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どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年ドラフト予想☆ロッテ~下位予想も一時期は首位で大健闘!常勝チーム構築に向け若手の成長が課題

 吉井理人新監督を迎えた今シーズンは、選手層の薄さに加え、開幕前から主力にケガ人が続出し前評判は高くなかった。ただ、開幕3連敗スタートながら、接戦をものにするスタイルで4月を首位で終えると、6月中旬まで首位の座をキープした。

 しかし7月末にエースの佐々木朗が離脱すると状況が暗転。今年も勝負所の夏場で失速し、最終盤の9月に主力が発熱で次々と離脱し7連敗(それまでは4連敗が最長)を喫し、最大13あった貯金が無くなり、CS出場も危うくなってしまった。一方で数字的には投打に成績は芳しくなく、ここまで良くやっているというのも正直なところだ。

【10/4現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 140試合 68勝67敗5分③

 防御率…3.45⑤(3.39④)打率….238④(.231⑤)

 本塁打…98⑤(97③)盗塁70⑤(132①)

 得点…480④(501①)失点…512⑤(536⑤) 

25年プロジェクト(常勝チームの構築)に向け、期待の若手の成長が課題

 昨年の週刊ベースボールの記録集計号のチーム見出しで「主力の不振でBクラスも投打で若手が台頭し、世代交代が進むシーズンに」と総括されているが、今季はその若手が今ひとつ殻を破れなかった。

 特に野手は、安田尚憲(履正社高~17年①)と山口は、ともに規定打席到達も打率は2割前半で本塁打数も昨年より下回っている。藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)は今年もレギュラーを掴めず、佐藤都も打率、本塁打ともに昨年の成績から下降した。

 逆に投手は、佐々木朗は今季もシーズンを完走できなかったが、投げれば圧倒的なパフォーマンスを見せた。右肘の手術から復帰の種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)は2桁勝利を上げ、小島も昨年の3勝から9勝(6敗)と勝ち星を積み上げた。また、リリーフの横山陸人(専大松戸高~19年④)が勝ちパターンの一角を担うまでに成長した。

 そんななかチーム編成は功を奏し、FA移籍濃厚だった田村龍弘光星学院高~12年③)が残留。巨人を戦力外になったポランコは本塁打王争いをする活躍を見せ、メルセデスも先発ローテーションを守った。新外国人のペルドモは最多ホールド、トレードで獲得した西村天裕(NTT東日本~17年日②)はキャリアハイの成績を上げ、打撃強化でシーズン途中に加入した石川慎吾(東大阪大柏原高~11年日③)も勝利に貢献した。

 一方で、主力がケガで十分に揃うことがなく、開幕投手に指名されていた石川歩(東京ガス~13年①)、さらに二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)も一軍未登板に終わった。野手は、荻野貴司トヨタ自動車~09年①)が前半不在、昨年盗塁王の高部もケガで一軍出場が無かった。

 数字を見ると、打線は打率と長打率は高くないが、四死球数が多く出塁率オリックスと遜色ない。盗塁数は高部の不在で半減するも、犠打が多く併殺打はリーグ最少ながら、完封負けはリーグ最多の17を数え得点能力に課題がある。

 一方で投手陣は前半の好調が一転し、リーグ5位まで下降した。打線に課題があるように思えるが、来季に向け最大の課題は投手陣の整備と言える。加えて今年は失策数がリーグ5位とが多く、特に夏場から急増し痛いところで無駄な失点に結びついている。

 ロッテは全員が「束」になって戦うのがチームカラーだが、優勝を狙うにはやはり「個」の力が必要で、来季に向け、一人でも多く若手の覚醒が必要になる。

●高校生か、即戦力大学生か、25年に向け何が必要なのかを考えるドラフト

 ここ5年のドラフトは結果が今一つ出ておらず、小島以外は発展途上の選手が多い。ここ数年は高校生野手を積極的に指名し、スケール感のあるチームづくりを目指していただけに、ファンならずとも見ていて歯がゆさを感じる。

 ただ、期待の高卒選手がなかなか一人立ちできない状況に我慢できなかったのか、直近は鈴木昭汰(法大~20年①)や菊地吏玖(専大~22年①)の大学生投手を1位指名したが、お世辞にも1位クラスの活躍とは言えず、ただ単純にスケール感だけが乏しくなってしまった。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年⑤…小島和哉(早大/③・投手)山口航輝(明桜高/④・外野手)

