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どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年ドラフト中間報告~要チェックの50人

 ペナントレースも後半戦に入り、今日からは夏の甲子園もスタートしました。2ケ月後にはドラフト会議も控え、現時点でのドラフト候補50選手を紹介したいと思います。その前に、まずは12球団の補強ポイントを簡単に整理してみた。

セ・リーグ

 ①ヤクルト…ポスト山田・青木の野手で、右打ちの内野手と高校生外野手

 ②阪 神 …即戦力野手(特に二塁)クローザー候補

 ③DeNA…即戦力投手(先発・リリーフ)高校生・大学生外野手

 ④巨 人 …将来のエース候補と即戦力投手(先発・リリーフ)、ポスト坂本の二遊

         間内野手、 右打ちの外野手

 ⑤広 島 …即戦力リリーフ、将来のエース候補(高校生)、大学生外野手

 ⑥中 日 …野手(即戦力・高校生ともに)高校生投手

パ・リーグ

 ①西 武 …即戦力野手(内・外野手ともに)先発候補(高校生・大学生)

 ②ソフトバンク …大卒・社会人投手、正三塁手候補

 ③楽 天 …投手(特に高校生は必須)右打ちの内野手

 ④オリックス  …即戦力野手(特に二塁)と将来のレギュラー候補、即戦力リリーフ投手

 ⑤ロッテ …打てる野手(特に二遊間を守れる高校生必須)ポスト益田のリリーフ

 ⑥日本ハム…投手(即戦力・高校生ともに)高校生外野手

 

●競合必至は矢澤と蛭間!12球団の戦略が反映される本命なきドラフト

 今年は現段階で、1位競合指名が予想されるのは二刀流の①矢澤宏太(日体大・投手/外野手)と②蛭間拓哉(早大・外野手)くらいで、蓋を開けると12球団すべて1位指名が違う可能性もある。不作とは言わないが、今年は本命なきドラフトと言える。

 二刀流の矢澤は、決して身体は大きくないが、高い身体能力で152キロを投げる左腕で、即戦力として活躍が期待される。ただ、大谷(エンゼルス)のようなスラッガーではなく、アベレージヒッタータイプで、プロでは投手指名になると思う。スター選手が欲しい巨人や日本ハム、地元のDeNAは是非とも欲しい選手だろう。

 蛭間はリーグ戦12本塁打の実績十分のスラッガーで、長打力だけではなく、広角に打ち分ける技術も高い。強肩で守備も良く、走塁技術も高いも走攻守三拍子揃った選手で、外野手が不足気味の地元の西武に、広島やDeNAは補強ポイントにハマる。

 この2人に続くのは、高校生ナンバーワンスラッガーの③浅野翔吾(高松商高・外野手)で、ヤクルトや西武、ソフトバンクなど将来性を重視するチームがじっくり育てたい選手。170センチと小柄ながら、高校通算62本塁打で長打力があり、外野以外にも捕手、三塁、遊撃を守れ、しかも足の速いスイッチヒッターと、ここまでくると凄すぎて分からなくなる気もするが、プロでどういった選手に育つか楽しみだ。

 同じ高校生では、④山田陽翔(近江高・投手)はスター性も十分の将来のエース候補だ。昨夏の甲子園では野手のほうが可能性が高いかな…と思っていたが、今春のセンバツですっかり投手らしくなり驚いた。148キロのストレートに変化球の精度も高く、センバツはチームを準優勝に導いている。浅野も山田も今夏の甲子園に出場しており、活躍次第では一気にドラフトの主役に躍り出る可能性がある。

 即戦力投手では、⑤曽谷龍平(白鷗大・投手)と⑥益田武尚(東京ガス・投手)も1位で消える選手だろう。曽谷はスリークオーターから投げる150キロ左腕で、リリーフへの適性も高く、矢澤と同じ即戦力左腕。益田は課題の制球力も克服し、名門チームのエースとして大学時代の指名漏れから1位候補まで成長した。先発不足のチームは是が非とも欲しい選手の一人と言える。

