●打率、本塁打、得点…リーグ最下位の成績で課題はレギュラーの確立
現在、借金23で首位から19ゲーム差をつけられ、ペナントレースから早々と離脱したオリックス。もはやお家芸になりつつある、シーズン途中での監督交代も起爆剤にはならなかった。確かに開幕前からAクラス予想は多くなかったが、一部の解説者からは優勝争いに加わる予想もあっただけに、ここまで悪くなることは誰も予想していなかっただろう。
山岡泰輔(東京ガス~16年①)と山本由伸(都城高~16年④)の、リーグを代表するWエースに、ケガも癒えた田嶋大樹(JR東日本~17年①)を加えた強固な先発陣に、攻撃陣は吉田正尚(青学大~15年①)を中心に、現役バリバリのメジャーリーガーのジョーンズが加入し、攻守に期待を持てる布陣で臨んだ。
しかしながら、山岡がシーズン緒戦で故障で離脱し、山本と田嶋も防御率は悪くないが、山本は12試合で4勝、田嶋はわずかに1勝と、計算できる投手で勝ちきれない試合が多い。吉田正は首位打者独走中で、一人気を吐いているが、ジョーンズは守備に難があるうえ、打率.251、本塁打10本は期待値からすると物足りない。
ただ、最大の要因は苦手チームを2つも作ったことで、首位ソフトバンクには3勝14敗1分で借金11、2位のロッテには6連戦6連敗の屈辱的なスタートから、2勝15敗1分の借金13と、この2チームの負け越しが、そのままチームの借金になっている。
【9/14現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
勝敗 74試合 23勝46敗5分⑥
防御率…4.29④(4.78⑥)打率….239⑥(.244⑥)
本塁打…46⑥(102⑤)盗塁54②(122②)
得点263⑥(544⑥)失点335⑤(637⑥)得失点差▲72(▲58)
投手陣は悪くなく、チーム防御率はリーグ4位。先発陣は山本が防御率1位、田嶋は9/9の西武戦で大炎上する前はが3位をキープしており、アルバースと山崎福也(明大~14年①)がローテーションを守っているが、勝ち星は4人合わせて10勝と結果に結びついていない。
中継ぎ陣も同様で、山田修義(敦賀気比高~09年③)がチーム最多の30試合に登板も10ホールド、新外国人のヒギンスから、ディクソンへ繋げる勝ちパターンの形はできたが、ヒギンスは11ホールド、ディクソンも9セーブと、勝ち試合に投入できていないため、数字での結果が出ていない。
課題はやはり攻撃陣で、チーム打率、本塁打、得点がすべてリーグ最下位に低迷し、吉田正の孤軍奮闘状態で、規定打席に達しているのはほかにジョーンズとT-岡田(履正社高~05年高①)の3人だけ…。これはソフトバンクと並んでリーグ最少だ。しかしこれが今に始まったことではなく、18年は吉田正とロメロ(現楽天)、安達了一(東芝~11年①)の3人、昨年は吉田正と福田周平(NTT東日本~17年③)しかおらず、ここ3年でレギュラーと呼べるのが吉田正しかいない。
オリックスを見て思うのは、「個」の力は悪くないのに、それが「チーム力」に反映していないように感じる。不足している戦力はある意味明確だが、それ以上に抱えている課題が大きいような感じがする。そうでなければ優勝から遠ざかること23年、ここ10年でAクラスわずかに1回に低迷するような戦力ではない。
【オリックスの補強ポイント】
投 手…即戦力の先発左腕とクローザー
捕 手…将来のレギュラー候補の高校生と即戦力大学生
外野手…将来のクリーンアップ候補
●上位指名は即戦力野手で、投手陣がリリーフ陣に厚みを持たせたい
☆投手~即戦力の先発左腕とクローザー
