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どのチームが「人」を育て強くなるのか

23年ドラフト予想☆日本ハム~投手陣の改善と若手野手の成長で土台は出来た!育成の日ハム復活か

 就任2年目を迎えた新庄監督。昨年は「優勝は狙わない」と宣言し、育成と主力になり得る選手の発掘をメインに1年かけトライアウトを実施した。一転、新球場元年の今年は「優勝しか狙わない」と自身のパフォーマンスも封印してシーズンに臨んだ。

 監督の思いとは裏腹に、スタートダッシュは失敗し、新球場も今ひとつ盛り上がりに欠けるなか、5月からは徐々に勝ち星を増やし、一躍ダークホース的な存在になった。ただ、7月の13連敗が響きペナント争いから脱落…、残念ながら2年連続の最下位の可能性もあるが、厳しい夏場にまた盛り返し、最下位争いをしているのが不思議なくらいなチームに成長し、来年に向けて十分に手応えを感じるシーズンになっている。

【9/8現在のチーム成績 ※( )は昨年の成績】

  勝敗 122合53勝68敗1分⑥

  防御率…2.98③(3.46⑥)打率….236⑤(.234④)

  本塁打…88④(100④)盗塁65③(96③)

  得点…408⑤(463⑥)失点…411③(534⑤)

●投手陣が大きく改善し、期待の若手が打線を引っ張りチームの土台はできた

 派手なパフォーマンスとは裏腹に、新庄監督は一貫して「守りを固めて相手に点をやらない野球」を目指している。成果は早くも今年の成績に表れ、昨年リーグワーストの防御率だった投手陣はリーグ3位まで改善し、防御率2点台をキープしている。

 その好調の投手陣で新戦力と呼べるのは、ソフトバンクにFA移籍した近藤健介の人的補償で獲得した田中正義(創価大~16年ソ①)くらいで、北山や鈴木健矢(JX-ENEOS~19年④)の先発転向はあったが、大きく役割を変えずに既存の戦力の底上げが進んだのは評価できる。

 反面、思い通りに進んでいないのが守備で、12球団ワーストの79失策を数え、数字以上に信じられないようなミスも目立つ。若手主体のチームなので、授業料と言ってしまえばそれまでだが、勝敗に影響する手痛いミスが多く、守備力強化が上位浮上の条件になる。

 打線は楽しみな布陣から、徐々に怖さを感じる攻撃陣になった。特に24歳の清宮幸太郎早実高~17年①)に、23歳の万波と野村の同級生コンビのクリーンアップは末恐ろしい中軸になる予感が漂う。

 積極的な補強の姿勢も良い。決して捕手に窮していた訳ではないが、連覇のオリックスからFAで伏見寅威(東海大~12年オ③)を、中日からマルティネスを獲得した。新球場元年に際し、地元(札幌)出身の伏見をいち早く獲得表明し、連覇のチームからエキスを注入する補強は成功と言える。また、捕手での出場機会を切望していたマルティネスの希望をくみ取り、一塁やDH併用で起用するハンドリングもハマっている。

 さらに新庄監督が潜在能力を高く評価していた阪神の江越大賀(駒大~14年神③)には、かつての正二塁手の渡邊諒、打撃の評価が高かった中日の郡司裕也(慶大~19年④)には、宇佐見真吾をトレード要員にするなど、本当に欲しい選手は、主力級も放出する姿勢は特筆できる。

 今年のオフは上沢直之専大松戸高~11年⑥)のMLB挑戦や、加藤貴之(新日鉄住金~15年②)もFA移籍の可能性が高いが、来年ファイターズを最下位予想する評論家は相当数減ると思う。そんな期待が持てるチームになった。

最大の懸念材料は上沢と加藤貴の左右Wエースの去就…FA前のチームの判断は?

 日本ハムのドラフト1位の基本方針は、シンプルに「その年の一番良い選手」を獲るで、当時は故障癖が危惧されていたダルビッシュ有パドレス)や、当初からMLB入りを表明していた大谷翔平エンゼルス)を臆することなく指名した。

 ただ、昨年は新庄監督の意向が強く反映され、即戦力に偏った指名になり、MLBからの逆輸入で28歳の加藤豪将(メッツ~22年②)も獲得した。今年は従来の方針で行くのか、それとも昨年のような補強を重点に行くのかその判断の注目したい。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 18年③…野村佑希(花咲徳栄高/②・内野手)万波中正(横浜高/④・外野手)

 19年⑤…河野竜生(JFE西日本/①・投手)

