今回はともにリーグ優勝を狙う2位チームを挙げてみました。ようやく松原聖弥(巨人)⇔若林楽人(西武)のトレードが成立したが、優勝を狙うチームなら純粋に補強を、次年度以降を見据えるチームは若手有望株の獲得など、ここはMLBに倣ってもっと積極的に動くことを期待したい。
◇DeNA(2位)36勝34敗1分
エースの今永昇太(カブス)がMLBへ移籍し、昨季10勝のバウアーとも再契約することができず、リリーフのエスコバーも退団した。野手ではソト(ロッテ)がトレードで移籍するなど、主力が抜けたシーズンを不安視する声が多かった。
ただ、そんな不安を他所にチームは交流戦で巻き返し、現在は首位広島と3ゲーム差の3位につけている。
投手陣では新戦力のジャクソンとケイが先発ローテーションを守り、森原康平(新日鉄住金広畑~16年楽⑤)はリーグ3位の16セーブを上げている。さらに若いリリーフ陣の台頭が目立ち、徳山壮磨(早大~21年②)に中川虎生(箕島高~17年育①)、石川達也(法大~20年育①)は防御率1点台、坂本裕哉(立命大~19年②)は防御率0点台で結果を残している。
ただ一方で、昨年61試合登板のウェンデルケンが出遅れ、さらに石田健大(法大~14年②)と上茶谷大河(東洋大~18年①)がケガで離脱、山崎康晃(亜大~14年①)も不振でファーム再調整などやり繰りは決して楽ではない。
リーグ随一の攻撃陣は健在で、ファン待望の筒香嘉智(横浜高~09年①)がMLBから復帰し、チーム打率と長打率はリーグ1位で、出塁率も高い。盗塁数もリーグ2位と、数年前は機動力不足が課題だったが万遍なく走るチームになっている。犠打数は少ないが得点能力は高く、投手陣が改善できれば優勝も見えてくる。
昨年のドラフトでは、3球団競合の末に度会隆輝(ENEOS~13年①)を獲得し、指名選手6名中5名が野手で、投手は石田裕太郎(中大~23年⑤)しかいなかった。野手の年齢バランスの悪さを数年放置した結果とも言えるが、課題の投手力強化が不足しており、ドラフトでバランスの取れた編成に戻すのには時間を要する。
かつての低迷期に陥らないためにも戦力の不足部分をトレードで積極的に補強し、常に優勝争いに絡めるチームを目指していきたい。
【投手成績】
◆防御率…3.05⑤(3.16③)先発…3.06⑤(3.14③)リリーフ…3.02⑥(2.92⑥)
失点…242⑤ 被本塁打…42④ 与四球…179④7 QS率…60.56%③
【打者成績】
◆打率….,250①(.247②)得点圏打率….,228④ 得点…242② 本塁打45本②
盗塁数…37② 犠打…28⑥ 四球数…191④ 長打率….366① 出塁率…306②
1⃣筒香と度会の加入で豊富な外野手を軸に先発投手を狙う
主力の移籍に対し、対策が無かったわけではない。FA移籍が濃厚だった石田健をはじめウェンデルケンの残留に成功し、ともに戦力外になった森唯斗(三菱自動車倉敷~13年ソ②)に中川颯(立大~20年オ④)とを獲得した。現役ドラフトでは佐々木千隼(桜美林大~16年ロ①)を、リリーフでウィックも加わり、育成からディアスと堀岡隼人(青森山田高~16年巨育⑦)も支配下登録になった。
先発は今永に代わるエースで東克樹(立命大~17年①)がおり、大貫晋一(新日鉄住金鹿島~18年③)も復調気配だが枚数不足は否めない。一方、リリーフ陣は数字は決して良くないが、今季不振の伊勢大夢(明大~19年③)や山崎が復調し、入江大生(明大~20年①)にウェンデルケンが戻れば十分に計算でき、個人的には森唯をリリーフに廻して良いと思う。
そうなると補強ポイントは先発に絞って良く、どうせなら年齢バランスの是正も鑑みて23~24歳、27~30歳でセレクトしてみた。
23~24歳では、玉村昇悟(広島)に横川凱(巨人)の両左腕、渡邊勇太朗(西武)など期待の選手が並び、さすがにこの年齢は難しいが打撃が課題の巨人や西武なら成立の可能性は高い。さらに、27~30歳では、村西良太(オリックス)や二木康太(ロッテ)、笠谷俊介と板東湧梧(ソフトバンク)は一軍出場がなく、リリーフ不足のオリックスは難しいが、打線強化を図りたいロッテ、選手の出場機会を増やしたいソフトバンクなら若手有望株のトレードなら成立の可能性は高い。