 このほかの1位指名候補者6名を挙げると、即戦力投手で⑦菊地吏玖(専大・投手)と⑧河野佳(大阪ガス・投手)、⑨片山晧心(ホンダ・投手)は上位で消える可能性が高い。

 菊地は今春のリーグ戦で防御率1点台の快投を見せ、一気に上位候補に名を連ねた。ストレートは150キロを超え、フォークを習得したことで投球の幅が広がった。河野は昨年の日本選手権でMVPを獲得し、今年の都市対抗は不完全燃焼気味だったが評価は変わらない。高卒3年目と年齢も若く伸びしろもある。

 本格派の河野に対し、片山は制球力に優れた左腕で、打者のタイミングをずらして打ち取るピッチングが身上で、先発左腕不足のチームは上位で抑えておきたい選手だ。矢澤や曽谷を外したチームがシフトする可能性が高い。 

 個人的に注目しているのは、社会人3年目の⑩吉村貢司郎(東芝・投手)で、大学時代に痛めた右肩も完治したものの、昨年は悔しい指名漏れを味わった。ただ、昨年のドラフト後の大会で好投を続け、多くのスカウト陣を悔しがらせた。今年は状況次第では1位指名の可能性もあり、オールドルーキーとして念願のプロ入りを目指す。

 2人の大学生野手にも注目で、⑪山田健太(立大・内野手は、根尾(中日)や藤原(ロッテ)とともに大阪桐蔭高で春夏連覇したメンバーで、ヒットを量産するクラッチヒッター。貴重な右打ちの二塁手として、プロからの需要も高い。

 東海大相模高時代より注目されていた⑫森下翔太(中大・外野手)は、中軸を担える右打ちのスラッガーで、牧(DeNA)が主力だったチームで1年からレギュラーを獲得している。

 

●高校生~北海道に逸材多く、今夏の甲子園でスター選手が誕生するか

 高校生投手は、打者としての評価も高い⑬森下瑠大(京都国際高・投手)は、昨夏の甲子園で4強入りの原動力になった本格派左腕。残念ながら今夏の甲子園では力を発揮できずに初戦で敗れたが、進路をプロ一本に絞っている。

 同じ左腕では⑭門別啓人(東海大札幌・投手)も上位候補になる。今年の北海道は高校生投手に逸材が多く、仕事で帰省した際、ちょうど南北海道大会の準決勝で、門別とともにドラフト候補の⑮坂本拓己(知内高・投手)と⑯斎藤優汰(苫小牧中央高・投手)がベスト4に残っており3人を観ることが出来た。

 門別は150キロの直球連発とはならなかったが、糸をひくような制球力に、変化球の精度が高く完成度は一番だった。坂本は粗削りながら、指にかかった時の直球は威力十分で、変化球を駆使して優勝候補の東海大札幌高を2-1で破る番狂わせを演じた。 斎藤は本調子ではなく、優勝した札幌大谷高に打ち込まれたが、今春150キロを超えたポテンシャルは偽りなく、将来とんでもない投手になる可能性を感じた。

 まだまだ今年の北海道は楽しみな選手が多く、⑰辻田旭輝(クラーク国際高・投手)は、今春のセンバツで神戸国際大高相手に敗れはしたものの11奪三振を記録したパワーピッチャー。先述した菊地は札幌大谷高出身、新潟大会決勝で延長11回で惜敗した⑱茨木秀俊(帝京長岡高・投手)も北海道から越境入学した選手で、総合力の高さでドラフト候補に挙がっており、故郷からこれだけ候補者が多いのは正直嬉しい。

 その茨木に投げ勝ったのが⑲田中晴也(日本文理高・投手)で、山田や森下、門別と並んで上位候補に名前が挙がっている。186センチの堂々の体格から148キロの直球を軸に質の良いボールを投げる本格派右腕で、甲子園でどんなピッチングをするか楽しみだ。