 20年⑤…伊藤大海(苫小牧駒大/①・投手)

 21年⑤…北山亘基(京産大/⑧・投手)上川畑大悟(NTT東日本/⑨・内野手

    22年⑥…なし

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日本ハムの補強ポイント】 

 投 手…主力流出に備えた即戦力(特に先発左腕)

 捕 手…年齢構成で高校生

 内野手…二遊間のレギュラー候補と守備職人

 外野手…年齢構成で高校生と大学生の両方

 今年の最大のポイントは、上沢と加藤貴の去就にかかってくる。2人とも主力中の主力で、最悪この2人が抜ければ影響はあまりに大きく、一人でも多く即戦力と呼べる投手を補強したいだろう。

 従来の基本方針(その年で一番)となると、現段階では佐々木麟太郎(花巻東高)になるだろうが、同じ一塁または三塁には清宮や野村がおり、世代ナンバーワン投手の前田悠伍(大阪桐蔭高)も候補になるが、18年の3位を最後に5年連続Bクラスのチームを浮上させるには、今年豊富な大学生投手を獲得するほうが間違いはない。

 もう一方で気になるのが、野手のバランスが悪い。外野手登録は僅かに8名で、これはヤクルトと並び最も少ない。また、22歳以下の野手が、細川凌平(智弁和歌山高~20年④)を含め内野手3名しかおらず、清宮や万波の若手が躍動している反面、将来有望な若手選手が不足しており、即戦力が求められる一方で早急に是正する必要がある。

☆投手~主力流出に備えた即戦力(特に先発左腕)

 今季も先発の3本柱が健在で、上沢と加藤貴、伊藤大海(苫小牧駒大~20年①)が、それぞれ21試合に先発し、3人とも貯金こそないがゲームは作れている。さらに上原健太(明大~15年②)が安定感を増し、右の北山に左の根本悠楓(苫小牧中央高~20年⑤)、アンダースローの鈴木などバラエティに富んだ投手が控えている。

 リリーフは田中正がクローザーに定着し、ともに先発から転向した池田隆英(創価大~16年楽②)と河野がハマり、福田俊(星槎道都大~18年⑦)も、22試合を投げて自責点ゼロを続けている。加えて玉井大翔(新日鉄住金~16年⑧)に宮西尚生関学大~07年③)など経験豊富な選手が支えており、リリーフ陣は安定している。

 とにかく今年は上沢と加藤貴の去就で、残留するのであれば高校生主体でも良いと思うが、移籍ならば即戦力に絞るしかない。幸いなことにリリーフ投手は豊富で、育成の柿木蓮大阪桐蔭高~18年⑤)に斎藤伸治(東京情報大~20年育②)、福島蓮(八戸西高~21年育②)が結果を残している。

 1位候補は即戦力の細野晴希(東洋大常廣羽也斗(青学大下村海翔(青学大に、高校生では前田と東松快征(享栄高)の両左腕、右の本格派の坂井陽翔(滝川二高)の名前が挙がり、細野と常廣、前田、東松は競合の可能性が高い。

 一方で、即戦力と言われるなか、細野と常廣は成長過程で、本当の意味での即戦力では、安定感が光る上田大河(大商大)武内夏暉(国学院大)、制球力の良い高太一(大商大)はデビューも早そうだ。また、先発に絞れば左腕の古謝樹(桐蔭横浜大奪三振率の高い岩井俊介(名城大)、高卒4年目の広沢優(JFE東日本)も上位候補に挙がる。

 高校生では、U-18にも選ばれた木村優人(霞ヶ浦高)に190センチの大型右腕の日當直喜(東海大菅生高)、安定感のある左腕の杉原望来(京都国際高)は他球団もマークする上位候補。

 素材型では今夏の甲子園では登板が無かったが将来性豊かな平野大地(専大松戸高)に、投手転向1年目で150キロを記録した早坂響(幕張総合高)、打者としても評価の高い武内涼太(星稜高)武田陸玖(山形中央高)日本ハム好みの選手だ。大学生では地元の滝田一希(星槎道都大)は体力面や制球力に課題はあるものの、ハマったときの投球は群を抜いており、将来大化けを期待させる。

 滝田以外の北海道関連投手では、最速144キロ左腕の千葉隆広(旭川明成高)伊地知晴(旭川志嶺高)西村昂浩(白樺学園高)、高校生に、大学生は石沢大和(東農大オホーツク)帯川琉生(北海学園大、社会人では片山楽生(NTT東日本)早川太貴(ウィン北広島)をリストアップしている。

