今回は現状、トレードに急を要しないチームを上げてみた。特にパ・リーグで独走状態に入りつつあるソフトバンクは、選手層の厚さで頭ひとつ抜けており補強するポイントが見当たらない。日本ハムもこの間の補強が実を結び、若手も着実に経験を積んでおり、将来に向けて展望のあるチームになり敢えて動く必要は感じない。
一方で混戦模様のセ・リーグは、各チームとも優勝の可能性を残しており、トレードによる補強は混戦を抜け出すきっかけになると思うが、首位の広島は投打にバランスが取れており、無理に動く必要はなく、巨人も日本ハムほどではないにしても、若手有望株が揃ってきており現有戦力の底上げが優先課題だと思う。
◇広 島(1位)32勝25敗4分
苦手の交流戦を終えて首位に立ったチームを支えているのは、好調の投手陣で、先発はエース大瀬良大地(九共大~13年①)が復活し、床田寛樹(中部学院大~16年③)に九里亜蓮(亜大~13年②)、森下暢仁(明大~19年①)が盤石で、先発の防御率はリーグナンバーワンを誇る。
リリーフも今季はスタートから栗林良史(トヨタ自動車~20年①)が万全で、矢崎拓也(慶大~16年①)と島内颯太郎(九共大~18年②)、塹江敦哉(高松北高~14年③)の勝ちパターンが確立できている。
野手は新外国人が不振のなか、秋山翔吾(八戸大~10年西③)と野間峻祥(中部学院大~14年①)の1・2番コンビが出塁し、チャンスに強い小園海斗(報徳学園高~18年①)とスラッガーの末包昇大(大阪ガス~21年⑥)が中軸に座る形ができた。
また、矢野雅哉(亜大~20年⑥)の遊撃守備と俊足は貢献度が大きい。打線に厚みを持たせると同時に、菊地涼介(中京学院大~11年②)の鉄壁の二遊間は脅威で、ここに不振の坂倉将吾(日大三高~16年④)が復調すれば隙のない布陣になる。
【投手成績】
◆防御率…2.18①(3.20④)先発…2.26①(3.24⑤)リリーフ…2.02②(3.14③)
失点…148① 被本塁打…25③ 与四球…162③ QS率…68.85%①
【打者成績】
◆打率….,240②(.246④)得点圏打率….,241② 得点…185④ 本塁打26本⑥
盗塁数…36① 犠打…46⑤ 四球数…141⑥ 長打率….324④ 出塁率…292⑤
1⃣卓越したドラフトで年齢バランスに死角なし!伸び悩みの若手放出は可能性高い
世代交代の準備が着実で出来ており、現在の主力が軒並み30歳を超えるなか、今季はアドゥワ誠(松山聖陵高~16年⑤)や玉村昇悟(丹生高~19年⑥)が先発ローテーションを務め、2球団競合の常廣羽也斗(青学大~23年①)も控える。
野手は捕手の坂倉と石原貴規(天理大~19年⑤)、遊撃の矢野が26歳で、24歳の小園と将来の二遊間を築き、22歳の二俣翔一(磐田東高~20年育①)や21歳の田村俊介(愛工大名電高~21年④)の両スラッガーも控える。
また、ドラフト巧者の広島らしく年齢バランスも悪くなく、トレードを急ぐ必要はない。敢えて考えるのであれば、一時期、筒香嘉智(DeNA)獲得の噂があったようn中軸を任せられる選手が必要で、資金的に問題ないのであれば同一リーグで難しいはビシエド(中日)は欲しい選手の一人だ。
一方、逆にトレードで環境を変えるなら、やはり中村奨成(広陵高~17年①)の名前が挙がる。今季7年目の25歳で、ファームでは結果を残しており、長打力不足の西武やオリックス、楽天は右打者が不足しておりパ・リーグに条件が揃っているチームが多く、捕手に故障者続出のヤクルトも需要が高いと思う。
【お薦めのトレード】
2⃣ 中村奨成(外野手)⇔ 清宮虎太朗(楽天・投手)
◇巨 人(3位)31勝30敗5分
阿部新監督を迎え、ここまでチームが短期間で変わるものかと驚いているのが巨人だ。昨年までは一発頼みの大味な攻撃で、リリーフ陣はリーグワーストの防御率など打高投低のチームが、投手陣の改善が進み投高打低のチームに変貌した。
チームが過渡期を迎えているなか、若手が成長しているのは心強く、25歳未満で限定してみても、投手はエースの戸郷翔征(聖心ウルスラ高~18年⑥)をはじめ、堀田賢伸(青森山田高~19年①)と井上温大(前橋商高~19年④)が先発ローテーションを務め、ルーキーの西舘勇飛(中大~23年①)は先発・リリーフともにこなせる。
