今回はともに下位に低迷している打高投低の似た同士のチーム状況を考えてみました。ともに交流戦で調子が戻りつつあり、上位追撃のムードも高まってきており、トレードでチームを活性化させたい。
◇ヤクルト(6位)22勝30敗4分
シーズン前の補強は的を得ていて見事だった。課題の投手力強化で、ソフトバンクを自由契約になった左キラーの嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年ソ⑤)、トレードで宮川哲(東芝~19年西①)、新外国人でエスパーダとヤフーレが加入した。
野手も楽天を自由契約になった西川遥輝(智弁和歌山高~10年日②)を獲得し、西川の加入は、ケガの多い塩見泰隆(JX-ENEOS~17年④)の穴を埋めることができる。また、同じ戦力外で増田珠(横浜高~17年③)、現役ドラフトで北村拓己(亜大~17年巨④)を加えるなど、野手の補強にも余念がなかった。
ただ、蓋を開けてみれば、ヤ戦病院と揶揄される有様で、塩見は選手生命にも係わる大ケガで今シーズン絶望、エースの小川泰弘(創価大~12年②)と期待の奥川恭伸(星稜高~19年①)は開幕に間に合わず、田口麗斗(広島新庄高~13年巨③)や山田哲人(履正社高~10年①)の投打の主力も一時離脱した。
ヤクルトは短・中期で課題を抱えている。残念ながらここ数年のドラフトでは、長岡秀樹(八千代松陰高~19年⑤)がレギュラーを確立し、吉村貢司郎(東芝~22年①)もエース格に成長しているが、それ以外目立った成績を残せた選手は多くない。
短期的課題はここ数年不振が続いている投手陣で、先発・リリーフともにテコ入れが必要だ。中期的課題は打撃陣で、早期のMLB移籍があり得る村上宗隆(九州学院高~17年①)に加え、今年ゲ契約最終年のサンタナとオスナの両外国人も今オフの去就に注目が集まる。最悪主軸の3人が来季不在という可能性もあり、次年度以降を見据えてトレードによる補強を考えて良い。
【投手成績】
◆防御率…3.27⑤(3.66⑥)先発…3.51⑤(3.95⑥)リリーフ…2.85⑤(3.21⑤)
失点…192⑤ 被本塁打…37⑤ 与四球…143② QS率…48.21%⑥
【打者成績】
◆打率….,236③(.239⑤)得点圏打率….,246① 得点…197① 本塁打40本①
盗塁数…26④ 犠打…59① 四球数…214① 長打率….340② 出塁率…314①
1⃣課題の投手陣強化はベテランが狙い目
課題の投手陣は先発の補強が優先になる。リリーフは田口が残留し、清水昇(国学院大~18年①)に大西広樹(大商大~19年④)、木澤尚文(慶大~20年①)等が主力で層は厚い。一方で先発陣も将来を見据えれば悲観する布陣ではない。
吉村と小澤怜史(日大三島高~16年ソ②)がローテーションに定着し、ファーム防御率1位の阪口晧亮(北海高~17年D③)も控えている。ここに高橋奎二(龍谷大平安高~15年③)や奥川が本格復帰すれば見劣りしない布陣になる。ただ、課題はいずれも今一つ殻を破り切れていないのが現状で、豊富な投手陣を誇るチームに狙いを定めたい。
短期的な補強を目的に実績のあるベテランに絞ると、秋山拓巳(阪神)に野村祐輔(広島)、福谷浩司(中日)がおり、秋山と野村は今季一軍出場がない。30歳を迎えた二木康太(ロッテ)や上原健太(日本ハム)も実績は十分で、攻撃陣に厚みを持たせたい阪神やロッテは狙い目だ。また、オイシックスの薮田和樹(元広島)もファームで好投しており、再生工場のヤクルトなら十分にチャンスはある。
若手では、ファームで好投している笠谷俊介(ソフトバンク)に村西良太(オリックス)、広島も有望株が豊富で、遠藤淳志に森翔平も好成績を残しているが一軍登板がなく、攻撃陣の補強を急ぎたいオリックス、広島とソフトバンクであればプロスペクト同士のトレードなら成立する可能性がある。
ただ、交換要員となり得る野手もケガ人が多くセレクトが難しい。ベテランの域に差し掛かっや山崎晃大朗(日大~15年⑤)や打力の評価の高い太田賢吾(川越工高~14年日⑧)、若手のプロスペクト候補では、濱田太貴(明豊高~18年④)や北村恵吾(中大~22年⑤)が候補になる。
