●最終戦までCSを争い、着実にチーム力は上がってきている
一昨年は断トツの最下位で、首位から39ゲーム差、新たに井口監督を迎えた昨年は、夏場から大失速し5位(28.5ゲーム差)で終えた。今年は最終戦まで、楽天とCS進出争いを展開したが、最終戦で負け4位(9.5ゲーム差)で終了した。
3年連続Bクラスだが、着実にチームが成長しているのは見て取れる。ただ、過去10年でAクラス3回(すべて3位)、最後にリーグ優勝したのは2005年、連覇どころかAクラスが3年続いたことが一度もなく、パ・リーグ最古参の球団としては寂しい限りだ。
昨年はグリーンライトで機動力を活かして走り回ったが、今年は本拠地にホームランラグーンを設置し、一転して長打力を活かしたチームに変貌した。本塁打は倍増し、得点力はリーグ2位まで上がり、チーム防御率も改善したが、チーム打率の低さと激減した盗塁数で数字以上の強さを感じなかった。
【9/25現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
防御率…3.90④(4.04⑤)打率….249⑤(.247④)
本塁打…158③(78⑥)盗塁75④(124②)
得点…642②(534⑤)失点611④(628⑤)得失点差+31(▲94)
●期待の若手が多く、5年後は投手王国の可能性も大!優勝を狙える布陣
ロッテの平均年齢27.6歳は、パ・リーグでは最も高く、12球団でも3番目に高い。野手陣は28歳を超えており、特に外野陣は荻野貴司に角中勝也、清田育宏の主力がすべて30歳以上で、若い内野陣とは対照的に世代交代が遅れている。
野手陣では、荻野が初の規定打席に達しただけではなく、リーグ3位の.315は、パ・リーグの右打者では一番だ。さらにチームリーダーの鈴木大地が、キャリアハイの.288でチームを牽引した。他には井上晴哉、レアード、中村奨吾の5人が規定打席に達したている。
ただ、昨年規定打席に達した角中と藤岡裕大、田村龍弘は、いずれもケガで離脱し、井上は何度も4番を外れ打率と打点が、中村奨も打率がリーグ最下位、盗塁(39→12)も激減し、レギュラー陣が結果を残すことができなかった。そのチャンスを若手が活かすこともできず、主力が離脱したときの選手層の薄さが露呈したシーズンになった。
ロッテのエースは誰だろう?と聞かれたとき、考えてしまうほど軸になる投手がいない。2桁勝利の投手は一人もおらず、石川歩と種市篤暉の8勝を筆頭に、二木康太に涌井秀章、ボルシンガーも100イニングを超え、なんだかんだ先発の役割を果たしたが、大事な試合を任せられる軸を欠いた。
中継ぎ・抑えは、益田直也の60試合を最高に、酒井知史と東條大樹が50試合を超え、左腕の松永昴大にチェン、田中靖洋もキャリアハイの40試合以上登板し、リーグ屈指の救援陣を形成できた。
さらにルーキーの小島和哉が先発で3勝、東妻勇輔も10ホールドを上げ、岩下大輝(5勝)と佐々木千隼(2勝)もケガが回復、若手の投手陣に手応えを感じ得るシーズンになった。
【ロッテの5年後の主力選手】
投 手…唐川侑己・益田直也・南 昌輝・東條大樹・西野勇士・有吉優樹
酒居知史・佐々木千隼・二木康太・土肥星也・岩下大輝・東妻勇輔
小島和哉・種市篤暉
内野手…井上晴哉・鈴木大地・三木 亮・中村奨吾・藤岡裕大・平沢大河
安田尚憲
外野手…岡 大海・加藤翔平・藤原恭大
5年後はかなり期待が持てる布陣だ。先発で二木に岩下、佐々木、種市等がエースを争い、中継ぎもできる西野や有吉もいる。中継ぎ・抑えでも益田に東條、酒居、唐川がおり、経験を重ねた強固な布陣になりそうだ。
野手でも鈴木を中心に、田村と中村奨、藤岡が全盛期を迎え、平沢と安田、藤原のドライチトリオが成長すると、怖いチームになる。
ロッテはファームでは、楽天に次ぎ2位で、投手では一軍を経験した中村稔弥に、古谷拓郎のルーキーが6勝を上げた。野手では安田が本塁打と打点の二冠王で、着実に成長しており、選手が少しずつだが揃ってきており、黄金期も決して夢ではない。
●絶対的エース獲得に、捕手の育成、高齢化する外野手と課題は多い
年齢バランスは内野手以外は良くない。ただ、以前のロッテのドラフトは、即戦力投手偏重型だったが、近年は野手の1位指名が多く、統一ドラフト以降6名と半数を超える。また、高校生選手の獲得も増えてきており、年齢バランスの悪さがマイナスなっていない。
