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どのチームが「人」を育て強くなるのか

2022年ドラフト寸評~セ・リーグ編・巨人とDeNAは会心のドラフト!中日は2年連続で迷走状態…

 今回はセ・リーグ編ですが、全体的に良いドラフトが多く、特に巨人とDeNAは会心のドラフトになった。そのなかで中日のみ迷走した印象を受けた。

【12球団ドラフトの評価】

 ◎…なし

 〇…広島・巨人・西武・阪神・DeNA・オリックス

 △…日本ハム・ロッテ・ヤクルト

 ✕…ソフトバンク

 ✕✕…中日・楽天

 

✕✕中日(50点)

 昨年は課題と言うよりは、むしろ弱点とも言える長打力不足を補うために、大学生の右打者を一気に3名も獲得し賛否両論だった。私は評価できなかったが、残念ながら今年も同じようなドラフトになった。

 今季は俊足巧打型の内野手に集中した。2位で村松開人(明大・内野手、5位は浜将之介(BC福井・内野手、6位に田中幹也(亜大・内野手、そして7位で福永裕基(日本新薬内野手の4名を指名した。村松と浜、田中は俊足巧打のリードオフマンタイプで、福永も走攻守三拍子揃った即戦力で同じようなタイプの選手が揃った。また、浜は高卒4年目で村松と田中と学年も一緒…昨年の指名の再現のようだった。

 守備でも村松は二塁、田中は二塁と遊撃、福永は二塁と三塁が本職で、唯一、浜は外野も守れるが、基本は遊撃で守備も被る。三塁に石川昂弥を固定する方針のもと、二塁には阿部寿樹と高橋周平がおり、遊撃にも京田陽太と土田龍空がいる。村松は打撃、田中は機動力、福永は経験値が高いが、どう起用するのかイメージが湧かない。

 仲地礼亜(沖縄大・投手)の1位指名公表も驚いた。仲地は上位候補に名前が挙がっていた投手だが、さすがに単独1位の一本釣りには疑問符がつき、中日の2位指名の順番は2番目で、そこまで焦る必要はなかったと思う。

 ドラフトの総評で、3位で内藤鵬(オリックス2位)を獲得できれば満点だったというコメントを見たが、内藤が3位で残っているのは奇跡みたいなもので、どういうシミュレーションで臨んだのか不思議だ…。

 救いは3位で森山暁生(阿南光高・投手)、4位で山浅龍之介(聖光学院高・捕手)の高校生を指名したことだが、森山はともかく高校生なら年齢バランスで内野手か外野手が必要で、捕手は木下拓哉に頼りっきりで数的にも不足しており即戦力の方が良かったと思う。

 ちなみに今年は投手2名、内野手1名の育成選手を指名したが、3位は23歳の樋口正修(BC埼玉・内野手で、樋口も俊足巧打の二塁手…いつからこんなドラフト下手のチームになったのだろうか…

 

〇広島(70点)

 4年連続Bクラスに沈み、新井新監督を迎えた注目のドラフトは良い意味で驚かされた。先ずは1位で斎藤優汰(苫小牧中央高・投手)の指名を公表した。中央では無名だが、今年の高校生投手ナンバーワンの評価で、間違いなく上位でしか獲れなかった。実に高校生投手の1位指名は09年の今村猛(昨年引退)以来で期待の高さが窺える。

 2位の内田湘大(利根商高・内野手も驚いた。高校時代は二刀流で鳴らしたが、プロでは野手に専念する。内田は将来に4番候補だが、高校時代は投手と一塁の兼任で、プロでは遊撃か三塁になると思うが暫く時間はかかる。将来のエースと4番の指名で良いとは思うが、現状の広島の戦力を考えると冒険すぎて評価できなかった。2位指名で今年も厳しいドラフトかな…と思っていたところ、広島に風が吹いた。

 3位で益田武尚(東京ガス・投手)、5位で河野佳(大阪ガス・投手)の即戦力投手を指名できた。益田も河野も下馬評では1~2位で指名されてもおかしくない投手で、良くこの順位まで残っていたと思う。益田も河野も右の本格派の先発型だが、今年苦労したセットアッパーもこなせることができ、上位2名の高校生指名が活きた。

