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どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年ドラフト予想☆西武~課題は投手力強化だが、三塁と外野の補強も急務

●今年もチーム防御率に改善の兆しなし…自慢の打線も湿りがち

 パ・リーグ2連覇中だが、現在は首位から7ゲーム差を開けられ、3連覇に黄色信号が灯っている。

 2年連続でチーム防御率は最下位だったが、山賊打線と呼ばれる超がつく強力打線で勝ち抜いてきた。一昨年は浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年③)が打点王山川穂高(富士大~13年②)が本塁打王秋山翔吾(八戸大~10年③)が最多安打のタイトルを獲得。中村剛也大阪桐蔭高~01年②)に外崎修汰(富士大~14年③)、森友哉大阪桐蔭~13年①)も二桁本塁打を放つと、金子侑司(立命大~12年③)と外崎が走りまくり、強打と機動力が見事にフィットした。

 昨年は森が首位打者、山川が本塁打王、中村が打点王、秋山が最多安打、金子が盗塁王に輝き、外崎と源田壮亮トヨタ自動車~16年③)の鉄壁の二遊間が攻守で活躍。栗山巧(育英高~01年④)と木村文和(埼玉栄高~06年高①)も合わせ、主力メンバー9名が欠けることなくシーズンを乗り切った。

 投手陣も悪いながら、一昨年はエース菊池雄星花巻東高~09年①)がリーグ2位の防御率、多和田真三郎(富士大~15年①)が最多勝を獲得。昨年は新加入のニールが11連勝を果たし、後半の追い上げに大きく貢献した。リリーフでは、平井克典(ホンダ鈴鹿~16年⑤)が81試合登板の大車輪の活躍を見せ、クローザーの増田達至(NTT西日本~12年①)もリーグ3位の30セーブを挙げた。

 ただ、一昨年は浅村が楽天、菊池がマリナーズ。今シーズンは秋山がレッズへと、ともにFAで移籍し、もはやオフで常態化している主力選手の離脱に歯止めをかけることができなかった。

【9/27現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 84試合 40勝42敗2分④

 防御率…4.44⑥(4.35⑥)打率….244④(.265①)

 本塁打…83③(174②)盗塁56④(134①)

 得点361⑤(756①)失点387⑥(695⑥)得失点差▲31(+61)

 

 まずは課題の投手陣だが、チーム防御率は今年もリーグ最下位で、現状は昨年よりも悪い。先発陣はニールがリーグ最多の15試合に登板するも、3勝で防御率も5点台と成績を大きく落としている。2年目の松本航(日体大~18年①)と高橋光成前橋育英高~14年①)がローテションを守っているが、軸になる投手が不在だ。

 特に予想外だったのが、昨年7勝を挙げた今井達也(作新学院高~16年①)の不振で、シーズン前の好調さを見ると、今年はエースの働きをすると思われていた投手が、中継ぎに回り、まさかファームに落ちるとは思わなかった。

 一方でリリーフ陣は整備され強固になった。クローザーの増田はリーグ2位の22セーブで、防御率1点台を抜群の安定感を誇り、昨年は平井と増田頼みだったが、ストレートに力のある平良海馬(八重山商工高~17年④)と新加入のギャレットがセットアッパーを務める勝ちパターンが形成された。

 中継ぎでも2年目の森脇亮介(セガサミー~18年⑥)が防御率1点台の安定感を見せ、左キラーの小川龍也(千葉英和高~09年中②)、ルーキーの宮川哲(東芝~19年①)も35試合に登板し8ホールドとリリーフに適正を見せている。

 打線はどうかというと、この2年間打ちまくった打線も影を潜め、チーム打率と本塁打数はリーグ3位、打力と並行するように機動力も落ちリーグ4位と、目に見えて得点力が落ちている。投手の誤算が今井なら野手は森で、昨年の首位打者が打率.250でスタメンをしばしば外れるなど、攻守のキーマンの不振はチームの成績に顕れている。

 新加入のスパンジェンバーグとベテランの栗山、キャプテンの源田が頑張っているが、森と山川、外崎の打線の軸になる主力中の主力が軒並み成績を落としている。シーズン前の課題だった秋山の穴は想像以上に大きく、打線全体のバランスが崩れてしまった。また、レギュラーとの差がある控え野手も、主力の離脱や不振をチャンスに変える選手が現れず、課題がそのまま結果に繋がってしまった。

【西武の補強ポイント】

 投 手…即戦力の先発投手で左腕ならベスト

 捕 手…不要だが、控えの層を厚くしたい

 内野手…年齢バランスで大学生野手(左打ちならベスト)

 外野手…即戦力大学生と将来の主軸候補 

 