野手も門脇誠(創価大~22年④)に秋広優人(二松学舎大高~20年⑤)、萩尾匡哉(慶大~22年②)が控えており、坂本勇人(光星学院高~06年①)や丸佳浩(千葉経大高~07年広③)の後継が育ちつつある。
優勝を義務づけられているチームだが、ここは2~3年かけてでも常勝チームの土台を築くシーズンにして欲しい。資金と人気にモノを言わせ、他球団の主力をFAで集めた以前のチーム作りよりははるかに好感が持て、ファンも我慢できると思う。
【投手成績】
◆防御率…2.43③(3.39⑤)先発…2.50③(3.16④)リリーフ…2.30③(3.61⑥)
失点…172② 被本塁打…35④ 与四球…171⑥ QS率…56.06%⑤
【打者成績】
◆打率….,232⑤(.252①)得点圏打率….,229⑤ 得点…185④ 本塁打33本③
盗塁数…35③ 犠打…57② 四球数…209③ 長打率….318④ 出塁率…299③
2⃣チームの土台を築くシーズンで、過渡期を迎えるチームで我慢が出来るか…
期待の若手が多い反面、経験不足は否めず、特に先発投手や岡本和真(智弁学園高~14年①)に代わる長打力のある選手、決め手に欠く外野手などは補強したいポイントではある。急いでトレードをする必要はないが、シーズン前に人数的に不足していた捕手で、郡拓也(帝京高~16年日⑦)を、ベテランの若林晃弘(日本ハム)を放出して獲得したような出番の少なくなった中堅にチャンスを与えるトレードはアリだと思う。
投手では畠世周(近大~16年②)に鈴木康平(日立製作所~17年オ②)、高橋優貴(八戸学院大~18年①)は今季一軍出場がない。畠と鈴木はファームで好投しているだけに、リリーフを補強したいオリックスやロッテ、西武は欲しい選手で、高橋優は左腕不足のDeNA、ここもオリックスにロッテ、西武は需要はある。
野手では増田大輝(四国IL徳島~15年育①)と松原聖弥(明星大~17年育⑤)も、一軍では限られた出番のなかなかなか結果を残せずファームが主戦場になっている。増田は内外野守れるユーティリティで俊足で代走もこなせ、盗塁の少ない阪神や中日、ケガ人続出のヤクルトも面白い。松原は今季一番打者が決まっていないチームが多く、西武は補強ポイントに合致する選手だと思う。
【お薦めのトレード】
1⃣ 高橋優貴(投 手)⇔ 東妻純平(DeNA・捕手/外野手)
2⃣ 松原聖弥(外野手)⇔ 本田圭佑(西武・投手)
◆ソフトバンク(1位)41勝19敗2分
賛否両論のなかFAで山川穂高(冨士大~13年西②)が加入したことにより、柳田悠岐(広島経大~10年②)と近藤健介(横浜高~11年日④)のクリーンアップがより活性化した。周東佑京(東農大オホーツク~17年育②)が一番に座り、栗原陵矢(春江工高~14年②)も復調し、どこからでも点を取れる打線になった。
柳田が今季絶望のケガを負っても柳町達(慶大~19年⑤)や佐藤直樹(JR西日本~19年①)が攻守にその穴を埋め、期待の笹川吉康(横浜商高~20年②)もチャンスを与えられるなど選手層の厚さを改めて見せつけた。また、シーズン前に支配下になった川村友斗(仙台大~21年育②)は打力、緒方理貢(駒大~20年育⑤)と仲田慶介(福岡大~21年育⑭)は走塁と守備でそれぞれ役割を果たし一軍に帯同している。
打線以上に驚いたのが投手陣で、昨年苦戦した先発投手陣が大幅に改善した。先発に回ったモイネロと大津亮介(日本製鉄鹿島~22年②)が好投し、心配されたリリーフは松本裕樹(盛岡大高~14年①)と津森宥紀(東甫北福祉大~19年③)がセットアッパーで定着し、杉山一樹(三菱重工広島~18年②)が加わり盤石な布陣でスキがない。
【投手成績】
◆防御率…2.22①(3.27④)先発…2.26①(3.63⑤)リリーフ…2.13①(2.68①)
失点…151① 被本塁打…36⑤ 与四球…170③ QS率…64.52%①
【打者成績】
◆打率….,259①(.248②)得点圏打率….,270① 得点…263① 本塁打42本①
盗塁数…47② 犠打…41⑥ 四球数…230① 長打率….379① 出塁率…334①
3⃣育成に期待の選手が多く、補強は必要ない。出番の少ない若手にチャンスを与える
昨年の大竹耕太郎(阪神)に田中正義(日本ハム)、今季は水谷瞬(日本ハム)と移籍した選手が主力として活躍している姿を見ると改めて選手層の厚さを感じる。