先発は揃っている。3本柱の山岡が25歳、田嶋が24歳、山本は22歳と計算できる投手がこれから全盛期を迎える。さらに榊原翼(浦和学院高~16年育②)も22歳、今年初勝利を上げた鈴木優(雪谷高~14年⑨)が23歳、ブレイク間近の張奕(日本経済大~16年育①)も26歳と若手に主戦力と逸材が揃っている。
ただ、左の先発が田嶋と山崎福しかおらず、先発に限らずトレードで飯田優也(東農大オホーツク~12年ソ育③)を獲得するなど、先発・リリーフ問わず左腕不足を解消したい。
充実の先発陣に比べ、リリーフ陣は総じて年齢が高い。ディクソンと増井浩俊(東芝~09年日⑤)が36歳で、比嘉幹貴(日立製作所~09年②)の38歳を筆頭に、海田智行(日本生命~11年④)が33歳、山田も翌年30歳を迎える。
若手では、昨年のファームのセーブ王の漆原大晟(新潟医療福祉大~18年育①)が24歳、現在ファームでクローザーを務めている26歳のK-鈴木(日立製作所~17年②)がいるが、リリーフ陣の世代交代を進めるためにもクローザー候補を抑えておきたい。
投手陣は充実しており、戦力的に逼迫しておらず、今年のドラフトでは、野手指名が優先課題だと思う。左腕の即戦力、クローザー候補を中位でピンポイントで抑え、下位で高校生投手を抑えておきたい。
先発左腕では、早川隆久(早大)がナンバーワンだが、確実に1位入札で消える選手で獲得は難しい。3位以降の中位で獲得できそうな即戦力左腕では、佐藤宏樹(慶大)と鈴木昭汰(法大)、藤井聖(JX-ENEOS)は先発以外にもリリーフにも適性がある。先発候補では佐々木健(NTT東日本)がおり、ツボに入ると圧巻の投球を見せる投手で、大化けの可能性にかけてみたい選手だ。
左腕にこだわらなければ、大道温貴(八戸学院大)や村上頌樹(東洋大)、森井紘斗(セガサミー)、石井聖太(JR東日本)の即戦力先発候補をリストアップしている。クローザー候補では、伊藤大海(苫小牧駒大)や伊藤優輔(三菱日立PS)、平川裕太(鷺宮製作所)はリリーフのスペシャリストだ。
高校生投手では、中森俊介(明石商高)や小林樹斗(智弁和歌山高)を上位でリストアップしており、下位では蓼原慎仁(桐生一高)や小芝永久(千葉学芸高)、加藤翼(帝京大可児高)、有馬太玖登(都城東高)、笠島尚樹(敦賀気比高)、左腕で阿部剣友(札幌大谷高)を高く評価しており、育成指名を含めての獲得が予想される。
☆捕手~将来のレギュラー候補の高校生と即戦力大学生
捕手は深刻で、人数も年齢構成も良くない。人数はリーグ最少の6名で、正捕手は25歳の若月健矢(花咲徳栄高~13年③)だが、2番手の松井雅人(上武大~09年中⑦)は33歳で、30歳の伏見寅威(東海大~12年③)と24歳の頓宮裕真(亜大~18年②)がいるが、伏見と頓宮はともに打力を優先したい選手。頓宮を捕手で活用するなら別だが、当初の指名のように内野手で起用するなら、高校生と大学生ともに必要になる。
高校生なら内山壮真(星稜高)と二俣翔一(磐田東高)のどちらかは確実に獲得したい。特に内山は打てる捕手で、若月を脅かす正捕手候補になる。即戦力ではやはり古川裕大(上武大)と榮枝裕貴(立命館大)が候補になり、榮枝以外は上位で消える可能性が高い。リストアップしている内山と二保を上位、下位で榮枝が獲得できればベストで、他に山下航汰(京都外大西高)や土井翔太(郡山高)も候補に挙がっている。
現状、内野のレギュラーは不在で、二塁手の福田と遊撃も守れる大城滉二(立大~15年③)、遊撃手の安達が主戦力だ。全体、底上げが必要だが、一塁は外国人選手で賄うことができるので、長年レギュラー不在の三塁手が補強ポイントになる。
一番の候補は今年のナンバーワン野手の佐藤輝明(近大)で、佐藤は三塁と外野を守れ、まだ発展途上ではあるが、吉田正とともにチームの顔になれる選手だ。年齢構成のバランスは悪くなく、内野手は即戦力にこだわったほうが良い。佐藤のほかには、牧秀悟(中大)は単独指名の可能性も秘めた大型内野手、俊足で守備に定評のある矢野雅哉(亜大)が候補になる。