交換要員では、度会と筒香の加入により外野手に余裕があり、同じ左打ちの関根大気(東邦高~13年⑤)や楠本泰史(東北福祉大~17年⑧)、俊足の神里和毅(日本生命~17年②)が候補で、ベテランの大田泰示(東海大相模高~08年巨①)は今季一軍出場がなく狙い目だと思う。
2⃣リリーフ投手は幾らいても良い!先発もできるベテラン福谷は狙い目
1⃣では先発投手に絞ったが、リリーフ投手は幾らいても良く、先述した村西に笠谷、板東はリリーフもでき、石川直也や玉井大翔(日本ハム)は今季一軍出場がない。同一リーグで難しいが、経験豊富な加治屋蓮(阪神)に戸根千明(広島)は、リリーフ陣に若手が多いチームだけに重要なピースになる。
育成に有望株の多い中日なら金銭トレードでまとまる可能性もあり、先発もできる福谷浩司(中日)は補強ポイントに合っている。また、楽天は同じ年齢層に投手が集中しており、藤平尚真に宮森智志(楽天)は不足している捕手とのトレードなら成立する可能性が高く、横浜高出身の藤平の加入はインパクトがある。
3⃣補強を急ぐ必要はないが、不足している若手右打者の獲得を進めたい
野手は現時点で補強の必要はないが、今オフはFAの佐野恵太(明大~16年⑨)の去就があり、内野手は36歳の宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)と37歳の大和(樟南高~05年神④)の後継の備えも必要で、実際に牧秀悟(中大~20年②)以外の主力候補が乏しい。また、内外野に右打ちの選手が少なく、右の宮崎と大和の穴埋めは案外容易ではない。
内野なら湯浅大(巨人)に石垣雅海(中日)、リチャードや野村大樹(ソフトバンク)、外野手では小野寺暖や豊田寛(阪神)、中村奨成(広島)など若手有望株が多く、ここも攻撃力の強化を図りたい巨人や中日、阪神は同一リーグながら成立の可能性はあり、リチャードや中村は環境が変わることで大化けも期待できる。
【お薦めトレード】
1⃣ 楠本泰史(外野手)⇔ 笠谷俊介(ソフトバンク・投手)
2⃣ 大田泰示(外野手)⇔ 戸根千明(広島・投手)+中村奨成(広島・外野手)
益子京右(捕手) ⇔ 宮森智志(楽天・投手)
3⃣ 神里和毅(外野手)⇔ リチャード(ソフトバンク・内野手)
◆ロッテ(2位)35勝30敗6分
昨シーズンは最終戦で2位に滑り込み、粘り強い戦い方で上位をキープしているが、首位から10ゲーム差以上離され巻き返しを図りたいが見通しは明るくない。
その停滞感の要因は何と言っても、期待の若手の伸び悩みである。本来であれば主力になってなければならない安田尚憲(履正社高~17年①)に山口航輝(明桜高~18年④)はファーム調整中で、ケガの藤原恭大(大阪桐蔭高~18年①)はようやく一軍に合流した。3年目の松川虎生(市和歌山高~21①)はまだ判断には早いが、平沢大河(仙台育英高~15年①)も一軍未出場で、期待のドラ1選手が主力どころかレギュラーも獲得できていない。
投手でもエースと期待された佐々木朗希(大船渡高~19年①)は今季も離脱し、1年間ローテーションを守る目標は今年も叶わず、初の規定投球回数クリアも黄色信号が灯っている。新戦力もソト以外はパッとせず、新外国人投手はダイクストラ以外は一軍登板がなく、現役ドラフトの愛斗(花咲徳栄高~16年西④)、戦力外からの育成契約から支配下になった二保旭(九州国際大高~08年ソ育②)と吉田凌(東海大相模高~15年オ⑤)も戦力の上積みにはなっていない。
シーズンはまだ半分も残っており、ソフトバンク追撃とチームが掲げる「Vision25」の黄金期構想に向け得意のトレードで大胆な改革を進めても良いと思う。
【投手成績】
◆防御率…3.12⑤(3.40⑤)先発…2.96⑤(3.43④)リリーフ…3.44⑤(3.35⑥)
失点…245④ 被本塁打…36③ 与四球…185② QS率…56.34%②
【打者成績】
◆打率…..249②(.239④)得点圏打率…..255④ 得点…235③ 本塁打34本③
盗塁数…31⑤ 犠打…48⑤ 四球数…206③ 長打率…..346③ 出塁率….307②
1⃣打者は若手の覚醒のきっかけで起爆剤になるベテランを狙いたい
野手の主力候補は多く、捕手の佐藤都志也(東洋大~19年②)と堅守の小川龍成(国学院大~20年③)が26歳、安田は25歳、24歳の友杉篤輝(天理大~22年②)にドラフト1位の上田希由翔(明大~23年①)は23歳と上位指名の有望株は多い。外野手も愛斗と高部瑛斗(国士館大~19年③)は27歳、俊足の和田康士朗(BC富山~17年育①)が25歳、山口と藤原は24歳で、若手が覚醒すれば一気に戦力は高まる。