●基本は投手だが、野手ではパワーヒッターが欲しい

☆投手~即戦力の先発投手で左腕ならベスト

 この間のドラフト1位選手が着実に成長し、24歳の高橋と25歳の松本、今年は不振だが22歳の今井もおり、この3人のエース争いが先発陣の底上げに繋がる。さらにルーキー左腕の浜屋将太(三菱日立PS~19年②)にサブマリンの與座海人(岐阜経大~17年⑤)、ベテランの雰囲気漂う本田圭佑東北学院大~15年⑥)もまだ27歳と楽しみな若手が揃ってきた。ここに病気療養中の18年最多勝の多和田が戻ってくれば、先発投手陣の駒は揃いつつある。

 リリーフ陣はFAを取得した増田の去就が気になるところだが、ルーキーの宮川と平良のクローザー候補に名乗りを上げ、鉄腕の平井に森脇、左腕の小川と実績のある選手が揃っている。ファームでも野田昇吾(西濃運輸~15年③)や十亀剣JR東日本~11年①)が控えているが、やはり即戦力の先発投手が必要だ。

 年齢バランスはさすがで穴はなく、補強ポイントを明確にして獲得できるのは強みだと思う。また、今年は地元・埼玉に有望な高校生投手が揃っており、将来に向けて獲得したいところだ。

 1位候補の一番手は、早川隆久(早大で即戦力の先発に加え、西武に不足している先発左腕で是が非にも欲しい投手だ。伊藤大海(苫小牧駒大)はクローザーへの適性もあるが先発でも十分に行ける。また、大道温貴(八戸学院大はゲームメーク能力に長けた完成度の高さで、いずれも先発ローテーションに食い込む力はある。

 将来のエース候補ではプロ志望を表明した高橋宏斗(中京大中京高)を最上位候補に位置付け、中森俊介(明石商高山下舜平大(福岡大大濠高)小林樹斗(智弁和歌山高)を上位でリストアップしており、敢えて競合を避けて1位単独指名もあるかもしれない。また、大型左腕の松本隆之介(横浜高)も高く評価しており、上位指名が濃厚だ。

 このほか即戦力では、ともに本格派の森博人(日体大宇田川優希(仙台大)、左腕の佐藤宏樹(慶大)は上位候補、中位では打田雷樹(大院大)や左腕の山野太一(東北福祉大は先発、リリーフともに適性があり、リリーフ候補で小郷賢人(東海大もリストアップしている。また、右肩の故障の回復状況にもよるが吉高壮(日体大も候補の一人だ。社会人では、先発候補で森田駿哉(ホンダ鈴鹿、リリーフで岡田和馬(JR西日本の両左腕をリストアップしている。

 高校生投手では、小辻鷹仁(瀬田工高)嘉手納浩太(日本航空石川高)木下幹也(横浜高)、左腕では高田琢登(静岡商高)福島章太(倉敷工高)の評価が高い。有望選手が揃う地元では、ストレートに力のある内田了介(埼玉栄高)、小柄だが本格派右腕の豆田泰志(浦和実高)、右サイドハンドからキレのある投球が持ち味の美又王寿(浦和学院高)が指名を待っている。

 

☆捕手~現状不要だが、控えの層を厚くしたい

 捕手はレギュラーの森に、打撃も良いルーキーの柘植世那(ホンダ鈴鹿~19年⑤)とベテランの岡田雅利(大阪ガス~13年⑥)もまだ31歳で補強の必要はない。ただ、人数が6名と少なく、ある解説者がコメントしていたが、森の打撃を活かすため外野コンバートなどがあるなら話は別で、3~4番手を任せられる捕手が欲しい。

 ただ、今年はあまり捕手に興味はないらしくリストアップしている選手が少ない。打てる捕手の古川裕大(上武大)や、走力もある辻本勇樹(NTT西日本)などが候補になり、森のコンバートも現実味を帯びる補強になるかるもしれない。

 

内野手~年齢バランスで大学生野手(左打ちならベスト)

 内野のレギュラーは、一塁の山川が29歳、二塁の外崎が28歳、遊撃の源田が27歳と暫くは問題ない。急務なのは37歳のポスト中村の三塁手で、現状は山田遥楓(佐賀工高~14年⑤)と佐藤龍世(富士大~18年⑦)が候補になる。

 控えでは山野辺翔(三菱自動車岡崎~18年③)や呉念庭第一工大~15年⑦)がいるが、レギュラーとの差は厚く、ここはレギュラーとの差を埋める即戦力が必要で、源田と呉以外は右打者が多く、左打者が欲しい。