 また、6位で左腕の長谷部銀次(トヨタ自動車・投手)を指名し、チームでは主にリリーフで登板しており、森浦大輔や塹江敦哉に次ぐ左のリリーフの層が厚くなった。ただ、河野が入団に難色を示しており動向が注目される。

 4位の清水叶人(健大高崎高・捕手)の指名自体は悪くないが、若手捕手はやや渋滞気味で、坂倉将吾を本格的に三塁手で起用する指名かと思ったが、今季は捕手起用がメインらしく、起用方法が見えない。7位の久保修(大阪観光大・外野手)は、50メートル5秒9の俊足で、強肩で中堅守備も巧い。12球団最小の盗塁数のチームにおいて、守備固めや代走から出番を増やしたい。

 育成でも大学生外野手2名と高校生投手1名を指名し、20歳~24歳の外野手不在の年齢バランスの悪さを解消する指名になり1位の名原典彦(青森大・外野手)は久保と同じ俊足巧打の右打ちだがパンチ力があり、2位の中村貴浩(九産大・外野手)は左のスラッガーでそれぞれセールスポイントの違う選手でバランスが取れている。

 

〇巨人(75点)

 今年は12球団で最初に、浅野翔吾(高松商高・外野手)の1位指名を公表した。浅野は高校ナンバーワン野手でと言われ、3~4球団は競合するかと踏んでいたが、蓋を開けると阪神との一騎打ちとなり、巨人が引き当て抽選の連敗が11で止まった。

 浅野は甲子園でも活躍した久々の巨人のスター選手候補。本人も言う通り、プロでは中距離打者になると思うが、まずは焦らずしっかりと育成して欲しい。少なくともケガをして1~2年で育成契約など、そろそろこういった雑な扱いは見直して欲しい。

 2位ではさらに、浅野と同じ右打ちの外野手・萩尾匡也(慶大・外野手)を指名。将来的には浅野が中心になると思うが、そこまで悠長に構えていられる状況ではなく、即戦力で萩尾指名は理解できる。高校時代はスラッガーだったが、大学では走攻守三拍子揃った選手になり、プロでどういう打者を目指すか注目したい。

 同じ野手では、4位で門脇誠(創価大・内野手を指名した。二塁と遊撃守備にも定評がああるが、何といってもセールスポイントは打撃で、小柄ながら力強い打撃を売りに、ポスト坂本で中山礼都や湯浅大の争いに割って入る力はある。

 一方で課題の投手力強化は今一つで、3位で田中千晴(国学院大・投手)、5位で船迫大雅(西濃運輸・投手)の即戦力投手2名を指名した。田中は最速153キロの本格派右腕で、先発を十分に任せられる素質があるが、大学3年時に肘の故障で苦しんでおり回復状況を見ながらの起用になる。26歳の船迫は経験豊富なサイドハンド右腕で、先発よりはリリーフとしてに起用になるだろう。 

 育成では9名を指名し、育成1位の松井颯(明星大・投手)以外はすべて高校生指名になった。甲子園を沸かせた吉村優聖歩(明徳義塾高・投手)森本哲星(市船橋高・投手)、野手でも中田歩夢(東奥義塾高内野手など楽しみな選手が並ぶ。

 全体的に見て指名は良いと思うが、課題の投手力強化には疑問符がつく。今季はFAで投手を獲得するプランかもしれないが、1位で浅野を獲得できたなら、上位で即戦力投手、下位で高校生投手を指名しても良く、捕手も5名しかいないなか育成含め指名ゼロはなく、今年豊富な高校生捕手を獲得しても良かった。

 

阪神(70点)

 今年は巨人が1位指名を公表した浅野を指名するも抽選で外したものの、同じ右打ちの外野手の森下翔太(中大・外野手)を1位指名した。今年の阪神はとにもかくにも外野手が補強ポイントで、同じく1位指名を公表しなかったDeNAとロッテは外野手は優先課題ではなかっただけに、浅野を外しても森下を獲得できる可能性は高く、阪神とすれば9球団の公表はシミュレーションしやすかったかもしれない。

 1位で森下を獲得したあと、2位~5位まで高校生でまとめた。再登板とは言え、岡田新監督を迎え即戦力の欲しいところ、将来性重視の指名は正直驚いたと同時に、岡田監督が現有戦力にある程度確信を持っていることへの裏返しにもなった。

