投打に戦力が充実し、開幕前にMLBでサイヤング賞を獲得したバウアーの加入も決まり、優勝候補に挙げられたシーズン。開幕からまさかの4連敗を喫するも、その後は強力打線を擁し16勝3敗の驚異的な成績で4月を首位で終え、25年振りの優勝に期待が膨らんだ。ただ5月に6連敗で順位を落とすと、以降は3位が定位置になり、迎えた最終戦で勝てば2位の試合に負け、昨年から貯金は3つ増やすも順位は1つ下げた。
個人的には今季がチームのピークだと思っていたので、来季4年目の指揮を執る三浦監督だが、チームは投打に課題が多い。
【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】
勝敗 143試合 74勝66敗3分③
防御率…3.16③(3.48③)打率….247②(.251②)
本塁打…105③(117③)盗塁33⑥(49⑤)
得点…520④(497④)失点…496②(534③)
●投手陣は改善を見せるも、大味な打線は変わらず…投打に若手の突き上げが不足
打線は宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)が首位打者を獲得し、牧が最多安打と打点王を獲得。このほか佐野恵太(明大~16年⑨)に桑原将志(福知山成美高~11年④)、関根大気(東邦高~13年⑤)は10年目にして初の規定打席に達した。特に、前半の快進撃を支えた関根の役割は大きかった。
ただ、思いのほか得点力が上がらず、要因は幾つかあり、1~2番が決まらず、リードオフマンタイプではない佐野が一番を務るなど苦労した。外国人選手も不振で、ソトは年々本塁打数が下がり、今季は最小の14本、オースティンは僅か22試合の出場に留まり、新加入のアンバギーは1安打でシーズンを終えた。また、遊撃定着を期待された京田陽太(日大~16年中②)も打撃不振は変わらずレギュラー獲得に至らなかった。
チームの打撃成績を見ても、打率と本塁打はともにリーグ2位ながら昨年から数字を落とし、盗塁数はリーグ最下位。意外にも低いのが出塁率で、リーグ4位と意外に課題は多く、一発頼みの大味な打線になっている。
今年は最終戦で巨人に0-1で負け、昨年のCSファーストステージ第3戦でも、追加点をなかなか獲れず、チャンスで併殺打3つで敗れた経験が活かされず、昨年からの課題が結局は今年も解消されていないことが表れた格好になった。
反面、投手陣は防御率も失点数も改善し、リーグで2番目の少ない失策と相成り守り勝つ野球が出来る。エースの今永昇太(駒大~15年①)に東克樹(立命大~17年①)が規定投球回数をクリアし、東は16勝で最多勝と最高勝率のタイトルを獲得した。バウアーはケガで戦列を離れるも、防御率2.76で2桁勝利を上げ、石田健大(法大~14年②)とともに先発ローテーションを守った。
リリーフは新外国人のウェンデルケンが大活躍し、チーム最多の61試合登板で、伊勢大夢(明大~19年③)と並んで33ホールドを上げた。エスコバーと上茶谷大河(東洋大~18年①)も40試合以上を投げ、セットアッパーはハマったが、苦労したのはクローザーで、山崎康晃(亜大~14年①)は防御率4点台で7敗を喫しクローザーをはく奪され、後半からは森原康平(新日鉄住金広畑~16年楽⑤)が務めた。
ただ、野手同様に投手も若手の突き上げがなく、伊勢を除いた25歳以下で勝ち星を上げた選手は、入江の1勝のみで投打で若手が伸び悩んでいる。
●最悪、今年のローテーション投手が3名抜ける事態に…野手は主力の高齢化も課題
直近5年のドラフトは、大貫と伊勢、牧がずば抜けた成績を残しており、成功のイメージが強いが、先述したように若手が伸び悩んでいる。
特に、ここ最近2年は酷く支配下で11名獲得するも、一軍出場はわずかに3名で、投手では三浦銀二(法大~21年④)の7試合登板が最多で未勝利。打者は林琢真(駒大~22年③)の65試合が最多と、2年続けて高校生を1位を指名しているなか、即戦力を期待された徳山壮磨(早大~21年②)と吉野光樹(トヨタ自動車~22年②)の両投手が一軍未登板は誤算だった。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
