●チーム防御率が大幅に改善し、失策数もリーグ最少。守り勝つ野球で2位に躍進
序盤に新型コロナ感染の陽性者増で、開幕早々試合が中止になるなど、今シーズンもスタートで躓き波に乗り切れず、6月末には借金9にまで落ち込んだ。しかし交流戦以降、徐々に投打の歯車がかみ合い、8月中旬から8連勝、ホーム戦に限れば17連勝を上げ、最大17.5ゲーム差を詰めてヤクルトを追い詰めた。
ただ、最後はヤクルトに振り切られ優勝を逃し、阪神とのCSファーストステージにも敗れシーズンを終えた。
DeNAと言えば強力打線を軸に、打高投低で打ち勝つ野球のイメージがあるが、今シーズンは昨年4点台のチーム防御率が大幅に改善し、失点数は90点も減少した。しかも失策数はリーグ最少と守り勝つ野球が出来るようになり、得失点差がマイナスながら2位になったのは投手陣の貢献が大きい。
ただ、打線は相変わらずで、今年も強力打線なのは間違いないが、得点となるとどうも効率が良くない。チーム打率は2位で、本塁打も狭いハマスタの利点があるとは言えリーグ3位の117本も打ちながら、得点数は4位…。
ラミレス前監督の時より、機動力は重視しておらず、盗塁数は今年増えたとは言え、49盗塁ではなかなか相手にプレッシャーをかけることは出来ない。その分、犠打は活用されているが、一方で併殺打もリーグ2位と、この辺にちくはぐさを感じる。先日のCSファーストステージの第3戦で、追加点の1点をなかなか獲れず、チャンスで併殺打3つと、今シーズンの課題が最後の最後で顕われた気がする。
【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】
勝敗 143試合 73勝68敗2分②
防御率…3.48③(4.15⑥)打率….251②(.258②)
本塁打…117③(136③)盗塁49⑤(31⑥)
得点…497④(559②)失点…534③(624⑥)
●即戦力投手が主力として活躍でチーム力アップ!ただ、投打に若手の底上げが不足
今シーズンの躍進は、ここ数年のドラフトの成果と言っても過言ではない。投手では規定投球回数には不足したが、大貫がエース今永昇太(駒大~15年①)とチーム最多の11勝を上げた。
伊勢はセットアッパーとして71試合に登板し、39ホールドと鉄腕振りを発揮。しかも、68イニングを投げ防御率は1点台と大車輪の活躍を見せた。また、2年目の入江もリリーフへの適性を見せ、57試合で10ホールドと盤石のリリーフ陣の一角を担った。
攻撃陣では牧である。開幕から4番を任せられ、打率.290、本塁打24本、打点87と文句ない成績で終え、2年目ながらチームの主力選手に成長した。
また、ここ数年ドラフト1位の選手が主力に成長しているのも強みだ。14年の山崎康晃(亜大~14年①)から始まり、今永、濱口遥大(神奈川大~16年①)、東克樹(立命館大~17年①)、上茶谷大河(東洋大~18年①)、森敬斗(桐蔭学園高~19年①)、入江そして小園健太(市和歌山高~21年①)と続き、上位指名した即戦力選手が想定通りの活躍を見せている。
ただ、今ひとつチームが突き抜けられない要因は、高校生の主力が少ないことで、小園はともかく森の伸び悩みは頭の痛いところだろう。
今年は山崎のMLB移籍が濃厚で、リリーフ陣の補強とさらなる投手力強化で、上位は投手中心の指名になると思う。また、内野はベテランが多く、外野も19歳~22歳の選手がゼロなのはDeNAだけと年齢バランスが悪い。加えて機動力不足や若手捕手の成長の遅れなど、課題は結構多い。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
17年③…神里和毅(日本生命/②・外野手)
18年④…大貫晋一(新日鉄住金鹿島/③・投手)
19年②…伊勢大夢(明大/③・投手)
20年④…入江大生(明大/①・投手)牧 秀悟(中大/②・内野手)
21年⑥…なし
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【DeNAの補強ポイント】