現在支配下は66名で、育成の前田純(日本文理大~22年育⑩)に三浦瑞樹(東北福祉大~21年④)がファームで防御率1~2位で、大城真乃(宜野座高~20年育⑦)に鍬原拓也(中大~17年巨①)、渡邊佑樹(横浜商大~17年楽④)も好成績を残している。
投手では笠谷俊介(大分商高14年④)や板東湧梧(JR東日本~18年④)が候補で、笠谷は先発もリリーフもこなせ、左腕不足のチームや投手力が課題のチームは欲しい選手で、攻撃陣が充実しているDeNAとヤクルトなら成立の可能性が高い。
野手は何といってもリチャード(沖縄尚学高~17年育③)で、三塁には栗原がおり、同じタイプで井上朋也(花咲徳栄高~20年①)も控えている。一塁には山川と中村晃(帝京高~07年③)がいる状況では出番は限られる。ファームでは4度の本塁打王で二軍でやることはなく、25歳という年齢を考えると放出の可能性は高い。長打力不足に喘ぐ阪神やオリックス、ロッテに西武、世代交代に迫られている巨人にDeNA、村上移籍の可能性のあるヤクルトなど好条件でトレードがまとまる可能性がある。
【お薦めのトレード】
1⃣ 笠谷俊介(投 手) ⇔ 楠本泰史(DeNA・外野手)
2⃣ リチャード(内野手)⇔ 渡邊勇太朗(西武・投手)
◆日本ハム(3位)32勝28敗3分
FAで山崎福也(明大~14年オ①)を競合の末に獲得し、FA移籍が濃厚と言われていた加藤貴之(新日鉄住金かずさマジック~15年②)も残留を決めた。外国人補強もレイエスの獲得や、バーヘイゲンの復帰など目に見える形で補強が進んだ。
プラス新庄監督が2年間で育成~起用した若手やトレードで加入した選手が成長し、着実に層が厚くなっている。田宮裕涼(成田高~18年⑥)は、昨シーズン後半の勢いそのままに捕手のレギュラーを確立しつつある。さらに遊撃守備に長けた水野達稀(JR四国~21年③)や郡司裕也(慶大~18年中④)の三塁コンバートも成功している。一番の驚きは現役ドラフトで加入した水谷瞬(石見智翠館高~18年ソ⑤)で、交流戦で過去最高打率でMVPを獲得するなど新戦力の台頭が目立つ。
投手は伊藤大海(苫小牧駒大~20年①)に山崎福、加藤貴の先発陣は強固で、田中正義(創価大~16年ソ①)や河野竜生(JFE西日本~19年①)、杉浦稔大(国学院大~13年ヤ①)のリリーフも好調だ。支配下になった福島蓮(八戸西高~21年育①)や柳川大晟(九州国際大高~21年育③)も直ぐに先発起用するなど活性化が進んでいる。
【投手成績】
◆防御率…2,72③(3.08③)先発…2.82④(3.14③)リリーフ…2.54②(2.95④)
失点…194② 被本塁打…45⑥ 与四球…158② QS率…53.97%④
【打者成績】
◆打率….,249②(.231⑥)得点圏打率….,268② 得点…217② 本塁打35本②
盗塁数…51① 犠打…49② 四球数…152⑥ 長打率….354② 出塁率…301⑤
4⃣着実に若手が育ち選手層も厚くなった。売り手の強みでプロスペクトを獲得?
現状、トレードを急ぐ必要はないが、選手層が豊富なため即戦力、選手構成のバランスの是正、有望な若手の補強など優位に進めることができる。
強いて言えば主力に守備に不安な選手が多く、ブレイク真っ最中の水谷のほかにも清宮幸太郎(早実高~17年①)や野村佑希(花咲徳栄高~18年②)、清水優心(九州国際大高~14年②)など守備力重視の新庄野球のなか不安のある布陣であることも事実だ。
先発・リリーフともにタレントが揃っており、トレード候補では投手では先発の上原健太(明大~15年①)、リリーフではチームの功労者だが玉井大翔(新日鉄住金かずさマジック~16年⑧)や石川直也(山形中央高~14年④)は今季は出番が少ない。打撃の良い上原はセ・リーグ向きとも言え、先発✕左投手が不足しているDeNAやヤクルトにはハマり、ソフトバンクを除くパ・リーグのどのチームでも成立すると思う。
野手は宝庫で伸び悩んでいる清宮、田宮の台頭で出番の少なくなった清水や古川裕大(上武大~20年③)、貴重な二遊間で石井一成(早大~16年②)や中島卓也(福岡工高~08年⑤)の両ベテランに、外野手では江越大賀(駒大~14年神③)に今川優馬(JFE東日本~20年⑥)が控え、攻撃力が課題の阪神や西武などは成立の可能性が高い。
【お薦めのトレード】
2⃣ 今川優馬(外野手)⇔ 水上由伸(西武・投手)