18年④…大貫晋一(新日鉄住金鹿島/③・投手)
19年②…伊勢大夢(明大/③・投手)
20年④…入江大生(明大/①・投手)牧 秀悟(中大/②・内野手)
21年⑥…なし
22年②…なし
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【DeNAの補強ポイント】
投 手…即戦力(特に先発)将来のエース候補
捕 手…必要なし
外野手…高校生・大学生は必須
今年のドラフトは例年にない大変なドラフトになる。投手では今永のMLB移籍が濃厚で、バウアーの去就も不透明だ。さらに石田にもFA移籍の可能性もあり、今季ローテーションを支えた投手3名が、来シーズンにはいない可能性がある。
さらに若手の伸び悩みに加え、主力が軒並み30歳を超えており、世代交代を進めたいが25歳以下で、来季ブレイクを期待できる選手が見当たらない。期待の森敬斗(桐蔭学園高~19年①)は今季僅かに9試合、小園健太(市和歌山高~21年①)も、まだ焦る時ではないが、一軍未登板でファームでも苦戦している。
今年は、FAに備えた即戦力投手の獲得とリリーフ陣の強化を優先に、伸び悩んでいる野手の補強、19歳~23歳が不在の外野手の獲得など、一度のドラフトでは解決できない課題が山積している。
☆投手~即戦力(特に先発)将来のエース候補
先発投手は最悪、今永に石田、バウアーが抜けると、東と大貫が中心になり、濱口遥大(神奈川大~16年①)や平良拳太郎(北山高13年巨⑤)が控えるが、濵口以外はケガで離脱した期間が長く盤石とは言えない。
リリーフはベテランの三嶋一輝(法大~12年②)も復帰し、石川達也(法大~20年育①)がキャリアハイの成績を上げて層は厚くなったが、やはりクローザーの確立が必要で、山崎康が復調すれば問題ないが、経験を擁する役割だけに森原やウェンデルケンとの競争になり、先発よりは優先度合いは高くない。
1位候補で挙がっているのが、細野晴希(東洋大)と常廣羽也斗(青学大)で、2人とも競合必至だが、個人的には常廣を推したい。常廣は大学日本代表ではクローザーを務める一方、今年の大学選手権決勝では先発して完封するなど、大舞台での実績も申し分なく、チーム状況に応じて先発・クローザーも任せられる。
このほか、先発候補では地元の古謝樹(桐蔭横浜大)や西舘昂汰(専大)などが上位候補に挙がり、安定感抜群の村田賢一(明大)や奪三振能力の高い左腕の尾崎完太(法大)も評価が高い。
また、常廣と同じく153キロサイドハンドの松本凌人(名城大)や抜群の制球力が武器の高太一(大商大)も先発・リリーフともに適性があり、富士隼人(平成国際大)は155キロのストレートで押す剛腕リリーバー。さらに、津田淳哉(大経大)や伊藤岳斗(龍谷大)、社会人では高卒4年目の広沢優(JFE東日本)に経験豊富な皆川喬涼(東京ガス)も候補に挙がる。
本来であれば、前田悠伍(大阪桐蔭高)や坂井陽翔(滝川二高)の高校生投手も1位指名したいところだが、来季の状況を考えると今年は大学生投手で良いと思う。
そうなると高校生投手は下位指名になり、リストアップしている木村優人(霞ヶ浦高)や日當直喜(東海大菅生高)、早坂響(幕張総合高)に杉原望来(京都国際高)は3位以内で消える可能性が高く、杉山遥希(横浜高)や福田幸之介(履正社高)を確実に獲得したい。
また、中央では無名ながら140キロ後半のストレートが武器の伊地知晴(旭川志嶺高)や西村昂浩(白樺学園高)、埋橋周平(伊那北高)は4番も務める大黒柱で、強豪ひしめく兵庫で夏の予選で28回連続無失点を記録した横山楓真(明石商高)なども候補に挙がっている。
☆捕手~必要なし
ここ数年は、戸柱恭孝(MTT西日本~15年④))と伊藤光(明徳義塾高~07年オ③)等が隔年で活躍していたが、今季一番マスクを被ったのは6年目25歳の山本祐大(BC滋賀~17年⑨)で、打つほうでも一番高打率でOPSも高く、来季は山本中心に考えて良い。