若手野手には楽しみな選手が多く、大田椋(天理高~18年①)や宜保翔(未来沖縄高~18年⑤)、廣澤伸哉(大分商高~17年⑦)が一軍で結果を出し、紅林弘太郎(駿河総合高~19年②)などレギュラー候補がうようよしている。
そのなかで小深田大地(履正社高)や細川凌平(智弁和歌山高)、蔵田亮太郎(聖望学園高)の巧打者、将来の長距離砲の長打力のある井上朋也(花咲徳栄高)と西野力矢(大阪桐蔭高)を評価しており、し烈なレギュラー争いに拍車をかける高校生野手指名も面白い。
☆外野手~将来のクリーンアップ候補
外野手には吉田正がおり、同じ24歳に走攻守優れた宗佑磨(横浜隼人高~14年②)、超韋駄天の佐野皓太(大分高~14年③)、左キラーの西村凌(スバル~17年⑤)、4番も務める中川圭太(東洋大~18年⑦)は外野も守れ、近いうちに外野陣のレギュラーも固まってくるはずだ。
特に補強に急ぐ必要はなく、俊足で長打力もある来田涼斗(明石商高)、高校通算53本塁打の西川僚祐(東海大相模高)は将来のクリーンアップ候補、仲三河優太(大阪桐蔭高)は選球眼に優れた左の巧打者、奥野翔琉(明徳義塾高)は、オリックスの好きそうな俊足巧打の外野手で、仲三河と奥野は下位指名での獲得が予想される。
●1位予想は近大のスラッガー・佐藤輝!確実に即戦力野手を上位で獲得したい
今年は、既に巨人と阪神が獲得を表明している佐藤輝明(近大・内野手)指名で良いと思う。また、競合を避けて牧秀悟(中大・内野手)の単独指名も面白い。2人を外した場合は、地元の来田涼斗(明石商高・外野手)指名もあり得る。
1位~佐藤輝明(近大・外野手)…大学通算11本塁打の長打力に、内外野を守れる守備と強肩、50メートル6秒の俊足で、将来っはトリプルスリーを狙える逸材。まだ、発展途上で伸びしろもあり、吉田正と打線の中核を担ってほしい。
2位~来田涼斗(明石商高・外野手)…恵まれた体格を活かし、左右に打球を飛ばす左の強打者。50メートル5秒9の俊足で、将来はトリプルスリーも狙える逸材。一年生のときより甲子園を経験しており、大舞台を多く経験しているのも強み。
3位~細川凌平(智弁和歌山高・内野手)…遊撃と外野を守る典型的なリードオフマン。広角に打ち分けるバットコントロールと俊足で、チームカラーにもフィットする。
4位~二俣翔一(磐田東高・捕手)…二塁送球のベストタイムは1秒79の強肩。投手でも140キロを投げ、50メートル6秒の俊足。課題の打撃も成長し通算21本塁打。
5位~森井紘斗(セガサミー・投手)…最速150キロのストレートにカットボールが武器のパワーピッチャー。高卒3年目で若く、変化球を磨けばまだまだ伸びる。
6位~佐々木健(NTT東日本・投手)…正直、プロ入りは微妙なラインだが、どんな成長をするか見てみたい投手。緩急自在の152キロ左腕は大化けも期待できる。
7位~小芝永久(千葉学芸高・投手)…最速146キロのストレートと縦横のスライダーが武器で、特に縦スライダーには自信を持っている。知名度は高くないが素質十分。
オリックスの育成ドラフトは近年結果を出している。今年も多くに指名が予想され、投手では技巧派右腕の笠島尚樹(敦賀気比高)、身長2メートルを超える大型左腕の阿部剣友(札幌大谷高)を高評価している。捕手では高校通算39本塁打の山下航汰(京都外大西高)、右の長距離砲の西野力矢(大阪桐蔭高)は将来の正三塁手候補、チームメイトの仲三河優太(大阪桐蔭高)も左打のスラッガー、奥野翔琉(明徳義塾高)は俊足の外野手でオリックス好みの選手で、全員が本指名の可能性もある。