 19年④…佐々木朗希(大船渡高/①・投手)佐藤都志也(東洋大/②・捕手)

       高部瑛斗(国士館大/③・外野手)

 20年②…なし

 21年②…なし

 22年⑤…友杉篤輝(天理大/②・内野手

  ↓↓

【ロッテの補強ポイント】 

 投 手…大学生左腕(先発・リリーフ)ポスト益田のクローザー候補

 捕 手…大学生捕手

 内野手…ポスト中村奨の大学生、高校生スラッガー

 外野手…年齢構成で高校生 

 優先順位は投手陣の強化で、年齢構成は悪くなく、左右のバランスで大学生の左投手が欲しい。また、先発なら美馬学東京ガス~10年楽②)と石川歩、リリーフでは益田直也関西国際大~11年④)に澤村拓一(中大~10年巨①)が35歳を超え、世代交代を急ぐ必要がある。

 野手は19歳~22歳が少ないが、勝又琉偉(富士宮東高~22年育③)が今季ファームで最多の打席数をこなすなど、年齢構成に縛られることはない。高校生であれば将来の中軸候補、即戦力なら打撃優先で強化していきたい。

 個人的には今回のドラフトは、来シーズン期待の若手が成長することを前提に、短期的な結果を求めて安易な即戦力志向に走るのではなく、育成を重点に進めるべきだと思う。一方で選手層の薄さは否めず、本気で優勝を狙うのあれば、FAやトレード、現役ドラフトなど積極的に仕掛け欲しい。

☆投手~大学生左腕(先発・リリーフ)ポスト益田のクローザー候補

 先発はエースに成長した佐々木朗を中心に、奪三振のタイトル争いを演じた種市に技巧派左腕の小島と柱が出来つつある。ここにベテランの西野勇士(新湊高~08年育⑤)や美馬に加え、メルセデスやカスティーヨも機能した。

 ただ、若手の突き上げがなく、中森俊介(明石商高~20年②)や森遼大朗(都城商高~17年育②)がチャンスを与えられたが結果を出すことができず、石川歩や二木、小野郁(西日本短大付~14年楽②)等の不在を埋めることが出来なかった。

 リリーフは益田がリーグ2位のセーブ数を記録し、最多ホールドのペルドモを中心に、西村と坂本光士郎(新日鉄住金広畑~18年ヤ⑤)、成長株の横山がキャリアハイの成績を上げホールドポイントはリーグ最多を数える。さらに東妻勇輔(日体大~18年②)と岩下大輝(星稜高~14年③)も復帰し、終盤は澤田圭佑(立大~16年オ⑧)がリリーフ陣に加わった。この布陣に澤村や小野、東條大樹(JR東日本~14年④)が復帰すれば益々層は厚くなる。

 1位候補では細野晴希(東洋大前田悠伍(大阪桐蔭高)の両左腕が挙がる。細野は制球力が課題も最速156キロの豪速球投手で、先発左腕と年齢構成の2つの課題を埋めることが出来る。前田は将来のエース候補として、チームをもう一段スケールアップさせる。

 細野と前田を外しても、左のパワーピッチャー東松快征(享栄高)に、ともに150キロを超える本格派の下村海翔(青学大上田大河(大商大)岩井俊介(名城大)も上位候補で、岩井は抑えにも適性がありポスト益田のクローザー候補になれる。また、中岡大河(富士大)皆川喬涼(東京ガスの評価も高く、細野以外の大学生左腕では石沢大和(東農大オホーツク)もリストアップしている。

 高校生では木村優人(霞ヶ浦高)早坂響(幕張総合高)、左腕の杉原望来(京都国際高)が上位候補に挙がり、地元の早坂は是が非とも獲得したい。

 このほか中央では無名ながら、清水麻成(樹徳高)星野空(高崎商大高)宮國凌空(東邦高)中山勝暁(高田高)野川新(綾羽高)河内康介(聖カタリナ高)はいずれもストレートが140キロ後半の本格派右腕で、早坂と清水は高校から本格的に投手を始めた選手で伸びしろに期待できる。

 左腕では、U-18代表で野手としての評価も高い武田陸玖(山形中央高)や今夏の甲子園で注目を浴びた福田幸之介(履正社高)も候補に挙がる。

☆捕手~大学生捕手

 今季は田村と佐藤都が主戦で、種市専属で柿沼友哉(日大国際関係学部~15年育②)の3名でシーズンを回した。改めて田村の残留が大きく、来季はファームで経験を積んだ松川虎生(市和歌山高~21年①)出番も増えそうで、緊急を擁する状況ではない。

