●リーグナンバーワンの防御率も、長打力不足など、打撃陣の課題が多い
最後に優勝したのが2015年で、それ以降Aクラスが7回、Bクラスが5回で、今年は2年連続の最下位は免れたが、Bクラスはほぼ確定的だ。また、例年通りと言えばそれまでだが、今年も新外国人のソラーテの造反~解雇や、チームの功労者の鳥谷敬への引退勧告など、フロントのドタバタ劇も相変わらずだった。
今年は投手陣が奮闘し、チーム防御率3.58はリーグ1位。一方でチーム打率.251は、リーグ4位で、昨年と変わらない。盗塁数はリーグ1位の94だが、本塁打は相変わらずで、89本はリーグ5位…長打力不足は解消されなかった。。
矢野監督は、センターラインを強化し、打ち勝つ野球ではなく、守り勝つ野球を目指した。チームの戦力分析からは間違いではなかったが、得点力に乏しい打線と、防御率の高さの割には失点が多く、結果には繋がらなかった。
【9/21現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】
防御率…3.58①(4.03②)打率….251④(.253⑥)
本塁打…89⑤(85⑥)盗塁94①(77②)
得点…510⑥(577⑤)失点561③(628②)得失点差▲51(▲51)
●主力にベテランが多く、世代交代が喫緊の課題
阪神の平均年齢28.1歳は、ヤクルトに次いで2番目に高く、28歳を超えているのはこの2チームだけだ。35歳以上の大ベテラン勢に主力が多く、今年はエースのメッセンジャーが引退し、鳥谷もチームを去るようだが、それでも投手では岩田稔、藤川球児、能見篤史、野手では糸井嘉男と福留孝介がおり、世代交代は喫緊の課題だ。
投手陣では、オリックスからFAで加入した西勇輝が規定投球回数をクリアし、勝ち星は8勝に留まったが、クオリティスタート18試合は一番で、今年は西の加入が大きかった。青柳晃洋も8勝を上げ、勝ち星には恵まれていないが、高橋遥人も100イニング以上を投げており、先発の役割を果たしている。
中継ぎ・抑えではジョンソンと岩崎優が安定した成績を残し、ベテランの藤川が、安定感を欠いたドリスに代わりクローザーを務めた。
一方で飛躍を期待された、昨年7勝の小野泰己は0勝、6勝の才木浩人も2勝で期待を裏切り、かつてのエース藤浪晋太郎は1試合登板で復活できなかった。
打撃陣では、なんといってもルーキーの近本光司の活躍が光る。打率こそ.274で高くはないが、154安打を放ち、セ・リーグの新人安打記録を塗り替えた。また、34盗塁はヤクルトの山田哲を抑えて現在リーグトップで、チームの盗塁数の1/3は近本だ。
この他に糸井は3割を超え、糸原健斗と大山悠輔、梅野隆太郎が規定打席に達している。マルテとルーキー木浪聖也、最年長41歳の福留も年間通じて結果を残した。
ただ、本塁打は大山の13本がチーム最高で、12本のマルテと2人しか10本を超えていない。盗塁も近本の次は梅野の14盗塁で、近本以外はほぼマークが必要なく、数字だけ見ると打線に怖さを感じない。今年、近本が入団していなければ、どんな結果になったのだろうと思わず考えてしまう。
【阪神の5年後の主力選手】
投 手…西 勇輝・秋山拓巳・岩貞祐太・岩崎 優・青柳晃洋・島本浩也
藤浪晋太郎・小野泰己・高橋遥人・才木浩人
捕 手…梅野隆太郎・原口文仁
外野手…中谷将大・高山 俊・近本光司
5年後は正直かなり不安だ…投手は西を中心に青柳や秋山、岩貞と結果を残した先発陣がいる。ファームでも馬場皐輔や望月惇志が頑張っているが、ともに先発タイプで中継ぎ・抑えは岩崎と島本しかいない。
野手も事実上、捕手は梅野だけ、長打を期待できるのも大山のみ。ファームでも板山祐太郎と江越大賀、陽川尚将が8本塁打を放っているが、陽川以外はホームランバッターではなく、当面は外国人選手とFA選手獲得で乗り切るしかなさそうだ。
●歪な野手陣の年齢バランス…投打に戦力が不足している
年齢バランスは投手は問題ないが、野手が酷い…投手は、24歳~26歳に11名と固まっているが、各年齢に選手がおり問題ない。
