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どのチームが「人」を育て強くなるのか

横浜DeNA~今年のドラフトは真の強さを得る分岐点になる

●チーム防御率・打率ともにリーグ5位!12球団最小の盗塁数も2位の不思議?

 今シーズンは順調なスタートをきり、開幕当初から2位だったのもつかの間、4月後半から10連敗で最下位に転落した。多くが今年の苦戦を予想したが、一つずつ勝ち星を重ね、交流戦を4位で終えると、後半は巨人を猛追して最終的に2位で終えた。

 2015年からの直近5年で、6位→3位→3位(日本シリーズ進出)→4位→2位と、着実に成績は上がってきており、1998年以来21年振りのリーグ優勝も現実味を帯びてくる。

 ただ、今年はペナントレースの成績とは裏腹に、チームの成績は決して良くなかった。チーム防御率は、昨年より改善したとは言えリーグ5位、打率は昨年より悪くなっている。本塁打数も減少、盗塁数40は12球団最小…得失点差は▲14点で、よくこの数字で2位をキープできたものだ。

 勝ち試合を、何が何でも獲りに行く結果が出たが、反面、負け試合はあっさり負ける淡白さもあり、まだ上位で安定した成績を残せる戦力は整っていない。

【2019年~チーム成績 ※( )は昨年の成績】

 防御率…3.93⑤(4.18⑤)打率….246⑤(.250⑥)

 本塁打…163③(181②)盗塁40⑥(71③)

 得点…596③(572⑥)失点611④(642③)得失点差▲14(▲70)

 

セ・リーグで一番若いチームも、ベテランの壁が厚く新旧交代が停滞

 意外と言えば申し訳ないが、横浜の平均年齢26.4歳は、日本ハムに次いで2番目に若いチームだ。主力にベテランが多く、若手の台頭も乏しいため、平均年齢の高いイメージがあるが、投打ともに若い選手が多い。

 今年も筒香嘉智、宮崎敏郎、ソト、ロペスの主力4人が及第点の結果を残し、新たに神里和毅と大和が規定打席に達し、昨年の4名から6名に増えた。今年は外国人選手の活躍が2位躍進の原動力になり、ソトは43本108打点でリーグ2冠、ロペスも本塁打、打点ともに成績を上げた。

 このほかに、伊藤光が300打席で復活を見せたが、100打席を超えた選手で若手は佐野恵太のみで、あとはベテランが多く、主力を脅かす若手の台頭とチーム打率のアップが早急な課題だ。

 また、極端な盗塁数の少なさも深刻だ。チーム最多は神里の15盗塁で、そのあとは乙坂智の6盗塁で、そもそも盗塁を決めた選手が9名しかいない。確かに盗塁はリスクのあるプレーだが、走る姿勢を見せないと相手投手への揺さぶりもできない。走力のある1~2番が確立できれば、リーグ屈指のクリーンアップも活きてくると思うが…。

 投手陣は昨年、ルーキーの東克樹以外の先発陣が崩壊し、Bクラスへ転落した。その東だが、今年は1年目の無理がたたったか、7試合の登板に留まった。そのなかで今永昇太が、今季13勝でエースに成長。また、ルーキーの上茶谷大河もシーズン通して先発ローテーションを守り7勝は立派だ。

 クローザーの山崎康晃は、昨年より試合数を61試合に増やし、30セーブでタイトルを獲得した。ただ、山崎に見られるように、先発の枚数の少なさが中継ぎ陣の負担になった。エスコバーの74試合を筆頭に、三嶋一輝も71試合、国吉佑樹とパットン、石田健大は先発から中継ぎにまわり40試合に登板した。

 昨年、チーム最多の70試合に登板した砂田毅樹は今季16試合、65試合の三上朋也が6試合と、中継ぎ陣の勤続疲労は心配の種だ。

【横浜DeNAの5年後の主力選手】

 投 手…三上朋也・武藤祐太・三嶋一輝国吉佑樹山崎康晃・石田健大

     今永昇太・大貫晋一・平良拳太郎・東 克樹・濱口遥大・砂田毅樹

     上茶谷大河・京山将弥

 捕 手…伊藤 光・戸柱恭孝・嶺井博希

 内野手中井大介・倉本寿彦・柴田竜拓・佐野恵太・伊藤裕季也

 外野手…筒香嘉智桑原将志・神里和毅・乙坂 智

 

 5年後は投手陣が質量ともに十分で、今永、東、濱口、上茶谷のドラフト1位選手が先発陣を形成し、経験もある中継ぎで国吉や砂田がおり、リーグを代表するクローザーの山崎もいる。有望な高卒選手も控えており、投手王国も期待が持てる布陣だ。

 反面、野手は心配だ…捕手は何とかなりそうだが、内外野ともに不足している。乙坂はレギュラー候補から抜け出せず、柴田と佐野もレギュラー獲得のチャンスを活かしきれていない。大きな悩みのひとつは、走力もあるリードオフマンの桑原で、打撃不振の出口が見えないほど重症に陥っている。

 来シーズンは、ロペスが最年長の37歳、石川雄洋34歳、大和33歳、宮崎と梶谷隆幸も32歳で、新旧入れ替えの大事な時期を迎えている。

 

●年齢構成は悪くないが、高校生指名の少なさと今季の退団で量的に不足気味…

 投手はすべての年齢に穴がないが、19~23歳に左腕が一名しかおらず補強が必要だ。野手の年齢バランスは悪くないが、育成期の19歳~22歳が不足している。また、捕手は28歳の嶺井のあとに、21歳の山本祐大まで空きがあり、優先事項ではないが、即戦力捕手が欲しいところだ。