 ただ、年齢構成で20歳の松川の上が25歳の佐藤都で、大学生で空白を埋めたい。 指名は上位にはならないので、3位以降であれば強肩強打の萩原義輝(流通経大)や打撃面でも成長を見せている有馬諒(関大)も面白い。

内野手~ポスト中村奨の大学生、高校生スラッガー

 今季は一塁に山口、二塁の中村奨吾(早大~14年①)、三塁の安田がそれぞれ規定打席に達するも満足のいく成績ではなかった。そんななか、この間の課題だった遊撃は藤岡裕大(トヨタ自動車~17年②)が復調し、ルーキー友杉との併用で目途が立った。

 茶谷健太(帝京三高~15年ソ④)は内野の全ポジションを守り、しぶとい打撃で今季は4番も経験するなどユーティリティプレーヤーの地位を確立し、2年目の池田来翔(国士館大~21年②)もポスト中村奨の一番手として一軍で十分に通用する力を見せた。また、ファームでは金田優太(浦和学院高~22年⑤)に育成の勝又がチーム1,2の試合数をこなし、数年後の主力になる可能性を秘めている。

 補強ポイントは年齢構成からも大学生で、茶谷や池田以外に中村奨を脅かす選手が欲しい。廣瀬隆太(慶大)はリーグ通算18本塁打の長打力が魅力で、本職ではない二塁も無難にこなし、辻本倫太郎(仙台大)は守備だけで飯を食っていける選手だ。

 高校生を獲得するならスラッガーに絞って良く、1位候補として佐々木麟太郎(花巻東高)の名前も挙がる。主戦になるには時間がかかるが、数年後に安田や山口、佐々木麟のクリーンアップ実現すればスケールの大きいチームになる。このほか、真鍋慧(広陵高)高野颯太(三刀屋高)も期待の長距離砲だ。

 ☆外野手~年齢構成で高校生  

 外野はケガ人が続出し、今季は起用に苦慮したが、藤原と高部がレギュラーを奪取し、打撃の調子を上げている和田康士朗(BC富山~17年育①)など期待感は大きい。ここに荻野貴や角中勝也(四国IL高知~06年⑦)、岡大海(明大~13年日③)に石川慎になど頼りになるベテランも控え層は厚い。

 戦力的には指名を急ぐ必要はないが、外野手2名が戦力外でチームを去るので指名するのであれば年齢構成で高校生で良い。先述した高野は外野も守れ、明瀬諒介(鹿児島城西高)は高校通算49本塁打スラッガー。広角に打てる平田大樹(瀬田工高)は俊足で下位や育成指名でも良いと思う。

投手力強化で上位・下位とも投手中心のドラフト。1位で野手指名のサプライズも

 3連覇のオリックスとの差は、今季で言えば投手力とチャンスに1本の出ない打線だが、野手は若手の覚醒に期待しつつ、投手力強化を図りたい。実際に支配下5選手が戦力外通告を受けたが、内訳は投手3名に外野手2名で、投手力強化が課題となる。

 この間指名した大学生1位指名投手がパっとしないが、細野晴希(東洋大)は格が違う。一方で敢えて前田悠伍(大阪桐蔭高)を1位指名し、2位以下で豊富な大学生投手を獲得するのもアリだ。野手なら競合覚悟で佐々木麟太郎(花巻東高)、他球団からの評価急上昇中の廣瀬隆太(慶大)の1位指名もあるかもしれない。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)           (Bパターン)

 1位~細野晴希(東洋大・投手)     前田悠伍(大阪桐蔭高・投手)

 2位~廣瀬隆太(慶大・内野手)     上田大河(大商大・投手)

 3位~杉原望来(京都国際高・投手)   早坂 響(幕張総合高・投手)

 4位~中岡大河(富士大・投手)     萩原義輝(流通経大・捕手)

 5位~中山勝暁(高田高・投手)     石沢大和(東農大オホーツク・投手)  

 6位~平田大樹(瀬田工高・外野手)   高野颯太(三刀屋高・内野手

 おススメの選手は、地元の早坂響(幕張総合高・投手)で、入学時は捕手だった選手が、投手歴1年で最速151キロのドラフト候補になった。肩も消耗しておらず、これから投手のノウハウを吸収すれば、数年後に大化けする可能性を秘めている。