野手は、捕手では19歳~24歳までゼロ、内外野の19歳~22歳には、今年のドラフト2位の小幡竜平の1人しかいない。ちなみにこの世代にはヤクルトの村上やロッテの平沢に安田、日本ハムの清宮や平沼、楽天の渡邊佳の伸び盛りの若手がおり、さすがに1人では話にならない。
その反面、25歳になんと7名、26歳には外野手だけで3名もおり、なぜこんな歪な年齢構成になる指名を続けたのか理解に苦しむ。一つの年齢に集中すると身体的な衰えが同時に複数くることになり、世代交代の入れ替え幅が大きくなり、戦力の維持が難しくなる。阪神の野手陣はまさにそれで、修正するにはしばらく時間がかかる。
【阪神の補強ポイント】
投 手…将来のエース候補(左腕だとベスト)と即戦力投手(先発・抑え)
捕 手…梅野の控えになる即戦力または高校生捕手
内野手…右打ちの長距離打者と二遊間のバックアップ
外野手…俊足巧打のリードオフマン(右打ちだとベスト)
投打に戦力が不足しているが、今年は投手の1位指名が濃厚で、即戦力なら森下暢仁(明大・投手)、将来のエース候補で奥川恭伸(星稜高・投手)、及川雅貴(横浜高・投手)が候補になる。個人的には、昨年に続き野手で、石川昴弥(東邦高・内野手)の単独1位や、外れ1位で、今夏の甲子園を沸かせた井上広大(履正社高・外野手)等の将来の4番候補指名は、スケールの大きい指名になると思う。
1位指名は高校生指名になる可能性が高いので、2位で即戦力投手を抑えておきたい。右腕なら太田龍(JR東日本・投手)や地元・大阪出身の吉田大喜(日体大・投手)、クローザーで津森宥紀(東北福祉大・投手)が候補になる。また、左腕は20歳~23がゼロで、浜屋将太(三菱日立パワーシステムズ・投手)や坂本裕哉(立命大・投手)など、大学生または社会人選手で空白をなくしたい。
3~4位では、即戦力野手を補強し、少しでも貧打線を解消したい。近本の成功もあり、社会人野手に行きたいところだが、年齢バランスから大学生に狙いを定めたい。スラッガータイプでは加藤雅樹(早大・外野手)、勝俣翔貴(国際武道大・内野手)は強打の三塁手、柳町達(慶大・外野手)と高部瑛斗(国士館大・外野手)は俊足巧打のリードオフマン。梅野の控えで、今年豊富な大学生捕手で郡司裕也(慶大・捕手)、佐藤都志也(法大・捕手)は外野も守れるスラッガーで、将来性のあるタレントが揃っている。
5位以降の下位では、上位で獲得できなかった箇所を埋めたい。育成主眼の高校生では、左腕の井上温生(前橋商・投手)や玉村昇吾(丹生高・投手)、レギュラー候補で藤田健斗(中京学院大中京高・捕手)や上野響平(京都国際高・内野手)、木下元秀(敦賀気比高・外野手)は下位でも指名のチャンスがある。
即戦力投手では、北山比呂(日体大・投手)や村西良太(近大・投手)、地元の大西広樹(大商大・投手)、左腕で高橋佑樹(慶大・投手)は伸びしろもある大学生。社会人では小又圭甫(NTT東日本・投手)や嘉陽宗一郎(トヨタ自動車・投手)は経験豊富な即戦力右腕だ。
野手では安本竜二(法大・内野手)は長打力もある三塁手、篠原涼(筑波大・内野手)は、走攻守はもちろんのことリーダーシップに長けた選手。外野手では、菅田大介(奈良学園大・外野手)は、大学で二刀流をこなすほど身体能力の高さが魅力、佐藤直樹(JR西日本・外野手)は、右打ちで足も速く、地元出身で21歳と若く評価が急上昇している。
【阪神のドラフトを勝手にシミュレーション】
1位…及川 雅貴(横浜高・投手)…最速150キロの高校生ナンバーワン左腕
2位…太田 龍(JR東日本・投手)…長身から投げ下ろすパワーピッチャー
3位…郡司 裕也(慶大・捕手)…日本代表で主軸の強肩強打の即戦力捕手
4位…加藤 雅樹(早大・外野手)…安定感抜群の勝負強い打撃が売り
5位…北山 比呂(日体大・投手)…大学で化けた最速154キロは発展途上中
6位…安本 竜二(法大・外野手)…抜群の長打力を誇るスラッガー
7位…佐藤 直樹(JR西日本・外野手)…足も速く広い守備範囲、長打も魅力
元々、ドラフトが上手くないチームに加え、お家騒動がお家芸で、育成に疑問符がつくチームだけに、ドラフトを通じて明確なコンセプトを打ち出せるかが課題になると思う。残念ながら、いつも悪い意味で驚かされるドラフトで、今年はどんなサプライズがあるか楽しみ、いや不安だ。