最後に、連覇を狙う昨年優勝のチームを挙げてみた。トレード期間まで残り2週間ちょっとで、西武中心に2件のトレードが成立しているが、果たしてこのままで終わるのか注目したい。
◇阪神(4位)42勝38敗5分
正直、ここまで苦戦するとは思わなかった。先発・リリーフともに強力な投手陣を擁し、打線は近本光司(大阪ガス~18年①)と中野拓夢(三菱自動車岡崎~20年⑥)の1・2番コンビに、不動の4番・大山悠輔(白鷗大~16年①)がおり、今季のスローガン通り連覇も堅いと思っていた。
苦戦の要因はやはり打撃陣と言って良い。攻守の要だった木浪聖也(ホンダ~18年③)が離脱し、規定打席に達しているのは近本と中野、大山、森下翔太(中大~22年①)でチーム打率はリーグ最下位に沈んでいる。
昨年は高い打率に加え、四球を稼ぎ断トツの出塁率でリーグ最多の得点数を誇ったが、今季は打率が低迷しているため出塁率が上がってこない。長打率もリーグ最下位で盗塁と犠打も多いとは言えず、混戦のセ・リーグを抜け出すためにも打撃陣の改善が急務だと思うが動きはない。
現状、支配下選手は65名で余裕があるが、今季12球団で唯一、育成からの支配下登録を含め補強がない。ファームでは井坪陽生(関東一高~22年③)や井上広大(履正社高~19年②)、遠藤成(東海大相模高~19年④)に高寺望夢(上田西高~20年⑦)が好成績を残しており、現有戦力の底上げが中心の方針も理解するが、ノイジーとミエセスは2人合わせて1本塁打と助っ人として機能しておらず、果たしてこのままで良いのかと思う。
阪神はこの間のドラフトが功を奏し、年齢バランスも悪くなく、強いて言えば右打ちの内野手が不足しているだけで、先述したように若手も育ってきている。ただ、育成野手が福島圭音(白鷗大~23年育②)しかおらず、短期的の攻撃陣を改善するにはピースが乏しく、豊富な投手陣を軸にトレードを進めて良い。
【投手成績】
◆防御率…2.27②(2.66①)先発….2.30②(2.79①)リリーフ…2.23②(2.37①)
失点…233③ 被本塁打…30⑥ 与四球…170① QS率…69.41%②
【打者成績】
◆打率….,224⑥(.247②)得点圏打率….,245② 得点…246④ 本塁打32本⑥
盗塁数…27⑤ 犠打…59⑤ 四球数…281② 長打率….301⑥ 出塁率…299④
1⃣木浪不在を埋める遊撃手と機動力アップで俊足の選手を狙いたい
長い目で見ると攻撃陣に不安は少ない。佐藤輝明(近大~20年①)を中心に、内野は小幡竜平(延岡学園高~18年②)に遠藤と高寺、外野は森下に前川右京(智弁学園高~23年④)が一軍で結果を残し、井上に井坪、野口恭佑(九産大~22年育①)が控え、名前を挙げた選手は全員が25歳以下で将来の主力候補が目白押しだ。
ただ、現状を打破するには時間を擁し、トレード期間が迫っているなかモタモタしている訳にはいかない。攻撃陣で狙いたいのは、守備面では木浪の不在を埋める遊撃手、攻撃面では長打力のある選手と機動力を使える俊足の選手が欲しい。
遊撃手候補では山足達也(オリックス)と茶谷健太(ロッテ)はともに内野のユーティリティで、他には山崎剛(楽天)や日本ハムにも候補が多く、特に茶谷は右打ち+年齢バランスでもピッタリハマる。
次に機動力だがここは若手の台頭で賄えそうだ。遠藤と井坪は機動力も備え、育成の福島は足のスペシャリストで、支配下にして代走要員で活用しても良い。ただ、他球団にも佐野晧大(オリックス)や育成の村川凪(DeNA)がおり、村川は攻撃陣の層の厚いチーム状況のなか支配下登録されず、走力に長けているだけに勿体ない。
2⃣大胆な若手同士のトレードで主軸候補の獲得もあり
最後に長打力だが、ここは各球団も悩みの種で正直難しい。ただ、T-岡田(オリックス)や島内宏明(楽天)の両ベテランは今季一軍出場が少なく、リチャード(ソフトバンク)も一軍で結果を残せていない。同一リーグだが濱田太貴(ヤクルト)は機動力も備えており補強ポイントにハマり、ヤクルトは投手力が課題なだけに成立の可能性はある。
成立の可能性は限りなく低いが、チームの主軸として期待されながら伸び悩んでいる安田尚憲(ロッテ)や清宮幸太郎(日本ハム)の若手の大型トレードもアリで、環境を変えることで主力に成長するきっかけになる可能性もある。また、ビシエド(中日)は支配下の枠がフルに埋まっており、複数トレードや金銭での成立も高い。