 2位の門別啓人(東海大札幌高・投手)も4位の茨木秀俊(帝京長岡高・投手)もともに甲子園未出場だが、門別は今年の高校生左腕投手ナンバーワンの評価。茨木も今夏の新潟大会決勝でロッテ3位の田中と延長11回を投げ合った右の本格派で、西純矢や森木大智に続くエース候補として投手王国を築ける。ちなみに茨木は北海道から越境入学した道産子で、本来ならば日本ハムがこういったドラフトをすべきなのだが…。

 野手は3位で井坪陽生(関東一高・外野手)、5位で戸井零士(天理高・内野手の右打者を指名。阪神の主力は左打ちが多く、日本ハムとのトレードでも渡邊諒と高濱祐仁の右打者を獲得しており、徹底して右打者を強化している姿勢が窺える。井坪と戸井は浅野と同じ中距離打者で、井坪は機動力も使えるリードオフマン候補。遊撃手の戸井は。阪神内野手は19歳から25歳まで右打者が不在で、出番は早いかもしれない。

 中野拓夢や岩崎優、湯浅京己などこの間当たっている6位で、富田蓮(三菱自動車岡崎・投手)を指名。高卒3年目の21歳の左腕で、指名後のU-23の世界大会でベストナインと最優秀投手賞を獲得して優勝するなど、早くもブレイクの兆しが見える。

 育成選手は1名のみだが、ここも右打ちの外野手で野口恭佑(九産大・外野手)を指名した。野口はパンチ力のある打撃が売りで得意の打撃で支配下を勝ち取りたい。

 12球団ナンバーワンの投手力を誇るなか、将来性重視で野手は右打ちに徹底した指名で課題を抑えた良いドラフトになった。

 

〇DeNA(75点)

 DeNAの十八番になりつつある1本釣りで、今年は松尾汐恩(大阪桐蔭高・捕手)の1本釣りに成功した。08年からの現行ドラフトで2年連続で高校生を1位指名するのは初めてで、DeNAが長期戦略でチーム作りをしている姿勢が明確になった。

 捕手はここ数年、嶺井博希に戸柱恭孝、伊藤光の3名体制が続き、いずれも正捕手獲得までには至らず、しかも全員が30歳を超えている。松尾は打撃は申し分なく、高校で捕手に転向し経験は浅いが、強肩とインサイドワークは問題なく、着実に世代交代が差し迫るなか、正捕手候補の一番手として経験を積むことになる。

 2位の吉野光樹(トヨタ自動車・投手)は、DeNAの補強優先ポイントの即戦力投手。150キロの直球が武器の本格派右腕で、不足している先発ローテーションに喰い込みたい。また、5位の橋本達弥(慶大・投手)は、鋭いフォークを武器に大学時代からリリーバーとして活躍し、結果として先発とリリーフの即戦力を獲得できた。

 もう一人投手で、森下瑠大(京都国際高・投手)を4位で指名した。今年は故障で本調子ではなかったため下位指名になったが、2~3年後には豊富な左腕先発陣の一角に入れる逸材で、打者の評価も高く、万が一投手でダメな場合は打者転向も良いと思う。

 松尾のほかに野手で獲得したのが、3位の林琢真(駒大・内野手で、強肩と俊足が武器の二塁手。同じポジションには牧がいるが、牧の守備負担軽減で守備固めや慢性的な機動力不足を補う代走要員として一軍デビューは早いかもしれない。

 育成選手は5名指名し、こちらも高校生3名と独立リーグ2名と若い布陣で、上位2名は野手を指名した。育成1位の上甲凌大(四国IL愛媛・捕手)は強肩強打の捕手で、上甲の成長次第では松尾の内野手起用もプランニングできる。2位の木蓮滋賀学園高・内野手は強打の遊撃手で、得意の長打力で支配下登録を目指す。

 支配下指名も育成指名も上位に野手を指名したことに、さらに攻撃的な布陣を形成しようとする意思が見え良いドラフトになった、ただ、外野手の指名が育成含め1名もなく、確かにレギュラーが確立し若手の層も厚いが、19歳から23歳まで不在で、今年は外野手に有望選手が多かったことから勿体なかった。

 

△ヤクルト(65点)