ここにファームで経験を積んでいる松尾汐恩(大阪桐蔭高~22年①)が控え、23歳の益子京右(青藍泰斗高~18年⑤)に22歳の上甲凌大(四国IL愛媛~22年育①)等若手がレギュラー争いをすることでレベルアップが期待でき、今年は必要ない。
レギュラーは一塁にソト、二塁に牧、三塁には宮崎がおり、唯一レギュラー不在の遊撃は京田とベテランの大和(樟南高~05年神④)が務めている。本来であれば森が京田とレギュラーを争う形を期待されたが、森の伸び悩みは頭が痛いところだろう。
結果、ヤクルトから西浦直亨(法大~13年ヤ②)をトレードで獲得し、トライアウトで獲得した西巻賢二(仙台育英高~17年楽⑥)を支配下登録し、その西巻がファームの主力では心許ない。
課題は牧以外のレギュラー陣の高齢化で、ソトと宮崎、大和が35歳を超えるなか、最も脂の乗り切った20歳後半の選手がいない。FAやトレードが一番だが、内野は即戦力と将来の中軸候補が必要で、投手との兼ね合いもあるが、どちらを優先するかで局面は大きく変わる。
将来の中軸候補で佐々木麟太郎(花巻東高)を1位候補に挙げており、これはこれで良いと思う。生え抜きで4番を務められる選手は早々現れず、好打者の多いチームだけに佐々木自身も見習うことは多い。
佐々木を1位指名しないのであれば、真鍋慧(広陵高)と小笠原蒼(京都翔英高)も候補に挙がり、遊撃候補で横山聖哉(上田西高)や田上優弥(日大藤沢高)もパンチ力のある打撃で魅力的な選手だ。
即戦力で行くのであれば上田希由翔(明大)と廣瀬隆太(慶大)が上位候補で、巧打者の上田と長距離砲の廣瀬は一塁と三塁が本職で、宮崎の後継候補にもピッタリだ。また、1~2番候補で遊撃の石上泰輝(東洋大)や中川拓紀(ホンダ鈴鹿)も補強ポイントに合う。
☆外野手~高校生・大学生は必須
外野は佐野と桑原、関場がおり、それこそ脂の乗り切った選手たちなので短期的に見れば補強の必要はない。控えにもベテランの大田泰示(東海大相模高~08年巨①)に巧打の楠本泰史(東北福祉大~17年⑧)、俊足の神里和毅(日本生命~17年②)がおり、細川成也(中日)を放出できるほど層は厚い。
ただ、年齢構成が悪く、外野手の最年少は24歳の梶原昂希(神奈川大~21年⑥)で、下位指名でも良いので指名が必要だ。課題は年齢構成だけなので、高校生ならともに強豪校で1年生からレギュラーを獲得した西綾太(履正社高)や萩宗久(横浜高)、大学生であれば、中島大輔(青学大)と福島圭音(白鷗大)はチームに不足している機動力アップにも貢献できる。
●投手力強化が優先課題のなか、上位で有望な野手を獲得したい
今季は既に5名の投手を戦力外にしており、投手中心の指名になりそうだ。常廣羽也斗(青学大)と細野晴希(東洋大)はSランクの投手で競合必至だが、以前のような競合を避けての単独指名ではなく、投手力強化で果敢に挑んで欲しい。
一方、大学生投手が今年は豊富で、敢えて佐々木麟太郎(花巻東高)や上田希由翔(明大)を1位指名し、2位以下で投手指名を集中しても良いと思う。ただ、不思議なのは、社会人ナンバーワン野手の度会隆輝(ENEOS)には興味がないようで、地元出身且つ補強ポイントに合う外野手なのだが…。
【指名シミュレーション】
(Aパターン) (Bパターン)
1位~常廣羽也斗(青学大・投手) 佐々木麟太郎(花巻東高・内野手)
3位~尾崎完太(法大・投手) 広沢 優(JFE東日本・投手)
4位~小笠原蒼(京都翔英高・内野手) 村田賢一(明大・投手)
5位~皆川喬涼(東京ガス・投手) 福田幸之介(履正社高・投手)
6位~伊地知晴(旭川志嶺高・投手) 埋橋周平(伊那北高・投手)
おススメの選手は、上記のシミュレーションには入れなかったが、六大学で通算安打と打点で最多をほこるヒットメーカーの上田希由翔(明大)で、内野レギュラーの高齢化が懸念され、左打者も少ないなかチームの補強ポイントに合う。