ドラフトを知ると野球がもっと楽しくなる

どのチームが「人」を育て強くなるのか

21年ドラフト予想☆DeNA~上位で即戦力投手を獲得したい。高校生スラッガーにも熱い視線をおくる

●3割打者が揃う強力打線も得点力は今一つ…防御率4点台の投手陣が課題

 開幕から大きく出遅れ、今年は優勝争いはおろか、Aクラス争いもできないまま、シーズンも後半を迎えた。4位広島と5位中日、DeNAが0.5ゲーム差にひしめき、ある意味し烈な争いになっており、何とか一つでも順位を上げてフィニッシュしたい。

 今シーズンはとにかく投手陣が厳しく、チーム防御率4.28は12球団ワーストで、まずエースがいない…。本来は今永昇太(駒大~15年①)なのだが、本調子には程遠く、12試合3勝(4敗)で、開幕投手の濱口遥大(神奈川大~16年①)も5勝止まりで軸になる投手が不在だ。

 先発投手が厳しいと、当然負担はリリーフにかかり、山崎康晃(亜大~14年①)を筆頭にエスコバー、砂田毅樹(明桜高~13年育①)、クローザーの三嶋一輝(法大~12年②)の4人が既に登板試合が45試合を超えており、登板過多が心配だ。

 打線は相変わらず活発で、チーム打率と本塁打はともにリーグ2位。オースティンと筆頭に佐野恵太(明大~16年⑨)に桑原雅志(福知山成美高~11年④)、宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)は、セ・リーグで8人しかいない3割打者の半分を占める。本塁打もオースティンとソトの両外国人が20本塁打を超えているが、得点数は4位と効率が良いとは言えない。

 ラミレス前監督は、リスクが高いという理由で盗塁を活用しなかったが、それは今年も同様で23盗塁は両リーグ断トツの最下位。投手陣に課題があるのなら、機動力などを活用して得点能力をさらに高める必要があると思うのだが…。 

【9/9現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 108試合 41勝53敗14分⑤

 防御率…4.28⑥(3.76③)打率….259②(.266①)

 本塁打…109②(135①)盗塁23⑥(31⑥)

 得点…431④(516③)失点…474③(543⑥)

 

●優先順位は即戦力投手の獲得。内外野ともに選手層を厚くしたい

 昨年は高校生3名、大学生・社会人3名、投手4名に野手2名と、良く言えばバランスの良いドラフト、悪く言えば可も不可もない平均的なドラフトだった。

 この間のDeNAのドラフトは、昨年の入江大生(明大~20年①)もそうだが重複を外しての単独指名が多い。今永や東克樹(立命大~17年①)の単独指名を評価する声もあるが、私はやはりチーム強化のため、一番の補強ポイントなら重複してでも獲りに行く姿勢を見せて欲しい。

 ここ5年のドラフトでは、16年の濱口と佐野、18年の大貫晋一(新日鉄住金鹿島~18年③)、ルーキーの牧秀悟(中大~20年②)が主戦になっている。ケガで戦列を離れている東をはじめ、投手では上茶谷大河(東洋大~18年①)に坂本裕哉(立命大~19年②)、野手では神里和毅(日本生命~17年②)が及第点の成績を残しているが、大学生と社会人ばかりだ。高校生で主力なのは投手なら13年の砂田、野手なら11年の桑原まで遡らなくてはならなく、チームの育成手腕に疑問符がついてしまう。

 今年は投手中心のドラフトになると思うが、短期的に結果を求めるの即戦力で固めたほうが良いと思う。年齢バランスでも、高校生は投手と外野手は必要だが、育っている、いないは別にしてバランスは取れており、今年は左右関係なく上位で即戦力投手を獲得したい。

【DeNAの補強ポイント】 

 投 手…即戦力の先発投手と将来のエース・抑え候補

 捕 手…必要なし ※強いて言うなら即戦力(左打ちならベスト)

 内野手…大学生・社会人の左打ちの二遊間

 外野手…高校生は必須プラス大学生 

 