 年齢バランスで穴はないが、内野の層を厚くするなら牧秀悟(中大)で、二塁と遊撃を守れる大学日本代表の主力選手。牧が二塁のレギュラーのはまれば、内外野守れる外崎を三塁や外野で使えるようになる。他に元山飛優(東北福祉大矢野雅哉(亜大)は守備の巧い左打ち、社会人ではパンチ力のある峯本匠(JFE東日本)や俊足巧打の中野拓夢(三菱自動車岡崎)などの即戦力野手がいる。

 外崎や源田は年齢的もあと5年は安泰で、その間に高校生野手をじっくり育成することもできる。ここも地元で井上朋也(花咲徳栄高)はポスト中村の強打の三塁手蔵田亮太郎(聖望学園高)は左の長距離砲だ。また、広角に打てる度会隆輝(横浜高)も高く評価している。

 

☆外野手~将来のクリーンアップ候補 

 西武の場合、秋山も抜けたことで内野手より外野手のほうが深刻だ。栗山が37歳、木村も32歳、金子も30歳と世代交代が着実に近づいている。チャンスは十分にあるが、俊足巧打の鈴木将兵(静岡高~16年④)、長打が魅力の川越誠司(北海学園大~16年②)や戸川大輔(北海高~14年育①)、高木渉(真颯館高~17年育①)も、現状では「帯に短したすきに長し」で、鈴木以外はレギュラー獲得の足掛かりも掴めていない。

 即戦力なら大学生なら佐藤輝明(近大)、社会人では今川優馬(JFE東日本)がナンバーワンで、ともに俊足と長打力があり、佐藤や今川が加わった西武打線はさらに破壊力を増す。また将来の主軸で来田涼斗(明石商高はポスト秋山どころか将来はトリプルスリーを狙え、元謙太(中京高)は右の長距離砲で将来の4番候補になる。五十幡亮汰(中大)は打撃は発展途上だが、超俊足のリードオフマン候補、逢澤崚介(トヨタ自動車は一番・中堅を担っており、補強ポイントと合致する。

 

●狙いは即戦力投手も得意の高校生右腕の単独指名もあるか?

 1位指名は早川隆久(早大で良いと思うが、あえて攻撃力重視で三塁・外野の穴を埋めることができる佐藤輝明(近大)のどちらかになりそうだ。ともに競合してでも獲りに行かなくてはならない選手だ。

 早川・佐藤を外した場合は、大道温貴(八戸学院大森博人(日体大が次の候補になり、今井や高橋のように競合を避け単独指名に行くなら中森俊介(明石商高小林樹斗(智弁和歌山高)、将来性豊かな来田涼斗(明石商高の指名もある。

 

 1位~高橋宏斗(中京大中京高・投手)…ストレートの威力だけなら、松坂以上と言われる剛腕。序盤から140キロ後半を投げ込み、投球数が増えた終盤でも150キロを投げるポテンシャルは超高校級。変化球も多彩で、完成度が高いエース候補。

 2位~森 博人(日体大・投手)…サイド気味のスリークオーターから最速155キロのストレートが武器。3年時は主にリリーフだったが、今シーズンは先発も務め、どの役割でもこなせる即戦力。状況次第では1位指名もある即戦力右腕。

 3位~度会隆輝(横浜高・内野手…名門・横浜高で1年春からベンチ入りした素質で、主に3、4番を務めた。広角に打てる打撃技術は秀逸で、将来の中軸候補。

 4位~佐藤宏樹(慶大・投手)…左肘の故障で苦戦したが、1年に最優秀防御率を獲得し実績は十分。左打者の外角に決まるキレのあるスライダーはまさに伝家の宝刀。

 5位~内田了介(埼玉栄高・投手)…最速146キロのストレートとフォークが武器で、奪三振の高いパワーピッチャー。チームでは4番・投手を務め素質は抜群。

 6位~山野太一(東北福祉大・投手)…最速149キロで腕の振り方がしなやかなサウスポーで、ピンチでも動じない技術を兼ね備えており、リリーフでの適性が期待できる。

 7位~吉高 壮(日体大・投手…この間、投手育成に定評のある日体大で森と並ぶ主戦力で、故障が癒え力強いストレートが戻れば大化けする可能性を秘めている。

 このほかに下位または育成候補でも投手が中心で、高校生であれば左腕の福島章太(倉敷工高)や中学時代から注目されていた木下幹也(横浜高)、大学生では竹本祐瑛(慶大)をリストアップしている。

 社会人では左腕の森田駿哉(ホンダ鈴鹿に昨年ドラフト上位候補だった和歌山東高の落合秀市(関西兵庫)を候補に挙げているのも興味深い。