ただ、現在レギュラークラスは佐藤と友杉くらいで、何かきっかけが欲しい。シーズン中で主力のトレードは難しいが、起爆剤になり得る選手であればベテランの島内宏明(楽天)やT-岡田(オリックス)は今季出番が少なく、大田泰示(DeNA)は一軍出場がない。
ロッテも決して投手陣が良い訳ではないが、二木康太(鹿児島情報高~13年⑥)や小野郁(西日本短大高~14年楽②)、東條大樹(JR東日本~15年④)など実績のある選手がおり、投手陣が課題の楽天やDeNA、オリックスはリリーフも補強が必要で成立の可能性はある。投手が39名と多く、複数トレードも可能だ。
2⃣25歳以下の投手が少なく、先発・リリーフともに補強したい
投手陣も課題が多く、先発・リリーフともに不足している。特に先発は小島和哉(早大~18年③)に種市篤暉(八戸工大一高~16年⑥)、佐々木朗、西野勇士(新湊高~08年育⑤)、メルセデスに次ぐ候補が代わり映えせず、美馬学(東京ガス~10年楽②)に石川歩(東京ガス~13年①)、今季先発転向の唐川侑己(成田高~07年①)など実績のある選手はいるが、ここも若手の突き上げが欲しい。
リリーフの陣容はほぼ変わらず、横山陸人(専大松戸高~19年④)や鈴木昭汰(法大~20年①)が覚醒するなど、ポスト益田直也(関西国際大~11年④)の目途は立ちつつあるが、なかなか勝ちパターを確立できていない。
年齢バランスでは、中堅・ベテランの多い布陣で、25歳以下が10選手しかいないのはヤクルトと並んで最小で、佐々木朗のMLB早期移籍の可能性もあるなか補強が必要だ。ただ、残念ながらオリックスや日本ハムのように育成から支配下で起用したい投手が見当たらないのが寂しい。
先発・リリーフに関係なく出来れば25歳以下、さらに欲を言えば左腕が欲しい。さすがに25歳以下で限定する難しかったが、西純矢や湯浅京己(ともに阪神)、遠藤淳志(広島)、阪口晧亮(DeNA)、横川凱(巨人)、渡邊勇大朗(西武)、田中瑛斗(日本ハム)など候補は多い。
左腕では横川以外に、同一リーグだが笠谷俊介(ソフトバンク)にベテランの辛島航(楽天)、上原健太(日本ハム)は今季一軍出場が少ない。特にセ・リーグは混戦模様で抜け出すには補強が必要で、西純や湯浅なら思い切って伸び悩んでいる安田との主力同士のトレードや、横川であれば外野手の補強で平沢、打線強化が必須の西武なら同一リーグながら成立の可能性は高い。
3⃣佐々木朗は今オフMLB移籍か?世紀のトレード実現はあるか?
最後は佐々木朗で、実現は限りなくゼロに近いが、以前ポスティングで球団との相違があり、日本ハムからオリックスへ移籍した糸井嘉男のような複数トレード検討の余地はあると思う。
ポスティング移籍を認めていないソフトバンクや巨人を除けば、セ・リーグならDeNAとヤクルトは攻撃陣に余裕があり、中日は若手選手が豊富だ。日本ハムも若手選手が豊富で、攻撃陣が豊富な楽天もソフトバンク追撃の重要なピースになる。ロッテとしては移籍すると痛手だが、MLB移籍が既定路線なだけに世紀のトレードを仕掛けても良いと思う。
ただ最後に、佐々木朗のMLB移籍の主張は納得はできない。ロッテはMLB移籍を反対しておらず、順調にいけば26年シーズン終了後にはメジャー契約で移籍できる。
野球選手は個人事業主とはいえ物事にはルールがあり、大きなことに挑戦するには実績が必要で、何よりもファンの存在がなければ成り立たず、ファンの思いに応えているかどうか、佐々木朗にはすべてにおいて一考する必要があると思う。
特に一番必要な実績面の不足は否めず、実働3年、通算19勝10敗(今季5勝)で本当に成功するのか、また12球団で最も勝率1位の優勝から遠ざかっているロッテに対し、自分が優勝させるくらいの気概を持って臨んでいるのか…残念ながら伝わってこない。少なくとも山本由伸(ドジャース)のようにリーグ優勝、個人では澤村賞や投手四冠のタイトルを引っ提げて渡米して欲しい。
【お薦めのトレード】
1⃣ 二木康太+東條大樹(投手)⇔ 島内宏明(楽天・外野手)
2⃣ 平沢大河(内野手)⇔ 遠藤淳志(広島・投手)
3⃣ 佐々木朗希(投手)⇔ 三浦銀二(投手)+大田泰示(外野手)※DeNA