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どのチームが「人」を育て強くなるのか

22年ドラフト予想☆オリックス~投手は左腕中心に先発強化!野手は二塁と外野に即戦力必要

山本と吉田正の投打の柱を軸に、勝負所で負けないチームになり、リーグ連覇!

 2年連続でマジック点灯なしで連覇し、同率首位も最終戦での逆転優勝も史上初だった。一言で言うと「負けないチーム」になり、とにかく「ここで負けたら終わり…」という試合を確実に獲ってきた。

 昨年は、ロッテが1つでも勝てばマジック点灯の適地3連戦で3連勝し逆転優勝の足転機になった。今季も序盤は苦戦し、楽天と最大11.5ゲーム差まで拡がったが、9月中旬に首位に並ぶと、ソフトバンクがマジック11を点灯させ臨んだ適地3連戦3連勝で再び首位に浮上した。

 そしてラスト2試合、オリックスは2勝0敗しか許されない状況で、ロッテと楽天に連勝。1分けでも優勝のソフトバンクが連敗し逆転優勝した。同率の場合、直接対決で勝ち越ししているチーム優勝のリーグ規定で、15勝10敗のオリックスが優勝を決めた。まさに、9月17~19日の3連戦がペナントレースを大きく左右した。

 あえて「負けないチーム」と表現したのは、投打でチーム成績でずば抜けた数字がない。チーム防御率、打率こそともに2位だが、昨年リーグ1位だった本塁打は最下位、盗塁数も5位で長打力も機動力も不足しており、総得点数はリーグ4位、失策も4位と決して堅守な訳でもない。

 オリックスの最大の強みは、何といっても山本由伸(都城高~16年④)と吉田正尚青学大~15年①)の投打の大黒柱の存在が大きい。山本は15勝5敗で最多勝防御率は1.68で最高防御率、さらに最高勝率、最多奪三振の2年連続投手4冠で、完投数も投球回数も最多で、任された大事な試合を落としたことがない。

 吉田正は3年連続首位打者は逃したものの、打率、打点、四球数、長打率がリーグ2位で、出塁率は唯一4割を超え、チャンスメークにポイントゲッターとまさに打線の核だった。

 昨年は杉本裕太郎(JR西日本~15年⑩)が覚醒し、本塁打を量産する派手な試合で勝ち進んだが、今季は山本と吉田正を軸に、リーグ最少の与四球数、リーグ最多の犠打数に見られるように、無駄な走者を溜めず、犠打を使用して1点をもぎ取り守り切る野球で連覇を果たした。

 山本も吉田正も将来的にMLB移籍を希望しているが、この2人がいる限り大崩れすることはない。何より連覇したことで、選手が勝ち方を覚えた。今季は大混戦だったが、来季はオリックス中心のペナントレースになりそうな気がする。

【今シーズンのチーム成績 ※( )は昨年の成績】

 勝敗 143試合 76勝65敗2分①

 防御率…2.84②(3.31②)打率….246②(.247①)

 本塁打…89⑥(133①)盗塁62⑤(50⑤)

 得点…490④(551①)失点…458②(500②)

 

●過去5年は、毎年のように投打で主力を獲得!高校生がチームの土台になりつつある

 以前よりは高校生指名が増えたが、高校生が大学生・社会人を上回った年は19年~20年だけで基本的に大学生・社会人中心の指名が基本だ。

 オリックスのドラフトの潮目が変わったのは、13年から5年続いた単独指名で、この5年の勇気ある指名が連覇の土台を作ったと言っても過言ではない。昨年退団したが吉田一将から始まり、山崎福也(明大~14年①)、吉田正、山岡泰輔(東京ガス~16年①)が主力になっている。

 単独指名を競合を避けた消極的戦略と捉える意見もあるが、競合の人気選手を敢えて外して単独指名で行くのだから、失敗はスカウトの責任に直結する。現場とフロントの信頼感がないとできない指名だと思う。

 また、決して多くない高校生が主力に成長している。意外だが山本は4位指名、宮城は外れ外れ1位指名で、当然、他球団にも獲得のチャンスはあった。投手ならクローザー候補の山崎颯一郎(敦賀気比高~16年⑤)や本田仁海(星槎国際湘南高~17年④)に、野手は宗佑磨(横浜隼人高~14年②)に紅林がレギュラーで、若月健矢(花咲徳栄高~13年③)などチームの土台になりつつある。