☆投手~即戦力の先発投手と将来のエース・抑え候補

 現在のローテーションは今永と濱口、大貫と坂本で構成されているが、数もそうだが質的にも不足している。東や上茶谷、平良拳太郎(北山高~13年巨⑤)の離脱は痛いが、このチャンスを掴む若手がいないのも厳しい。

 ただ、先発陣は若く、今永は28歳、大貫は27歳、濱口と東、平良は26歳、上茶谷25歳、坂本24歳と投手王国も夢ではない布陣が揃っている。昨年1位の入江も、即戦力というよりは伸びしろのある大学生で、評価は来シーズン以降になる。23歳の京山将弥(近江高~16年④)に、22の歳の阪口晧亮(北海高~17年③)など、名前を挙げると期待値の高い投手は多い。

 リリーフは、山崎がかつての安定感を欠きセットアッパーに回っているが、まだ29歳。メジャー移籍の可能性もあるが、来年はクローザーに返り咲いて欲しい。このほか三嶋や砂田が控えるが、登板過多による勤続疲労が心配だ。砂田は復調したが、16年~18年までフル回転した三上朋也(JX-ENEOS~13年③)や田中健二朗常葉菊川高~07年高①)は、本格的な一軍復帰に時間がかかっている。

 左右に関係なく、即戦力の先発投手なら、大学生では佐藤隼輔(筑波大)を筆頭に、評価急上昇中の隅田知一郎(西日本工大の両左腕に、スタミナ抜群の三浦銀二(法大)、社会人では廣畑敦也(三菱自動車倉敷)が1位候補になる、このなかでは佐藤の評価が高く、先発左腕不足のロッテや西武の動向が気になるところだ。

 故障している主力が戻れば、先発のタレントは十分で、当然、高校生も上位でリストアップしている。森木大智(高知高)小園健太(市和歌山高)風間球打(明桜高)指名の可能性もあり、チームのコロナ感染で春夏連覇の夢が途切れたが、地元の石田隼都(東海大相模高)は是非とも獲得したい選手だろう。

 このほか、即戦力の先発候補では、長身右腕の飯田琉斗(横浜商大松井友飛(金沢学院大、ゲームメークに長けている徳山壮磨(早大、社会人ながら伸びしろ十分の米倉貫太(ホンダ)の評価が高い。左腕ではパワーピッチャーの黒原拓未(関学大や本格派の山田龍聖(JR東日本をリストアップしている。

 リリーフ強化では、鈴木勇人(創価大)は先発・リリーフともに適性があり、上位以外では獲得は難しい。古屋敷匠真(法大)山崎凪(中央学院大は、伸びしろのある速球派の右腕で、リリーバーとしてその長所を活かせば大化けする可能性もある。

 将来の主軸で高校生の獲得も重要で、1位で即戦力投手を獲得できれば、2位で先述した石田や木村大成(北海高)、松浦慶斗(大阪桐蔭高)等の左腕、達孝太(天理高)の獲得も可能性は高い。

 このほか中位以降では、花田侑樹(広島新庄高)をはじめ、田中楓基(旭川実高)竹山日向(享栄高)細谷怜央(中央学院高)の本格派右腕、甲子園でも快投を見せた左腕の秋山正雲(二松学舎大高)は先発候補。リリーフ候補では、スリークオーター左腕の井上透摩(金沢龍谷高)や、今夏準優勝の智弁学園高を、奈良大会決勝で追い詰めた合木凛太郎(高田商高をリストアップしている。

☆捕手~必要なし ※強いて言うなら即戦力(左打ちならベスト)

 DeNAの捕手は、日替わりならぬ年替わりで、伊藤光明徳義塾高~07年オ③)に戸柱恭孝(MTT西日本~15年④)、嶺井博希(亜大~13年③)が、代わる代わる主力を務めている。ともに30歳を超え、世代交代の準備も進んでおり急ぐ必要はない。

 強いて言えば、チーム内の競争を促すための即戦力がベストで、古賀悠人(中大)や強打の松川虎生(市和歌山高)の評価が高いが、上位で消える選手なので、優先順位からも今年は捕手の指名は下位や育成になると思う。