外国人選手の移籍も考えて良い。日本ハムは外国人選手が多く、スティーブンソン(日本ハム)はファームでは3割を打ち、走力を活かした広い守備範囲は魅力だ。ウレーニャと育成のティマ(巨人)は長打力が魅力で、ロドリゲス(中日)は遊撃守備に定評がある。昨年まで西武に在籍していたマキノンは韓国リーグを退団しており、チャンスを与えても良いと思う。
1⃣2⃣共通の交換要員では、ベテランの秋山拓巳(西条高~09年④)と加治屋蓮(JR九州~13年ソ①)がおり、秋山は今季一軍出場がない。若手では岩田将貴(九産大~20年育①)や育成の川原陸(創成館高~18年⑤)の両左腕、同じく育成の佐藤蓮(上武大~20年③)はファームで好成績を残しているが、一軍(支配下)のチャンスが巡ってきておらず、岩田や川原などは左腕不足のチームからは垂涎の的だ。
また、西純矢(創志学園高~19年①)と湯浅京己(BC富山~18年⑥)が伸び悩んでおり、西純はファームでは結果を出しているが一軍では4試合登板に留まり、WBC優勝メンバーの湯浅はファームでもパッとせず環境を変えて復活を期するのもアリで、西純や湯浅であれば安田や清宮クラスの大型トレードも成立してくる。
3⃣若手が成長しているなか、中堅野手の放出も検討
候補となるのが豊田寛(日立製作所~21年⑥)と小野寺暖(大商大~19年育①)で、ともに右打ちの外野手で長打を打てる。ただ、森下に井上、野口と同じタイプの選手がおり、年齢的にもチャンスは限られる。移籍をパ・リーグだけに絞っても貧打に苦しむ西武や右打ちの外野手が少ないオリックスにソフトバンク、楽天など重要は高い。
また、捕手不足のチームであれば片山雄哉(BC福井~18年育①)もおり、プロ6年目の30歳で経験値もある。ここも捕手不足のオリックスや楽天は戦力補強になる。
【お薦めトレード】
1⃣ 加治屋蓮(投 手)+片山雄哉(捕手)⇔ 山崎 剛(楽天・内野手)
2⃣ 湯浅京己(投 手)⇔ 安田尚憲(ロッテ・内野手)
3⃣ 豊田 寛(外野手)⇔ 佐野晧大(オリックス・外野手)
◆オリックス(5位)39勝41敗2分
パ・リーグ3連覇を果たし、昨シーズンは2位と15.5ゲームの差をつけて独走した。ただ、今季は開幕からケガで離脱する選手が多く、首位から12.5ゲーム離され4連覇に黄色信号が灯っている。
投手ではリリーフ陣が総崩れ状態で、クローザーの平野佳寿(京産大~05年希)にセットアッパーの山崎颯一郎(敦賀気比高~16年⑥)と宇田川優希(仙台大~仙台大~20年育③)、小木田敦也(TDK~21年⑦)等の主力が不振で離脱している。
先発も山岡泰輔(東京ガス~16年①)は一軍登板がなく、山本由伸(ドジャース)や山崎福也(日本ハム)の穴埋めを期待された宮城大弥(興南高~19年①)と東晃平(神戸弘陵高~17年育②)はともに3勝止まり。昨年新人王の山下舜平大(福岡大大濠高~20年①)は今季未勝利で、抜けた27勝の穴はやはり大きかった。
野手でも中川圭太(東洋大~18年⑦)にゴンザレスが不在のなか、西野真弘(JR東日本~14年⑦)もケガで戦列を離れた。FA加入の西川龍馬(王子~15年広⑤)もパ・リーグの適応に時間がかかり、森友哉(大阪桐蔭高~13年西①)に杉本裕太郎(JR西日本~15年⑩)、宗佑磨(横浜隼人高~14年②)の主力も本調子には程遠い。昨年首位打者の頓宮裕真(亜大~18年②)も今季は打率1割台で、ここまで主力が軒並み離脱、または不振になるとは思いも寄らなかった。
それでも選手層は厚く、投手陣はエスピノーザやマチャドなど新外国人選手に加え、ルーキーの古田島成龍(セガサミー~23年⑥)や移籍の鈴木博志(ヤマハ~17年中①)の活躍もあり、ソフトバンクに次ぐ好成績を残している。
数字的にリーグ4連覇(優勝)は難しいが、Aクラス入りは混戦模様でチャンスは十分にあり、短期的且つ次年度の繋がるトレードを成立させたい。
【投手成績】
◆防御率…2.67②(2.73①)先発…2.63②(2.61①)リリーフ…2.74②(2.93③)
失点…246② 被本塁打…28① 与四球…221⑤ QS率…48.78%⑥
【打者成績】
◆打率…..241⑤(.250①)得点圏打率…..261③ 得点…246⑤ 本塁打31本⑥