【過去5年の主力選手 ※年数横の数字は順位】

 17年④…田嶋大樹(JR東日本/①・投手)福田周平(NTT東日本/③・内野手

 18年④…中川圭太(東洋大/⑦・内野手

 19年⑥…宮城大弥(興南高/①・投手)紅林弘太郎(駿河総合高/②・内野手

 20年⑥…阿部翔太(日本生命/⑥・投手)

 21年①…なし

  ↓↓

オリックスの補強ポイント】 

 投 手…即戦力の先発、高卒投手

 捕 手…人数不足で高卒または大卒

 内野手…高校生、即戦力二塁手

 外野手…即戦力の大学生スラッガー(右打ちならベスト) 

 

☆投手~即戦力の先発、高卒投手

 先発はエース山本を中心に、宮城と田嶋、山崎福の左腕トリオに山岡がおり、山崎福以外が全員が20歳代と末恐ろしい布陣だ。ただ、課題もあり、次に続く先発投手が不足気味で、好投していた期待の椋木蓮東北福祉大~21年①)の離脱は痛かった。

 一方、課題だったリリーフは層が厚くなり、ベテランの平野佳寿京産大~05年希)が28セーブを上げ、阿部と本田、育成から復帰した近藤大亮(大商大~15年②)に新外国人ビドルを中心に、勝利の方程式にこだわらず、打順や打者との相性で臨機応変の投手起用が光った。

 そのなかで、山崎颯やワゲスパックがリリーフの適性を見せ、比嘉幹貴日立製作所~09年②)と黒木優太(立正大~16年②)の経験豊富なリリーバーに、宇田川優希(仙台大~20年育③)や村西良太(近大~19年③)の若手が加わり、強固な投手陣が形成された。

 そんななか今年は、最速150キロの長身スリークオーター左腕の曽谷龍平(白鷗大)の1位指名を公表した。今季は安定感抜群の先発陣だったが、山崎福が30歳を超え、椋木の復帰の目途が立っていないなか、層の厚くなったリリーフより先発陣の強化を決めた。

 ただ、曽谷は競合が予想され、外した場合は既に日本ハムが1位指名公表の矢澤宏太(日体大や、楽天やヤクルトが高評価の金村尚真(富士大)が残っている可能性は低く、益田武尚(東京ガス河野佳(大阪ガス)が候補になる。

 おススメは、山岡や田嶋と同じ高卒3年目の河野で、平均145キロ前後の真っ直ぐに変化球を駆使する本格派右腕。昨年の社会人日本選手権ではMVPを受賞している。

 このほかの上位候補では、153キロの真っ直ぐとフォークで奪三振率の高い才木海翔(大経大)に、ともに伸びしろ十分の高校生左腕の森下瑠大(京都国際高)森山暁生(阿南光高)は他球団もマークしており、状況次第では上位指名もある。また、仲地礼亜(沖縄大)も大学4年時に球速が伸び、評価上昇中の選手だ。

 このほか、ともに小柄ながら豊富なスタミナが武器の大野稼頭央(大島高)や勝負度胸があり奪三振率の高い伊原陵人(大商大)、曽谷と同じスリークオーター左腕の吉川悠斗(浦和麗明高)の評価が高い。ストレートは早くないが、多彩な変化球で打ち取る漢人友也(中京大はチームにいないタイプで面白いと思う。

☆捕手~人数不足で高卒または大卒

 今シーズンも伏見寅威(東海大~12年③)が最もマスクを被り、若月健矢(花咲徳栄高~13年③)と頓宮裕真(亜大~18年②)の併用になっている。若月も頓宮も若く、急いで補強の必要はないが、捕手の支配下選手が6名しかおらず、数的に補強が必要だ。

 また、伏見はFA権を取得し、移籍の可能性もゼロではない。報道では森(西武)獲得の噂もあるが、状況は不透明だけに確実に人数は確保したい。昨年、福永奨(国学院大~21年③)を獲得しており、今年豊富な高校生で良いと思う。

 上位候補は松尾汐恩(大阪桐蔭高)で、オリックスも現状2軍でじっくり育成できる余裕があり、山本や平野など超一線級の投手のボールを受けるだけでも経験になる。曽谷を外した場合、松尾1位指名もアリだ。

 このほか、高野光海(池田高)もリストアップしており、長打力だけなら松尾に退けを取らず、打撃がセールスポイントで高校で兼任する外野手起用も出来る。このほか、長打力なら清水叶人(健大高崎高)高山維月(浦和学院高)も候補になる。 