 今夏の甲子園の断トツの優勝候補で、3度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭。そのチームでエースナンバーを背負う⑳別所孝亮(大阪桐蔭高・投手)も150キロを超える本格派で、あの激戦の大阪大会をわずか1失点で勝ち抜いた投手陣のエースのピッチングは今から楽しみだ。

 残念ながら今夏は予選で敗退したが、㉑米田天翼(市和歌山高・投手)は精度の高い変化球で、強打の花巻東高(岩手)と明秀日立高(茨城)を抑え、今春のセンバツ8強の立役者になった。㉒宮城誇南(浦和学院高・投手)センバツで評価を上げた左腕で、球速以上にキレのある直球と変化球が武器でともに安定感が高い。

 このほか㉓西村瑠伊斗(京都外西高・投手)は、最速147キロの直球に変化球も多彩だが、打者としても通算50本塁打を放っており、プロではどちらで指名されるか注目の選手。㉔斎藤響介(盛岡中央高・投手)は、細身ながら完投能力の高い本格派右腕で、予選から注目を集めている。

 左腕では、㉕森山暁生(阿南光高・投手)は昨夏2年生エースとして甲子園に出場し、最速148キロの本格派左腕。㉖藤本拓己(尼崎北高・投手)は無名の高校ながら、180センチを超える長身から投げ下ろす球質の良さが評価されている。残念ながら鹿児島大会決勝で敗れたが、㉗大野稼頭央(大島高・投手)奪三振能力が高く、躍動感あふれるプレーは身体能力の高さを感じスタミナも豊富だ。

 野手は2年生に逸材が多く、現段階では候補者は多くないが、㉘小池裕吏(東海大菅生高・内野手と㉙光弘帆高(履正社高・内野手の評価が高い。小池は好機に強い打撃が売りの攻守巧打の三塁手で、元中日の小池正晃を父親に持つサラブレッド。光弘は走攻守揃った遊撃手で、特に守備力に自信を持っている。

 小池と光弘がリードオフマンタイプに対し、スラッガーでは㉚内藤鵬(日本航空石川高・内野手が面白い。100キロを超える体格から、高校通算52本塁打と遠くに飛ばす能力はケタ違いで、まさにロマンを感じる選手だ。

【今夏、甲子園出場のドラフト注目選手】

 投 手…布施東海(二松学舎大高)梶谷礼央(山梨学院高)南沢佑音(天理高) 

       マーガード真偉輝キアン(星綾高) 武元一輝(智弁和歌山高)

     川原嗣貴(大阪桐蔭高)芝本琳平(社高)富田達弥(鳴門高)

     日高暖己(富島高)

 捕 手…山浅龍之介(聖光学院高)片野優羽(市船橋高)松尾汐恩(大阪桐蔭高)

       野田海斗(九州国際大高)

 内野手…戸井零士(天理高)村上慶太(九州学院高)

 外野手…石川ケニー(明秀日立高)

 

●大学生~投手は個性溢れる逸材が並び、右打ち内野手に上位候補が並ぶ

 今年は大学生に候補者が多く、特に投手で楽しみな選手が多い。一昨年の早川(楽天)や昨年の隅田(西武)のような超目玉はいないが、各チームの補強ポイントに合わせてどういう指名になるか注目したい。

 上位候補で名前が挙がるのは、㉛渡辺翔太(九産大・投手)と㉜才木海翔(大商大・投手)、㉝荘司康誠(立大・投手)の3選手で、ともに直球は150キロを超える。渡辺はパームボールとスプリットを合わせた独自の変化球で奪三振能力が高く、1位指名の可能性も高い。才木は馬力のあるタフネス右腕、荘司は180センチを超える長身で、制球力に課題はあるが伸びしろがあり将来性を期待する声が多い。