投 手…即戦力(先発・リリーフともに)
捕 手…高校生(左打ちならベスト)
内野手…大学生・社会人
外野手…高校生は必須
☆投手~即戦力(先発・リリーフともに)
昨年は今年以上に即戦力投手が必要のなか、将来のエース候補で小園を1位指名したことに拍手した。今思えば、最下位ながら三浦監督が投手陣の改善に確信を持っていた証だったかもしれない。
今季は今永が規定投球回数をクリアし、大貫とともに11勝を上げ、濱口と石田健大(法大~14年②)、ロメロでローテーションを回したが、安定感という部分では今ひとつだった。また、東と上茶谷が不振で、京山将弥(近江高~16年④)も殻を破ることができず、先発の補強が必要だ。
一方でリリーフ陣は盤石で、クローザーの山崎が37セーブ、セットアッパーの伊勢とエスコバーはともに70試合に登板し、3人とも防御率1点台とまさに盤石だった。このほか入江に平田真吾(ホンダ熊本~13年②)、左腕の田中健二朗(常葉菊川高~07年①)がブルペンを支えた。
山崎が移籍した場合は、実績十分の三嶋一輝(法大~12年②)や伊勢の配置転換、新外国人の獲得などで目途はつきそうだが、今年は大学生に逸材が多いので先発の補強と合わせてリリーフも獲得したい。
そういった状況から今季は大学生中心にリストアップされており、上位候補では矢澤宏太(日体大)は、先発・リリーフともに適性の高い左腕で、左のリリーフが少ない状況からどちらにしろフィットすると思う。また、外野手としても評価が高く、元々投手だった金城龍彦を首位打者に育成したチームだけに、獲得してから適性を見極めても遅くはない。
このほか、金村尚真(富士大)と菊地吏玖(専大)は、他球団もマークする上位候補で、金村は安定感が抜群でリーグ戦で21勝の実績があり、菊地はフォークを習得し投球の幅を広げた。このほか、才木海翔(大経大)は球速153キロと真っ直ぐに力があり、菊地同様フォークを覚え安定感が高まった。社会人ナンバーワンの呼び声が高い益田武尚(東京ガス)も安定感抜群で、13年以来久々の社会人1位指名があるかも知れない。
今季は粗削りながら、150キロを超える真っ直ぐに力のある投手の評価が高い。水口創太(京大)は長身からの真っ直ぐが武器で伸びしろ十分。田中千晴(国学院大)も肘の故障が癒え、ここにきて評価を上げている。地元の神野竜速(神奈川大)も今春に大台を超え真っ直ぐで勝負するパワーピッチャーになった。左腕の久保玲司(近大)も、小さなテークバックから球の出どころが見にくく技術にも長けている。
高校生では唯一、山田陽翔(近江高)を候補に挙げている。山田の活躍は今更語ることもないが、リストアップの選手を見ると、今年は投手は即戦力に絞っており、単年での戦略として考えるとこれはこれで正しい。
山崎流出に備えるなら、経験豊富で安定感を増した小孫竜二(鷺宮製作所)やフォークが武器の橋本達弥(慶大)、即戦力ではないが、伸びしろも期待の羽田野温生(東洋大)は将来性も高く面白いと思う。
☆捕手~高校生(左打ちならベスト)
主力は変わらず嶺井博希(亜大~13年③)と戸柱恭孝(MTT西日本~15年④)、伊藤光(明徳義塾高~07年オ③)で、今季は嶺井が最もマスクを被り、3選手とも30歳を超えているが、脅かす若手が見当たらない、
一気に世代交代が進む訳ではないので、将来に正捕手l候補で高校生を獲得したい。上位候補は松尾汐恩(大阪桐蔭高)で、捕手歴は浅いが元々遊撃手だったこともあり、強肩でフットワークも良く、二軍でみっちり経験を積めば打てる捕手として、正捕手候補になれる。打力なら清水叶人(健大高崎高)も負けておらず、高校通算24本塁打の長打力が光り、もちろん強肩だ。今年は高校生捕手が充実しているので、打撃の良い高山維月(浦和学院高)や盛島綾大(興南高)は下位で狙い目の選手だ。
☆内野手~大学生・社会人
内野のレギュラー陣は、二塁に牧、三塁に宮崎敏郎(セガサミー~12年⑥)、規定打席未満ながら一塁にはソトとレギュラーが確立されている。課題は遊撃で、いまだに大和(樟南高~05年神④)が最も守っている状況は、若手の台頭が乏しい証拠だ。