2⃣年齢バランスの悪い外野手は対応が急務
野手の課題は世代交代への備えと、外野手の年齢バランスの悪さを解消したい。中村悠平(福井商高~08年③)や川端慎吾(市和歌山商高~05年③)、青木宣親(早大~03年④)などベテランへの依存が強く、山田に塩見、山崎、西川も30歳を超えた。
捕手は育成の橋本星哉(中央学院大~22年育①)を支配下にし、現在は離脱中だが内山壮真(星稜高~20年③)やルーキーの鈴木叶(常葉菊川高~23年④)など期待の若手も育ってきている。内野は遊撃に長岡、その長岡と同期の武岡龍世(八戸学院光星高~19年⑥)にも目途が付きつつある。
不安材料は外野手で、特に19~23歳が不在で、ベテランが多いチームだけに後々致命傷になりかねない。内山は外野も守れるが補強は必要で、どのチームもこの年代は不足気味だが、井上広大(阪神)や来田涼斗(オリックス)、武藤敦貴(楽天)などは期待値は高いが出番が少なく、ともに捕手が不足している楽天とオリックス、また楽天は投手も補強ポイントで、若手同士のトレードもアリだと思う。
3⃣主軸の村上、オスナ、サンタナの去就への準備も必要
もう一つの課題は村上とサンタナ、オスナの後継候補の発掘が課題だ。さすがに代わりになる選手を見つけるのは難しいが、ヤクルトは外国人選手の発掘に長けており、ここはスカウトの慧眼に期待したい。現状、若手の長距離砲候補では北村恵に濱田、澤井廉(中京大~22年③)など候補がいない訳ではないが、村上クラスの可能性を秘めた主力候補を狙っても良いと思う。
先述したが井上広大(阪神)に中村奨成(広島)、ブライト健太(中日)、正木智也(ソフトバンク)、安田悠馬(楽天)など、いずれもドラフト上位の選手で眠っている逸材は多く、放出することはないと思うが伸び悩んでいる清宮幸太郎(日本ハム)の獲得などは何とも夢のある話だと思う。
【お薦めトレード】
2⃣ 古賀優大(捕 手) ⇔ 武藤敦貴(楽天・外野手)
3⃣ 阪口晧亮(投 手) ⇔ 正木智也(ソフトバンク・外野手)
◆楽 天(4位)26勝28敗1分
FAで松井裕樹(パドレス)がMLBへ移籍したにも関わらず、先述したヤクルトとは異なり、シーズン前に補強らしい補強はなく、投手は日本ハムからポンセと広島のターリー、野手は日本ハムを戦力外になった山田遥楓(佐賀工高高~14年西⑤)の獲得に留まった。
シーズン前から不安が漂うなか、いざシーズンが開幕すると、他球団がクローザーに苦労するなか則本昂大(三重中京大~12年②)がリリーフで抜群の安定感を誇り、先発に転向した内星龍(履正社高~20年⑥)も成長著しい。野手では主力の浅村栄斗(大阪桐蔭高~08年西③)や島内宏明(明大~11年⑥)が不振のなか、辰巳涼介(立命大~18年①)に小郷裕哉(立正大~18年⑦)、村林一輝(大塚高~15年⑦)が本格覚醒するなど、限られている戦力で新任の今江監督は良くやっていると思う。
現在、4位ながら3位ロッテとの差を4ゲームに縮め、早期のAクラス入りも見えてきた。ただ、数字だけ見ると投打に良い数字は並んでおらず、この勢いがどこまで続くか不安材料は尽きない。
主力の高齢化、捕手の数的不足、主力に左打者の多いチーム状況、投打に年齢バランスの悪さ等々…短・中期的に見ても課題が多いチームだけに、優先順位を決めてトレードを考察してみた。
【投手成績】
◆防御率…3.75⑥(3.52⑥)先発…4.01⑥(3.66⑥)リリーフ…3.30④(3.27)
失点…221⑥ 被本塁打…26③ 与四球…137① QS率…50.91%⑤
【打者成績】
◆打率…..239④(.244③)得点圏打率…..265③ 得点…177③ 本塁打19本⑤
盗塁数…36③ 犠打…50① 四球数…165② 長打率…..321④ 出塁率….303③
1⃣メジャー張りの主力選手と若手有望株のトレード実現も可能
投手では岸孝之(東北学院大~06年西希)に田中将大(駒大苫小牧高~06年①)、野手は鈴木大地(東洋大~11年ロ③)に阿部寿樹(ホンダ~15年中⑤)、岡島豪朗(白鷗大~11年④)…チームの主力メンバーの名前を述べたが、共通しているのは全員が35歳を超えるベテランだ。さらに則本に辛島航(飯塚高~08年⑥)、浅村と島内も来季は35歳でシーズンを迎え、これだけを見ても十分にチームの危機感が伝わると思う。
