●主力選手の離脱が相次ぐなかマジック点灯するも、最後に優勝を逃す悔しいシーズン
藤本監督を新たに迎えや今季は、開幕から8連勝と絶好のスタートを切り、このまま独走かと思わせたが、開幕早々に栗原陵矢(春江工高~14年②)が靭帯断裂の大ケガでシーズン中の復帰が絶望になり、ようやく復調気配だった上林誠知(仙台育英高~13年④)も骨折で離脱した。
投手陣もFAで中日から移籍してきた又吉克樹(四国IL香川~13年中②)が、順調にホールドを重ねていたが骨折で離脱…。先発で7勝を上げていた大関友久(仙台大~19年育②)も病気で離脱するなど、これからという時期になかなか波に乗り切れず、さらに新型コロナの影響などでベストメンバーがシーズン通じて揃うことがなかった。
それでもエースの千賀滉大(蒲郡高~10年④)と、主砲の柳田悠岐(広島経大~10年②)の投打の主軸を中心に選手層の厚さでカバーし、混戦パ・リーグを抜け出した。ただ、残り2試合で優勝マジック1となり、引き分けでも優勝が決まる最終盤で西武にサヨナラ負け…翌日、相性の良いZOZOマリンでロッテにまさかの逆転負けをして最後に力尽き優勝を逃した。
17年~20年の4連覇したときのような以前のような圧倒的な強さは無くなったとは言え、チーム防御率は昨年より改善し、規定打席をクリアしたのがは今宮健太(明豊高~09年①)と柳田の2人のみだったが、チーム打率と得点はリーグ1位で、相変わらずチーム力の高さを証明した。
【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】
勝敗 143試合 76勝65敗2分②
防御率…3.07③(3.25①)打率….255①(.247①)
本塁打…108②(132②)盗塁86④(92②)
得点…555①(564②)失点…471③(493①)
●主力が離脱しても、選手層の厚さでカバー。来季からは4軍制もスタート
今季も戦力は万全とは言えず、先発の枚数が不足するなか、大関がそのチャンスを掴み、その大関の離脱後は板東湧梧(JR東日本~18年④)が穴を埋めた。
リリーフも又吉の離脱に加え、森唯斗(三菱自動車倉敷~13年②)も不振で調整も兼ねて長期離脱するなか、松本裕樹(盛岡大高~14年①)に、広島を自由契約になり独立リーグからNPBに復活した藤井晧哉(おかやま山陽高~14年広④)が勝ちパターンを担うようになった。
野手も栗原や上林が離脱し、デスパイネとグラシアルも本来の調子ではないなか、牧原大成(城北高~10年育⑤)が内外野を守りながら、規定打席に2打席不足も打率3割の活躍を見せ、柳町達(慶大~19年⑤)やルーキーの野村勇がその穴を埋めた。
こうして見ても分かるように、ソフトバンクの強さは、高校、大学、社会人と万遍なく活躍し、ドラフト上位に下位、そして育成など順位に関係なく、主力そして控え選手が誕生している。傍から見て、決して巧いドラフトとは言えないが、入団してから補うのに余りある育成環境が、ソフトバンク強さの源と言える。
今季は松田宣浩(亜大~05年希)が退団し、明石も引退。4連覇を支えた主力選手が軒並み30歳代を超え、間違いなく世代交代に迫られている。
ただ、年齢バランスも悪くなく、一芸に秀でた育成選手が数多く控えており、数的に選手の層が厚く、ドラフトも補強ポイントを抑えながら、育成を重点に良い意味でフリーに指名できる。
確かに資金面での強さもあるが、最初から選手層が厚かったわけではなく、これまでの蓄積の上にあることを、なぜ他球団が素直に学ばないのが不思議でしょうがない。そして、来季からは4軍制を敷くことが決まり、先頭に立っているチームがさらなる進化を遂げており、益々差が開いてしまいそうだ。
【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】
17年①…周東佑京(東農大オホーツク/育②・内野手)
18年②…甲斐野央(東洋大/①・投手)泉 圭輔(金沢星稜大/⑥・投手)
19年②…津森宥紀(東北福祉大/③・投手)