☆捕手~年齢構成で高校生

 捕手は最年少が23歳の田宮裕涼(成田高~18年⑥)で、育成選手にも捕手は不在で育成に時間がかかるポジションだけに高校生または大学生の指名が必須だ。

 正捕手は移籍の伏見が務め、27歳の清水優心(九州国際大高~14年②)に25歳の古川裕大(上武大~20年③)が2番手を争い、郡司やマルティネスも控え補強の優先順位は高くない、

 ただ、今年は捕手の候補が少なく、評価の高い進藤勇也(上武大)堀柊那(報徳学園高)は順位を上げないと獲れない。下位指名なら鈴木叶(常葉菊川高)有馬諒(関大)を狙っても良いと思う。

内野手~二遊間のレギュラー候補と守備職人

 内野は年齢構成のバランスが良いが、右打者が不足し、二遊間はレギュラーが決まっていない。遊撃は上川畑とルーキーの奈良間大己(立正大~22年⑤)が主だが、二塁は石井一成(早大~16年②)の29試合が最多で、20試合以上出場の選手が4名もおりいずれも決め手に欠けている。

 今年は高校生野手に有望株が揃っているが、横山聖哉(上田西高)は守備力の高い大型遊撃手で、将来のレギュラー候補。廣瀬隆太(慶大)は二塁も守れる右の大砲で、内野の課題を解消することができる。

 辻本倫太郎(仙台大)は守備(二遊間)だけで飯を食える守備職人で、地元出身で指名の可能性も高い。社会人では相羽寛太(ヤマハ中川拓紀(ホンダ鈴鹿も守備の巧さに定評がある。

 高校生スラッガーも上位候補で、佐々木麟のほかに真鍋慧(広陵高)佐倉侠史朗(九州国際大高)、右の森田大翔(履正社高)もマークしており、将来の強力打線形成を優先するのであれば、思い切った指名もアリだと思う

☆外野手~年齢構成で高校生と大学生の両方

 外野手の最年少は23歳の万波で、今年は高校生または大学生を獲得しなければ育成自体に遅れが生じてしまう。その万波は長打力と類まれなる強肩で、昨年首位打者松本剛(帝京高11年②)に次いでレギュラーを確立した。プロ入り後、ケガで苦しんだ五十幡亮汰(中大~20年②)が今年は自慢の快足を見せているが、層は数的にも薄い、

 1位候補の度会隆輝(ENEOS)は、高卒3年目の21歳の安打製造機で、社会人でパワーも増した。同じ野手を1位指名するのであれば、佐々木麟より度会のほうが補強ポイントに合致する。

 高校生では廣瀬は外野手コンバートも面白いし、松本大輝(智弁学園高)は甲子園でも長打力は折り紙つきで、高野颯太(三刀屋高)明瀬諒介(鹿児島城西高)も長打力が魅力のスラッガーだ。

育成の日本ハムから、昨年は即戦力重視!今年は原点回帰か、前年踏襲か

 今年の1位指名は上沢と加藤貴の去就で、細野晴希(東洋大)と常廣羽也斗(青学大)の即戦力先発投手か、攻撃力アップで度会隆輝(ENEOS)、将来性で佐々木麟太郎(花巻東高)の選択になり、細野と常廣、佐々木は競合必至が予想される。

 今年は投手は即戦力と高校生、捕手と外野手は高校生は必須、内野は課題を抱えており全ポジションをフォローする必要がある。一方で育成の日本ハムに原点回帰するのか、昨年同様、即戦力中心に補強するのか、その判断に注目したい。

【指名シミュレーション】

      (Aパターン)          (Bパターン)

 1位~細野晴希(東洋大・投手)    度会隆輝(ENEOS・外野手)

 2位~堀 柊那(報徳学園高・捕手)  下村海翔(青学大・投手)

 3位~日當直喜(東海大菅生高・投手) 横山聖哉(上田西高・内野手

 4位~武田陸玖(山形中央高・外野手) 滝田一希(星槎道都大・投手)

 5位~辻本倫太郎(仙台大・内野手)  武内涼太(星稜高・投手)

 6位~片山楽生(NTT東日本・投手) 松本大輝(智弁学園高・外野手)

 おススメの選手は投打二刀流の武田陸玖(山形中央高)で、U-18で4番を打つ実力通り野手の評価が高く、投手から野手へコンバートした中日の岡林勇希と被る。一方で矢澤宏太(日体大~22年①)とW二刀流も夢があって、個人的には実現して欲しい。