 最年少三冠王の村上宗隆を中心に、マクガフやオスナなど投打に外国人選手が活躍し、リーグ2連覇を果たしたが課題は多く、先発投手不足と山田哲人の後継者を含む二遊間強化、塩見泰隆以外はレギュラー不在の外野をどう埋めるかがポイントだった。

 1位は即戦力の吉村貢司郎(東芝・投手)を、公表のうえ単独指名に成功した。大卒時とドラフト解禁の昨年と2度の指名漏れを味わった苦労人が、社会人3年目で実力を開花させ1位指名を受けた。奥川恭伸の復帰の目途が立たないなか、その穴を埋めるには十分で、強打のヤクルト打線をバックなら勝ち星を積み上げることができるだろう。

 2~3位では外野手を指名し、2位で高校時代は投手との二刀流で活躍した西村瑠伊斗(京都外大西高・外野手)を、3位では即戦力の沢井廉(中京大・外野手)を獲得できた。西村は投手としても評価が高いが、高校通算54本塁打の打力を活かしでプロでは野手に専念する。沢井は恵まれた体からの長打力が売りの左打者で、自慢の長打力でレギュラーを十分に狙うこともできる。

 同じく5位で、こちらも強打の北村恵吾(中大・内野手を指名した。北村は沢井同様に広角に打てるスラッガーだが、守備は一塁や三塁が主で、やや補強ポイントとは異なり、どう起用するか注目したい。

 課題の投手力強化では、4位で左腕の坂本拓己(知内高・投手)を指名した。坂本は球威のある直球を武器に制球力も高く、中央では無名だが江夏二世の呼び声も高い本格派で、同じ道内で指名された斎藤(広島)や門別、茨木(ともに阪神)とのライバル対決が実現するのが今から楽しみだ。

 育成指名は橋本星哉(中央学院大・捕手)の1名だけで、橋本は大学4年春から正捕手になった伸びしろのある選手で、打撃がセールスポイント。嶋が引退し捕手は現時点で5名しかおらず、支配下登録は早いかもしれない。

 課題を埋めたドラフトにはなったが、今年豊富な大学生野手や即戦力投手指名が十分とは言えず、全体で指名人数6名はさすがに少ないと思う。少数精鋭のポリシーかもしれないが、チームの底上げにはある程度の人数も必要だと思うが…。

 

 最後に、有力ながら指名されなかった選手をピックアップしてみた。高校生では投手では米田、野手では田中の指名漏れが意外だった。米田は早くからドラフト候補で名前が挙がり、総合力が高い選手で下位指名でも呼ばれると思った。高校通算48本の田中も確実視されていたが、社会人に進み3年後のプロ入りを目指す。

 ・高校生…川原嗣貴(大阪桐蔭高・投手)米田天翼(市和歌山高・投手)

        片野優羽(市船橋高・捕手)海老根優大(大阪桐蔭高・外野手)

      前田一輝(鳴門高・外野手)田中多聞(呉港高・外野手)

      黒田義信(九州国際大高・外野手)

 大学生では、とにかく山田だろう。1位l候補とまで言われていたが、蓋を開けたらまさかの指名漏れで、今ドラフトのサプライズの一つになった。また、注目されていた国立大からの指名も、京大の水口(ソフトバンク育成7位)だけで、本田等の指名は最後までなかった。素材型の羽田野は社会人で2年後の上位指名を目指して欲しい。

 ・大学生… 羽田野温生(東洋大・投手)神野竜速(神奈川大・投手)

      本田健悟(名古屋大・投手)西 隼人(関学大・投手)

      伊原陵人(大商大・投手)野口泰司(名城大・捕手)

      山田健太(立大・内野手斎藤大輝(法大・内野手

 社会人は、ある意味順当の指名と言える。関根や三井は名前が呼ばれてもおかしくなかった選手だが、各球団の指名状況によって指名が無かった可能性が高い。ただ、今年は阿部翔太(オリックス)が2年目29歳で新人王候補になり、26歳の福永(中日6位)も指名されており、まだまだ諦めることはない。

 ・社会人…加藤三範(ENEOS・投手)関根智輝(ENEOS・投手)

        入江 空(茨城日産・投手)玉置隼翔(四国IL愛媛・投手)

      中山遥斗(三菱重工イースト・内野手三井健右(大阪ガス・外野手)

         藤原大智新潟アルビレックス・外野手)