20年①…なし
21年④…野村 勇(NTT西日本/④・内野手)
↓↓
【ソフトバンクの補強ポイント】
投 手…大卒・社会人投手(特に先発左腕)
捕 手…必要なし
外野手…強いて言えば高校生
☆投手~即戦力・将来の先発投手
先発はエース千賀を中心に、東浜巨(亜大~12年①)と石川柊太(創価大~13年育①)、レイに、ベテランの和田毅(早大~02年自)と大関の両左腕でローテーションを回している。
ただ、メジャー志向の強い千賀は近いうちに移籍が濃厚で、東浜と石川も30歳を超え、和田は来年42歳を迎える。今シーズン好投した板東と大関がいるが、先発は世代交代に向けは課題が多い。
一方でリリーフは心配ない。24セーブのモイネロが3年契約を結び、津森と藤井、左キラーの嘉弥真新也(JX-ENEOS~11年⑤)がともに50試合以上に登板し、松本を加え勝ちパターンが出来ている。さらに甲斐野と泉が控え、又吉と森が復調すれば鉄壁のリリーフ陣を形成できる。
今年の投手の指名は先発に絞って良く、上位候補では他球団と同様、矢澤宏太(日体大)と曽谷龍平(白鷗大)の両左腕に益田武尚(東京ガス)の名前が挙がる。先発に限ればおススメは曽谷と益田で、左のスリークオーターの曽谷はチームいないタイプ。安定感抜群の益田は、地元出身で高校・大学とも福岡でプレーしており、是非とも獲得したい選手だ。
このほか、将来のエース候補では山田陽翔(近江高)と田中晴也(日本文理高)の評価が高く、山田は投手としてはリリーフへの適性が高いと言われているが、厚い投手陣のなかでどう成長していくか楽しみだ。田中は今夏の甲子園では不調だったが、逞しい体から繰り出す速球は将来のエース候補になれる。
このほかの高校生では、左腕の森下瑠大(京都国際高)と森山暁生(阿南光高)は他球団も狙う有望な左腕で、森下は故障さえなければ1位候補、森山は伸びしろが期待されている。また、ともに甲子園でも好投た米田天翼(市和歌山高)と川原嗣貴(大阪桐蔭高)は安定感が高く高評価だ。
地元九州の逸材では、フィジカルに優れた大野稼頭央(大島高)や打者としての評価も高い白濱快起(飯塚高)に、日高暖己(冨島高)は高校から投手を始め、僅か2年半でドラフト候補になった素材型で、育成でも良いのでホークスで見てみたい。
大学生でも素材型がリストアップされている。荘司康誠(立大)は制球力に課題はあるものの、長身から投げおろす真っ直ぐに力があり、最速156キロの羽田野温生(東洋大)も、まだ未完成で伸びしろに期待できる。仲地礼亜(沖縄大)も持ち前の制球力に加え球速もアップし、西隼人(関学大)も4年時に球速が上がった。
このほか、金村尚真(富士大)や渡辺翔太(九産大)、大畑蓮(西部ガス)の即戦力投手もリストアップされているが、現在のソフトバンクに必要なのは来年の7~8勝より、将来15勝上げられる投手で、大胆に素材型で行って良いと思う。
☆捕手~必要なし
不動のレギュラー甲斐拓也(楊志館高~10年育⑥)の牙城は揺るがない。今季は打つほうが不振で途中交代も目立ったが、「甲斐で打たれたらしょうがない」と言えるほどの信頼感は揺るがない。来年31歳を迎え、さらに円熟味を増していくだろう。
控えの海野隆司(東海大~19年②)に渡邊陸(神村学園高~18年育①)も、他球団ならもっと出番が増えて良い選手で、仮に甲斐を抑えるようになれば、それはそれで安泰と言える。強いて言えば支配下が6名とやや少ないが、育成に3名おりやはり補強を急ぐ必要はない。
年齢バランスも悪くなく、松尾汐恩(大阪桐蔭高)をリストアップしているが、海野と渡邊、捕手登録の谷川原健太(豊橋中央高~15年③)もおり、何度も言うが必要ないと思う。獲得するなら下位または育成になり、ともに強肩で鳴らす野田海斗(九州国際大高)や山浅龍之介(聖光学院高)、片野優羽(市船橋高)あたりが候補になる。
☆内野手~有望な高校生 ※特に左打ち
内野は昨年に引き続き、世代交代が急務だ。松田と明石がチームを去り、来年は否応なしに世代交代が進む。