 横浜のここ数年のドラフトの特徴は、1~3位までは即戦力の大学生または社会人中心(昨年の1位指名は小園だが…)で、4位以降で高校生、下位で独立リーグがある意味パターン化している。どうしても高校生指名が下位になるため、質量ともに不足している状況に陥ってしまった。

 歴史的に即戦力投手の上位指名志向の強いチームだが、09年の筒香のように、補強ポイントに関係ない思い切った指名も時には必要だと思う。

【横浜DeNAの補強ポイント】

 投 手…将来性のあるエース候補と左腕の補強

 捕 手…攻守に秀でたレギュラー候補

 内野手…走攻守三拍子揃った高校生(二塁手と遊撃手)

 外野手…しいて言うなら高校生(長打力or俊足)

 

 1位候補は、他球団と同じで佐々木朗希(大船渡高・投手)奥川恭伸(星稜高・投手)森下暢仁(明大・投手)が軸になる。現状、投手陣に大きな心配がないので、佐々木の育成も十分にできる時間的余裕もあり、好みは森下だと思うが、11年以来の高校生1位指名があるかもしれない。

 一方で、競合を避けての即戦力投手の一本釣りの可能性もあるが、一本釣りするなら地元の森敬斗(桐蔭学園高・内野手が一押しだ。補強ポイントに合致した三拍子揃った高校ナンバーワン遊撃手で、外野も守れ将来の一番打者候補だ。ポスト筒香で、スラッガー石川昴弥(東邦高・内野手指名も面白い。

 2~3位では、投手では先発を任せられる即戦力、高校生投手のどちらでも良い。即戦力なら吉田大喜(日体大・投手)や杉山晃基(創価大・投手)、左腕の坂本裕哉(立命大・投手)太田龍JR東日本・投手)は先発に厚みをもたらし、年齢バランス的にもピッタリだ。

 高校生なら井上広輝(日大三高・投手)は2位以内間違いなくで消える選手で、左腕の宮城大弥(興南高・投手)林優樹(近江高・投手)、他球団の動向次第では及川雅貴(横浜高・投手)もチャンスがある。1位で森、2位で及川などは、想像しただけでゾクゾクする。

 1位で投手を指名するなら、2~3位では即戦力の遊撃手、または今年豊富な捕手を指名したい。遊撃手なら小深田大翔(大阪ガス内野手、捕手なら佐藤都志也(東洋大・捕手)郡司裕也(慶大・捕手)は、いずれもウィークポイントの解消になる。また、走力のある高部瑛斗(国士館大・外野手)は、典型的な一番打者で、現在の横浜に必要な選手だ。

 4位以降は、高校生ならどのポジションでも問題なく、即戦力なら捕手と二塁または遊撃手が補強ポイントになる。

 高校生では、小林珠維(東海大札幌高・投手)谷岡颯太(武田高・投手)、左腕の井上温大(前橋商高・投手)は、この順位でも獲得のチャンスがあり、金城洸汰(北山高・投手)吉田力聖(光泉高・投手)も高い評価をしている。

 野手では遊撃手の遠藤成(東海大相模高・内野手上野響平(京都国際高・内野手川野涼汰(九州学院内野手と、下位でも逸材が揃っている。また、ソトが二塁を守っている現状から、黒川史陽(智弁和歌山高・内野手あたりも候補になる。

 外野手では巧打の木下元秀(敦賀気比高・外野手)スラッガー菊田紘和(常総学院高・外野手)は、どちらを指名しても面白い。

 また、上位で即戦力捕手を外したなら、U-18の山瀬慎之介(星稜高・捕手)水上桂(明石商・捕手)藤田健斗(中京学院大中京高・捕手)の有望な高校生捕手を獲得したい。

 即戦力投手では、国学院大コンビの横山楓吉村貢司郎、サイドハンドの速球派村西良太(近大・投手)に、左腕の高橋佑樹(慶大・投手)は下位で残っていたら抑えておきたい投手だ。

 野手では、保坂淳介(NTT東日本・捕手)小林遼(JX-ENEOS・捕手)は打てる捕手、守備に定評のある遊撃手の諸見里匠と、俊足の二塁手稲垣誠也日本通運コンビも大きな戦力になる。

 

【横浜DeNAのドラフトを勝手にシミュレーション】

 1位…森  敬斗(桐蔭学園高・内野手)…走攻守が魅力のスピードスター

 2位…杉山 晃基(創価大・投手)…ゲームメークに長けた右の本格派

 3位…高部 瑛斗(国士館大・外野手)…ミート力に優れた典型的一番打者

 4位…小林 珠維(東海大札幌高・投手)…4番打者も務める二刀流右腕

 5位…村西 良太(近大・投手)…サイドハンドから投げる速球が武器

 6位…藤田 健斗(中京学院大中京高・捕手)…自慢は巧打と鉄砲肩

 7位…金城 洸汰(北山高・投手)…抜群の変化球を操る沖縄の原石

 

 今年は少ない19歳~22歳の育成型選手の上位指名が必要だと思う。ベテランの主力が頑張っているうちに、じっくり若手を育て新旧の入れ替えを図りたい。

 投手の上位指名、特に即戦力獲得はリスクがないようで実は高い。ここ最近では、野手の上位指名のほうが結果が出ている。

 昨年、抽選で外れはしたが小園海斗(広島)の1位指名は、欲しい選手に果敢に行く姿勢と、即戦力投手1位指名の脱却を評価した。その後、パターン化したのは残念だったが、今年こそは新たなドラフト戦略を期待したい。