内野手~大学生・社会人の左打ちの二遊間

 内野のレギュラー陣は、一塁に外国人選手が入り、二塁にはルーキー牧の加入でひとまず不安はなくなった。三塁は宮崎、遊撃はベテランの大和と若手の森敬斗(桐蔭学園高~19年①)の併用だが、選手層は厚いとは言えない。特に宮崎は33歳、大和も34歳で世代交代の準備を進めなければならない。

 森が出場機会を増やしているが、牧と並んで経験値はこれからで、手薄な二遊間を即戦力選手で補強したい。二塁手では出塁率の高い池田来翔(国士館大)、遊撃では中山誠吾(白鷗大)中川智裕(セガサミーはともに強打がウリの選手。小柄ながら三拍子揃った杉崎成輝(JR東日本は二遊間を守れ、チームの補強ポイントに合う。

 高校生では、広角に打ち分ける長打力が魅力の阪口楽(岐阜一高)や、高校通算70本塁打有薗直輝(千葉学芸高)はポスト宮崎にピッタリの選手。星野真生(豊橋中央高)川口翔大(聖カタリナ高)はともに長打の大型遊撃手、三輪拓未(常総学院高)も遊撃手で堅守のヒットメーカー。

☆外野手~高校生は必須プラス大学生

 19~20年不振だった桑原が復調し、昨年首位打者の佐野、オースティンの3割打者が並ぶ外野は万全だが、選手層は内野より薄い…。神里も故障中で、このうち一人でも欠けたら一気に攻撃力が落ちてしまう。

 本来であれば関根大気(東邦高~13年⑤)や細川成也(明秀日立高~16年⑤)、蝦名達夫(青森大~19年⑥)がレギュラー候補なのだが、細川と蝦名は伸び悩み、関根は守備要員に落ち着いてしまった。

 外野手は19歳から22歳に選手が不在で、年齢バランスから高校生の獲得は絶対に必要で、前川右京(智弁学園高)田村俊介(愛工大名電高)米山航平(市尼崎高)と左打ちの長距離打者への評価が高い。大学生でも、正木智也(慶大)ブライト健太(上武大)と、大学を代表するスラッガーをリストアップしており、狭い横浜スタジアムには欲しい選手だ。ただ、どうやら機動力強化という考えは、今年もあまり意識がないように思える。

 

●上位で先発、リリーフの即戦力投手を獲得したい。野手はスラッガーをリストアップ

 1位指名は佐藤隼輔(筑波大)が本命だと思うが、重複を避ける傾向にあるので、三浦銀二(法大)廣畑敦也(三菱自動車倉敷)の即戦力、評価の高い畔柳亨丞(中京大中京高)など、外れ1位で重複する選手の単独指名の可能性もある。

 また、かつて投手補強が課題のなか、筒香嘉智(横浜高~09年①)を指名したこともあり、阪口楽(岐阜一高)正木智也(慶大)など、驚きの野手1位指名でアッと驚かせてくれるかもしれない。

【指名シミュレーション】 

1位~佐藤 隼輔(筑波大・投手)

 …キレのあるボールが武器の大学ナンバーワン左腕。完成度が高い即ローテ候補

2位~三浦 銀二(法大・投手)

 …最速150キロに変化球の精度も高い。馬力とスタミナを兼ね備える鉄腕

3位~石田 隼都(東海大相模高・投手)

 …今春のセンバツで29回1/3無失点の優勝投手。制球力抜群の技巧派

4位~中山 誠吾(白鷗大・内野手

 …飛距離は大学トップクラスの大型遊撃手。フットワークも良く守備も巧い

5位~川口 翔大(聖カタリナ高・内野手

 …強打がウリのスラッガーでチームでは4番・遊撃。走攻守にアグレッシブ

6位~米山 航平(市尼崎高・外野手)

 …スイングスピードの早い左の長距離砲で、ついたあだ名は「佐藤輝明二世」

7位~古屋敷匠真(法大・投手

 …最速150キロを超え、球威は申し分ない。伸びしろ十分の右の本格派