内野手~高校生、即戦力二塁手

 昨年に引き続き、三塁に宗、遊撃に紅林がレギュラーだが、紅林が打撃面での成長が乏しかったのは数少ない誤算だっただろう。ただ、遊撃には打撃の良い野口智哉(関大~21年②)もおり、2人の競争が着実に力になると思う。

 不安材料は二塁で、今季も安達了一(東芝~11年①)が最も出場機会が多いが、難病を抱えている安達にフル出場は難しく、センターライン強化で二塁手を固定したい。本来でれば大田椋(天理高~18年①)等がチャンスを掴みたいどころだが、攻守に物足りなさは否めない。

 上位でリストアップされているのは、山田健太(立大)田中幹也(亜大)で、ともにタイプは違うが守備力に定評のある二塁手。山田は長打力も兼ね備えるヒットメーカーで、田中は菊地(広島)並みの広い守備範囲を誇り、俊足で機動力も使えチームのウィークポイントに合致する。

 個人的には走攻守揃った中山遥斗(三菱重工イースト)や打力の良い福永裕基(日本新薬、守備の良い和田佳大(トヨタ自動車の社会人指名も面白いと思う。

 このほかは、年齢バランスで高校生をリストアップしており、スケールの大きい長距離砲の内藤鵬(日本航空石川高)は、吉田正や杉本など手本が多くチームカラーに合っている。戸井零士(天理高)キャプテンシーもある大型遊撃手で、紅林の良きライバルになれる。 

☆外野手~即戦力の大学生スラッガー(右打ちならベスト) 

 外野は左翼に中川圭と吉田正、中堅に福田、右翼に杉本がいるが、中川圭を除き全員が30歳代で世代交代が必要で、プラス吉田正のMLB移籍に備えて強化が必要だ。

 吉田正と杉本以外で、スラッガータイプは元謙大(中京高~20年②)と来田涼斗(明石商高~20年③)のみで、年齢バランスも含め今年は大学生または社会人の即戦力で強化したい。

 上位候補で蛭間拓哉(早大の名前が挙がるが、西武が1位指名を公表しており、獲得は不可能で、そうなると森下翔太(中大)が候補になる。森下はここに来て評価上昇中の右のスラッガーで、中堅を守り守備も巧く、補強ポイントにはピッタリだ。

 また、仙台6大学リーグで三冠王を獲った杉澤龍(東北福祉大は広角に打ち分ける打撃技術に長打力もあり、長打力なら中村貴浩(九産大も上位候補に引けをとらない。杉澤と中村は左打ちだが、右打ちなら萩尾匡也(慶大)は今春から持ち前の長打力を発揮している。

 高校生では、西村瑠伊斗(京都外大西高古川雄大佐伯鶴城高)藤田大清(花咲徳栄高)のタイプの違う選手の評価が高い。西村は左の巧打者で高校通算54本のパンチ力もあり、内角の捌き方は高校生離れしている。古川は走攻守に高いポテンシャルを秘め、時間がかかるかも知れないが大化けの可能性が高い。藤田は左の長距離砲で、チームの補強ポイントにも合っている。

 

●1位はスリークオーター左腕の曽谷!上位は先発強化になるか?

 今年は早くも曽谷龍平(白鷗大)の1位指名を公表した。現時点で重複はないが、楽天とロッテは1位指名の可能性がある。

 外れ指名は投手なら即戦力右腕に河野佳(大阪ガスに、高齢化する外野手の即戦力で森下翔太(中大)、サプライズで松尾汐恩(大阪桐蔭高)が候補になる。森下と松尾は重複の可能性も高く、当日の1位入札指名に注目したい。

【指名シミュレーション】 

1位~河野 佳(大阪ガス・投手)…140キロの直球を軸に安定感抜群の本格派右腕

2位~森下瑠伊斗(京都外大西高・外野手)…高校では投手としても活躍のスラッガー

3位~戸井零士(天理高内野手…ミート力に長け課題の守備力も向上した遊撃手

4位~仲地礼亜(沖縄大・投手)…今年、最速150キロを超え伸びしろ十分の隠し玉

5位~杉澤 龍東北福祉大・外野手)…リーグ戦で三冠王を獲得した巧打者

6位~高野光海(池田高・捕手)…遠くに飛ばす力はけた違いで、ミート力も向上

 おススメ選手は、玉置隼翔(四国IL愛媛・投手)を推したい。190センチの長身から角度のあるボールを投げ込み、スライダーとフォークを武器に奪三振率が高い。また、ここにきてストーレートの球速も上がってきており、投手力育成に長けたチームでどんな成長をするか見てみたい。