陣が充実しているなか、有望な高校生を順位を繰り上げて指名するのもアリで、木村優人(霞ケ浦高)や日當直喜(東海大菅生高)、左腕の杉原望来(京都国際高)や杉山遥希(横浜高)、伸びしろ十分の篠崎国忠(修徳高)や早坂響(幕張中央高)もなど、3~4年待てる余裕がいまの阪神にはある。
☆捕手~大学生または社会人
今シーズンも、梅野隆太郎(福岡大~13年④)と坂本誠志郎(明大~15年②)が中心で、梅野がケガで離脱後も戦力ダウンにはならなかったが、梅野が離脱後も坂本しかしない状況には危機感を感じる。
岡田監督は高校生捕手を切望しているようで、堀柊那(報徳学園高)や藤田柊太郎(福岡大大濠高)、打撃の良い寺地隆成(明徳義塾高)が候補に挙がる。ただ、個人的には中川勇斗(京都国際高~21年⑦)に藤田健斗(中京学院大中京高~19年⑤)も育ってきており、大学生か社会人で第2~第3候補を獲得して良いと思う。
捕手全般の技術力の高い進藤勇也(上武大)にリードの定評のある有馬諒(関大)、打力も兼ね備える萩原義輝(流通経大)や久保田拓真(パナソニック)など、投手力強化のためには捕手の育成も大事と多くの選手をリストアップしている。
☆内野手~大学生の右打ち
今シーズンはレギュラーが固定され、一塁に大山、二塁は中野、三塁の佐藤輝、遊撃の木浪が規定打席をクリアし、中野は今季フル出場を果たした。控えでは遊撃の小幡竜平(延岡学園高~18年②)の34試合が最多で、熊谷敬宥(立大~17年③)と糸原健斗(JX-ENEOS~16年⑤)、トレードで加入の渡邊諒(東海大甲府高~13年日①)のまさに少数精鋭で乗り切った。
ケガさえなければ補強を急ぐ必要はなく、若手も育ってきており、ドラフトでは育成できるゆとりがある。ただ、年齢構成で20歳~26歳の右打ちが不在で、大学生または社会人で埋めたい。
大学生では廣瀬隆太(慶大)と上田希由翔(明大)が候補に挙がるが、一・三塁が本職で無理に上位枠を使う必要もない。下位で狙うのならパワーに定評のある村田怜音(皇學館大)や遊撃守備の定評のある辻本倫太郎(仙台大)は補強ポイントに合う。
一方、戦力が充実しているうちに、高校生スラッガーの上位指名もアリで、注目の真鍋慧(広陵高)や佐倉侠史朗(九州国際大高)が候補に挙がるなか、早くから明瀬諒介(鹿児島城西高)を高評価している。高校通算49本のスラッガーで、高校ではエースだったが、プロ入りに向けて野手に絞り、複数ポジションに挑戦している。
☆外野手~大学生・社会人の左打ちスラッガー
外野は今季入団5年目までのヒット記録を更新した近本がおり、左翼はノイジー、右翼はルーキー森下が規定打席未達も94試合出場で、本塁打も10本に乗せた。控えでは島田海吏(上武大~17年④)と小野寺暖(大商大~19年育①)いるが、俊足巧打タイプの選手が多く、欲を言えば左打ちのスラッガーを獲得したい。
度会隆輝(ENEOS)は高いミート力で広角に打ち分け、打線が課題のチームには大きな補強になり、投手と二刀流の田中大聖(太成学院大)も左打ちでパンチ力もある。また、右打ちの桃谷惟吹(立命大)も広角に打ち分ける巧打者で候補に挙がる。
●豊富な大学生投手を獲得し、バッテリー強化でさらなる投手王国を目指す
投高打低のチームのなか、どうしても野手に目が行くが、今年豊富な大学生を獲得し投手王国を万全にしたい。既に広島が1位指名公表の常廣羽也斗(青学大)は、先発・リリーフに適性がり、一年目からクローザーを任せることも夢ではない。
常廣を外した場合、即戦力左腕の古謝樹(桐蔭横浜大)は腕の出どころの見えないフォームからキレのある変化球を即戦力で、以前から阪神の評価は高く、岡田監督はバッテリー強化が今ドラフトの狙いの一つで、高校生なら堀柊那(報徳学園高)、大学生なら進藤勇也(上武大)の上位指名も予想される。
【指名シミュレーション】
(Aパターン) (Bパターン)
1位~常廣羽也斗(青学大・投手) 古謝 樹(桐蔭横浜大・投手)
2位~堀 柊那(報徳学園高・捕手) 上田大河(大商大・投手)
3位~杉山遥希(横浜高・投手) 明瀬諒介(鹿児島城西高・内野手)
4位~村田怜音(皇學館大・内野手) 真野凛風(同大・投手)
5位~稲葉虎大(シティライト岡山・投手)藤田柊太郎(福岡大大濠高・捕手)
6位~工藤泰成(東京国際大・投手) 高島泰都(王子・投手)
おススメの選手は、村田怜音(皇學館大)で、身長196センチ、体重110キロの大柄な体から放つ長打力が魅力のロマン砲で、三重学生リーグからは則本昂大(楽天)以来、11年振りのプロ入りでここにもロマンがある。