ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

20年ドラフト予想☆阪神~今年は育成重視か、即戦力中心か?野手ならオール大学生でOK

●早くもストーブリーグの話題が先行…チームを支えたベテランも衰えを隠せない

 先日、中日に抜かれ現在は3位だが、しばらく阪神がずっと2位をキープしており、失礼な言い方だが、そんなに強かったかな?と不思議だった。なんせ阪神の話題と言えば、藤浪をトレードするかしないか、チーム内のルールを破ったうえでの集団コロナ感染、球団社長の辞任、そして早くもオフ恒例のストーブリーグなどの話題が占めていたので、もう少し悪い気がしていた。

 話を戻すと、リーグ屈指の投手陣は今年も健在で、先発はエース西勇輝菰野高~08年オ③)がチームトップの10勝を上げ、青柳晃洋(帝京大~15年⑤)に秋山拓巳(西条高~09年④)、左腕の高橋遥人(亜大~17年②)と勝ち星は少ないがガルシアがローテーションを守っている。

 リリーフでは、昨年活躍した藤川球児高知商高~98年①)は11試合登板で引退を表明し、島本浩也(福知山成美高~10年育②)も故障でシーズンを棒に振った。そのなかでもスアレスがクローザーを務め、岩崎優(国士館大~13年⑥)と馬場皐輔(仙台大~17年①)の3人が抜群の安定感を誇り、藤浪晋太郎大阪桐蔭高~12年①)もリリーフへの適性を見せ穴を埋めた。

 攻撃陣は大山悠輔(白鴎大~16年①)が不動の4番に成長し、昨年14本塁打だった男が、リーグトップの26本塁打を放ち、本塁打王争いをするまでに成長した。加えて新外国人のサンズが19本、ボーアが16本と課題の長打力不足が解消された。2年目の近本光司(大阪ガス~18年①)も序盤の不振を取り戻し、打率.291、23盗塁はリーグトップで得点力は着実に改善された。

 改善されていないのが失策の多さで、今年も両リーグワーストの67個のエラーは、痛いところで余計な失点に繋がっている。

【10/16現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 98試合 48勝47敗5分③

 防御率…3.57②(3.46①)打率….247⑥(.251④)

 本塁打…98③(94⑤)盗塁66①(100①)

 得点417④(538⑥)失点398②(566②)得失点差16(▲28)

 

 阪神のドラフトは昔も今も良く分からない…。ただ、ここ5年間では1位指名の選手が主力に成長し、16年の大山と17年の馬場は今年主力に成長し、15年の高山俊(明大~①)と近本は新人王を獲得している。

 このほかにも投手では青柳と高橋遥が先発ローテーションに定着し、野手では糸原健斗(JX-ENEOS~16年⑤)に木浪聖也(ホンダ~18年③)がレギュラー、小幡竜平(延岡学園高~18年②)も頭角を表してきた。

 また、昨年は1位~5位まで高校生を指名し、これまでの阪神のドラフトと一線を画す指名には驚かされた。

阪神の補強ポイント】

 投 手…藤川に代わるクローザー候補、将来のエース候補

 捕 手…大学生捕手

 内野手…二遊間、即戦力野手と将来性のレギュラー候補

 外野手…ポスト糸井、福留の即戦力野手 

 

●外野はスラッガー、内野は守備力重視か?投手陣の強化も今後に向け必要

☆投手~即戦力先発左腕、藤川に代わるクローザー候補、将来のエース候補

 投手陣は脂の乗った世代が主力におり、西勇もまだ30歳、29歳で秋山と岩崎、岩貞祐太(横浜商大~13年①)、27歳で青柳と島本、藤浪が26歳、高橋遥と馬場が25歳と暫くはリーグ屈指の投手陣が維持できる。

 ただ、23歳以下で戦力になっているのが、大目に見ても望月惇志(横浜創学館高~15年④)しかおらず、昨年の西純矢(創志学園高~19年①)に続く将来のエース候補が欲しい。また、藤川が引退を表明し、クローザー候補の獲得も必要になる。

 将来のエース候補では、高橋宏斗(中京大中京高)を最上位に、中森俊介(明石商高小林樹斗(智弁和歌山高)が1位候補に挙がっている。即戦力のクローザー候補では、木澤尚文(慶大)伊藤大海(苫小牧駒大)が1位候補になる。

 阪神は今年はナンバーワン野手の佐藤輝明(近大)の指名が濃厚で、競合のなか獲得できれば最高だが、外したときにどちらを優先するのか注目だ。

 また、即戦力の先発もマークしており、大道温貴(八戸学院大栗林良史(トヨタ自動車に、不足する先発左腕で藤井聖(ENEOS)等も上位候補に挙がる。

 中位以降では高校生や伸びしろのある大学生が候補で、高校生では松本隆之介(横浜高)根本悠楓(苫小牧中央高)の両左腕。小辻鷹仁(瀬田工高)蓼原慎仁(桐生一高といった前評判の高い投手に、加藤優弥(金沢龍谷高)片山維(帝京五高)、左腕の福島章太(倉敷工高)など隠し玉的な選手も高く評価している。

 大学生では村上頌樹(東洋大高田孝一(法大)は先発、左腕の高野脩汰(関大)はリリーフでもいけ、阪神は早くから注目していた伸びしろのある逸材だ。また、即戦力リリーバーの左腕、相馬和磨(日本通運も高野同様に早くからマークしている。

 