盗塁数…35⑥ 犠打…52⑥ 四球数…226④ 長打率…..324⑤ 出塁率….302④
1⃣主力の離脱が相次ぐなか、経験豊富なベテランを狙う
先発では宮城に山下、曽谷龍平(白鷗大~22年①)、斎藤響介(盛岡中央高~22年③)などドラフト上位で獲得した選手が並び、育成出身の東に佐藤一磨(横浜隼人高~19年育①)が控える。
リリーフでは本田仁海(星槎湘南高~17年④)に才木海翔(大経大~22年育②)、トレード加入の吉田輝星(金足農高~18年育①)、ルーキーの古田島に高島泰都(王子~23年⑤)と、名前を羅列した選手はすべて25歳以下で将来性もあり層も厚い。
この間の育成主体のドラフトの成果が顕われており、まだ入山海斗(東北福祉大~23年育③)や芦田丈飛(BC埼玉~23年育④)など支配下候補も多く、今後の成長が楽しみな選手が並ぶ。
苦戦していたリリーフ陣も、マチャドがクローザーを務め、ペルドモが加入し、古田島や吉田、鈴木、井口和朋(東農大オホーツク~15年日③)等の新加入選手が主力不在の穴を埋めており補強を急ぐ必要はない。
ただ、これから厳しい夏場を迎えるにあたり、ベテランの先発・リリーフの補強はアリだと思う。先発なら秋山拓巳(阪神)に野村祐輔(広島)、原樹里(ヤクルト)のベテランが今季は一軍出番が少なく、リリーフなら加治屋蓮と湯浅克己(阪神)、畠世周(巨人)に尾仲佑哉(ヤクルト)がおり、湯浅や尾仲は投手育成に長けているチームだけにこれまで以上の成績が期待できる。福谷浩司(中日)は先発もリリーフもこなせ、攻撃力を上げたい阪神や広島、巨人、中日は成立の可能性は高い。
交換要員では内野のユーティリティの山足達也(ホンダ鈴鹿~17年⑧)に廣岡大志(智弁学園高~15年ヤ②)がおり、山足はファームでは3割を打っている。俊足の佐野晧大(大分高~14年③)は機動力不足のチームは魅力のある選手で、育成でも支配下経験もある平野大和(日章学園高~19年育④)の有望株もいる。
2⃣期待の若手が並ぶなか、捕手の数的補強が必要では?
野手陣も将来に向け大きな心配はない。紅林弘太郎(駿河総合高~19年②)を中心に太田椋(天理高~18年①)が結果を残し、ファームで元謙大(中京高~20年②)に来田涼斗(明石商高~20年③)、内藤鵬(日本航空石川高~22年②)と高校生の上位指名のスラッガーが揃っておりファンならずともワクワクする布陣だ。
また、昨年のドラフトでは紅林という正遊撃手がいるにも係わらず、同じ遊撃手の横山聖哉(上田西高~23年①)を単独指名するなど、一つ上のチームを目指す姿勢が顕われて感心した。
強いて言えば西野や大城滉二(立大~15年③)の離脱の穴を埋めたいが、現有戦力で十分に賄え、右打ちの外野手は不足しているが、全体で見ると喫緊の課題ではない。唯一、心配なのが捕手で、現状支配下はルーキーの堀柊那(報徳学園高~23年④)を含めて6名しかおらず、頓宮は一塁が主戦になっているので数的に不足している。
各球団とも充足しているポジションではないので難しいが、片山雄哉(阪神)や松本直樹に西田明央(ヤクルト)、現在は外野手登録だが中村奨成(広島)を捕手で再獲得するのもアリで、阪神と広島は野手、ヤクルトなら投手が欲しい。
3⃣右投げ左打ちの25歳野手が渋滞中…若手有望株同士のトレードもアリ
改めてオリックスの戦力を見てみると、捕手以外はバランスが取れており、無駄なところがない。したがって余剰と呼べる部分はなく、出番の限られている選手をピックアップしてみた。
先発投手であれば村西良太(近大~19年③)に育成4年目の川瀬堅斗(大分商高~20年育①)、リリーフなら前佑囲斗(津田学園高~19年④)は他球団ならば一軍登板のチャンスは十分にある。
野手なら1⃣で先述した山足や佐野が候補になるが、25歳に内野手で野口智哉(関大~21年②)に大里昂生(東北福祉大~21年育③)、外野手には渡部遼人(慶大~21年④)と茶野篤政(四国IL徳島~22年育④)がおり、右投げ左打ちの選手が渋滞している。野口以外はいずれも俊足巧打のリードオフマンタイプで、同じ有望な若手選手とのトレードも面白いと思う。
【お薦めのトレード】
1⃣ 佐野晧大(外野手)⇔ 畠 世周(巨人・投手)
2⃣ 前佑囲斗(投 手)⇔ 中村奨成(広島・捕手)※登録は外野手
茶野篤政(外野手)⇔ 阪口晧亮(ヤクルト・投手)