投手は20歳と27歳がゼロで22歳と25歳は一人しかいない。また、左投手は7名(外国人を除く)しかおらず、量的にも不足している。捕手はレギュラーの田村が最年少で、19歳~24歳が不在だ。外野手は昨年、藤原が入団したが、20歳~25歳がゼロで、空白の年代が多い。
【ロッテの補強ポイント】
投 手…将来のエース候補と左腕投手の拡充
捕 手…田村の次世代を担う高校生捕手
内野手…右打ちの長距離砲
外野手…高齢化する主力に代わる即戦力
今年は高校BIG4の指名が有力視されている。絶対的なエースがいないので、将来のエース候補で奥川恭伸(星稜高・投手)や西純矢(創志学園高・投手)、不足している左腕で及川雅貴(横浜高・投手)は、早い段階でデビューする可能性がある。当然、果敢に佐々木朗希(大船渡高・投手)指名もありだ。
また、単独指名で左腕の即戦力・河野竜生(JFE西日本・投手)や、評価が高い立野和明(東海理化・投手)は、ともに高卒3年目の21歳で若く、エース候補として単独指名もあり得るかもしれない。
1位指名が投手になるなら、2位では野手を狙いたい。一番の候補は、佐藤都志也(東洋大・捕手)だ。佐藤は走攻守に優れた強肩強打の捕手で、ロッテにはいない左打ちの捕手に加え、一塁や外野も守れ、もしかしたら1位指名もあるかもしれない。
この他にはリードオフマンタイプの宇草孔基(法大・外野手)に柳町達(慶大・外野手)、将来の4番井上広大(履正社高・外野手)が候補で、佐藤と宇草は補強ポイントに合致する。
3~4位では、高校生なら投手または捕手、即戦力なら左腕投手または外野手が候補になる。高校生投手なら前佑囲斗(津田学園高・投手)や浅田将太(有明高・投手)は、高校BIG4にひけをとらないし、小林珠維(東海大札幌高・投手)は野手でも可能性がある。技巧派左腕の林優樹(近江高・投手)も、不足する左腕の強化にはピッタリだ。高校生捕手は今年豊富で、東妻の実弟・東妻純平(智弁和歌山高・捕手)や山瀬慎之介(星稜高・捕手)は、この順位でしか獲れない選手だ。
即戦力なら、左腕の浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ・投手)や、本田健一郎(JFE東日本・投手)は、投手陣に厚みを持たせる。大学生でも望月大希(創価大・投手)や伊勢大夢(明大・投手)は、この順位でも獲得のチャンスがある。
即戦力の外野手では、加藤雅樹(早大・外野手)と山田知輝(東洋大・外野手)は、ともに左打のスラッガー。俊足のリードオフマン高部瑛斗(国士館大・外野手)など、大学生外野手は年齢バランスから、必ず一人は獲得しておきたい。
5位以降の下位は、上位で獲得できなかった箇所を埋めたい。高校生は、投手なら上位指名も十分にあり得る鈴木寛人(霞ヶ浦高・投手)、地元の横山陸人(専大松戸高・投手)や左腕の玉村昇吾(丹生高・投手)。
野手では、捕手の石塚綜一郎(黒沢尻工高・捕手)、紅林弘太郎(駿河総合高・内野手)や菊田紘和(常総学院高・外野手)は、いずれもスラッガーで、素質豊かな高校生を抑えておきたい。
大学生・社会人では、、北山比呂(日体大・投手)や小孫竜二(創価大・投手)は、下位で指名できるチャンスがある。野手では、安本竜二(法大・内野手)は長打力もある三塁手で、不足している右打ちの内野手。金子莉久(白鷗大・外野手)は、俊足の左打で、脚の速さだけならドラフト候補のなかでも1~2を争い、いずれもロッテには不足している選手だ。菅田大介(奈良学園大・外野手)は、大学で二刀流をこなすほど身体能力が高く、元は投手だった岡に似た選手で、負けて劣らずのポテンシャルを秘めている。
【ロッテのドラフトを勝手にシミュレーション】
1位…西 純矢(創志学園高・投手)…一級品のスライダーのエース候補
2位…佐藤都志也(東洋大・捕手)…強肩強打の打てる捕手で大学選抜の主力
3位…前 佑囲斗(津田学園高・投手)…BIG4にも負けないパワーピッチャー
4位…東妻 純平(智弁和歌山高・捕手)…強肩で打撃が魅力の打てる捕手
5位…紅林弘太郎(駿河総合高・内野手)…将来の主軸を担える大型遊撃手
6位…本田健一郎(JFE東日本・投手)…小柄だがどの役割もこなせる即戦力
7位…金子 莉久(白鷗大・外野手)…巧打の大学屈指のスピードスター
ロッテは統一ドラフトになってから、1~2位で一人の高校生投手を獲得できていない。指名も12年の藤浪晋太郎(阪神)のみで、将来のエース候補として、上位で高校生投手を抑えておきたい。一方で、近年は積極的に野手を上位指名する秀逸なドラフトを展開しており、今年もロッテのドラフトから目が離せない。