今季は今宮しか規定打席をクリアしなかったが、二塁で三森大貴(青森山田高~16年④)に目途が立ち、一塁は中村晃(帝京高~07年③)がおり、外国人選手でも賄える。課題はやはり三塁で、期待のガルビスやリチャード(沖縄尚学高~17年育③)が不振で、ルーキーの野村勇と周東が守り、レギュラー不在の状況が続いている。
ただ、19歳~23歳の全年代に選手がおり、即戦力は必要ない。将来のレギュラー候補に絞った指名をして良い。
そんななか、評価急上昇中の大型遊撃手イヒネ・イツア(誉高)の1位指名が公表された。両親がナイジェリア人で身体能力が高いが、身体能力に任せたプレーではなく丁寧な守備で、且つ打撃はミート力が高くパンチ力もある。守備ならポスト今宮、打撃ならポスト柳田になれる素材だ。
このほか、内田湘大(利根商高)と奈良間大己(立正大)の評価も高く、内田は高校通算35本塁打のスラッガーで、チームでは投手兼任で負担を軽減するため、守備は一塁だったが、プロで守備を磨けば三塁も遊撃も守れる。奈良間は走攻守にアグレッシブなプレーが身上のリードオフマン候補になれる。
☆外野手~強いて言えば高校生
外野は全く焦ることない。柳田が35歳を迎えるが、牧原に周東、中村晃も外野を守れ、今季活躍した柳町に左キラーの正木智也(慶大~21年②)も控える。さらに来年、栗原と上林が戻れば、柳田をDHで使える布陣になっている。強いて言えば、有望な高校生を獲得するくらいだろう。
上位候補で、蛭間拓哉(早大)と浅野翔吾(高松商高)の名前が挙がるが、イヒネの1位指名が決まり、蛭間と浅野が外れ1位で残っていることは考えにくく、さすがに獲得は難しいだろう。
そうなると、下位で素質型の高校生の指名になり、これはこれで面白い。リストアップされている名前を見ても、今夏の甲子園で活躍した海老根優大(大阪桐蔭高)と黒田義信(九州国際大高)、中央では無名だが井坪陽生(関東一高)に古川雄大(佐伯鶴城高)と、最初から外野手は素材型を狙っている姿勢が分かり、ここはさすがだと思う。
海老根と古川は似たタイプで、粗削りながら走攻守に高いポテンシャルを秘め、黒田はバットコントロールが巧く足も早い。井坪はミート力に優れパンチ力もあり、このなかでは一番出番が早いかも知れない。
●センターライン強化で3年連続で1位指名を公表!来季は4軍制をスタート
先述したが、イヒネ・イツア(誉高)の1位指名が公表された。一昨年の佐藤輝(阪神)、昨年の風間球打(明桜高~21年①)に続き3年連続の公表になった。ポジションや年齢バランスも加味しながら、その年1番の選手に行く方針で、センターライン強化で遊撃手のイヒネ1位が決まった。
イヒネを外した場合は、他球団の状況から荘司康誠(立大)や山田陽翔(近江高)、サプライズだが田中晴也(日本文理高)の投手が濃厚だと思う。野手なら松尾汐恩(大阪桐蔭高)や内田湘大(利根商高)になるが、投手にシフトして良いと思う。
来年から4軍制スタートも公表しており、今年も昨年同様に育成選手を多く(昨年は14名)獲得する予定で、今年も最後まで楽しませてくれそうだ。
【指名シミュレーション】
1位~イヒネ・イツア(誉高・内野手)…抜群の身体能力を持ち、将来性は一番
2位~田中晴也(日本文理高・投手)…最速148キロの本格派で打者としても評価
3位~井坪陽生(関東一高・外野手)…コンパクトのスイングからミート力が高い
4位~大畑 蓮(西部ガス・投手)…最速150キロの真っ直ぐが武器のリリーバー
5位~大野稼頭央(大島高・投手)…小柄で細身だが、全身バネのような剛腕左腕
6位~川原嗣貴(大阪桐蔭高・投手)…長身から多彩な変化球と制球力を兼ね備える
おススメの選手は、これまた評価急上昇中の遊撃手・勝又琉偉(富士宮北高)で、イヒネを外した場合、獲得に動いて良いと思う。勝又は投手も兼任しており肩も強く、打撃では188センチの長身を活かした豪快なスイングからの長打が武器。また、50メートル5秒8の俊足も兼ね備え、トリプルスリーも狙える逸材だ。