まだ優勝を諦める時期ではないが、長い目で見た場合、メジャーのように優勝争いしているチームに主力を放出する代わりに、有望な若手選手を複数名獲得する“超”積極的なトレードを敢行しても良いと思う。打線を強化したい阪神や巨人、ロッテであれば、浅村や島内は喉から手が欲しいくらいの選手で、主力に左打ちの多いソフトバンクも右の浅村や阿部は貴重で、勝負強い鈴木大や岡島も他球団から見れば魅力の選手だ。
ここまでの主力の放出が厳しいのであれば、投手ではFA権を取得した酒居知史(大阪ガス~16年ロ②)、野手では茂木栄五郎(早大~15年③)に山崎剛(国学院大~17年③)、田中和基(立大~16年③)など30歳前後の脂の乗り切った選手もおり、思い切ったトレードでチームを活性化したい。
交換要員を25歳以下で限定すると、先述した阪神と巨人、ロッテに該当しそうな選手が多い。阪神は西純矢に及川雅貴の両投手に、野手で小幡竜平に井上広大。巨人の投手では直江大輔に横川凱、野手は岡田悠哉に山瀬慎之介がいる。ロッテは投手は見当たらなかったが野手で池田来翔に山本大斗がおり、井上に山瀬、山本はポジションのアンバランスも埋めることができる。
一方で主力のトレードは、1対2~3の複数トレードが基本になり、若手の有望株が豊富なソフトバンクや日本ハム、巨人とは大胆なトレードも可能だ。
2⃣年齢バランスの悪さの解消が急務で、特に捕手は大丈夫か?
ポジション別の年齢バランスの悪さも解消したい。心配なのは捕手で、現状支配下は5名しかいない。経験が要求され、なおかつケガも多いポジションだけになせ補強に動かないのか疑問だ。最悪、元捕手の岡島がいるという考え方かも知れないが、それでも補強は必要だ。
捕手が豊富なチームは少ないが、ベテラン組では長坂拳弥(阪神)に磯村嘉孝(広島)、松本直樹や西田明央(ヤクルト)も今季は出番が少なく、若手では谷川原健介(ソフトバンク)や古川裕大(日本ハム)は打撃も良いだけにファームでは本当に勿体ないと思う。片山や磯村、西田は二軍でも若手優先で3番目の捕手になっており、打撃が課題の阪神、ヤクルトは投手を補強したいが、金銭でもまとまると思う。
また、外野手は右打者が3年目の吉野創士(昌平高肩21年①)と前田銀治(三島南高~21年③)しかおらず、ともに一軍出場はない。人数と年齢バランスから外野手が豊富なのは阪神と日本ハムで、豊田寛や小野寺暖(阪神)、今川優馬や江越大賀(日本ハム)は一軍の出番が少なく、ともに複数トレードが可能だと思う。
3⃣上位追撃のために豊富な野手陣を交換要員の投手を獲得
最後に投手陣で、打線が良いだけに投手陣が整備できれば十分に上位を狙える。早川隆久(早大~20年①)と荘司康誠(立大~22年①)の左右のエース候補が控え、内も好投を続け先発は揃ってきている。ただ、課題主力の高齢化は避けられず、先発陣の強化を進めたい。現状、攻撃陣に余力があるだけに上位追撃のための補強は必要だ。
年齢バランスは悪くなく、20~21歳が不足しているが、さすがにこの年代のトレードは難しく、24~28歳の層は厚いだけに、ここは経験豊富な先発・リリーフを狙いたい。
かと言ってベテランを単純に増やすにはいかないので、29~33歳で絞ると、先発では秋山拓巳(阪神)に福谷浩司(中日)、二木康太(ロッテ)は一軍出場がなく、上原健太(日本ハム)もファームで調整が続いている。
リリーフでは加治屋蓮(阪神)や鈴木康平(巨人)、玉井大翔(日本ハム)の実績十分の選手になかなか出番が回らず、畠世周や今村信貴(巨人)、本田圭佑(西武)は先発・リリーフもこなせる。
しつこいようだが阪神に巨人、中日、ロッテ、西武は打撃に難のあるチームだけに成立の可能性は高く、茂木に山崎、渡邊佳明(明大~18年⑥)、田中和など打撃に苦労しているチームには魅力的な名前が並んでいる。
【お薦めのトレード】
1⃣ 浅村栄斗(内野手)⇔ 阪神・西 純矢(投手)&小野寺暖(外野手)
2⃣ 島内宏明(外野手)⇔ 日本ハム・古川裕大(捕手)&今川優馬(外野手)
3⃣ 山崎 剛(内野手)⇔ 二木康太(ロッテ・投手)