 これに続くのが、㉞伊原陵人(大商大・投手)と㉟青山美夏人(亜大・投手)、㊱羽田野温生(東洋大・投手)も評価が高く、2~3位で消える可能性が高い。

 伊原は小柄ながら奪三振能力の高い左腕で、先発・リリーフもこなしプロでも重宝しそうな選手。青山は派手さはないが投球術に長けた総合力の高い選手で、とにかくタフ。同じタフネス右腕では、㊲福山優希(駒大・投手)も多彩な変化球を武器に、2試合連続完投勝利を上げるなどゲームメークに長けている。

 羽田野は発展途上で伸びしろがあり、直球だけなら候補者最速の156キロを投げ、リリーフの適性が高い。好不調の波が大きい課題を克服できれば、リリーフで即戦力になれる。伸びしろで言えば、㊳水口創太(京大・投手)も負けていない。身長190センチで最速152キロを超え、課題の制球力が克服できればリリーバーとして面白い。大学では医学部に通っており、その進路に注目が集まる。

 このほか、㊴仲地礼亜(沖縄大・投手)は、制球力に優れ安定感抜群の投球が高評価だったが、ここにきて球速も増しており、一気に上位指名候補に駆け上がるかもしれない。また、㊵久保玲司(近大・投手)と㊶大石晟慈(近大・投手)の近大の両左腕にも注目で、久保は小柄で細身ながら、テークバックの小さなフォームから151キロの直球が武器。大石も最速150キロのキレのあるストレートを武器に、ロングリリーフもこなす。 

 野手ではともに遊撃手の㊷田中幹也(亜大・内野手)と㊸奈良間大己(立正大・内野手が、山田と並んで上位指名候補に名前が挙がる。田中は166センチと小兵ながら菊地涼(広島)を彷彿させる広い守備範囲で二塁も守れ、奈良間はパンチ力もある攻撃的な1番打者。ともに50メートル5秒8の俊足で、リードオフマン候補として、1番打者が固定できないチームは是非とも欲しい選手だ。

 捕手では、㊹吉田賢吾(桐蔭横浜大・捕手)の評価が高い。二塁送球1秒9の強肩で、打撃力も向上し今春のリーグ戦では首位打者も獲得した。打てる捕手として成長著しく、今年は捕手の候補が少ないだけに指名順位が上がるかもしれない。

 外野手では、㊺澤井廉(中京大・外野手)中京大中京高時代より注目されていたスラッガー。蛭間と同様、長打力プラス広角に打てる選手で、蛭間を外したチームが次にシフトする可能性も十分にある。

 

●社会人~結局、今年も投手中心。野手の奮起に期待したいが…

 社会人は今年も投手中心の指名になりそうで、都市対抗で優勝した㊻関根智輝(ENEOS・投手)や㊼大畑蓮(西部ガス・投手)も即戦力投手として評価が高い。関根はトミージョン手術を経て、150キロの強いストレートを武器に、先発・リリーフともに適性が高い。大畑は河野と同じ高卒3年目で、長身細身ながら緩い変化球と150キロ超えの直球を武器に、本人も言うようにリリーバーとして上位指名を狙う。

 面白そうなのが㊽藤村哲之(東芝・投手)で、球の出どころが分かりにくいフォームを駆使する技巧派左腕。球速はそれほどでもないが、内角を突く強気な投球で、パワーピッチャーが全盛の時代に、こういった投球技術に長けた選手には、個人的に是非とも活躍して欲しい。

 昨年は野村勇(ソフトバンク)や中村健(広島)が3位で指名されたものの、この間社会人野手の上位指名が無く寂しく、今年も上位候補と呼べる選手が見当たらない。そのなかで、㊾中山遥斗(三菱重工エスト・内野手と㊿平良竜哉(NTT西日本・内野手に期待したい。

 ともに貴重な右打ちの内野手で、中山は広角に打ち分ける技術に加えパンチ力もある。二塁と遊撃を守り、強肩で走塁技術も兼ね備えており、総合力の高さでプロに挑む。一方で平良は、170センチと小柄ながらフルスイングが身上の攻撃的野手で、得意の打撃力を磨いて社会人野手の実力の高さを証明して欲しい。