宮崎が来年35歳になり世代交代が必要だが、将来的に牧を守備負担の多い三塁コンバートを想定すれば、二遊間のセンターライン強化をしたい。守備の良い柴田竜拓(国学院大~15年③)や期待の森が候補で、森の成長が今後のカギを握る
現状から将来性を期待した高校生の候補が多く、ともに遊撃手の戸井零士(天理高)と金田優太(浦和学院高)をリストアップしている。戸井は勝負強い右のスラッガー、投手兼任の金田は強肩で守備も良いアスリートタイプで、春以降は長打力も付いてきている。内田湘大(利根商高)も金田と同じく投手兼任で、高校では一塁手だが、プロで野手に専念すれば三塁や遊撃を守ることもできる。個人的には森と同じタイプの金田より、戸井や内田のほうが良いと思う。
ただ、年齢バランスでは大学生のほうが良く、田中幹也(亜大)は守備が良く打撃も粘り強く、DeNAに不足している機動力を使える。奈良間大己(立正大)も俊足で、思い切りの良い打撃のリードオフマンで、個人的にチームカラーに合うと思う。このほかともに二塁手の林琢真(駒大)も俊足で走塁技術が高く機動力不足を補え、三拍子揃った村松開人(明大)も、打撃が上向きで評価が上がっている。
また、将来性豊かなスラッガーの評価も高い。高校通算52本の内藤鵬(日本航空石川高)は恵まれた体から圧倒的なパワーが武器で、投手も兼任している野村和輝(BC石川)も強打の三塁手として期待がかかる。また、村上(ヤクルト)の弟である村上慶太(九州学院高)は、長打力と三振の少ないバットコントロールが評価されている。
☆外野手~高校生は必須
外野は最多安打の佐野恵太(明大~16年⑨)とリードオフマンの桑原将志(福知山成美高~11年④)がおり、年齢的にも心配ない。打撃の良い楠本泰史(東北福祉大~17年⑧)に守備走塁に優れている関根大気(東邦高~13年⑤)、日本ハムから移籍した大田泰示(東海大相模高~08年巨①)など外野の層は厚く補強の必要性はない。ただ、年齢バランスが悪く19歳~22歳が不在で、高校生の獲得は必須になる。大学生は必要なく、獲得するなら一芸に秀でた選手が良いと思う。
上位候補では、蛭間拓哉(早大)と浅野翔吾(高松商高)の名前が挙がるが、競合覚悟で獲りに行くなら浅野で、内野を守れる器用さもあり、チームの状況に合わせて適性を見極める余裕がいまのDeMAにはある。
このほか、高校通算48本の田中多聞(呉港高)は走攻守三拍子揃い、投手も兼任し身体能力が高くミートが巧い。三塚琉生(桐生一高)も投手を兼任し、通算31本の実績から投手より野手としての評価が高い。長打力なら藤田大晴(花咲徳栄高)も負けて劣らずで、遠くに飛ばす力はずば抜けている。
●即戦力なら投手または内野手、将来性なら捕手か外野手の注目のドラフト
今年の1位候補の予想は難しく、投打に戦力の層は厚くなっているので、将来性重視で矢澤宏太(日体大)と浅野翔吾(高松商高)が本命になるが、将来の正捕手候補で松尾汐恩(大阪桐蔭高)も補強ポイントに合致する。
即戦力なら益田武尚(東京ガス)は先発の層を厚くし、外れ1位指名では、菊地吏玖(専大)や才木海翔(大経大)の両右腕や即戦力の内野手が少ない状況から田中幹也(亜大)の可能性もある。
【指名シミュレーション】
1位~菊地吏玖(専大・投手)…抜群の身体能力を持ち、将来性は一番
2位~才木海翔(大経大・投手)…最速148キロの本格派で打者としても評価
3位~内田湘大(利根商高・内野手)…コンパクトのスイングからミート力が高い
4位~清水叶人(健大高崎高・捕手)…最速150キロの真っ直ぐが武器のリリーバー
5位~田中多聞(呉港高・外野手)…小柄で細身だが、全身バネのような剛腕左腕
6位~久保玲司(近大・投手)…高校から投手に転向した抜群の野球センスを誇る
おススメの選手は、捕手も兼任する高野光海(池田高)で、遠くに飛ばす力だけなら、同郷の杉本(オリックス)の高校時代よりも上との評価。チャンスに強い打撃で、ミート力も上がってきており、状況次第では捕手での起用も出来る。狭いハマスタにはピッタリの長距離砲で、下位指名で獲っても良いと思う。