☆捕手~大学生捕手

 レギュラーは梅野隆太郎(福岡大~13年④)だが、捕手の年齢バランスが悪く、26歳~29歳に5名おり、26歳の長坂拳弥(東北福祉大~16年⑦)の下がルーキーの藤田健斗(中京学院中京高)で、20歳~25歳まで空白世代になっており、ここの年代は埋めたい。欲を言えば、捕手7名中6名が右打ちで、左打ちだとなお良い。

 年齢的には大学生捕手がベストで、古川裕大(上武大)は左打ちの打てる捕手、榮枝裕貴(立命館大は強肩のディフェンス型でどちらもチームの補強ポイントに合っている。高校生は年齢的に必要ないと思うが、関本勇輔(履正社高)二俣翔一(磐田東高)内山壮真(星稜高)の打てる捕手の獲得を目指している。

 

内野手~二遊間、即戦力野手と将来性のレギュラー候補

 内野手は二塁に糸原、三塁に大山、遊撃には北條史也光星学院高~12年②)を抑え木浪が控える。ただ、大山以外は攻守に決して万全とは言えず、20歳の小幡、25歳の熊谷敬宥(立大~17年③)が出番を増やしている。失策も多いことから守備力に特化した選手の獲得も必要で、捕手と同様に年齢バランスが悪く、大学生野手が候補の一番手になる。

 守備力を優先にすると矢野雅哉(亜大)元山飛優(東北福祉大小川龍成(国学院大)はいずれも堅守の遊撃手、瀬戸西純(慶大)は打撃は今ひとつも守備は抜群だ。社会人の上川畑大悟(NTT東日本)は、抜群の守備力を誇る遊撃手で、いまの阪神にはピッタリの補強だと思う。

 当然、ワンランクアップのチームを狙うには素質豊かな高校生も必要だ。高校通算34本塁打小深田大地(履正社高)や俊足の細川凌平(智弁和歌山高)、巧打者の度会隆輝(横浜高)スラッガー阪本和樹(松阪商高)をリストアップしている。

 

☆外野手~ポスト糸井、福留の即戦力野手 

 外野のレギュラーは26歳の近本のみで、福留孝介日本生命~98年中①)は41歳、糸井嘉男(近大~03年日自)も39歳になりさすがに衰えは隠せない。期待の伊藤隼太(慶大~11年①)も31歳、高山は年々試合数を減らしており、ここは即戦力野手が是が非とも必要だ。野手の年齢バランスがすべて悪く、外野手も大学生が欲しい。

 既にほぼ公言状態だが、佐藤輝明(近大)を早くから1位候補に挙げている。広い甲子園を苦にしない長打力が最大の魅力だ。他には俊足の五十幡亮汰(中大)をマークしているが、今年は外野手に候補者が少なくともに上位でしか獲得できない。

 高校生も同様で、将来トリプルスリーを狙える来田涼斗(明石商高)、ともにスラッガー西川僚祐(東海大相模高)元謙太(中京高)山本大斗(開星高)への評価が高い。

 

●1位は佐藤でほぼ間違いなし!昨年の育成重視ドラフトが今年はどう変わるか

 今年の1位指名は佐藤輝明(近大)で間違いなく、高校生投手では高橋宏斗(中京大中京高)を挙げているが、ともに1位未入札で消える選手で、外れ指名でどういった戦略で行くか注目だ。即戦力野手なら牧秀悟(中大)、将来性で来田涼斗(明石商高、投手なら小林樹斗(智弁和歌山高)木澤尚文(慶大)へシフトしそうだ。

【指名シミュレーション】 

 1位~小林樹斗(智弁和歌山高・投手)…昨夏の甲子園よりさらに成長を遂げ、ストレートの最速も152キロを計測した。元々の直球の伸びに加え制球力も高く、チェンジアップやスライダーの変化球も抜群で、先発・リリーフともに適性がある。

 2位~藤井 聖(ENEOS・投手)東洋大時代はリリーバーで目立たなかったが、社会人でその素質が開花し、本格派左腕に成長した。分かっていても打てないストレートは150キロを超え、先発・リリーフともに大きな戦力補強になる。

 3位~松本隆之介(横浜高・投手)…身長188センチを超える大型左腕で、最速150キロも超えた。変化球の精度も高い器用さも持ち合わせつ将来のエース候補。

 4位~榮枝裕貴(立命大・捕手)…守備力はアマ球界トップクラスで、確実性のある送球に高い盗塁阻止率を誇る。長打力には乏しいが、打撃も着実に成長している。

 5位~小辻鷹仁(瀬田工高・投手)…古豪・瀬田工高で成長した伸びしろ十分の右腕。スリークオーターから、低めに集める最速146キロのストレートが武器。

 6位~高野脩汰(関西大・投手)…角度にある147キロストレートと2種類のスライダーが武器で奪三振能力が高い。昨秋のリーグ戦では4勝負けなしでMVPを獲得。

 7位~相馬和磨(日本通運・投手…社会人1年目より救援で活躍し、上背はないがカーブにスライダー、フォークを駆使して打者を打ち取る即戦力左腕。

 このほかに下位または育成候補では、高校生が中心で150キロサイドハンドの加藤優弥(金沢龍谷高)片山維(帝京五高)。打てる捕手の関本勇輔(履正社高)阪本和樹(松阪商高)山本大斗(開星高)スラッガーをリストアップしている。大学生では最速155キロの高田孝一(法大)は粗削りながら、まだ伸びしろのある本格派右腕が候補になる。